いないはずのアシスタント山下とは、締め切り間際まで追い込まれた漫画家が見ると言われる幻獣現象の一つ。
出没!いないはずのアシスタント
初めにその存在が認められたのは、久米田康治『さよなら絶望先生』コミックス第十八集・百七十七話の単行本追加ページ。そして事件は、第二十一集「紙ブログ」で起きた。
アシスタントの前田君が仮眠中に遭遇。久米田先生に対し生意気な態度をとったり、仕事を真面目にしなかったりと、それが品行方正な前・前田君(MAEDAX R氏)には耐え難かったらしく、起きてすぐに久米田先生のもとに駆け込み、
と言い放った。一応言っておくと久米田プロダクション(通称クメプロ)にそんなアシスタントは存在しない。
久米田先生も寝ぼけてるんだと思っていたのだが、話を詳しく聞かされているうちに山下がいるような気がして、ついには先生の夢の中にも出てくるようになったらしい(いわゆる共同幻想か)。出てきたときの先生の印象は「言うほど悪いやつじゃないじゃないか」むしろグズグズして要領得ない前・前田君に叱咤激励しているようにも見えたそうだ。しかし前田君は「騙されてはいけない!山下はそんな奴じゃない!あいつは悪いやつです!!」と完全否定。いないはずのアシスタントの性格を巡り現場が一気に険悪ムードになった。そう、山下なんていうアシスタントは存在しないのに。
久米田先生もすぐに我に返り、「何いないアシスタントのことで、もめないといけないんだよ」と前・前田君及び自分を諭した。山下なんていない。そう思い込み、その場を後にした。
しかし――――……。
恐怖!山下襲来!!その正体は・・・・・・
その日、久米田プロダクションの仕事場には、先生以外誰もいないはずだった。しかし気配を感じた久米田先生は2階に上がった。そこにいたのは――――
足を投げ出し、横柄な態度で、
ニヤニヤと
聞き取れないような小さな声で何かをつぶやいて
久米田先生の席に
座っている
猫背の
男。
瞳孔を開いた前田君が、こちらを見ていた。
キバヤシ「そう、『いないはずのアシスタント山下』。その正体は、久米田先生に文句を言いたい、悪態をつきたい……そんな願望が生み出した、前・前田君のもうひとつの人格だったんだよ!!」
「前田クビにしましょうよ」
蛇足・暴かれた真実!山下とは何だったのか
『かってに改蔵』新装版が発売されたこともあり、小学館時代の担当編集者に会う機会があった久米田先生。
これはいい、先生は今回の事の全てを面白おかしく話した。しかし彼はクスリとも笑わずに、
「山下は前田君ではなく久米田さんが作り出した幻像かもしれませんよ」
「――前田君が久米田さんのところにアシスタントに入ったばかりのとき、前田君の名前をちっとも覚えないで、間違っていつもいつも山下君、山下君って呼んでたじゃないですか。前田君言ってましたよ、『先生がボクの名前をちっとも覚えてくれない…山下って誰なんですか!?ボクは山下じゃない!!山下はどこですか!!』って」
背筋が寒くなる。先生には覚えがあった。確かに前田君を間違って呼んでいた気がする、と。
キバヤシ「つまり、いないはずのアシスタント山下は前田君ではなく、久米田先生の呼び間違いが原因で作り出してしまった怪物だったんだよ!!」
その後、山下の影を恐れるようになった前・前田君含む久米田プロダクションは、仕事をはじめる前に「山下なんていない、山下なんていない!!」と唱えるようになったという。そうでもしないと全員が山下を見ることになるんじゃないか、という恐怖に襲われつつ。
いいえ。山下はどこにでも現れるのです。
誰もが子供の頃に見た小さなおじさんのように。
赤点を取ってしまった生徒に危機を教えに来る留年先生のように。
もしかしたらあなたの所にも――――
大蛇足・さらば山下!アニメ出演は一度だけ?
と、こんな感じで現在もネタにされまくっている山下だが、「さよなら絶望先生」では二百二十話『繋がれた毎日』に、
「じょしらく」 では十日目『もうやんだか』に登場した。
そしてTVアニメ「じょしらく」第八席『「こがね袋」「よろよろ」「もうやんだか」』にて、山下がまさかのアニメデビュー。
その圧倒的な存在感に、誰もが目に焼きついてしまっただろう。
関連商品
関連コミュニティ
ないはず
関連項目
- 7
- 0pt