からくりの君とは、漫画家「藤田和日郎(ふじた かずひろ)」が週刊少年サンデーにて執筆した短編漫画である。
短編漫画集「夜の歌」に収録されており、さらに2000年3月にTMS(トムス・エンタテイメント)がOVA化し、2009年7月に発売された「藤田和日郎魂」の特典としてDVD化を果たした。
概要
抜け忍の睚弥三郎(まなじり やさぶろう)と、からくり人形に魅せられた戦国武将の父を持つ亡国の姫 蘭菊(らんぎく)によるからくり戦国絵巻である。
ストーリー
戦国時代、急激に勢力を拡大していた戦国大名狩又貞義の城に忍び込んだ下忍の睚弥三郎は、手裏剣が刺さっても死なない『死なずの忍者』に追われる羽目になってしまう。
隠れ家に潜み、追っ手をやり過ごそうとする弥三郎だがそこに伝説の忍者『幻術の加当』を探す蘭菊が現れ、その直後、追っ手にも見つかってしまう。絶体絶命の弥三郎を助けたのは蘭菊の背負ってきた行李の中から現れた鎧武者のからくり人形だった。
死なずの忍者を撃退した蘭菊は自分が狩又貞義に滅ぼされた文渡久重の娘であり、狩又への仇討を助けてほしいと申し出る。
主要人物
- 文渡 蘭菊(あやわたり らんぎく)CV:矢島晶子
狩又貞義によって滅ぼされた文渡家唯一の生き残り。巨大なからくり人形を自在にあやつる技術を持つ。
仇討ちを果たさんとする一方、仇討ちを名目に全ての人形を破壊しようと目論む。
世間の常識に疎く、おっとりとした性格の箱入りの姫だが、その内面は死の間際まで実の娘よりも人形に執着した父に対する愛憎の念が入り混じっており、その歪んだ精神は「父親のあやつり人形」とまで称される。
華奢で可憐な容姿だが、生皮を剥がされた自身を醜いと認識しているせいなのか、裸を見られても特に恥らう様子もない。
「人形では、ありませぬ。」
- 睚 弥三郎(まなじり やさぶろう) CV:若本規夫
とある領主に雇われ、狩又貞義の城に潜入した下忍の生き残り。
蘭菊が逃げ落ちる際に持ち出した文渡家の財宝と引き換えに、蘭菊の仇討ちに協力することになる。
その正体は『鳶加当』『幻術(めくらまし)の加当』と謳われた伝説の忍者『加当段蔵』である。
自身の見たことのあるものの幻(まぼろし)を作り出す術を持ち、それ故にどこの領主からも恐れられて雇われなくなったため、素性を隠して下忍働きをしていた。
蘭菊の心情を知ったあとは自身の素性を明かし、忍びとして命を賭けることを誓う。
「上様…おれの君主であることができますか?」
- 文渡 久重(あやわたり ひさしげ)CV:麦人
蘭菊の父。山々に囲まれ、水に恵まれた豊かな国の領主。
他国から攻めにくい地形であり、戦国時代にもかかわらず長らく平和であったことから、戦国武将でありながら政にうとく風雅を好んだ。
山国にあっても外国の時計や技術書を積極的に収集し、特にからくり人形に執着するようになってからは、異常なまでの執念で研究に没頭するようになり、ついには己の最高傑作、自分で動くからくり人形「生き人形」を生み出すための材料として、当時五歳の幼児だった蘭菊の背中の生皮をはがすという凶行に至る。
しかし、生き人形の力に目を付けた狩又貞義に攻め滅ぼされ、命を落とす。
その今際に残した言葉は、蘭菊の心に多大な影響を及ぼした。
「人形を燃やすな…」
- 狩又 貞義(かりまた さだよし)CV:中田浩二
文渡家を滅ぼし、秘法とされた文渡のからくり人形と技術を手に入れて急速に強大な軍事力を付けた戦国武将。
文渡のからくり技術を用いて「死なずの忍」を作りだし、さらには自らも文渡久重の最高傑作とされた「生き人形」と一体化して人ならぬ力を得た。
領地では圧政を敷き、子供の生皮をバネにして動く生き人形を量産するために数多くの子どもを強制連行している。
「強さの道を求めんがため、人形とひとつになった余が下郎といつまでもやりあえるか!」
- 死なずの忍び頭 CV:青野武
頭目以外はすべてからくり人形で構成された忍者軍団「死なずの忍」を従える。
原作では蘭菊の自身の死をもいとわぬ計略により死亡するが、OVAでは生き残って睚弥三郎こと加当段蔵に最後の戦いを挑むシーンが追加されている。
「姫──お命頂戴いたします。」
からくりサーカスとの関係
藤田和日郎の代表作である「からくりサーカス」の原型と呼べる作品であり、作中に登場する「次郎丸」の技の中にはからくりサーカスの「あるるかん」の技と同じものがあるなど、この後に連載が始まるからくりサーカスに引き継がれた要素が多い。
また、本作が収録されている短編集『夜の歌』にはからくりサーカスの加藤鳴海の拳法と同じ拳法使いが主人公の作品もあるなど『うしおととら』と『からくりサーカス』をつなぐ作品群として楽しめるものである。
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関連項目
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