『きっと、うまくいく』(3 Idiots) は、2009年制作のインド映画(言語はヒンディー語と英語)。先行公開時の日本語タイトルは『3バカに乾杯!』。
インド屈指の名門工科大学ICE(モデルはIIT、インド工科大学)に通う3人の学生を中心として、コメディタッチでありながら教育のあり方そのものを問う意欲作。監督・脚本は本作に続き次作『PK』でもインド映画の興収記録を塗り替えたラージクマール・ヒラニ。
登場人物(キャスト)
- ランチョー(アーミル・カーン)
- ファルハーン(R・マーダヴァン)
- ラージュー(シャルマン・ジョーシー)
- ウイルス学長(ボーマン・イラニ)
- ピア(カリーナ・カプール)
- チャトゥル(オーミ・ヴァイディヤ)
解説
近年経済発展著しいインドであるが、なかでもとりわけ躍進しているのがIT分野である。新興産業であるITにはカーストの就業規制が存在せず、「実力さえあれば誰もが成功できる」IT分野での栄達を求めて、今日多くのインド人学生が工科大学の門を叩いている。
しかし同時に、教育熱の高まりがインド社会に新たな問題を引き起こしているのも事実であり、その最たるものは成績至上主義による学生の自殺の増加であろう。本作はコメディを基調としてミュージカルシーンも配するなど、インド娯楽映画のスタンダードを外れていないにも関わらず、教育問題についての確たるテーマ性も持ち合わせる出色の作品であると言える。
また、ノリとインパクトで押し切る傾向の強いインド映画には珍しく、丁寧なストーリー展開と明確なテーマ性、そして巧みな伏線回収など、ハイレベルな構成は本作を単なる娯楽作に留まらない、2000年代以降のインド映画を代表する一本に押し上げている。
評価
本作はインド映画史上空前の大ヒットを遂げ、2010年度のインド・アカデミー賞で史上最多の16部門を独占。全世界でも46億ルピー(9000万米ドル、うち国内5700万米ドル)を売り上げ、インド国内ではあらゆる種類の興収記録を塗り替えた。本作は学歴社会という同じ社会問題を抱える東アジアで特に支持を集め、それらの地域での興収累計は1133万米ドルにのぼる。
ブラッド・ピットやジャッキー・チェン、江頭2:50など多くのセレブも「心震わされた」とコメントしており、スティーブン・スピルバーグは「3回観た」と語り、また本作を『ゴッドファーザー』・『E.T.』・『ジョーズ』・『プライベート・ライアン』と並ぶ重要作品に挙げている。
リメイク権も各国によって獲得されており、リメイク作品もインド国内のタミル語映画 Nanban や、メキシコ映画の 3 Idiotas など既に複数制作されている。
余談
主人公3人は大学生という設定だが、撮影時のファルハーン役R・マーダヴァンは39歳、ラージュー役シャルマン・ジョーシーは30歳、ランチョー役アーミル・カーンに至っては44歳である。3人が年長過ぎることからヒラニ監督は別のキャスティングを考えていたが、結局この3人以外に適役が見つからず、続投となった。カーンは肌を若々しく見せるため、毎日4リットルの水を飲んで撮影に望んだという。
なお、本作のロードムービーパートはデリーの空港から始まり、ランチョーの故郷シムラー、ピアの結婚式場マナーリー、そして旅の終着地ラダックまで北インド各地に舞台を移す。ご存じの通りインドは広大であり、登場人物たちのように車でホイホイと移動するのは困難であることに注意されたい。
BD/DVDについては、現在のところ日本で発売されているものには字幕版のみ収録されている。BSジャパンで放映された吹き替え版(平田広明などが出演)は、「日本語吹き替え収録版」と表示されたレンタル版のみで視聴できる。もちろん、いとうせいこう監修の字幕版も、数々の名訳を生み出した点で吹き替え版にまったく劣るものではない。
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関連項目
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