ふっくらビクトリア朝パジャマとは、パチュリー・ノーレッジの服装を表現した、とあるアメリカ人の発した言葉(の日本語訳)である。
原語ではPuffy Victorian pajamasと表記する。
概要
ここでは「何故ふっくらビクトリア朝パジャマという評価に至ったか」「ふっくらビクトリア朝パジャマとは一体何なのか」を詳しく紐解いて考察したいと思う。
パチュリーの服については日本国内でも以前からパジャマや寝巻きの類のようだと評価されていたが、それは国外においても同様だった様子。パジャマについては共通認識で問題は無い。
「ふっくら」というのも、見た目からしてゆったり目の服である事から、そこに疑問は生まれない。
では、「ビクトリア朝」とはどういうものなのか?本項ではそこに注目して解説していきたいと思う。
まず、ビクトリア朝というのはヴィクトリア女王が統治していた1837年から1901年のイギリスを指し、前期・中期・後期の三つの時期に別けて説明される。ビクトリア朝は英国の黄金期であったとされる。
余談だがパチュリーは100歳以上という設定があり、ビクトリア朝の真っ只中に生まれた可能性が高い。勿論100歳「以上」である事から、それ以前の可能性もある。いずれにせよ、パチュリーがビクトリア朝と時代を同じくして生を謳歌していた事は間違い無い。
ビクトリア朝的という用語は、その裏に多くの矛盾を孕む、非常に厳しいがしばしば偽善的な道徳的基準、など幅広い意味合いを持っている。
文化や風俗に関しては飛ばし、実際にはどのような服装が「ビクトリア朝」「ビクトリア風」であるかをかいつまんで説明していきたい。
まず、パチュリーを対象としたものである事から、モデルとして「非労働階級の女性」「学者」といったあたりの人物のそれが相当すると思われる。18世紀前後の貴族階級の女性の衣装を説明すると、以下の特徴を備える。
- 大きくあしらいつつも胸元を開いた、中に針金を通し際立たせた襟(メディチ・カラー)
- フロックと呼ばれる単純なワンピース型の衣服。裾は床に届くほど長い。
- 帯は腰より上、胸の真下で締める「ハイウェスト」タイプ。
- スカートの裾は大きく広げるタイプがこの時代の貴族階級の女性の主流となっている。
- スカートは逆V字型に分かれており、その間から中着のスカートを見せている。幾重にもプリーツを作って派手さを増しているものも少なくない。
- ムーシュと呼ばれる、星や月などを象った付け黒子が流行した。
- イギリス圏では上半身がタイトだが、フランス圏ではゆったりとしたものが流行する。二つの国は交流もあり英国ではどちらのタイプも存在したと思われるが、「ビクトリア朝」であるならば、前者であると思われる。
- 基本的にはボンネット(顎下で結ぶつば広の帽子)が主流だが、ゆったりとした帽子(モブキャップ)が用いられる事もあった。ビクトリア朝前期においてはモブキャップは既に流行を終えメイドや老婦人のファッションとなっていたが、後期に入り、懐古趣味(オールドイングランド)として再度復興を見せ、主に創作の中でモブキャップに身を包んだ少女達の姿が復活した。ボンネットはビクトリア朝後期に入り装飾性を増し、シルエットが誇張され、リボンや星、シルク製の造花などをあしらったものが現れた。モブキャップにおいても大きなリボンやレースがあしらわれた装飾性の高いものが存在した。
概ね以上の特徴が挙げられるが、これ以外にも様々なスタイルが存在したと思われる。
とりあえずこの程度を列挙したが、実際パチュリーの服装に通じるものは何点か見つけられる。
帽子に関しては、現代においてはZUN帽と呼ばれ珍奇ささえ漂わせていたものが、ビクトリア朝的にはあまり違和感が無いものだったのは発見と言える。
パジャマとされる事からタイトな要素や帯を除外し、パジャマであることからガウンを羽織るものとしてアレンジを加えると、以上の特徴はパチュリーの服装のそれに類似してくる。
パチュリーの中着は縦縞のワンピースである。縦縞はどちらかというと16世紀頃に流行した男性的なファッションの「スラッシュ(裂け目装飾)」が思い浮かぶ。だが「パジャマ」として見れば、縦縞のパジャマなんて珍しいものではない。
「ふっくらビクトリア朝パジャマ」とは、「ビクトリア朝」らしさはあっても「ビクトリア朝」そのものではない、現代的でありつつも現代的ではない、幻想郷らしさを兼ね備えたパチュリーの服の評価として、実に的を射たものだったと、改めてここで再確認する。
関連動画
関連項目
外部リンク
- Wikipedia「ヴィクトリア朝のファッション」(英語)
- The Delineator May 1891 ビクトリア朝後期に米国で出版されたファッション誌。いまだ英国の影響を強く残しつつも、独自性の萌芽が見受けられる。
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