やばい単語

ヤバイ
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やばい』とは、日本語の形容詞で、複数の意味を含有する彙である。

江戸明治期から昭和中期までは「拙い」「酷い」などの否定的なニュアンスしか持たないであったが、昭和後期にはイレギュラーな用法として肯定的な意味合いを持つようになり、平成前期には「すばらしい」「おいしい」などのポジティブな用法が使われ始め、平成中期にはこの用法がほぼ定着したことが認められている。

概要

「やばい」は「拙い」「酷い」「不都合である」ことを意味する形容詞として一般には解説されている。しかし、1990年代には「面い」「素晴らしい」「好都合である」ことなどを意味する形容詞として使用され始めていると言われており、2004年には文化庁の調で『 「とてもすばらしい(良い,おいしい,かっこいい等も含む)」という意味で「やばい」と言う』という設問に対して18.2%が「ある」と回答。2014年の調では26.9%にまで増加している。このことから見ても、「肯定」「否定」のありとあらゆる概念に対して使用できる言葉になったと言えよう。

一方でフォーマルな彙ではないため、まった場では個々に言い換えることがめられる。しかし「やばい」で表現できる幅があまりに広すぎるがゆえに「やばい」一で会話をしてしまう者が増えていると危惧されているようだ。とはいえこれには「1000年前の清少納言クラスの文筆でさえ何にでも『をかし』と言っている」という批判もある (参考exit) 。

語源と発展

カジュアルスラングという印に反して、江戸時代にまで遡ることがわかっている。『東海道中膝栗毛 (十返舎一九, 1802)』には上方の人間台詞として「おどれら、やばなこと働きくさるな」とあり、これは現代文に直すと「お前ら、やばいことしたらあかんで」となる。辞書編纂者の飯間浩明は当時の関西方言としてもともと「危険な」「法に触れる」と言った内容を言っていたのだろうと述べている (参考exit) 。それが江戸東京に入って犯罪者隠語として定着したのではないか、というわけである。

しかし飯間は松尾芭蕉子にして門十哲として並び称された志太野坡がもともと「野」と号していたことから、志太の「やば」には意味はなく、音だけが重視されていたと推測している。志太の俳が都会趣味で時に軽薄に流れる傾向があったため、志太野坡の「やば」もこれに由来するのではないかと考えているようだ。この場合、志太野坡の年である1740年には既に「やば」は当時のスラングとして使用されているということになるわけである。

「やば」それ自体のには諸説ある。いずれにしても、現代文の「やばい」は「やばなり」という形容動詞の幹「やば」が形容詞化したというのが通説の様子である。

屋説
江戸時代には屋の看守を「厄場( やば ) 」と呼称しており、犯罪者が厄場の世話になりそうな状況、つまり捕まりかねない状況をして「やばい」と言っていたという説。
また、囚人が良からぬことをしようとして厄場に見つかりそうなとき、他の囚人が「それは『やば』だ」と教え合っていたという説もある。
的場
江戸時代には射的場を「矢場」と呼称しており、同時にこの「矢場」は犯罪者の巣窟としても機していたとされる。そのため役人も下手に矢場に近づこうとすると悪事に関与しているのではないかとをつけていたとされる。
また、矢場で矢を拾う女性たちは客に色も売っていた、つまり一種の違法風俗店であったからという説もある。
矢の羽説
矢場ではなく、矢そのものを由来とする説。「矢羽」とも書けるため、矢で射られるくらい危険であるという説。
もともと「やばし」という形容詞があって形容動詞化した説
もともと「やばし」という形容詞があり、その形容詞幹が形容動詞化して「やばなり」となった後、更に形容動詞幹「やば」から転じて「やばい」に戻ったという説。
「あやぶい」「いやあぶない」説
「あやぶい (危ぶい)」「いやあぶない (彌危ない)」から来ているという説。ただし飯間は文献にこれらの単が見当たらないことからこの説は信じるに足りないと述べている。

この「やばい」はその後明治大正昭和と使われ続けていたが、あくまでアウトロー隠語としてであり、第二次世界大戦前後のあたりでは一般的にはから「やばい」なんては使うなと釘を差されるようなであったとされている。その後、昭和40年代頃の若者俗語となった。

1973年にはジャズアニストの山下が「やばい」を肯定的に使用していることを飯間は摘している。

その後2000年代には肯定的な意味合いが産まれ、平成中期から令和においては、オールラウンドに物事を表現できる単となったということになる。

類例

本来ならば否定的な言葉でありながら、それが後世で肯定的な意味合いを持つケースには類例がある。

例えば「すごい」。すごい漢字で表記すると「凄い」となるが、この「凄」の字は「凄然」「凄絶」「凄惨」などというに使われる。「凄然」は「物寂しい」あるいは「寒い」といった意味であり、そこから転じて「凄絶」「凄惨」などでは「ぞっとする」「おぞましい」という意味合いの字になる。つまり「凄い」も本来はネガティブな意味合いで使われるであり、「ぞっとするほど恐ろしい」という意味合いであった。しかし現代では「すごく優秀」「すごく綺麗」「すごく頑丈」など肯定的な意味合いを持つ形容詞になっている。

もっと遡るならば、「いみじ」であろう。いみじは「酷い」と言う意味と「素晴らしい」という意味を両方とも含む言葉であり、まさに現代に訳すならば「やばい」に相当するといえよう。

「やばい」と同じスラングとしての表現に絞っても、中国語の「」のようなケースがある。日本人でも分かる通り本来の字義は「ひどい」なのだが、英語の「cool」にきがにていることから、現代中国語では「クールな」「かっこいい」という意味合いで使われているというのである。

英語圏では「crazy (おかしな)」「sick (病気の)」「mad (狂っている)」「kill (殺す)」「insane (非常識な)」といったを肯定的な意味合いを持って使うことがある。

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