アジアインフラ投資銀行 (Asian Infrastructure Investment Bank)とは、国際的な投資を行う国際機関の一つである。正式名称よりは略称の「AIIB」の方が多く用いられる(というかニコニコのタグもAIIBの方が多い)。
概要
これまでの欧米主導による金融の流れを補完・脱却する形で、中国が設立した機関。正式な設立・発足は2015年12月25日、正式な始動・開業は2016年1月16日。
設立への参加は、2013年と2014年の2回にわたって中国より提唱される。「2015年3月31日までに参加した国には創設メンバーとしての地位が与えられる」として参加が呼びかけられた。当初はアジア地域の国以外から参加はほとんどないと見込まれていたが、2015年3月12日に突如イギリスが参加を表明する。これまで静観していたG7から初の参加で、それに続くようにフランス・ドイツ・イタリアなどの主要国も参加を表明。最終的に創設メンバーは57ヶ国で確定した。
なお署名式には50ヶ国が参加し、7ヶ国が欠席した(この時期に中国が行っていた南シナ海の埋め立てなどに対する影響もしくは抗議の意味と見られている)。
資金調達[1]
国際開発金融機関は参加国から集めたお金を又貸しするのではなく、集めた資金を”見せ金”として基金化する仕組みになっており、その見せ金と参加国の保証・担保に基づいて債券を発行する。
ADB(アジア開発銀行)であれば主導国の日本及びアメリカの長期金利に上乗せして資金調達ができる。長期金利が0%台ならADBでは1%未満で資金を調達でき、それに手数料を乗せてお金を貸すことになる。
しかしAIIBの場合は貸出金利は最低でも8~10%になる。つまり金利8~10%で採算がとれるプロジェクトでないと成立しない。8%で資金を借り入れた国の経済成長率が8%以上であればよいが、現状では毎年8%以上の経済成長を続ける国はまず無い。
また、この手の国際開発金融機関には基本的にドルが集まることになるが、チャイナはAIIBでの支払いに「人民元を使う」と言っている。人民元ならいくらでも発行できるし、AIIBはチャイナにとって新たな外貨獲得手段になる、という狙いだ。
組織
組織概要 | |
---|---|
資本金 | 約1000億ドル (約12兆円) |
参加国 | 57ヶ国 |
本部 | 北京 |
公用語 | 中国語 |
理事会 | 12人 (アジア9人・域外3人) |
出資比率 | (1) 中国 (30%) (2) インド (3) ロシア |
議決権 | 中国 25%以上 (事実上の拒否権あり) |
総裁 | 金立群 (元・政務次官) |
発足・運用開始 | 2015年12月25日 2016年1月16日 |
本部は北京(予定)、公用語は中国語(北京普通話)となる。資本金は1000億ドル(約12兆3000億円)で全体の75%をアジアなどの「域内」、残る25%を欧州を含む「域外」に割り振っており、出資国のうち中国が約30%で最大の出資国となり、重要案件の拒否権を握っている。原則として国内総生産(GDP)の規模に応じて分配をおこなう。
基本的には、参加国から拠出された資金を機関が集めて管理し、アジアのインフラ投資の対象となる国に投資するというものである。現状では、世界銀行(WB)、国際通貨基金(IMF)、アジア開発銀行(ADB)が行ってきた既存の手法と同じで、目立った変化はない。
ただ、これまでの機関と違うのはそれらを主導する国が中国ということである。IMFの場合は最大の出資国であるアメリカが主導し拒否権を持っている。ADBは日本とアメリカが主導していて代々トップも日本人が務めている。つまりほぼ全てアメリカ主導による金融支配が続いていたことで、中国をはじめ自国の意見が通りにくいという不満を抱えていた国が多かったことが今回AIIBに多く流れる原因となったのではないかといわれている。[2]
公式には「アジアのインフラ投資・整備の資金ニーズに対して、既存の機関ではまかないきれない部分の代替・補完を行う」という目的のもと設立が目指されているが、実質的にはWB、IMF、ADBなどと投資先や活動内容が重複・競合し得ると考えられる。そのため、国際的には「これまでアメリカによってとられてきたアジアの金融の主導権を中国の主導にもっていくため設立しようとしている」と見られているのが現状である。
また、これまでの機関(特にADB)が、「過剰な投資による焦げつき」や「経済性の優先による急速な環境破壊」を懸念しすぎるあまり、投資におよび腰になっていたこともあって、「機動性が低い」と批判が出ていたこともAIIBに流れる理由の一端になったのではないかと思われる。
また、設立後もさらに加盟を求める国が出てきており、2016年6月現在で追加24ヶ国の加盟希望があったことが発表され、ADBの規模を越えることが明らかとなった。[3]
日本との関わり
2016年6月26日に、政治家の鳩山由紀夫がAIIBの顧問として就任することが報じられた[4]。また、AIIBからの関係者筋として「アジアの大国である日本にぜひ参加して欲しかった」という趣旨の話がなされており、AIIB関連の行動は当初は日米外しを意図したものだと考えられてきたが、ここにきて外しではなく日本を取り込むことによる日米の切り崩しを意図していた可能性も出てきている。[5]
日本は一貫してAIIBとは距離を置いており、安倍首相はあくまでも「公正なガバナンス」「持続可能な貸付」「環境や社会に対する配慮」の三つを参加の条件としている。[6]もちろんチャイナがこんな条件を飲めるわけが無く、体のいい「お断り」状態となっている。
参加国
参加国は多いのだが、その思惑は国ごとに異なる。バーベキューに例えると…
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https://twitter.com/daitojimari/status/846931289072549888
域内メンバー東アジア・オセアニア南アジアASEAN中央アジア・西アジア |
域外メンバー欧州
中東・アフリカ南米 |
参加国
不参加 |
参加申請したけど拒否 |
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関連項目
関連リンク
脚注
- *「これからヤバイ 米中貿易戦争」渡邉 哲也 徳間書店 2018
- *事実、2015年4月に行われたG20の金融総裁会議では、(中国を含む新興国への警戒感から)発言力の増大を拒否権を使ってまで認めようとしないアメリカに対し、新興国から明確に不満が発せられており、アメリカ抜きの改革案も提案された。財務担当として出席していた麻生太郎も「不満が声高に出たのは前回より多かった」と発言している。(朝日新聞 20150419)
- *AIIB、新たに24カ国加盟希望 ADB超えへ (朝日新聞 2016年6月26日05時13分)
- *鳩山元首相がAIIB顧問=中国、日米切り崩し狙う (Livedoorニュース 2016年6月25日 20時38分)
- *日本関与にこだわり=本格国際機関目指す-AIIB (時事ドットコムニュース 2016/06/25-21:52)
- *「これからヤバイ 米中貿易戦争」
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