アパトサウルスとは、ジュラ紀に生息していた恐竜の一種である。
名前の意味は「あざむくトカゲ」。
概要
目 | 竜盤目 |
亜目 | 竜脚形亜目 |
下目 | 竜脚下目 |
科 | ディプロドクス科 |
属 | アパトサウルス属 Apatosaurus |
種 | A.アジャックス A.ajax A.ルイザエ A.louisae A.エクセルスス A.excelsus A.パルヴス A.parvus |
中生代ジュラ紀後期の北アメリカに生息していた大型の植物食恐竜。
ディプロドクスと共に、竜脚類(長い首と尾を持つ4足歩行の巨大な植物食恐竜)の代表的な種であり、全長は約21m、体重は約30tと見積もられている。
発見と命名、展示
発見されたのは1877年、アメリカである。発見者はエドワード・ドリンカー・コープ。当時のアメリカでは、コープとそのライバル、オスニエル・チャールズ・マーシュが熾烈な恐竜の化石発掘競争を行っており、アパトサウルスもその中で発見された1体である。
かつては「ブロントサウルス」という名称で呼ばれており、現在でもこちらの名前の方が馴染み深いと思う人は多いのではないだろうか。
カマラサウルスの頭骨が混ざるなどしていた骨格にブロントサウルスという名をつけたのも同じマーシュであり、コープとの発掘競争の中で詳細な検証をすることなく記載論文を書いてしまった。
国内では、国立科学博物館でほとんど実物化石で組んだ全身骨格を見ることができる。
形態の特徴
ほっそりしたものの多いディプロドクス科の竜脚類としてはがっしりとした体形をしている。
首は仲間に比べてかなり高く上がるほうだったが(それでも角度にして30°程度)、普段は盛り上がった背中から伸びた靭帯で支えて前に伸ばしていたらしい。頸椎一つ一つは空洞が多く非常に軽量化されていた。この空洞には鳥類と共通の呼吸補助器官である気嚢が収まっていたとされる。
また、頸椎同士がしっかりと組み合わさって確実に力を伝達していた。そのため、従来あるように首が上向きのカーブを描くように骨格を組み立てると脱臼してしまう。さらに棘突起(背筋の骨)が二又に分かれ、靭帯の通るスペースがあった。
頭骨はウマのものとほぼ同じくらいの大きさで、やや細長かった。近年は、現生のウシやウマなどの植物食動物と同じように、普段は口を下に向けていたと考えられるようになった。歯は鉛筆型で、物を噛み砕く能力はなく植物の枝から柔らかい葉だけをすき取って丸飲みにした。鼻孔は額にあるが生前の鼻の穴はもっと前にあったと考えられる。
四肢は体重を支えやすいようにほぼ真っ直ぐだった。戯画的に描かれるようにとても太かったわけではない。前肢は後肢と比べてやや短かった。また前肢の親指に太い鉤爪があり、以前は後肢と尾で立ち上がって前肢の爪で肉食恐竜を撃退するイラストが多く描かれたが、そうまでしなくても巨体だけで肉食恐竜を追い払うのは容易かっただろう。
胴体は樽状で大きく、飲み込んだ植物を発酵させるための長大な消化器官を収めていた。腰椎を中心に脊椎から棘突起(背筋の骨)が高く発達していた。吊り橋の橋脚のように腰の部分を体重を支える要としていたと考えられる。骨盤自体も幅広くがっしりとしており、体幹の重量を的確に後肢に伝える構造をしていた。
尾は長くまた先端に近づくほど細くなっており、根本で軽く振り回すだけで先端が音速に達して、風切り音を立てることができた。これで肉食恐竜を威嚇したり仲間に信号を発したり、また速度を加減して直接叩きつけることで肉食恐竜を撃退したとも言われる。
推定される生態
かつてはその体重を支えきれないために陸上を歩くことはできず、湖沼地帯に住んでいたとされたが、後に陸上生活をしていたことが明らかになった。
主に群れをなして移動生活をし、森林の木の葉を常食としていたとされる。アロサウルスをはじめとする当時の捕食者に対しては、その巨体と群れをなすことで身を守っていたらしい。
そのほかの竜脚形類
プラテオサウルス
分類:プラテオサウルス科 全長:10m 時代:三畳紀後期 地域:ドイツ、フランス、スイス、グリーンランド 意味:「平らなトカゲ」
時代的には竜脚下目より早く栄えたが体の構造は特殊化が進んでいたプラテオサウルス類の代表種。恐竜の中でも特に早い時代に大型化し、広い地域に分布を広げた。竜脚下目に比べるとやや身軽で、二足で立つこともできた。ジュラ紀前期までプラテオサウルス科の繁栄が続いた。かつてはプラテオサウルスなどを古竜脚類として竜脚形類を竜脚類と二分するとされていたが、現在では古竜脚類をただ竜脚形類と呼び竜脚類とはっきり分離しないようになった。
アンテトニトルス
分類:竜脚下目 全長:若い個体で10m(成体で推定15m) 時代:三畳紀後期 地域:南アフリカ 意味:「雷の前」
知られている最古の竜脚下目で、知られている最古の恐竜の一つでもある。すでに非常に大型化しており、前肢は祖先的な二足歩行の特徴を指に残しつつも長くがっしりしていて、四足歩行の特徴を持つ。「雷の前」を意味する学名は雷竜(ブロントサウルスの訳語)とも呼ばれる竜脚類に先立つものであることを示す。
マメンチサウルス
分類:竜脚下目マメンチサウルス科 全長:20~25m(種によって35m) 時代:ジュラ紀後期 地域:中国 意味:「馬門溪(四川省の地名「馬鳴溪」の誤読)のトカゲ」
ジュラ紀後期のアジアを代表する竜脚類グループの一つで、全長の半分と全長に対して最も長い首を持つ恐竜。最大級の竜脚類候補の一つでもある。アパトサウルスと比べると硬いものを食べられる歯を持つ反面長い首はあまり上がらず、専ら首を水平に動かして広い範囲の餌を労せず集めた。
ディプロドクス
分類:竜脚下目ディプロドクス上科ディプロドクス科 全長:27m(種によって35m) 時代:ジュラ紀後期 地域:北米 意味:「二本の梁」
アパトサウルスの近縁種で、概要に上げた体形はほぼ共通しているが尾を中心に全体的に細長く、また首の上がる向きはやや低かった。かつてセイスモサウルスと分類されていた恐竜は独自の特徴が否定されてディプロドクス属に含まれ、ディプロドクスが最大の竜脚類候補となった。
アマルガサウルス
分類:竜脚下目ディプロドクス上科ディクラエオサウルス科 全長:10m 時代:白亜紀前期 地域:南米 意味:「ラ・アマルガ地方(アルゼンチンの地域)のトカゲ」
アパトサウルスなどディプロドクス科に近縁だが白亜紀まで生き残ったディクラエオサウルス科の恐竜。ディクラエオサウル科には小型のものや首が短いものなどディプロドクス科と比べ個性的なものが多い。アマルガサウルスも首から胴体、尾にかけて脊椎の棘突起が長く伸びているという、他の竜脚類に見られない特徴を持っていた。生前は角質に覆われた棘であったという復元、軟組織によりつながった帆であったという復元、低い帆の先に短い棘が付いたような復元があり、意見が分かれている。
ニジェールサウルス
分類:竜脚下目ディプロドクス上科レッバキサウルス科 全長:13m 時代:白亜紀前期 地域:アフリカ 意味:「ニジェールのトカゲ」
こちらのレッバキサウルス科も白亜紀まで生き残った。ニジェールサウルスもジュラ紀のディプロドクス類と違って体が小さく首もやや短めだったが、最大の特徴は口にあった。真一文字に左右に広がった口には小さな歯が予備を含め500本も並んでいた。これで広い範囲の植物を効率良く刈り取ったと考えられる。
ブラキオサウルス
分類:竜脚下目マクロナリア・ブラキオサウルス科 全長:25m 時代:ジュラ紀後期 地域:北米、タンザニア 意味:「腕トカゲ」
白亜紀に栄える竜脚類の特徴を持ち始めた竜脚類。他の竜脚類と異なり前肢が後肢より長く、背中が傾斜している。これは同じ地域の竜脚類より高いところの葉を食べることで食糧争いを避けるための適応と言えるが、首自体が上向きであったことには近年異論が唱えられ、首はやや下げ気味の復元が増えた。額に大きく出っ張った鼻も印象的。
タンバティタニス
分類:竜脚下目マクロナリア・ティタノサウルス上科 全長:20m前後 時代:白亜紀前期 地域:日本 意味:「丹波の巨人」
白亜紀的竜脚類であるティタノサウルス類のメンバー。兵庫県丹波市で発見され、アジアのティタノサウルス類としては頭骨が残っていることをはじめかなり保存状態が良い。
アルゼンチノサウルス
分類:竜脚下目マクロナリア・ティタノサウルス上科 全長:推定35~40m 時代:白亜紀後期 地域:アルゼンチン 意味:「アルゼンチンのトカゲ」
史上最大の竜脚類の有力な候補。四肢と胴体の一部しか見つかっていないが非常に大きくがっしりとしており、推定100t前後と知られている竜脚類のなかで最も体重の大きいものにほぼ間違いない。ティタノサウルス類は従来竜脚類がいないと考えられていた白亜紀に栄え、世界中に分布を広げた。
関連動画
関連お絵カキコ
ブラキオサウルス。従来は高々と首をもたげた復元が多かったが現在ではそのような柔軟性はなかったとされ、背筋から真っ直ぐ首につながる復元が多い。さらにこの絵では他の竜脚類のように地面と平行まで下げている。
アマルガサウルス。10mと小型で、首の棘突起が非常に長いという個性的な外見をしている。この絵では皮膜を張った帆としている。
関連商品
ブロントサウルスと呼ばれていた頃から盛んにグッズが作られていた人気恐竜の一つである。
関連項目
- 恐竜
- ブロントサウルス
- 竜脚形類をモチーフとするキャラクター
- セイスモサウルス[セイスモサウルス]、ブラキオス[ブラキオサウルス]、ウルトラザウルス[ウルトラサウロス](ZOIDS)
- ブラキモン、アルティメットブラキモン[ともにブラキオサウルス](デジタルモンスター)
- メガニウム[カマラサウルス?]、トロピウス、ディアルガ[ティタノサウルス類?]、アマルス、アマルルガ[アマルガサウルス](ポケットモンスター)
- ラオシャンロン(モンスターハンター)
- ブラキオレイドス[ブラキオサウルス]、竜脚獣ブラキオン[ブラキオサウルス]、エヴォルダー・エリアス[アンフィコエリアス]、エヴォルダー・ウルカノドン[ヴルカノドン]、ジュラック・ブラキス[ブラキオサウルス]、ジュラック・タイタン[ティタノサウルス?]、ジュラック・グアイバ[グアイバサウルス](遊戯王)
- ブラキオレイドス(ファイナルファンタジー)
- 「最後の兵力」の一味[マメンチサウルス]、自称アダムの生まれ変わり[アマルガサウルス]、グラバーの刺客[ニジェールサウルス?](ジャバウォッキー)
- キングブラキオン、爆竜ブラキオサウルス、獣電竜ブラギガス[ともにブラキオサウルス](スーパー戦隊シリーズ)
- 動物の一覧
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