魔術とは、意志に従って変化を起こす科学であり業である
(Magick is the science and art of causing change to occur in conformity with will.)
汝の欲することを為せ、それが汝の法とならん
(Do what thou wilt shall be the whole of the Law.)愛は法なり、意志の下の愛こそが
(Love is the law, love under will.)アレイスター・クロウリー
『Magick in Theory and Practice』『Liber AL vel Legis』
※新約18巻,新約22巻にて引用あり
アレイスター=クロウリーとは、ライトノベル『とある魔術の禁書目録』の登場人物である。
モデルは19世紀~20世紀にかけて活躍した同名の魔術師、アレイスター・クロウリー(本名:エドワード・アレクサンダー・クロウリー)。
本作のアレイスター=クロウリーもこの魔術師クロウリー本人という設定で、大部分は実在のクロウリーと共通する。
概要
学園都市の創設者にして最高権力者である統括理事長。
世界最大の魔術結社〈黄金夜明〉に在籍し、後に〈銀の星〉を名乗る魔術師クロウリーその人。
聖守護天使エイワスから〈法の書〉の知識を授かった者、或いは〈テレマ〉思想の提唱者、トートタロットの作者、また(本作独自要素として)近代西洋魔術の全てを作った魔術師としても知られている。
史実において〈マスターテリオン〉=獣666を自称[1]するように、本作でも大いなる獣と等価の魔法名〈Beast666〉を名乗っている。
同業者は彼を「世界最高の魔術師」と呼ぶ。それと同時に「世界最大の邪悪」「食人鬼」「変態」とも称され[2]、良くも悪くも彼以上に有名な魔術師など存在しない。
男にも女にも子供にも老人にも聖人にも囚人にも見えるという、どこか人外離れした印象を与える人物だが、食わせ物でありながらVIP相手でも奇妙な言葉で話してくるローラ=スチュアートや、恩人であるカエル医者には人間臭い言動をとる事もある。
淡々とした口調で話すが、史実のクロウリーが「変態」と称される通り禁書でも変態ユニークな人間であったようで、蓋を開けてみればクールで思慮深いだけのイメージとは程遠かったりする。
当時の三流紙(史実でのジョン・ブル紙)をして「邪悪」と言わしめたその性質は本作でも存分に発揮され、彼が創設した科学に偽装されたテレマ僧院「学園都市」の暗部という形で悲劇を生み続けている。
魔術師クロウリー
アレイスター=クロウリー(本名:エドワード=アレクサンダー)は19世紀に生まれた。クロウリーは根本的に科学寄りの人間だが、学校や上辺だけの大人(多分史実通りダビ派の身近な存在)に嫌気が差し、徐々に万能の神を否定するために神秘の世界に没入していくようになり、〈黄金夜明〉[3]の創設者の一人であるサミュエル=リデル=マグレガー=メイザースに見出され、同結社に入団する。
『黄金夜明』内ではいわゆるメイザース派に属し、メイザースの庇護のもと魔術研究に没頭。『クリフォト』の図面を基に世界を再計算し、ウィリアム=ウィン=ウェストコットの度肝を抜くなど、早くから存在感を示していた。
仔細は後述するが、後にクロウリーは『魔術』の世界に反旗を翻す。
手始めに自身が所属する〈黄金夜明〉の内乱、史実では『ブライスロードの戦い』と呼ばれる静かなる闘争を仕組み、〈黄金夜明〉に纏わる全てを破滅に導いたのだった。
そして、ある男──史実での流出はクロウリーかイスラエル・リガルディ───の手で編纂を終えた近代西洋魔術(黄金夜明の秘儀)の流出を装い、全世界にクロウリー自身が改竄した近代西洋魔術の全てを拡散。
これによりクロウリーは近代西洋魔術のスタンダードを作ることに成功している。作中に登場する近代魔術師はクロウリーの亜流であった。
エイワスの召喚 ~ 形を変えたテレマ僧院《学園都市》
クロウリーを象徴するこのエピソードも忘れてはならない。
1904年、世界旅行中に最初の妻ローズ=ケリーの体を使い、聖守護天使エイワスを召喚。エイワスの知識を書き記した魔道書〈法の書〉を土台に、〈テレマ〉という神秘思想を提唱した。
クロウリーは人類の意識をイシス、オシリス、ホルスの3つの時代(アイオーン)に切り分けている。
彼の持論によると『法の書』が完成した1904年に十字教は終焉を迎えており、今は人類が真なる目覚めを果たす〈ホルスの時代〉に移行済みらしい。
1909年、アフリカの砂漠で〈30のアエティール〉の召喚実験を開始。弟子のヴィクター=ニューバーグを連れて行われた召喚実験の最中、〈セフィロト〉に潜む悪魔「コロンゾン」を召喚し、セフィラとセフィラにわだかまる〈深淵〉を乗り越えようとした。
1920年から1923年までの間、イタリアのシチリア島にて活動[4]。シチリアに「テレマ僧院」を創設したが、史実通りたった一つのアクシデントにより閉鎖に追い込まれている。
1947年、表の歴史ではイギリスの片田舎で死亡と記録されているが、実は魔術師討伐組織にフルボッコにされ虫の息だった所をカエル医者に救われていた。
その後クロウリーは一度訪れた事もある日本へ渡り、形を変えた「テレマ僧院」である「学園都市」を設立する。イタリアはシチリア島にて散ったテレマの夢を徹底的に科学に擬態させ、現在に至る科学サイドまで幅を広げていった。
実に50年以上も魔術勢力から身を隠しながら暗躍しており、「ある人物」を誘致して活躍させるためだけに学園都市を創るなど、裏で自身の構築した「計画(プラン)」を進行中。
現在は「窓のないビル」内部にある、弱アルカリ性培養液で満たされた巨大ビーカー(生命維持装置)の中で生き長らえている。
元ネタのクロウリーとの共通点
本作のアレイスター=クロウリーはまさしくエドワード=アレクサンダー。
近代西洋を代表する魔術師でありながら、その異常な言動から「史上最悪の魔術師」「変態」「食人鬼」と呼ばれた人物である。
元ネタがバイセクシャル(ホモセ経験者)、薬物中毒者、弟子に金たかったり愛人を孕ませたり麻薬漬けにして関わった人を不幸に落としてきた人物なので、元ネタとほぼ同じ存在のこの人もろくなもんじゃないのは分かりきっている。実際、史実のエピソードが言及されたりそれを匂わせる設定もある(薬物,愛人は確定。ホモセは某巻での上条への態度が怪しい)。
クロウリー本人なのでエピソードや功績を挙げれば事欠かない。少なくとも禁書では本筋に関わる設定として以下の痕跡が触れられている(新約20巻時点)。
- 黄金夜明
初出:1巻。ウェストコット、メイザース等の天才魔術師が創設した世界最大の魔術結社。
ヘルメス学、薔薇十字団(ローゼンクロイツ)の遺伝子を下地に魔術の発展に大きく貢献し、近代西洋魔術の礎を作った。ウェイト、リガルディ、ベネットなど業界きっての凄腕の魔術師が集まったが、内紛と分裂を繰り返し衰退の一途を辿る。モデルはイギリスの魔術結社〈黄金の夜明け団〉。 - Magick系魔術
初出:7巻。詳細は下記。史実にも存在するクロウリーの魔術体系。
元ネタは魔術の自然科学基盤を整えたクロウリー流の実践儀式。その儀式内容はヨガ占星術カバラ的儀式を含有し、広義上は「意志下の行為全て」である。 - 銀の星
新約9巻でオティヌスが「銀の星を名乗るあの男」と言っているが、これは恐らく実在するクロウリーが創設したテレマ教を教義とする魔術結社〈銀の星〉の事だろう。所属メンバー、ヴィクター=ニューバーグの名も新約19巻で判明している。 - 法の書
初出:7巻。エイワスがクロウリーの妻ローズ=ケリーを使って口伝した魔道書。
難解な言語で記され解読が全く進んでいないが、〈法の書〉の術式はあまりにも強大で、使用すれば十字教が支配する今の世界が終わりを告げると伝えられている。
クロウリーは現実でも禁書でも「〈法の書〉が完成した1904年以降は、キリスト教(十字教)の支配体制が消滅したホルスの時代である」と述べている。 - テレマ(セレマ)
初出:名前は新約17巻だが、概念自体は禁書初期から。
クロウリーが提唱した思想であり宗教。聖典は〈法の書〉。ギリシャ語で「意志」を意味する。
テレマ思想では人の意識を3つの〈時代(アイオーン)〉で表す。この3つはエジプトの神の名を引用しており、十字教(キリスト教)の前の時代を〈イシスの時代〉、キリスト教が支配する時代を〈オシリスの時代〉、神に隷属する時代を終え、人間が神と化す時代を〈ホルスの時代〉という。
イエイツやメイザース等と共に〈黄金夜明〉の中心人物だったとはいえ、〈黄金〉系魔術師でもその思想を支持する者は少なかったらしい。 - テレマ僧院
初出:名前は新約17巻だが、7巻でも示唆されている。
「学園都市」はクロウリーがシチリアに創設した「テレマ僧院」の形を変えた姿であった。
本作でも少々触れられているが、実在するテレマ僧院は不慮のアクシデントで死者を出してしまい、マスコミが死亡した信者の妻から得た情報で記事を書き立て、クロウリーがムッソリーニから国外退去処分を受ける程の問題に発展し、閉鎖に追い込まれている。
本作でもクロウリーが何度か国外退去処分を受けていたらしく、恐らくだが完全に史実通りのことが起こったものと思われる。 - トート・タロット
初出:新約14巻。GD版タロットを基にクロウリーが編纂したトート式と呼ばれるタロット。問答型思考補助式人工知能(リーディングトート78)にも組み込まれている。 - クロウリーの嫁や愛人、子供
詳細はこの項目の一番下にて。
2人の娘リリス、ローラ、その母ローズが7巻と新約18巻でそれぞれ判明。 - 獣の魔法名「Beast666」
先述した通り、史実では「マスター・テリオン」と自称した。
『人間』アレイスター=クロウリー
クロウリーには迷エピソードも多い。
来日した際に大仏を見て感化され主旨変えしようとしたり、酸素吸入なしで8000mを超える『K2登山』に挑んで失敗したり、社会的には無職だったり、それだけ聞けばカリスマ性の欠片も感じさせない。
また、彼は史実だと超がつく変態であり、禁書も殆どは元ネタ通りだったりする。
性魔術に精通してたり、男性器の表現だけで3桁に達した超大作の官能小説を執筆したり、儀式場に自分の精子──自身や赤子に擬えた供物──を持ち込んで実験を始めたり、裸の銅像──ちなみにパリのオスカー・ワイルド像である───の局部を隠すための蝶飾りをズボンに身に着けてパーティーに出席したり、同僚と韻を踏んだ下ネタトークを飛ばす等、上条に言わせれば人格が破綻したド変態クソ野郎である。
性(セッ●ス)魔術で十数以上の相手と身体的関係を結び、何人も不幸に追いやり、そして最終的に親しかった者達とも離別している(原因は様々だが大半はクロウリーが最低で聞くに堪えない)。
サディストでマゾヒスト、バイセクシャル、スカトロ、薬漬け性交…etc。史実のこの男の変態性と異常性に限定して語るにせよ、この記事一つを消費しかねない勢いだろう。
中性的な美貌を持つ彼は、特に何もしてないのに女からモテた。史実ではマゾだからローズを始め経験豊富な女性を好む傾向にあったとか。しかも禁書の彼は、努力する必要がなかったから普通の恋愛に興味を持てなかったんだとか。上条「最悪だなリア充」
オカルティストとしては天才の部類だが、同時に失敗も多かった。
しかしこの変人は「成功と失敗は等価値」と捉えており、成功すれば良し、失敗しても次に繋がる何かしらの成果が得られ、反動でさらなる飛躍に繋がるという、ある種ポジティブな考え方の持ち主である。
よって仮に失敗しようが彼の作り出す流れそのものに大した変化はなく、成功と同じペースで構わず目標へ邁進することができる。この考え方は後の「計画(プラン)」にも反映されている。
ある超越者が言うには、クロウリーの日記には涙の跡が染み付いているらしい。そこに世界最高の魔術師と呼ばれながらも魔術を憎み、『魔神』とならずに『人間』であり続けた理由が隠されているようだ。
アレイスター・クロウリーの子供
アレイスター・クロウリーが十余人もの男女と肉体関係を持ったのは先述したが、その何人かの女性は〈緋色の女〉と呼ばれている。こう呼ばれる女性たちは、彼にとっての性愛パートナーであり、薬漬けやスカトロなど様々な異常性愛に応え、クロウリーの世界に堕ちて不幸になっていった。
- リリス
ローズ・ケリーとの第一子であり、禁書でも第7巻で存在が判明していた子。フルネームはニュイ=マ=アサヌール=ヘカテ=サッポー=イザベル=リリス。そんなアホみたいに長ったらしい名前をつけるほど溺愛されたこの娘の死が、学園都市が生み出される原因であった…。 - ローラ・ザザ
第二子。ローズとの子である女性。史実では幼い頃の写真も残っている。
1990年に死亡。そういえば件の7巻で同名のキャラが出てきたような…。 - アン・リア
リア・ハーシグとの間に出来た女の子。「お人形さん」という愛称で可愛がられた。しかしこの子も病死し、その6日後にリアはクロウリーとの子を流産するなど、二重の悲劇が襲った。 - アステルト・ルル・パンティア
ニネット・シャムウェイとの子、女の子。この子を無事に身ごもったからかニネットはリアに嫌われ、クロウリーによってテレマの僧院を追放されたという。 - アレイスター・アタテュルク
クロウリーの長男。ディアードレ・パトリシア・ドハーティ──彼女は別の男性と結婚しディアードレ・パトリシア・マカパインとなった───との子。クロウリーの子を生みたいと願って彼女から近寄ってきたのだが、あっさり捨てられてしまう。流石に可哀想である。
しかし、死が迫っていた晩年のクロウリーと再会(?)し、親子で旧交(?)を温めている。この親子、実はクロウリーと一番仲がいいのでは…。
以下、とある魔術の禁書目録の重大なネタバレが含まれています。 ピクシブ百科事典と記述が一部似てますが、同一編集者によるもので無断転載ではないです。書き直し大歓迎。 |
過去・目的
19世紀。
クロウリーは上辺だけは立派な偽りだらけの身近な大人を見て、大人が信仰する神すら大した事はないと捉え、自らの力で真理を解き明かそうと思った。これが魔術師クロウリーのスタート地点であった。
魔術結社〈黄金夜明〉創設者の一人、サミュエル=リデル=マグレガー=メイザースに見出され、新人魔術師として迎え入れられた。
そして数多の霊装や術式を開発し、後世にまで残る偉業を打ち立てる事になる。
ブライスロードの戦い
〈黄金〉の分裂と衰退の直接的な原因となった魔術師同士の派閥争い。
史実で起こった争いだが経緯と内容が異なり、禁書では「魔術・運命を憎んだクロウリーが黄金を破滅させる為に仕組んだ内乱」という扱いになっている。メイザースやウェストコットなどをクロウリーが始末しているし、当然ながら人物の立ち位置も内情も結構オリジナル要素が入っている。
クロウリーはこの戦いで『先代の幻想殺し』である究極の追儺霊装『ブライスロードの秘宝』を使用。メイザースとウェストコットを始末したが、戦闘の最中に秘宝は完全に破壊されている。
(後の時代、同じ能力が上条当麻の右腕に宿る事を予期したクロウリーは、次代の幻想殺しの所持者である上条を活躍させるためだけに学園都市を作った)
リリスの死
クロウリーが〈ブライスロードの戦い〉を引き起こしたのは、自身の娘「リリス」の死に起因する。
クロウリーが師と仰ぎ、組織内で唯一利害なく接したアラン=ベネットの占術で「クロウリーの娘の死」が予見されていた。
リリスを死に追いやったのは、『位相』同士の衝突から生じる運命だった。
とあるシリーズの魔術は「世界に折り重なるように存在する異世界」の法則を、強引に現世に適用して超常現象を起こす方法である。この異世界は「位相」と呼ばれ、天国や地獄、冥府やニライカナイなど宗教・神話の概念が律する世界となっている。
魔術は世界に存在する等価交換の原則を騙して一の出費で十の成果を得る技術だが、実は偏った集まりが「位相同士の衝突」を引き起こし、「火花・飛沫(運命)」となって人に押し寄せていた。
ベネットいわく「運気とは奇跡になり損ねた火花(飛沫)」。
コイントスの表裏、料理の順番、結婚と離婚、出会いと別れ、生と死など、位相同士の軋轢が生む飛沫は現世に薄く広く影響し、運命として確実に顕れる。
つまり、この世界中の不幸な出来事に偶発的なものはなく、全て位相の衝突から発生する「運命」が人間に押し寄せたから起こる。
禁書における魔術理論では悪戯に位相を束ね、掴み、衝突を誘う。多かれ少なかれ魔術は世界に「火花」を撒き散らし、人を運気の奴隷とさせていたのである。
だからクロウリーは魔術を、位相を、運命を憎む事になる。アランとの会話後、位相衝突の火花を知りながら黙認していた黄金を壊滅させるためにも〈ブライスロードの戦い〉と呼ばれる内乱を仕組んだ。
(因みに「ブライスロードの秘宝」は不幸払いの機能を有し、黄金はその庇護下にある)
黄金時代より後、クロウリーは最初の妻・ローズと結婚。予見通りローズとの間に子供が生まれた。
(1904年に魔術的位相に依らない物理世界に佇む高次存在、つまり聖守護天使エイワスとの接触を果たし、ローズを霊媒とするエイワスの口伝を基に革新的な魔道書〈法の書〉を執筆した)
クロウリーはリリスの死の運命を回避する為に尽力したが、結局は娘の命を救えず、あまつさえ死に際に駆けつける事すら出来なかった。
その後の彼の人生は転落が続く。ありとあらゆる魔術師を敵に回し、苛烈で異常な言動を取り続け、数回の国外退去処分を受けた。
公式には1947年にイギリスの片田舎で死亡したと記録されているが、実際には魔術師討伐組織に追われて瀕死の状態だったところをカエル顔の医者に救われていた。その後、カエル顔の医者の紹介もあって過去に一度訪れた事もある日本で形を変えたテレマの僧院「学園都市」を創設し、現在に至る。
再起の地に日本を選んだ理由は、鎌倉で大仏を見た時の衝撃が決め手となった。候補地のパリやシチリアに飽きてたり、戦後復興中の日本でやりやすかったり理由は色々あるようだが。そんな下らない理由で…と思う人もいるかも知れないが、これも元ネタを踏襲している。
失敗の呪い
黄金を壊滅させたクロウリーは、黄金に「ある呪い」をかけていた。
呪詛の内容は「何をやっても成功できず失敗してしまう」というもの。例えば後年には黄金の再興を掲げた者も現れたが目的は叶わず、失意と絶望の底に沈んでいる。上条たちの時代にも黄金系を名乗る結社はいくつかが存続しているが、いわく先細りを繰り返しかつての面影など見る影もないらしい。
しかし、呪詛の力は最終的に黄金であるクロウリーにも影響を及ぼしてしまう。黄金に反旗を翻す直前、師であるアランの忠告で自身も呪いを背負う事になるのは理解していた。
そして忠告通り、最後の最後に劇毒たる呪いの刃が突き立てられたが、それでも娘の命を奪った「運命」だけは覆らなかったのである。
この呪いが原因で、現代まで続くクロウリーの人生には常に「失敗」が付き纏った。
クロウリーの目的
彼の目的は「全ての魔術の殲滅」。
より正確にはわだかまる位相を取り除き、まっさらな世界を取り戻すこと。救う対象はリリスだけでなく、世界中の偶発的に発生した悲劇を前に「仕方ない」と涙し、諦める者も含まれる。
「奇跡や神に頼らない努力が成果となる世界」「火花による運命の偏りから解放された世界」がクロウリーの理想であり、その実現こそが父親としての務めだと思っている。
計画(プラン)
クロウリーは魔術師としても人間としても、様々な評価を受けている。
全盛期の彼の言動は苛烈で異常極まりない、支離滅裂とさえ言われる事も多かった。しかし、彼の人生に一つの単語を組み込む事で、混沌とした人生を劇的に整理する事が可能となる。
そのクロウリーの中心となる単語こそが「計画(プラン)」。
彼はある一点を見据え、約100年もの時を懸けて事態を遂行しており、学園都市を作るに至った。
史実のクロウリーを代表する思想に以下のようなものがある。
- 汝の欲する所を為せ、それが汝の法(テレマ)とならん
テレマ教の中心概念であり、恐らく最も有名な言葉。「目的を達成出来るために必要であれば躊躇なく手を伸ばせ。例えそれが万人から負や悪と位置づけられた力であっても」という思想。 - 全ての男女は星である
「全ての男と女は世界を構成する歯車だ。個々の人があるべき振る舞いを自覚して全うする場合に限り、世界に意味のないものなど無い」という思想。
ただし、それらは真の意志=ホルスの時代に目覚めてないから、錆びたり詰まったりしている。 - 愛は法(テレマ)だ、それが意志の力で支配される限り
テレマ教の中心概念。元ネタでは愛すなわちアガペーは法すなわちテレマの下行われる行為であり、それらは93の神秘的数価で表される。
本作では、これらの思想は計画の根底を為すものとされる。
先述通りクロウリー自身にかけられた「呪い」のせいで失敗を余儀なくされているが、当の本人は躓いても失敗を糧にする事で、いずれは壁を突き破れると信じている。
よってクロウリーは成功も失敗も問わない。それが彼の意志=テレマに基づく「計画」の本質とされる。
計画(プラン)
並列の計画とも称され、例えどれかが失敗しても最終的に同じ到達点に辿り着く。壁があれば破壊し、それが無理なら迂回させ、玉砕すればその欠片を拾い集めて積み重ねる事により次なる成功を目指す。つまりこれは必ず失敗することを前提とした理論である。あまりにも奇抜、行き当たりばったりすぎて常人にはその行いの全てを理解することはできない。
ある一つの計画の"メイン"に据えられているのは一方通行 。勿論超能力開発もプランの一角を担っており、当初は「レベル5の先にあるもの」「神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの」とされ、それこそが概念上だけ存在しているレベル6(絶対能力)かと思われていた。
しかし、レベル6には原作13巻時点で、やり方次第では既に達成出来る条件が成立したらしく、SYSTEMは「絶対能力の、その先にあるもの」であることが判明した。
プランを想定範囲内で掻き回す"イレギュラー"として招かれたのが上条当麻=幻想殺しである。実際に彼は学園都市の敵を次々に破っているほか、一方通行の精神にも大きく影響を与えた。
むしろ、「今代の幻想殺し」が上条の右手に宿っているからこそ、学園都市と呼ばれる形になったらしい。あまりにも学園都市が隙だらけで悲劇が蔓延っているのも、上条あるいは上条の内に潜む「何か」の成長を促すために上条を活躍させるという目的があった。
だが、プランの想定とは異なる形で生き残ったのが浜面仕上である。彼は無能力者であるが故に、プランに組み込むことは出来ず、利用も不可能な存在となった。これにより浜面仕上は"真のイレギュラー"として、学園都市に命を狙われる結果となる。
また、右方のフィアンマが術式「聖なる右」を完全なものに仕上げるために起こした事件や、グレムリンなどの暗躍などで徐々にプランの進行に問題が起きはじめていたようで、レイヴィニア=バードウェイなどの一部キャラにその点を指摘されていた。
主な使用魔術・能力
魔術師としての実力は高く、新約聖書に登場してもおかしくない。
実際に魔術を極めて神となった『魔神』から、魔術の道を正しく進んでいれば『魔神』になっていたと認められる程のとんでもない実力者なのだが、当人は魔術を嫌っているので『魔神』になる気は全くない。それどころかあえて『魔神』にならぬように自分を制御しているらしい。
『魔神』ではないが、彼もまた「世界の法則の頂点」に届いた者の一人であった。カバラの〈セフィロト〉の概念で一定以上の上部組織が「言葉で説明できない」のと同じように、「0と1では説明できない高次的な存在」と化しており、文字通り強さの次元が違う。
(シークレットチーフの一学説〈エイワス〉の『窓口』であるため存在自体が非常に曖昧になっている。この状態はシークレットチーフの窓口「アンナ=シュプレンゲル」と同質との事)
Magick系魔術
初出:7巻
史実でも存在するクロウリーの〈テレマ〉における魔術。7巻及び新約22巻でも説明されている通りクロウリーが基礎理論を構築した魔術体系で、エイワスにより〈法の書〉の知識を授かった1904年から始まる新時代(ホルスの時代)ではこの体系が支配すると言われている。
イシスの時代やオシリスの時代などの古い魔術とは明確に区別され、今なおMagick系統を使用している者も存在しており、専門の調査機関も存在する。
「魔術とは意志に応じて変化する科学にして業(技芸)である」。
元ネタではヨガ、性魔術、占星術など非日常的なテレマ的行為や日常的な意志下の行為のことである。史実のクロウリーの魔術定義だが、新約22巻冒頭でも引用されており、禁書の科学(学園都市=形を変えたテレマ僧院)もこれが元ネタだと思われる。
作中では「対魔術式駆動鎧」の中身がMagick系魔術の色が濃く反映され、さらにコロンゾンがこの体系に分類される魔術を使用している。
元ネタの方だとケネス・グラントが11に様々な含みを持たせており、それはテレマに於いて大いなる業(男女の結合=性魔術)と関係するものとされる。
類感魔術
フレイザーが設定した魔術の根本法則である『感染』と『類感』の片割れ。
類感は「形の似た物は相互に影響を及ぼし合う」という法則。
人形を特定の手順で破壊して憎い相手の体を破壊したり(丑の刻参り)、教会にある神の子が処刑された十字架の模倣品が本物と同じような神性を獲得したりする(霊装)。
つまり、イメージ上の同一性を利用することによって不完全ながらも現実を書き換える力である。
禁書の実践的な魔術師の間では「偶像崇拝の理論」として浸透している。クロウリー並の魔術師は類感魔術で相手の使用する霊装を再現できるらしい。
外伝(ステイルSS、天草式SS)等でも詳しく解説されていたりする。
霊的蹴たぐり
アラン=ベネットが得意とした類感魔術の応用法。
平たく言えば「相手に伝えるイメージに本物の価値を与え、そのダメージを直接叩き込む技」。
類感で相手にイメージさせる時に必要となるのが「パントマイム」である。
パントマイムに本物の価値を付加して相手の認識に直接切り込むため、術者は必然的にそれをイメージさせるだけの行動を示さなくてはならない。
クロウリーも色々と規格外な術者なので重量感、質量、光沢、切れ味、硬度など様々な性質を正確無比に連想させる超一流のパントマイム技術を持ち合わせている。
傍目から見ると「ごっこ遊び」のようなシュールな光景だが、リンクした者にはイメージの形が見えるし現象として反映される。剣なら斬れる、銃なら撃たれる、まさに本物と同価値の体験をすることになる。
効果は複数に及ぶが、標的として定めた者や生物ベースの相手以外には現象として反映されない。
クロウリーは読者がイメージし辛い架空の武器・兵器も再現できるようだ。
新約19巻では航空支援式のビッグバン爆弾(宇宙全体・世界を一掃できる超絶火力の架空の爆弾)をパントマイムで再現していた。
(それでも再現されるのは「世界を一掃できる程の威力」と「世界全体に及ぶ超広大な範囲」だけであって、選ばれた対象にしか物理的効果はない)
旧22巻のフィアンマ戦ではパントマイムから「杖」をイメージさせている。
衝撃の杖(ブラスティングロッド)
「アレイスターが純粋な尊敬から師と仰ぐ事を決めた、古い魔術師の伝説にある一本の杖」
アラン=ベネットを象徴するねじくれた銀の杖。
しかし、ベネットが持っていた杖は、実は「霊的蹴たぐりで再現されたイメージ」だった。
効果は「魔術の効果を対象が思い描く10倍に増幅させる」というもの。
しかも厄介な事に「10倍後のイメージも基準に含まれる」。
例えば、10倍をイメージして身構えるとそれを基準に「100倍(10倍の10倍)」に膨れ上がってしまう。
つまり増幅効果は天井知らず。1000倍、10000倍、100000倍…と倍々ゲーム的に続いていく事になる。
使い方次第で魔神にも対抗できる可能性を秘めた、とんでもないチート魔術である。
標的の抱くイメージに左右されるため、他の霊的蹴たぐりとの相性も良い。
新約19巻では「ビッグバン爆弾の10倍(宇宙を10回は作れる力)」という凄まじい威力を発揮した。
ベネットは無用な嫉妬を避けるために「杖の先で標的を小突く事により、体内で練った魔力を暴走させ相手の意識を奪う手品」と周囲に真実を伏せて伝えていたらしい。
アブラ・クアタブラ
20世紀最高の魔術師と呼ばれるクロウリーには、金字塔とされる有名な魔術が存在する。
アブラ・クアタブラは浸透しすぎてオカルト信奉者を小馬鹿にする意味合いでも使用されている言葉だが、クロウリーはこの魔術を体系化し[5]、広めた者の一人でもあった。
※テレマのアブラハダブラと原義のアブラカダブラは違う。テレマでは世界の神秘的公式でありそれは大宇宙と小宇宙の結合、薔薇十字、男と女、円と四角形…、ある種の即物的な面では性魔術の儀式のことである。
効果の一つは「呪詛の湾曲」。
いわく、この世界には指向性を持たない恨み・妬みが渦巻いているのだという。そのような呪詛をねじまげ、ひねり、一点に集めるだけである。術者は一切の魔力を使わない点がメリットとして挙がる。
元々アブラ・クアタブラは護符に込められた防御用、回復用としてのおまじないだったが、少し応用するだけで手も汚さずに相手を遠隔地から呪い殺す、攻撃的な呪術にもなる。
術名の意味するところは「汝の死に雷光を与えよ」。
新約17巻では、呪詛の護符が組み込まれた対魔術式駆動鎧に御坂美琴が接触、そのままクロウリーの呪殺対象となって危うく死にかけた。
電撃使い(エレクトロマスター)に向ける呪術としては皮肉が効いているかもしれない。
血の供犠 - ブラッドサイン
では、これより知らしめよう
世界最大の魔術結社『黄金』を残らず殺し尽くした、血の供犠の真髄を。
あるいはこう言い換えておこうか。ブラッドサインと。
※ブラッドサインと言い換えられてるが、別に鎌池作品最強クラスの「あの御方」が既存セルフコラボ作品の如く禁書勢を相手に暴れまくるわけではない。
かつてクロウリーは第一次世界大戦を予見しておきながら、自らの目的の為に世界が血で染まる事を受け入れた。その思想が「血の供犠」と呼ばれる生贄の儀式だった。
そして、血の供犠がもたらすのは魔力の超伝導化。後述の「ifのクロウリー」がイギリス連邦国に大規模な戦闘を仕掛け、殺される度に力(魔力)は最適化されていく。
惑星全土を飲み込む血の闘争はあくまで力の最大効率化の布石。デフラグ後のクロウリーは聖人の音速機動にも素で対応できる程の強大な力を手にしていた。聖人を雑魚扱いとは流石です。
元ネタはテレマ教における思想「血の供犠」。
〈新しき永劫(アイオーン)の秘儀参入〉という最大限の重要性を有する〈魔術的操作〉がある。言葉を発することが必要になる時は、〈惑星〉全体が血に侵されねばならない。人間が〈テレマの法〉を容認する準備が完了するためには、その前に〈大戦争〉が行われねばならない。この〈血の供犠〉こそ、〈戴冠した征服児ホルス〉が〈永劫(アイオーン)の主〉として〈声〉を発する〈世界=儀式〉の臨界点である。
~アレイスター・クロウリー『Magick in Theory and Practice』~
ちなみにこのド変態クソ野郎の元となったド変態バイセクシャル魔術師は、世界戦争の「裏」に地味に名前が出てくる。例えば「言葉の魔術師」ウィンストン・チャーチルの「Vサイン」。あれはこの人が提唱した説もあるくらいだ。
飛沫
魔術で発生する位相の「火花(飛沫)」が相手に当たるよう調整できるらしい。火花の不幸は物理的な現象として顕れ、上条は肋骨を抉られる衝撃と共に真横に吹き飛んだ。
また、新約19巻でクロウリーは自分の魔術で発生した飛沫をわざわざ自分に向け、世界に不幸が蔓延ることを防いでいた。
「100年早く完成していれば罪なき赤子に優しさを見せてやれたかもしれなかった」という発言から、21世紀前後に開発された術式と思われる。
原型制御(アーキタイプコントローラ)
人間の普遍的な共通認識を操作する、つまりパラダイムシフトを起こせる反則的な技術。
民族に共通する価値観、死生観、宗教観、罪悪の概念など、いわゆる典型(ステレオタイプ)を醸成する根本的な「原型(アーキタイプ)」を生み出したり破壊する事ができるらしい。
クロウリーはこの技術を駆使し、かつてのテレマ僧院を再現した「学園都市」やそこで開発された「超能力」を基に、「魔術」に対する新たな価値観「科学」を創出。人類全体を科学信仰に巻き込んでパラダイムシフトを起こした。
本来ならば統一された理論で説明可能だった世界は、彼の憎悪によって「魔術」と「科学」に切り分けられる事となる。
以下、新約とある魔術の禁書目録の重大なネタバレが含まれています。 ピクシブ百科事典と記述が一部似てますが、同一編集者によるもので無断転載ではないです。書き直し大歓迎。 |
新約以降のクロウリー
旧約22巻のラストで「右方のフィアンマ」を打ち負かした後、プランに許容不可能な誤差が発生して迂闊に動けなかったため、オティヌス及びグレムリンに完全に遅れを取ってしまう。そのため、オティヌスによって世界が消滅を迎えた際にも特に動きは見られなかった。
新約10巻では本来存在しないはずの別位相「隠世」へ繋がる数値の解析に成功し、単身で隠世へと乗り込み『魔神』との接触に成功する。しかし会話の際に魔神「僧正」の挑発に乗ってしまい、魔神と戦闘になる。体の三分の一を焼き焦がされながらも隠世を破壊し、魔神を現世に引きずり出した。
魔神の安易な挑発に乗ったことで一部で格の低下が危ぶまれていたが、実はその行為にも「魔神に共通するパラメーターを入手する」という意味があった。新約12巻では対魔術式駆動鎧を木原脳幹に使わせ、秘密裏に魔神「ゾンビ」を撃破し、そのゾンビ少女が開発した『鏡合わせの分割』を改竄。
魔神が現世に入る際に偽物の『鏡合わせの分割』を適用し、可殺状態になる程に魔神を弱体化させた。そして木原脳幹によって磔にされたゾンビ少女の亡骸を魔神に見せ、宣戦布告する。
新約13巻では宇宙に放り出されアローヘッド彗星を取り込んで地球に帰還しようとした魔神「僧正」を、対魔術式駆動鎧を装備した木原脳幹に撃破させた。クロウリーは僧正にこのような伝言を残した。
『覚えているか。……世界をより良くしたい、人類を余さず救ってみたい。そんな幼稚な歯車ですり潰されるようにして運命論に命を奪われた、私の娘の名を』
新約14巻で、木原脳幹が上里翔流との戦闘で瀕死の重傷を負いコールドスリープが必要になった際、彼は慟哭し初めて自分のプランを呪っている。
新約15巻では対魔術式駆動鎧を入手した御坂美琴を脅威と認識し、新約17巻で「アブラ・クアタブラ」を使用して地球に飛び交うあらゆる呪詛(呪い・妬み・恨み)を美琴に向け、呪殺しようとした。
「エレメンタル事変」が終局に向かった後、元上里勢力でローラ=スチュアート直属のスパイでもある烏丸府蘭の確保に動いたが、土御門元春によって銃で撃たれた(この程度では死ななかったようだが)。
新約18巻で遂にクロウリーの目的と過去が判明。また、その過去を上条当麻も幻視する事となる。
そして「窓のないビル」に乗り込んだ上条当麻と交戦。聖守護天使エイワスを理論値そのままの状態で出現させ、上条当麻の「奥底に潜む存在」を握りつぶすなど戦闘で圧倒し続ける。
しかし土御門や府蘭、オティヌス、インデックス、美琴、食蜂などの外側からの干渉により、エイワスが存在することができなくなった為、クロウリーと上条の一騎打ちにもつれ込んだ。
クロウリーの過去を見た上条は、クロウリーの為すことを『天国』という位相にいるリリスを否定する行為と捉えていた。クロウリーは魔術・位相を憎むあまり、いつしかリリスの尊厳を否定しかねない立場に回っていたことを指摘され「まやかし」だと言い放った。
その後
上条に敗れたクロウリーに直接トドメを刺したのは、ローラ=スチュアートである。
史実のクロウリーには2人目の娘「ローラ=ザザ」が存在し、名前的に禁書のローラ=スチュアートはクロウリーの娘ではないかと予想されていた。
コロンゾン:
ああ、ああ。哀れなるかなローラ。狂気の破綻者と因果の糸で連なる二人目の娘よ。普段はあれだけ悪態をつきていたのに、最後は泣きながらこう懇願していたぞ。
お父さん、お父さん、助けてお父さん、ってなぁ!!!!!!
コロンゾンは1909年にクロウリーが召喚した、10番目の領域に潜む「悪魔」だが、実際にはクロウリーが召喚する前にメイザースと「クロウリーを破滅に導け」という契約を交わしていた。
クロウリーの方も10番目の領域の主が危険な者だと理解していたので、あらかじめ弟子のヴィクター=ニューバーグをセーフティとして付き添わせ、未然に防いでいる。
だがメイザースの死後もコロンゾンは契約に束縛され続けた。
そこでクロウリーの第二子「ローラ」の体に憑依して「ローラ=スチュアート」と名乗り、クロウリーを殺害する為に暗躍していたようだ。
コロンゾンが「ダモクレスの剣」をクロウリーに突き立て、契約を完遂したかと思われたが…。
10億8309万2867通りの可能性
クロウリーはその身に10億8309万2867人もの自分の可能性を重ね合わせ、封じ込めていた。
第三次世界大戦の終局、右方のフィアンマを制裁したのは「クロウリーの可能性の一つ」である。
この時のクロウリーは確かに学園都市にいる筈だったが、「0と1で表現できない」と同次元に複数の自分が存在できることを仄めかしていた。
実際には10億以上もの途方もない分岐先を秘めていたことが判明。男性・女性・老人・子供・聖人・罪人など多様に重なって見えたどれもがクロウリー本人であった。
中には魔術を極めたクロウリーもいれば、魔術に全く関わらなかったクロウリーもいる。…それだけならまだしも、「食肉植物のような大口を幾つも開けた大型の恐竜」や「触手付きのタコのような生物」など異形のクロウリーも多く、人間の形を保っている方が珍しい。
「私の魂は極彩に輝いていた」
「元々一つの体にあらゆる可能性を封じ込めていた、という訳だな。とはいえ、世界に私が複数いてもかち合うばかりでおおよそ協力態勢など期待できぬと判断してな、そこから先は自縄自縛で私は全ての私を重ねて一つの座標に留めるしかなくなった。つまりいつも通り考えなしの大後悔という訳さ」
ローラ(コロンゾン)は確かにクロウリーを殺したが、それは可能性の一つに過ぎない。クロウリーの内一人が死んだことで、他の全ての可能性も解き放たれた。
「「「『計画』はまた失敗だ。形を変えた僧院、学園都市は君にくれてやる」」」
「「「では代わりに、君のオモチャを私がもらうとしようか。イギリス連邦に属する全ての国家と……本丸の連合王国そのものをな」」」
言葉通り、数多くのクロウリー集団が大挙してイギリス連合の制圧を開始した。
アレイスター=クロウリー(美少女)
新約18巻ラストで、その可能性の一つである美少女クロウリーが上条当麻と接触している。
知識は男を引き継いでる様だが女の体は未知数らしく、新約19巻では上条に耐久性テストと称して性行為を迫ったりしている(しかもその後も性行為を要求)。
極めつけに上条と一緒にピンクなホテルに入っていた。もうやだこの変態親父。
変態具合はともかく、クロウリーなので色々凄いのは確かなようだ。具体的には、
- 10億人以上の自分をアイテム感覚で5人ほど消費する
- コロンゾンの制御下にある烏丸府蘭を、豊富な知識と圧倒的な力で完全に救う
- 「霊的蹴たぐり」と「衝撃の杖」の増幅効果で「軽く見積もって宇宙を10回作れるほどの力」を使う
- 計算ずくでウラシマ効果を起こし、コロンゾンを罠に嵌めて「新天地」に追放(セルフ理想送り)
などラスボス候補、あるいは超越者としての実力を存分に発揮している。
新約19巻の試し読み範囲で「変態美少女あれいすたん」と化し、上条を振り回し続ける統括理事長。強キャラ感とか完全に吹き飛んだと思われていたが、根はやはり世界最高峰の魔術師だったのだ。
再会
新約19巻ではリリスが復活.
誰からも理解されず、約1世紀も失敗と苦難の道のりを歩み、愚直なまでに自己を貫き通したクロウリー。そんな彼に対するエイワスからの、流した血と汗と涙の重さに見合うだけの祝福であった。
→リリス(とある魔術の禁書目録)
自身の娘・リリスとの再会。感動の対面になるかと思われたが、まず最初にぶん殴られた。1世紀越しの感動の再会が台無しである。
しかしクロウリー自身もリリスとの接触を心のどこかで躊躇っていた。だが、エイワスとミナ=メイザースから「幸せになるための努力を常に怠るな」「幸せになることから脅えて逃げるな」という言葉を受け取り、静かに眠るリリスを腕の中で抱いて再び父親(?)に戻るのだった。
新約19巻の最後の挿絵には、リリスを腕の中に抱えた彼(?)の姿があった。
イギリス突入
終章では一方通行(アクセラレータ)と浜面仕上と交渉し、条件付きでひとまず行動を共にする事となる。
交渉内容については二人の記事も参照。
さらにコロンゾンに乗っ取られそうになった学園都市にウィルスをばら撒き、学園都市が有する次世代兵器も最先端知識も使えないように機能停止・凍結状態に追い込む。
そして、もうひとりの娘は返して貰うと宣戦布告。上条当麻、一方通行(アクセラレータ)、浜面仕上、インデックス、オティヌス、滝壺理后、烏丸府蘭と共にイギリスへと殴り込むために行動を開始した。
新約20巻では前巻のある行為(魔術)でコロンゾンを一時的に封じていた事も判明。クロウリーズ・ハザードと呼ばれる10億以上ものifクロウリーの侵攻で混乱中にあったイギリスに侵入する。
クロウリーを襲撃した神裂火織、騎士団長、神裂に憑依していたクリファパズル545(コロンゾン製の人造悪魔)を難なく倒した。しかし人と人との不和、悪意を力に変換するイシス=デメーテルを宿したオルソラ=アクィナスに敗戦を喫し、上条に後を託す形に。
黄金夜明vs学園都市《テレマ》
その後コロンゾンの操作を目論見、上条と共にコロンゾンを使役していたサミュエル=リデル=マグレガー=メイザースの墓に向かう。だが埋葬されていたのはメイザースの遺体ではなく、クロウリー達がその事を確認した直後にどのような理屈なのか、死亡したはずのメイザースが姿を現した。
メイザースだけではない。ウィリアム=ウィン=ウェストコット、ポール=フォスター=ケイス、アーサー=エドワード=ウェイト、ダイアン=フォーチュン、イスラエル=リガルディ、ロバート=ウィリアム=フェルキン、エドワード=ベリッジ、アニー=エリザベス=フレデリカ=ホーニマン、ジョン=ウィリアム=ブロディ=イネスなど、明らかに世界全体がおかしく歪んで『黄金夜明』に所属していた高名な魔術師たちが続々と登場する。
理解不可能な現実に怯えるクロウリーに向けて「ブライスロードの戦い」の再来が告げられた。
もっともこの『黄金夜明』メンバー達は、大悪魔コロンゾンにより遺体の防衛装置としてタロットで再現された存在で、本物の遺体は密かに別の場所へと運び込まれていた。
いかに正体を突き詰めたとはいえ、実力も性質も過去の本物と同等、それぞれが伝説を作り、場合によっては「魔神」の力をも組み込んでしまえる傑物にクロウリーたちは苦戦する。
メイザースの力はオリジナルと同様クロウリーを上回る。結局、自身が積み重ねた科学技術だけではメイザースに勝てないと判断し、「マスターセリオンとベイバロンの記号を冠した〈緋色〉の魔術」を発動させたが、『蝿の王(ベルゼビュート)』で迎撃されて別の場所に吹き飛ばされてしまう。
流れ着いた先はかつての妻ローズ=ケリーと結婚式を挙げたスコットランド方面の教会、そこに居合わせたのはオルソラ=アクィナスだった。
その場でオルソラに手当てして貰い、彼女との会話の中で魔術師クロウリーの深層たる部分を改めて見つめ直す機会を得る。
そして彼は一冊の本、西洋魔術師の根源たる「聖書」を手に取りメイザースとの決戦に向かう。
「運命に抗っても、ブライスロードの戦いを制しても、結局私には永遠に手に入らなかったものだ。故に貴様が許せない、どうあっても。どうして踏み躙れた、何があったら最愛の命を二の次になどできた!? メぇイザぁぁぁース!!」
聖書の魔術、即興での四大天使(高次元存在)4体の召喚、その気になれば世界を滅ぼせる程の十字教魔術のぶつけ合い。聖書の魔術を使うメイザースに対し、クロウリーはあくまで聖書の外周をなぞるような魔術で対応していく。
そして戦闘は最後の段階へと突入。クロウリーはどの文献にも記されてない、おそらくは史実の彼すら到達し得なかったであろう神秘の世界の「真理」に辿り着く。
クロウリーの体に自然と付けられた「聖痕(スティグマ)」の爆発的な力の解放により、自らの力を拡散させ、メイザースはその余波で地脈・龍脈からの力の供給を断ち切られ、頂上決戦は終局へと向かう。魔術の伝説『黄金夜明』を体現した者達は、それぞれ思い思いに納得して消滅した。
しかし全てが終わった後、クロウリーはあの悪魔を前に「致命的な失敗」をしてしまった……。
そう、コロンゾンはローラの肉体を乗っ取ってなどいなかったのである。
悪魔は「囁く者」。
甘言苦言問わず、クロウリーはまず悪魔の「肉の器」の正体を疑って然るべきだった。
新約22巻
コロンゾンに致命傷を負わされてしまい、クロウリーを嘲笑うコロンゾンに憤って挑んだ上条も「Magick系魔術」で敗北(肉塊と化したが彼の魔術で右腕以外回復)。しかし美琴と食蜂の好判断もあり無事逃げ果せてイギリス王室派に保護された。
実体を持つ以上、コロンゾンには幻想殺しも機能せず、他に殺す方法も存在しない。だがクロウリーはただ一つ、333の悪魔を消滅させる方法がある事に気付いた。
エイワスは何故リリスの魂を保護し、あのタイミングで剥き出しの魂のまま現世に再誕させたのか。現世に生きる者全てが背負う「原罪」が取り除かれた究極の善性、魂の所属すら逆転した赤子の命を消費して悪魔を消滅させる事こそ、エイワスが彼女とクロウリーに課した役割だからではないのか。
ミナ達と共に現れたリリスはクロウリーが導き出した答えを肯定し、クロウリーは一人の親として感情を爆発させ、子供のように駄々をこねて反発する。
上条
「分かんねぇやつだなっ!!」
「それならリリスを使わなくてもコロンゾンを倒せるって証明するぞ!! そうしなくちゃお前の大切な赤ん坊を守れないだろうがッッッ!!!!!!」
インデックス、御坂美琴、オティヌス、エリザード、ミナ=メイザース、木原脳幹。彼の友人も傷付けてきた者も上条の言葉に同調し、各々クロウリーに力を貸す旨を宣言。クロウリーも顔を上げ、再びコロンゾンに立ち向かう意志を示した。
クイーンブリタニア号におけるコロンゾンとの決戦では、『魔神』オティヌスのように存在を矮小化させる方法を選択。それも最初は通じなかったが、別途にクロウリーに好機をもたらす者がいた。
古の『生命の樹(セフィロト)』とも『邪悪の樹(クリフォト)』とも異なる『第三の樹』、後世の人の魂をも網羅した『人造の樹(クロノオト)』を定義し、今ある既存の世界に新たな図面を埋め込んだ一方通行(アクセラレータ)とクリファパズル545である。
しかし、その好機をフルに活かすことが出来ず、最後の最後に上条の右腕が再び切断され、上条の内から出た赤黒い三角形の連結体が抑えきれずに暴発しクイーンブリタニア号を破壊してしまった。
アレイスター=クロウリーの最期
クイーンブリタニアに取り残されたクロウリーの前に『黄金』の事実上の始祖であり、かつて自身が接触したらしき事を述べたアンナ=シュプレンゲルが現れ、此処までの暗躍と目的を告げた。
正確には、まず最初に現れたアンナ=シュプレンゲルは、本物のアンナ=シュプレンゲルの器を乗っ取ったホロス夫人であった。直後にエイワスが顕現し、ホロス夫人から「器」を奪い返した。エイワスはクロウリーに自身の真の目的、つまりシュプレンゲル嬢を取り戻す為にクロウリーをも利用していた事を告げる。そして、本物のアンナ=シュプレンゲル嬢が復活。シュプレンゲル嬢とエイワスはクロウリーを見下し、去っていった。
倒れ伏し死が迫るクロウリーのもとへアクセラレータが現れる。クロウリーは自身を超えてみせたアクセラレータへ、今後の脅威と学園都市の「統括理事長」の座を譲る旨を最期に伝えた。
世界最大の魔術師アレイスター=クロウリーは死亡した。
新約22巻 - 518ページ以降のストーリー
ちなみに、彼の物語はまだ終わっていない。あとはコロンゾンの記事にて。
関連動画
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関連項目
外部記事リンク
脚注
- *本作ではマスターセリオンと表記。
- *現実では「ジョン・ブル紙」に目をつけられていた。その三流紙は本作の「表の歴史」でも悪評の拡散に一役買っているらしい。
- *元ネタはもちろんイギリスの魔術結社「黄金の夜明け団」。
- *この辺りの情報は第7巻(法の書編)が初出。ただしこの時点ではテレマの名はまだ出ていない。
- *テレマにおける中心概念の一つで、スペルはAbrahadabra。意味は上で述べた通り、これが世界の公式であり力の言葉とされる。その元となったアブラ・カダブラは、クロウリーの母国発の某児童小説の元ネタとしても有名。
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