イグノーベル賞とは、世界的権威を持つノーベル賞のパロディ賞である。
概要
1991年に創設。企画・運営は、ネタとしか思えない研究を見つけてきては取り上げるサイエンスユーモア雑誌「風変わりな研究の年報」。世界のSF研究会などが数多く協賛する。
受賞の条件・選考基準は、『いかに人々を笑わせ、そして考えさせてくれたか』。
日本のと学会が取り上げるようなインチキ科学・疑似科学のみを取り上げる、いわば科学版ゴールデンラズベリー賞というわけではなく、1.)『露骨なとんでも理論をぶち上げた人』に送られることもあれば、2.)『その道の人の記憶には永久に残るであろう(主に科学に関する)大事件を引き起こした人』、3.)『誰が得するのかわからないが偉大ではある成果を挙げた人』など、多彩な人に、ユーモアと皮肉をこめて送られる。
ちなみに、日本人学者はこの賞の常連であり、2010年7月現在、計18回行われた中で12回受賞している。
授賞式
毎年10月、ハーバード大学で行われる。旅費も滞在費も自己負担。スピーチでは笑いをとることが鉄則。
スピーチ中に制限時間が近づくと、ぬいぐるみを抱いた幼女が舞台に上がって邪魔しに来るが、いろんな手段で彼女を買収して続けなくてはならない。
スピーチが終わると、観客が一斉に紙飛行機を投げつけるのがお決まり。 なお、この紙飛行機を掃除するのは、同大学の教授で、「光のコヒーレンスの量子理論への貢献」で2005年にノーベル物理学賞を受賞した世界的物理学者・ロイ・グラウバー博士。御年85歳。
授賞式には、本家を受賞した学者も多く出席している。
なお、受賞者の態度はそれぞれで、激怒して来ようとしない人もいれば、嬉々として堂々と現れる人もいる。
主な日本人受賞者
- 神田不二宏・資生堂研究員――1992年、医学賞。
「足のにおいの原因となる化学物質の研究」。受賞者が資生堂の研究員であることを考えれば当然の研究課題だが、「自分の足を臭いと思っている人の足は臭く、思っていない人のは臭くない」というかっ飛んだ結論が、この賞を企画する雑誌に大ウケした。 - 柳生隆視・関西医科大学講師――1997年、生物学賞。
「噛んでいるガムの味で人の脳波は変わるのか」の研究。 - 横井昭宏、真板亜紀――同、経済学賞。
「『たまごっち』の開発により、数百万人の労働時間を仮想ペットの飼育に費やさせた業績」。横井は玩具メーカー・ウィズ。真板はバンダイ。 - 佐藤慶太、鈴木松美・音響学者、小暮規夫・獣医――2002年、平和賞。
「『バウリンガル』の発明により、犬と人間の間に恒久の平和をもたらした業績」。バウリンガル自体を疑似科学とみなした節のある受賞。 - 廣瀬幸雄・金沢大学教授――2003年、化学賞。
「ハトに嫌われた銅像の科学的考察」。兼六園の中にある銅像にハトが寄り付かないことに興味を持ち、調べ上げた末にハト避け合金を開発した。なお、同教授は2009年に「超音波計測による骨密度評価法の育成」で文部科学大臣賞を受賞するなど、まともな評価も受けている一方、コーヒー好きが高じてコーヒーについての講義も行うという奇妙な一面も持っている。 - 山本麻由・国立国際医療センター研究所研究員――2007年、化学賞。
「牛の排泄物からバニラの香り成分『バニリン』を抽出した」。雑誌内で「人類史上最も用途の不明な研究のひとつ」と"絶賛"された。また、受賞を祝して、ケンブリッジ市でも最高のアイスショップが、「ヤマモトバニラツイスト」なるバニラアイスを新たに発売した。これに使われているのは、牛糞由来のバニランではないらしいが……。 - 中垣俊之・北海道大学教授、他4名――2008年、認知科学賞。
「真正粘菌にパズルを解く能力があったことの発見」。漫画『もやしもん』でもとりあげられた研究。粘菌を迷路内に設置し、出口に餌を置くと、最初は全ての通路に管を伸ばすものの、やがて餌への最短経路の管のみ残して、残った管を衰退させる。
その他、主な受賞者
- ジャック・ベンベニスト――1991年、1998年。
同賞唯一のダブル受賞者。『水が記憶を持つ』などの、いわゆるホメオパシー治療法信者の生き字引的存在であり、世界的科学雑誌「ネイチャー」にしつこく論文を投稿していた"業績"を評価された。 - エドワード・テラー――1991年、平和賞。
水爆の父。核抑止論を生涯にわたって熱心に主張した一人であり、衛星などを利用した防衛機構・『戦略防衛構想』の提唱者でもあった。スタンリー・キューブリックの「博士の異常な愛情」に登場した水爆大好き博士・ストレンジラブのモデル。受賞理由は、「我々の知る"平和"の意味を根本から変えることに生涯にわたって努力した」から。 - セシル・ヤコブソン医師――1992年、生物学賞。
「人工授精の、簡単で、独力で可能な画期的な方法の開発」。優れた遺伝子を持つ男性の精子による人工授精を望む女性患者に対し、自分の精子を使って人工授精。詐欺罪と偽証罪に問われた。 - ジム・ノールトン、米国国立芸術基金――1992年、美術賞。
ノールトンは、ありとあらゆる動物のペニスをスケッチした画集「動物界のペニス」を出版。さらに、同時に受賞した基金は、ノールトンの「飛び出す絵本にしたいから資金援助を!」という申請を通してしまった。 - ジェイムス・F・ノーラン、他2名――1994年、医学賞。
「ジッパーに挟んだペニスの応急処置の研究」。挟んだところに軟膏を塗り、ファスナーをペンチで壊すべし。 - バーナード・ヴォネガット――1997年、気象学賞
「ニワトリの羽根の千切れ方で竜巻の風速がわかる」という俗説を、実験と計算により検証したことに対して。結論は「ニワトリの健康状態や空気抵抗、空気衝撃などの影響を考慮すると、正確さに欠ける」。
なお、SF作家、カート・ヴォネガット(Jr.)は実の弟。 - トロイ・ハーツバイス――1998年、安全工学賞。
グリズリーにも負けないパワードスーツ、いわゆるグリズリースーツの開発と、果敢にも自分で実地試験をしたことに対して。現在彼は、軍用強化外骨格の発明に励んでいる。 - アタル・ビハーリー・ヴァージペーイ、インド首相。ナワズ・シャリフ、パキスタン首相――1998年、平和賞。
「核爆弾の平和的利用の成功」。これは、両国が「平和的核爆発」とか抜かして核実験を開始したことへの皮肉。 - アーヴィッド・ヴェイトル――1999年、医学賞。
「検尿の際、患者がどんな容器を用いるのかの傾向の研究」。 - ブロンスキー夫婦――1999年、健康管理賞。
画期的な妊娠補助設備の開発。妊婦の乗った分娩台を高速で回転させ、遠心力で胎児を取り出しやすくする。ちなみに妊婦に7G相当の力が加わる設計だったというが、5G以上の力が加わると人間は失神する。 - ドナテラ・マラッツィーニ、他4名――2000年、化学賞。
「生物学的には、熱烈な恋愛と強迫神経症に違いは発見出来ない」という発見。 - 文鮮明――2000年、経済学賞。
統一教会教祖。集団結婚産業に、安定と経済成長をもたらした。 - エドゥアルド・セグラ、他1名――2002年、衛生学賞。
猫と犬を放り込んで洗える洗濯機の発明。致死率45%。 - ジリアン・クラーク――2004年、公衆衛生賞。
「床に落ちた食べ物への『5秒ルール(3秒など諸説あり)』の適用の科学的妥当性の検証」。地域・個人によって秒数はまちまちだが、結論は一瞬でも床に落ちたらアウト。そりゃそうだ。 - トーマス・パーネル、他1名――2005年、物理学賞。
粘性の高い黒タールが垂れる速度を検証するための、非常に根気の要る実験。パーネルは志半ばで亡くなった為、引き継いだ別の学者が同時に受賞した。じょうごの中を流れるタールは、大体9年で一滴落ちるらしいという結論に達した。 - エドワード・カスラー、他1名――2005年、化学賞。
人間はシロップの中と水の中ではどちらがより速く泳げるのかという疑問への念入りな実験。結果、シロップでも水でも記録に大差は現れず、どうも人間の泳ぐ速度に液体の粘性は関係ないという結論に達した。 - ガウリ・ナンダ――2005年、経済学賞。
止めようとすると逃げる目覚まし時計の開発で、多くの人々に生産的な時間を過ごさせた業績に対して。 - アメリカ空軍ライト研究所――2007年、平和賞。
性欲が急激に増大し、相手が同性であろうと性的行為の及ばずに居られなくなる催淫型非殺傷兵器「ゲイ・ボム」の開発。雑誌いわく、「そそるような開発」。 - ドナルド・L・アンガー――2009年、医学賞。
指の関節症の原因の解明。60年間、左手の指を頻繁に鳴らし続け、一方で右手はこの間ただの一度も鳴らさなかったという狂気じみた検証方法をたたえて。
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関連項目
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ページ番号: 4418804
リビジョン番号: 1453251
読み:イグノーベルショウ
初版作成日: 10/07/19 22:41 ◆ 最終更新日: 12/02/27 01:41
編集内容についての説明/コメント: イグノーベル賞創立者、授賞式についての話があったのでコミックを追加
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