エミュレータ(emulator)とは、機械装置やコンピュータのハードウェア(PC、ゲーム機など)の構造を、別の装置やソフトウェアで模倣することで実現させたもの。
概要
エミュとも略される。語源のエミュレート(emulate)は英語で「真似る」という意味。エミュレートすることをエミュレーション(emulation)ともいう。
もっと簡潔に言い換えると「機械の仕組みを真似た、装置やソフト」。装置としてのエミュレータは ICE (イン・サーキット・エミュレータ)
などがあるが、一般人にはほとんど縁がないので、ちまたで言われているエミュレータとは、一般的にソフトのほうを指す。
なお、ソフトウェア自体を新たに作り直して動作を真似たものは「移植」や「クローン」と呼ばれ、エミュレータには分類されない。例えば、「ファミコンのゲームをWindows向けに作り直したもの」がこれにあたる。
ちなみに、再現元は実在する物である必要はなく、CPU設計などの際に、設計途中の(テスト時点ではまだ架空の)部品をエミュレートしてテストに用いるとか、物理世界では実現不可能な機械をエミュレータで代用するなどということも行われる。
エミュレータの種類
具体的には、以下のようなものがソフトウェアのエミュレータとして挙げられる。
- ゲーム機(たとえばファミコン)のソフトウェアを、PC上などで動作できるようにしたソフトウェア。
- 昔のパソコン(たとえばPC-9801)のOSやソフトウェアを、PC上などで動作できるようにしたソフトウェア。
- PC上に仮想的なPCを作り、その中でPC用のOSやソフトウェアを動かせるようにしたソフトウェア。仮想PCともいう(例えば、Windows上でLinuxや別のWindowsを動かすことができる。Mac OS上でWindowsを動作させるものもある)。
- そもそも、1~3 のエミュレータに含まれる、CPUやサウンド、グラフィック部分などのチップを再現したものも、それぞれがエミュレータである。すなわち、ゲーム機やパソコンなどのハードウェアを再現したエミュレータは、実機がパーツの集まりでできているように、その主要パーツを再現したいくつかのエミュレータの集まりで構成されている。
※ 「オンラインゲームのサーバの動作を真似し、ゲームクライアントから本物のサーバと同じように接続できるようにしたソフトウェア」はエミュ鯖といいますが、ここでは説明しません。「エミュ鯖」の項目があるのでそっちを見てください。
エミュレータのあれこれ
技術としてはパソコン黎明期以前 (数十年前) からあったものだが、パソコンの急激な普及や高性能化により1990年代後半頃からゲーム機のエミュレータが開発・配布されるようになったのに伴い、一般のパソコンユーザーにもよく知られた技術となった。
しかし、詳しくは後述するが、エミュレータ (特にゲーム機を再現するもの) はその仕組み上、市販ソフトウェアの不正コピー (もちろん著作権法違反なのでやってはいけない) が容易にできてしまうという問題点もはらんでいる。
このために「エミュレータ自体が違法だろ」と言われることもあるが、エミュレータ自体に違法性はまったくない。特許侵害などのおそれも考えられるが、エミュレータの開発または使用が原因で裁判になり敗訴になった判例や、違法と判断された事例は現時点では存在しないので、不正コピーさえやらなければ問題はない。
また、エミュレータは手作りで開発されているものなので、実機の複雑な仕様を完全に満たしきれていない場合も少なくない。つまり、ソフトによっては実機とは違う挙動を起こす、まったく動かないなどの不具合が出る場合もある。すなわち、エミュレータは決して万能ではないということである。
ゲーム機のエミュレータ
ニコニコ動画でエミュという言葉が出てきた場合、多くはこれのことである。
以降ではPCで動作するエミュレータを前提に書くが、携帯電話やスマートフォン、iPhoneなどさまざまなハードで動作するものが開発されている。また、古いゲームを新しいゲームハードで遊べるようになるサービスである、バーチャルコンソール、ゲームアーカイブス、プロジェクトEGG、および 2000年ぐらい以降に発売された「昔のゲームをベタ移植した復刻ものゲームソフト(ファミコンミニやタイトーメモリアルほか)」の多くは、エミュレータ によって実現されている。つまり事実上の公式エミュレータのようなものである。
PC上で動作するエミュレータ本体の多くは個人が趣味で作成したものであり、大半がフリーソフトウェアとして無償で配布されている。これらの本体は、モノにもよるが、比較的に簡単に手に入れることができる。本体があれば、あとは「ソフトウェア」「本体内のBIOSイメージ(不要な場合もあり)」の2点を用意することで、PC上でエミュレータを動作させることができる。
変わったところでは、本来アナログ式の機械で動作するはずのピンボールを再現(模倣)した「ピンボールエミュ」というものもある。架空の台を再現したものも多い。「デジタルピンボール」などの商品名で市販されることもある。架空のゲームをエミュレータで再現するという手法はSTGにも多く使われ、本来アーケードゲームであるSTGを家庭用機でエミュレートする際に、再現元にグラディウスVなどの実在しない架空のタイトルを捏造し、それを再現してパッケージ販売する様な事も多い。
ソフトウェアの扱い・準備
PC上でゲーム機のソフトを動かそうと思った場合、もちろんPC上で読める状態になっていないといけない。プレイステーションのようなCD-ROMであれば、PCのドライブに手持ちのソフトを突っ込むだけで解決なのだが、カセット(カートリッジ)式のゲーム機の場合、カセットを挿す場所なんかPCのどこにもないので、いきなり困り果ててしまう。
この場合、カセットの中身をパソコンに吸い出すための「吸い出し機」を用意する必要がある。詳しくはググるとわかるが、秋葉原とかを回って買った部品で自作するか、製作代行や販売してくれる店や人を探して売ってもらうかのどちらかとなる。カセットの中身を吸い出すと、「イメージファイル」「ROMイメージ」と呼ばれている1個のファイルになる。これをエミュレータに読ませればいいというわけである。
「BIOSイメージ」は、本体内にROMチップとして入っているため、大抵は吸い出し機では対処できない。「BIOSを外に書き出すソフト」を作り(または誰かが作ったのを拝借して)どうにかして動かすなど、いろいろ工夫して外に書き出すことでイメージファイル化する手段が多い。ただし、もともとBIOSが存在しない、BIOSの仕組みもエミュレーションで補っているので不要、イチから作った権利的に問題のない代替のBIOSが付属している、などの場合もある。
業務用のゲーム基板 (アーケードゲーム) の場合、実機からムカデのような形をしたROMチップを取り外し、ROMライタ
と呼ばれるROMを読み書きする汎用の機械で読ませる作業が必要。別のゲームに交換するための「ROMチップのキット」が販売されていたほどチップの脱着が前提となっている基板は多く、汎用の機械だけで作業が完結できることは少なくない。しかし、基板によっては、汎用の機械では吸い出せないカスタムICチップや、デッドコピー対策 (昔は人気ゲームのタイトルとメーカー名、一部の絵だけを書き換えたコピー基板が多数存在した) としてRAMチップ+バッテリーバックアップでデータが記録されている (電池切れやチップの脱着によりデータが消滅し起動しなくなる) ものすらあり、こういった基板のデータの自力による吸い出しはかなり絶望的である。
これらの準備は非常に面倒くさいが、一度イメージファイル化してしまえば、あとはそれを本体に読ませればいいだけなので、以降は非常に楽である。
レアなケースだが、エミュレータ用として、メーカーの厚意により直々に市販ソフトウェアなどのイメージが配布される場合もある。過去の例としては、シャープのパソコンX68000のBIOSおよびシステムディスクや、札幌のゲームメーカーである株式会社ズームの古いパソコン用ゲーム (現在は配布終了)、海外のゲームメーカーExidy社の古いアーケードゲーム基板のデータなどが配布されたことがある。
著作権的な問題点
ここで一番の問題となるのが、「ROMイメージファイルは、ただのファイルであること」「ただのファイルなのでコピーし放題、ネットにも簡単に流せてしまうこと」という点である。つまり、実機やソフトを持っていなくても、人からもらったり、どこかからダウンロードしたりしたものがいとも簡単にエミュレータで動かせてしまう状況ができてしまう。この一点がエミュレータをグレーなイメージとなっている最大の理由である。
「おまえら本当に吸い出してやってるのかよ」と聞いてみても、多くの人がそうではないと思われる。吸い出し機というものの存在が、微妙に敷居が高い(ように思われている)などの理由が考えられる。
当然、市販ソフトのイメージファイルを人からもらったり、ネットからダウンロードしたりする行為は不正コピーであり、著作権法違反にあたるからやってはいけない。
実機を所有しているソフトであっても、吸い出し以外の手段によるイメージの入手は著作権法違反となる。吸い出したあとに実機のソフトを売却するのも当然ダメである(ただし例外として、火事で焼けた、故障した、紛失したなど、吸い出した後に「滅失」にあたる事由で手元から失った場合は違反にはならない)。
そんな問題点を抱えたエミュレータであるが、後述の利点に魅力を感じてエミュレータを使っている人も多いと思う。しかし、残念ながらエミュレータを「タダでゲームができる道具」としか見ていない人は少なくないのが現状である。エミュレータを用いて違法にタタゲーを行う者の中でも、違法性を認識しながらそれを公言したり、開き直るなど、世間知らずな言動、行動を行う者に対して「エミュ厨」「割れ厨」などと呼称される場合があり、忌み嫌われている。
エミュレータをタダゲーの道具として使ってはいけない。また、「エミュレータ紹介ブック」だとか「禁断のエミュレータ解説」だとかと題して、エミュレータをさもタダゲーの道具であるかのように紹介している書籍もあるが、決して手を出しては(そういう出版社に利益を与えては)いけない。どうせググって出てくる情報以下のことしか書いてないし、そんなお金があるなら中古のソフトを買いに出かけましょう。
ゲームメーカーの立場
世界中の動画サイト、webコンテンツには、発売元の許可を得ないまま公開されているプレイ動画が溢れている。その中にはエミュレータにて撮影された動画類も含まれる。ゲームメーカーとしては対抗措置として削除申請などを行う場合があるが、殆どの場合黙認されている。数が多すぎて対処しきれないというのも理由のひとつであるが、直接的な利益を侵害する行為において対抗措置(削除申請)をとる事が最もメリットがあるという判断からである。実例として、ファミコンのスーパーマリオブラーザーズの動画は削除される事は稀であるが、直近2~3年程度に発売されたばかりのエミュ動画の無許可配信は削除されることがある。これはつまり、「昔のゲーム動画は既にペイしているので利益の侵害になりにくいし、むしろ宣伝になるから黙認」という判断からであるし、「最近のゲームは、ネタバレは困るし、ユーザーの購入機会を減らしてしまうので削除申請する」ということである。いずれにしても、動画投稿者とメーカーとの問題であり、第三者である視聴者は場が荒れる元になるので不用意に動画コメント等で横槍をいれるべきではない(空気は読んだほうがよい)。議論をしたかったら、適宜然るべき場所にて行うようにしましょう。
誤解されやすい点
ちなみに、ハードウェアに関しては実機を所有していなくても、エミュレータで再現させることに問題はない。つまり、周辺機器や「BIOSを持たないハードの本体」は、所有していなかったとしてもエミュレータの使用は違法にはならない。当然ながら、架空のハードウエアやソフトウェアの再現を禁じる法的根拠は何一つ無い。
また、よく吸い出し行為が違法だと思い込んでいる人もいるが、法的には「コピーガードまたはコピープロテクトの解除」を伴わなければ違法にはならず、著作権の効力が及ばない「私的使用のための複製行為」の範囲となる。
たとえば、カセット式のゲーム機のほとんどは、エミュレータを想定していないので「カセットの複製自体が物理的に困難であること」「偽造カセットが動かないよう本体側で細工する」などが実質的なコピー対策となっている。そのため、カセットに含まれるデータ自体にはコピーガードやコピープロテクトが施されていない、つまり吸い出し行為は法的に見て違法ではないケースがほとんどである。CD-ROMから仮想CDを、音楽CDからmp3ファイルを作るのと同じような状況と認識すればよい。
利点
エミュレータの利点は決してタダゲーなんかではない。こういった、実機にはない利点が生じる。
- 実寸大の解像度で綺麗な静止画キャプチャができる。
- 動画のキャプチャがパソコンだけで完結するので、キャプチャ機材不要。つまりプレイ動画の制作に相性が良い。
- ノートPCやモバイル機器に入れれば、ポータブル(持ち運びが可能)な環境になる。
- セーブが消えることがない。バッテリーバックアップの電池切れも起こらないし、セーブデータのバックアップが簡単にできる。ぼうけんのしょもこれで安全。
- どこでもセーブや速度の変更、コマ送りなどが可能 (これをふんだんに利用したのがTASとTAP)。
- チートを使って、インチキプレイやオワタ式が実現可能。
- データの書き換えが容易。つまり改造が可能(改造マリオなど)。
- その気になれば、ソフトを自作して動かすことも可能(簡単なのは「動かすこと」で、「作ること」ではないよ)。
- ゲーム開発の現場において、PC上で作成したプログラムを開発用実機に移行させて動作検証を行うのは非効率であり、PC上に実行環境がある事で時間的ロスの短縮につながる。
ニコニコ動画と相性の良い利点も多いので、エミュレータを使って作られたプレイ動画を見かける機会はなにかと多い。
もっとも、チートやTAS先生の力を容易に借りられる環境のため、画質の劣るデジカメ撮影でないと正規のプレイ動画が(プレイの正統性に関して)信頼されなくなってるという弊害も生んでいる。キャプチャ動画だとプレイ動画に「どうせチートだろ」なんて心ないコメントが付くことも…。
昔のパソコンのエミュレータ
昔のパソコン(「パソコン」の項目の「ニコニコ動画におけるパソコン種別」を参照)のエミュレータも多く存在する。
これらは、ソフトウェアがカセットテープやフロッピーディスク、CD-ROMといった吸い出しに特殊な機材を必要としないメディアであったり、自作ソフトの開発と実行の環境が整っていてBIOSの取り込みが比較容易であったりという理由から、実行環境の準備はゲーム機のエミュレータよりも敷居が低い。タタゲー狙いの人が興味を持たないこともあり、実機から環境を吸い出している人の割合はゲーム機のエミュレータよりもずっと多いと思われる。
X68000のように、メーカーが直々にエミュレータ向けのBIOSイメージファイルやOSが入ったフロッピーディスクのイメージファイルを無償公開しているケースや、MSXのように、公式エミュレータが存在するケースもある。
昔のパソコン用のエミュレータも、以下のような利点があるため愛用者は多い。もちろん、ニコニコ動画にもエミュレータを使った動画が多数投稿されている。
- 昔のパソコンは画面の出力規格がいまいち統一されていないので、動画のキャプチャがかなり困難である。そのため、動画作成におけるメリットはさらに高い。
- 実機を押し入れにしまったまま場所を取らずに使える。
- 所有していなかった周辺機器、増設ボードなどを、エミュレーションの力によって擬似的に使うことができる。
- メモリを増やしたり、CPUのクロックを上げたりといった性能アップも簡単。
- 機器としての寿命がない。
今時のPCのエミュレータ(仮想PC)
Windowsの中で、WindowsやLinuxが動くエミュレータもある。エミュレータとは言わずに仮想PCと呼ばれることが多い。VMWare
やMicrosoft Virtual PC
、Sun xVM VirtualBox
がそれである。
企業が開発したものが主流なので、商品として数万円で販売されているものが多いが、最近では無償版が配布されているので敷居は非常に低い。また、BIOSは専用に作られたものが付属しており、ほかにイメージ化の必要がないため、著作権的などの問題とは無縁(実機のPCとまったく同じ条件)である。
HDDはひとつのイメージファイルとして作成されるので新しくパーティションを切る必要がないうえに、メモリやHDDの容量を増減させることも簡単である。
「パソコンの中でパソコンが動いて何が楽しいの? ばかなの?」と思う人もいるだろう。以下のような活用例がある。
- Windows 7 の中で Windows XP を動かす。もしくはその逆。
- ベータ版のOS (最近で言うと Windows 7 RC版など) を気軽に試す。
- 32ビットOSの中で64ビットOSを動かす。もしくはその逆。
- ソフトウェアの開発者が、動作確認用として古いOSを動かす。
- 現在のOSでは何をやっても動作しない古いソフトウェアを使うために動かす。
- Linuxを使いたいけど、パソコン一台まるまる占有するほどじゃない。だからWindows上で動かす。
- 再インストール必須な状況になっても痛くもかゆくもないテスト環境としても活躍。
Windows 7の上位エディションでは、「究極の互換モード」として、Windows XPがインストールされたVirtual PCが標準で用意されており、マイクロソフトからダウンロードしたうえで無償で利用できる。
また、Parallels Desktop
やVMWare Fusion
など、Mac OS上で動作する仮想PCも存在する。Windowsなんかメインで使いたくないというマカーの人でもかなり安心である。その他、Classic環境が廃止されたIntel Macおよび、Mac OS X Leopard以降では、Basilisk II
やSheepShaver
などの、旧Mac OSエミュレータを利用することでクラシックアプリケーションを利用することができる。
その他のエミュレータ
- 開発環境の一部として、エミュレータが提供されることがある。わかりやすい例で言えば、iPhoneの開発環境には、iPhoneのエミュレータが付属していて、開発したソフトをiPhoneに転送する前に確認することができる。
- オフコンやワークステーションなど業務用コンピュータのエミュレータも存在し、業務システムの再開発を行うことなくハードウェアのみリプレースが行われる場合がある。
関連動画
関連項目
http://dic.nicomoba.jp/k/a/%E3%82%A8%E3%83%9F%E3%83%A5%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%82%BF


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読み:エミュレータ
初版作成日: 08/08/30 03:45 ◆ 最終更新日: 11/08/22 13:36
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