エルプス単語

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エルプス（1982年5月3日生〜2009年9月15日没）とは、日本の元競走馬・元繁殖牝馬である。

主な勝ち鞍
1984年:函館3歳ステークス(GIII)、テレビ東京賞3歳牝馬ステークス(GIII)
1985年:桜花賞(GI)、報知杯4歳牝馬特別(GII)、京王杯オータムハンデキャップ(GIII)

1985年優駿賞最優秀4歳牝馬

概要

※馬齢は当時に合わせて数え年表記(現表記+1歳)とする。

名前は南極大陸最南端にある活火山・エレバス山から。1985年の桜花賞をはじめ5つの重賞レースを逃げで制した。競走成績は11戦6勝。

同期には1986年のマイルチャンピオンシップを勝ち、史上初めて牡牝混合GIを制した牝馬（グレード制導入後）となるタカラスチール。優駿牝馬（オークス）を25頭抜きという史上屈指の追い込み劇で勝利したノアノハコブネ。トウショウボーイ・テンポイントと共に、日本競馬史に伝説とも言われる時代を築き上げた名馬グリーングラスの娘にして唯一のGI級勝利産駒リワードウイングなど。こうして見るとかなりキャラの立ったメンツが揃っている。

デビュー～3歳

血統は当時の評価から正直言って悪かったものの、小柄で仕上がりが早そうなところを買われて関東の久恒久夫厩舎へ入厩。体調面から予定より遅れたデビュー戦（函館・芝1000m）は、不良馬場の中馬群にもまれての9着とトホホな結果に。しかし2戦目（函館・芝1000m）は果敢に逃げをうつと2着を7馬身引き離す圧勝で初勝利をあげる。

次戦は条件戦に登録していたのだが出走頭数が足りずに競走不成立となり、仕方なく函館3歳S(函館・芝1200m・GIII)へ。予定したレースと違う上に連闘で重賞といういかにも安馬という使われ方をされるが、ここも逃げて4馬身差のレースレコードタイムで楽勝。早くも重賞ウィナーとなる。鞍上の木藤騎手もデビュー10年目で重賞初制覇。木藤騎手はこのレース以降エルプスの全レースで鞍上を務めることになる。

周囲の目も変わってきたかなー？という4戦目オープンレース（中山・芝1200m）。ここを８着最下位惨敗（ｱﾚ?）　・・・レース前に激しく入れ込んで逃げられなかったことが敗因らしいが、ちょっと派手過ぎる負けである。次走のテレビ東京賞3歳牝馬S(中山・芝1600m・GIII)はメンバー14頭中3頭しかいない重賞馬にもかかわらず11番人気。案の定、函館3歳Sの勝利はフロック同然の評価に・・・。しかしここをに1馬身半差で逃げ切り勝ち。これで重賞2勝目である。二度の惨敗が響いてか最優秀3歳牝馬の称号は逃したものの、5戦3勝（重賞2勝）という堂々たる実績を引っ提げ、翌1985年牝馬クラシック戦線へ乗り込むことになった。

4歳牝馬クラシック戦線

しかしながらその実績に比して周囲の評価はまだまだ低かったようで、始動戦である桜花賞トライアル・4歳牝馬特別(阪神・芝1400m・GII)では函館3歳Sとテレ東3歳牝馬Sで負かしているタカラスチールに1番人気を取られ3番人気。やはり逃げ損なった時の脆いイメージが強すぎたか。このレース、順調に逃げたものの4コーナーで脚を滑らせて大きく外に振られた上に他馬と接触。その隙に内をすくわれ万事休す・・・と思いきやそこから差し返す根性の走りで半馬身差の勝利を掴む（タカラスチールは3着）。スピードだけでなく根性も並外れていることを示して見せた。

トライアルで重賞3勝目を飾りむかえた本番 桜花賞（阪神・芝1600m・GI）。1番人気は当然タカラスチール・・・・・・、ええっ！？　エルプスは僅差ながらも2番人気。実は前走で接触した馬とはタカラスチールのことであり、「エルプスの3戦3勝とはいえ内2戦は3歳戦。前走も強い競馬をしたのはむしろタカラスチールの方であり、まだ勝負付けは済んでいない」という意見が多かったようだ。この評価に久恒調教師はかなりカチンときてたようだが、逃げ一手の愛馬で魔の桜花賞ペースで有名な大舞台に挑む木藤騎手はスタートへの不安に苛まれて人気がどうのこうのどころではなかったという。

雨の中ゲートが開くと、相変わらず微妙なスタートを切ったエルプスは木藤騎手の出ムチに応えて勢い良く先頭に立つ。稍重の馬場の上を最初の3ハロン34秒6というスピード、そして逃げで築き上げてきた実績で後続の追撃を黙らせるとそこから徐々にペースを落としていく。余裕をもって直線へむくとしぶとい末脚を繰り出して2着に半馬身差をつけゴールへと飛び込んだ。母親のおまけで余所の牧場へ捨て値で売られそうになったという逸話があるほどに生まれた時から低評価だった安馬が見事桜の女王の座に戴冠したのである。エルプス以降、逃げで桜花賞を制した馬は2015年のレッツゴードンキまで30年間現れなかった。

二冠を目指した優駿牝馬（東京・芝2400m・GI）。桜花賞で1番人気に支持されたタカラスチールが距離に見切りをつけて裏街道に回ったものの、距離の問題はエルプスもまた同じでありここも2番人気となる。さらには体調面からレースに対する集中力も低下していたらしく逃げを打つことにも失敗してしまう。メンバー随一の実績を誇る先導者を失ったレースは破滅的なハイペースを刻み、劇的な展開を生むことになるのであるが・・・。エルプスはその舞台となった直線で馬群に沈み15着大敗。

秋の復帰戦となった京王杯オータムハンデ（中山・芝1600・GIII）では古馬（とタカラスチール）を蹴散らして完勝し健在を示す。しかし距離を延ばした次走のローズステークス（京都・芝2000m・GII）では逃げながら2着と初めて逃げた上での敗北を喫してしまう。

距離不安を抱えたまま本番のエリザベス女王杯（京都・芝2400m・GI）で引いた枠番は、逃げ馬にとって大きく不利な大外20番。しかしエルプスと木藤騎手は そんなものは関係ない とばかりにローズステークスを上回るハイペースでの逃げを打つ。逃げ損なって力を出し切れず惨敗したオークスでの悔しさを晴らす。それだけであると言わんばかりに。そして勝ち馬リワードウイングが父の蹄跡をなぞるよう、力強いロングスパートで女王の座へと昇り詰める中 直線で失速し11着。距離の壁には屈したものの、自らの走りを貫いた上での結果であったためオークスのような悔いは残らなかったことだろう。

エリザベス女王杯後 脚部不安を発症。復帰を目指すものの叶わず翌1986年に引退となった。その年 史上初の三冠牝馬となったメジロラモーヌやGI馬となったタカラスチールとの対決は実現しなかった。オークスとエリザベス女王杯では惨敗したものの年間を通して第一線で活躍したこと、古馬を相手に重賞を制したこと、そして1985年の牝馬クラシック戦線を文字通り牽引したことが評価され年度最優秀4歳牝馬を受賞している。

引退後

繁殖に上がった後は8頭の産駒を得るがここでも血統に対する評価が微妙だったためか直仔の成績は振るわなかった。しかし第二子のリヴァーガール（父・リヴリア）が2000年の阪神3歳牝馬ステークス、2001年の桜花賞・秋華賞を制し2001年JRA賞最優秀3歳牝馬に輝いたテイエムオーシャンを産んだ。

南極大陸最高峰エレバス山から流れ出でた川 （リヴァーガール） が、

やがて大洋 （テイエムオーシャン） へと繋がっていく。

この母娘3代に渡る流れのなかで、２頭もの桜花賞馬が誕生したことは、

日本競馬史に残る快挙と言えるでしょう。

～J-horseman・馬名ミュージアムより引用～

2002年に繁殖を引退し功労馬として穏やかな晩年を過ごしていたが2009年9月15日、牧場内で転倒し右後脚の大腿骨を骨折。予後不良、安楽死となった。27歳。人に対しても仔馬に対しても穏やかで、母親の鑑のような存在としてエルちゃんと呼ばれ可愛がられていたそうだ。

徒然

• 父はあのミホノブルボンと同じマグニテュードであり、彼の初めてのGI級競走勝利産駒。有名な話だがマグニテュードは超良血と言える血統だけが取り柄で種牡馬として輸入された未勝利馬。エルプスの活躍が無ければ早々に廃用となってミホノブルボンは生まれなかったかもしれない。
• 1600mを超えるレースや1600m以下でも逃げそこなったレースは全て負けている。逆に1600m以下のレースで逃げた時の強さは他の同期を寄せ付けないものであり、重賞で古馬相手に日本レコードに0.1秒迫る好タイムで逃げ切るなど卓越したスピードを見せつけていた。
• 同期で同じ距離を得意とした1986年のマイルチャンピオンシップ馬・タカラスチールにとって、天敵ともいえる存在だった。マイルでニッポーテイオーを負かして牝馬初の牡牝混合GI馬となるなど女傑と言って申し分ない成績を残した彼女だったが、上記の通りエルプスとは5度対戦して全敗している（5戦とも逃げたエルプスが優勝）。
• 主戦の木藤騎手、管理する久恒調教師にとってエルプスの桜花賞制覇が初めてのGI級競走勝利となり、また最後のものとなった。16年後、テイエムオーシャンが桜花賞 祖母孫制覇を成し遂げたその日。当時死の床にあった久恒元調教師は、愛馬の孫娘の快挙に涙を流して喜んだと伝わっている。その二週間後 久恒氏は息を引き取った。
• 栗毛の大流星という秀麗なルックスに重い時でも420キロそこそこの牝馬としても小柄な馬体。小柄故に馬群に揉まれるのを苦手とするため決して上手いとは言えないスタートから強引にハナを奪って逃げを打つレーススタイルは、華やかながら不器用でどこか一途さ・健気さを感じさせる。事実 牧場でも厩舎でも非常に静かで穏やかな馬であったという。世が世ならネット上でも大人気になっていただろう。高い実力も兼ね備えているのだから尚のこと。
• フケ（牝馬の発情）の症状が激しかったそうだ。これが原因で予定していた札幌デビューを諦めざるをえず、またオークスで逃げ損なった要因と言われている。上の特徴と合わせると、小柄で健気な雰囲気を纏い性格は一途で優しく穏やか、しかし体つきは早熟の美少女といったところだろうか・・・。ますます世が世なら（ry

血統表

クロス：Blue Peter 4×5(9.38%)、Nearco 5×5×5(9.38%)、Fairway 5×5(6.25%)

• 前述のように父マグニテュードは6戦未勝利だが、その父ミルリーフはダービーステークス・キングジョージ・凱旋門賞というヨーロッパの権威ある3競走を始めて制した名馬。またマグニテュードの母アルテッセロワイヤルは英1000ギニーとオークスステークス優勝の二冠馬。血統だけを買われて種牡馬入りした。
• 母ホクエイリボンは不出走。
• 母父イーグルはイギリスで16戦3勝、ハンガーフォードS(7f)、タウンムーアS(7f)、ルースメモリアルS(6f)と今ではよくわからないレースを勝利している。

関連動画

ニコニコには無かった…。YOUTUBEには結構あるみたいです。とりあえず優駿牝馬（オークス）でも…。

関連項目

• 競馬
• 競走馬の一覧
• 1985年クラシック世代
  • タカラスチール
• 桜花賞
• テイエムオーシャン (孫)
• ミホノブルボン (同父)

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