エンニオ・モリコーネとは作曲家であり、映画音楽の巨匠である。
概要
1928年生まれ。1960年代から映画音楽を担当するようになり、以来イタリア映画を中心に第一線で活躍を続けた。
モリコーネの名が知られるようになったのはセルジオ・レオーネによるマカロニウエスタン三部作(荒野の用心棒、夕陽のガンマン、続・夕陽のガンマン)であり、二人のコンビはレオーネ監督が死去するまで続いた。
キャリア初期にはレオーネ作品以外にも、ドン・シーゲル監督の「真昼の死闘」やセルジオ・コルブッチ監督の「殺しが静かにやってくる」など多くの西部劇音楽の仕事をし、いずれの作品でも独特の彩を添えている。ちなみに先に提示したのはどちらも60年代西部劇の名作である。ぜひとも見て欲しい。
70年代以降は西部劇以外にも様々なジャンルの映画に楽曲を提供していたが、世界的な名声が再度高まるのは80年代以降である。
80年代は傑作ホラー「遊星からの物体X」、盟友レオーネ監督の遺作「ワンス・アポン・イン・アメリカ」、名匠ブライアン・デ・パルマ監督のギャング映画「アンタッチャブル」やイタリア映画の傑作「ニュー・シネマ・パラダイス」と、数多くの傑作映画に立て続けに楽曲を提供し、いずれもモリコーネの音楽なしでは成り立たないほど強い印象を残している。キャリア的にもここが恐らく最盛期であると思われる。
90年代以降も精力的に活動を続け、93年には「真昼の死闘」以来22年ぶりにイーストウッドとタッグを組み「ザ・シークレットサービス」の音楽を担当。また先述の「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ監督とはその後もすべての作品の音楽を担当しており、特に2000年の「マレーナ」では惜しくも受賞は逃したもののアカデミー作曲賞にノミネートされた。
また2003年にはなんと日本の大河ドラマ「武蔵」の劇中音楽を担当し周囲を驚かせた(時代劇の浪人=西部劇のアウトローという意味合いでの抜擢だろうか?)。
2013年現在はクェンティン・タランティーノ監督の新作映画「ジャンゴ 繫がれざる者」に曲を提供。相変わらずの健在っぷりを見せた。
2020年6月末、大腿骨を骨折し入院。7月6日未明、入院先のローマの病院で亡くなった。91歳だった。
音楽性
シンプルだがそれゆえに強烈に印象に残る主旋律が特徴。時に過剰とも言えるほど大仰かつ優雅なフレーズは、劇判でありながら映画そのものを食ってしまいかねないほど。
またそれまで劇判では使われなかったマイナーな楽器を積極的に使うことでも有名で、ドル箱三部作での口笛や独特のスキャットなどは好例である。
世間一般で知られるマカロニウエスタンの音楽イメージ(というか我々がなんとなく西部劇音楽だと思っていたもの)はすべてこの人が作ったと言っても過言ではない。例を挙げると、
・馬の疾走を思わせる8分音符と16分音符による「ダッダダダッダダダッダダダッダダ」というリズム
はだいたいこの人が発祥である(二番目についてはもしかしたら前例があるかもしれない)。またエレキギターの使用も特徴的で、彼の担当する映画には高確率でエレキギターによるメロディ弾きが存在し、特に中期キャリアまでのモリコーネサウンドの代名詞といえる。
実はそれまでの西部劇音楽は、いわゆるハリウッド的なオーケストラサウンドがほとんどで、我々が想像する口笛のメロディなどは存在しなかった(もっともモリコーネも、「ウエスタン」ではその伝統回帰的な作風に倣ってハリウッド的なオーケストラサウンドを書き起こしている)。
※余談だがこの「ウエスタン」のチャールズ・ブロンソン演じる主人公がハーモニカを吹きながら(作中のメインテーマでもある)登場するシーンは異常なまでにカッコイイのでぜひとも視聴をオススメしたい。本当にカッコイイんだこれが。
また武骨なマカロニサウンドだけでなく、特にジュゼッペ・トルナトーレ監督作品で使われる優しい旋律のテーマ曲も絶品である(キャリア的にはこちらが真骨頂とも言える)。「ニュー・シネマ・パラダイス」のテーマ曲に涙した人も多いだろう。
影響
特筆すべきはレオーネ監督による「マカロニウエスタン三部作」の劇中音楽であろう。
レオーネ監督自身、モリコーネの音楽を前面に押し出した演出を多く行ったため、マカロニウエスタンの影響の広まりははほぼ同時にモリコーネ音楽の影響の広まりと言っても過言ではない。恐らく日本では「西部劇っぽい音楽」はほぼ間違いなくモリコーネ音楽である。
モリコーネサウンドを参考にした「マカロニウエスタン的サウンド」はパロディも含めさまざまな映画、アニメ、ゲーム等で使用されている。ニコニコ的に有名どこを上げるとすれば「ワイルドアームズ」だろうか。最近では「輪るピングドラム」で口笛を使ったBGMが使用された。
他には「必殺シリーズ」の例のテーマ曲もどことなくモリコーネっぽい。
それ以外の影響としては、作曲家の田中公平はモンリコ・エリコーネJr.という名前で歌手活動をしている。また小泉純一郎もファンらしくモリコーネ音楽を自薦したトリビュートアルバムを出したりしている。
その他
・亡くなる直前まで現役を貫いた。健康の秘訣は午前4時起床午後9時就寝の早寝早起き。
・ほぼ全作品でタッグを組んだセルジオ・レオーネ監督とは小学校で同級だった。が、お互い面識はあまりなかったらしい。
・実は暴力映画、特に流血描写が嫌いで出世作の「荒野の用心棒」もあまり好きではないとのこと。
・上記に記したように、70年代以降はマカロニだけでなく非常に多くのジャンルの映画音楽を担当している。珍しいところではジョーズのヒットに便乗して作られたB級アニマルパニック映画「オルカ」やマルキ・ド・サドの小説を映画化、直後監督が謎の怪死を遂げたいわくつきの映画「ソドムの市」などがある。
・上にも書いたように「遊星からの物体X」の音楽も担当しているが、監督のジョン・カーペンターが自作では自分で音楽を担当することが多いためスルーされがちである。
関連作品
まずはマカロニ三部作(荒野の用心棒、夕陽のガンマン、続・夕陽のガンマン)のテーマを聴く事を勧める。当たり前ではあるが「あ~なんか西部劇っぽい!」と思うはずである。
詰め合わせ
※単体で聴くのも良いが個人的にはやはり映画の中で聴いて欲しい。
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関連項目
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