エーリッヒ・フォン・ハルテンベルクとは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。CV.佐々木功。
概要
無限に広がる大宇宙、静寂な光に満ちた世界、ゴールデンバウム朝銀河帝国の貴族・伯爵。眉が若干太いが端整な顔つきで、”サーベルめいた”細い長身の持ち主。
帝国暦485年当時、38歳の少壮にして内務省警察総局次長の任にある有力な警察官僚であり、次期の警視総監としてもっとも有力視されていた。それだけでなく、警視総監職のつぎには閣僚たる内務尚書職に任じられ、その若さから長期の在任はほぼ確実であろうという噂さえあるなど、将来を嘱望される俊秀であった。
自由惑星同盟から逆亡命した帝国軍人ヘルマン・フォン・リューネブルクは義弟であり、その妻で佳人と評判だったエリザベートがエーリッヒの妹であった。そして彼はそのエリザベートの手にかかり、将来の栄達と以後の人生とを失うことになったのだった。
妹の婚約者をめぐって
ことはリューネブルクが同盟から亡命してくる以前にさかのぼる。
ある時、妹エリザベートはカール・マチアス・フォン・フォルゲンという男と出会って恋に落ち、双方の親族の反対を押し切るかたちで婚約が成立した。伯爵家の四男で放蕩者の軍官僚カール・マチアスに対し、エーリッヒは妹夫婦の生計をいかにたてるつもりか詰問したが、これに対しカール・マチアスはサイオキシン麻薬の密売に手を染めることで応えてしまったのである。
その秘密を知ったエーリッヒは、最悪の犯罪者となってしまった妹の婚約者を心底憎んだ。この事態が世に知れれば、妹が不幸になるのはもちろんのこと、エーリッヒ自身も未来を喪い、代わりに不名誉を背負って生きてゆかねばならないのである。かくして、彼は同じ立場にあるフォルゲン伯爵――すなわちカール・マチアスの兄――を共謀者とし、カール・マチアスを闇に葬る陰謀を企てた。そしてハルテンベルク伯爵家とフォルゲン伯爵家そろっての秘密裏の圧力によりカール・マチアスは会計士官として前線に送られ、帝国暦481年が482年にかわるかかわらないかの頃、基地を襲撃され戦死をとげたのである。
婚約者を失ったエリザベートは気落ちし、他の求婚も断っていたが、帝国暦482年頃、同盟から亡命してきたヘルマン・フォン・リューネブルクの求婚を受ける。エーリッヒも妹がこれ以上逼塞するのを心配してこの求婚を受けるようすすめ、帝国暦484年頃にようやく婚姻に至った。
しかし、帝国暦485年冬、第六次イゼルローン要塞攻防戦に際してリューネブルクが出征しているあいだにエリザベートはカール・マチアスの死の真相を知った。12月1日、エリザベートに招かれたエーリッヒはカール・マチアスの死の責任を問われて激しく口論し、席を蹴って階段を降りようとするその時、背中から突き飛ばされた。薬物入りのコーヒーを飲まされていたこともあって、エーリッヒは身体を御しえないまま20段をまっさかさまに落ち、あげくに鉢植えが投げ落とされてその顔を原型を留めぬ血肉の塊に変えた。彼はこうして、その閲歴を終えたのである。
人物
”警察官僚がたまたま貴族の服を着ている”などと評価を受ける生粋の官僚であり、放漫な大貴族とは違い堅実で生真面目な人物。官僚としての実務能力も高く、犀利冷徹な人物であった。貴族として相応に社交界における自身の立場を気にかけ、官僚としても栄達への野心を持つ人物ではあったが、妹の婚約について家計をいかにたてるかカール・マチアスを詰問するなどの点から見ても、現実的な見識をも高く持ちあわせていたといえよう。
エリザベートへの兄としての愛情も彼なりにあったらしく、婚約者を喪い廃人状態にあったエリザベートをリューネブルクと結婚させたことについて、のちにウルリッヒ・ケスラーは「憎悪すべき仇である同盟からの亡命者を夫として与えることで、エリザベートの精神活性化を狙ったのではないか」と考察している。結婚後も最悪の場合は自身の面子を捨てても離縁やむなしとリューネブルクに伝えるなど気にかけていたようだが、いっぽうで結婚後はその心情を理解できなくなりつつあった。その義弟リューネブルクについても本来は好意的な印象をもっていたが、のちにはリューネブルクがハルテンベルク伯爵家の政治的影響力めあてで妹エリザベートに求婚したのではないかと危惧し、妹を不幸にせぬよう釘を刺している。
その他、宮廷ではなにかと軽侮されがちな子爵リヒャルト・フォン・グリンメルスハウゼンに対しても一定の評価と敬意を持っていたようだが、なにか不吉なものは感じ取りつつも、その真価を見通すにはいたらなかった。そして間接的にではあるものの、彼はこの老人によって自らの業に決着をつけさせられることとなったのである。
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関連項目
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