オートコーチ(Autocoach)とは、蒸気機関車用の制御客車である。
概要
客車の片側に運転席を設置、継ぎ手などを使用して反対側に連結した蒸気機関車を制御出来るようにした車両で、1800年代後半から、イギリスのグレートウェスタン鉄道(Great Western Railway又は大西部鉄道、以下GWR)の支線等で使用されていた。
本来蒸気機関車は終端駅で折り返しの際に機回しを行うが、その為には最低でも折り返しの為の機回し線の設置が必要であった。ところが、閑散区間の末端駅では機回し線を設置するコストも惜しい。かといってそのままバックすると前方視認性が悪く、機関士も後ろを見ながらの運転になる為あまり良くない。本来ならこのような場合は蒸気動車で対応する事が多く、GWRでも最初は蒸気動車を使用していた。しかし、蒸気動車では車内に蒸気機関を搭載する為車内のスペースが減ってしまい、搭載出来る機関も客車内に収まる小さな物になる為、輸送出来る量も小さくなってしまう問題があった。
そこで開発されたのがこのオートコーチで、この車両を使用する事で機関車と客車の構成(基本編成は【機関車+オートコーチ】)でありながら、折り返しの際は機関士が機関車から客車の運転席(或いはその逆パターン)に移動するだけで簡単にプッシュプル運転が出来るようになり、短時間での折り返しが可能となった。蒸気動車と比べても車内スペースに余裕があり、車内スペースも増えている。また、客車なので編成を解いてしまえば機関車はそのまま他の列車の牽引する事が出来るので、この点も蒸気動車と比べて有利な点であった。もちろん、オートコーチ自体もただの客車として他の客車と連結することが可能である。使用される機関車は、支線向けのタンク機関車が中心であった。(尚、機関士が客車側に居ても、機関助士は蒸気機関車側に居るため、プッシュプル運転の際には電気ベル等を使用して相互にやり取りをしていた。)
上記の通り使い勝手がいい車両ではあるが欠点もある。蒸気機関車を制御する為の機構を搭載しており、通常の客車よりもメンテに手間がかかるほか、編成組成時にも制約があり、機関車と客車が隣り合っていなければ制御機能が使えない為、運用上の制約もある(機関車とオートコーチの間に別の客車等が挟まってしまうと、継ぎ手をリンクさせられなくなる為、制御客車として機能出来なくなってしまう。もっとも、オートコーチの特性上そんな運用はあまり無いが・・・)。もちろん、機関車側もオートコーチに対応した車種でなければ制御客車としては機能しない。
車両構造は閑散区間で使用する事を前提としている為、ホームの低い駅に対応したステップを装備している。車内は二つに分けられた客室と荷物室、運転席となっていた。
イギリスでは10両以上が保存されており、現在でも保存鉄道等でその姿を見ることが出来る。
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