カズオ・イシグロとは、イギリスの小説家・作家・作詞家の1人である。日系イギリス人。
概要
来歴
1954年11月8日に長崎県長崎市内で生まれる。父親は長崎海洋気象台所属(現長崎地方気象台、当時)の海洋学者の石黒鎮雄氏で、祖父はのちにトヨタ紡織の前身会社となる豊田紡織廠の取締役となった実業家と実力者の家系に生まれた。
1960年、父親が1953年に北海沿岸諸国周辺で起き、死者約2500人も出した当時欧州史上最悪の大洪水、北海大洪水のメカニズム解明の為に英国立海洋研究所に招聘され、主席研究員となる。この影響でカズオ氏は家族と一緒に長崎から渡英。英国南東部にあるサリー州の州都、ギルフォードに移住し、現地のグラマースクールに通った。当時、5歳であった。
1978年、ケント大学英文科、1980年にはイースト・アングリア大学大学院創作学科に進学。その時に出会った批評家で作家のマルカム・ブラットベリの指導を受け、このころから小説を書くようになる。卒業後は一度ミュージシャンに心変わりするも、小説家の道に進んだ。1983年には日本国籍を放棄し、イギリスに帰化した。
1982年、自身の処女作「A Pale View of Hills」(和題:女たちの遠い夏→(改題)遠い山なみの光)を発表。この作品でいきなりイギリス王立文学協会賞を受賞。9か国語に翻訳されるほどのベストセラー作品となった。1986年に第2作「An Artist of the Floating World」(和題:浮世の作家)を発表し、ウィットブレッド賞(現コスタ賞)を受賞した。このころに現在の妻であるイギリス人女性のローナ夫人と結婚した。
1989年、のちに氏の代表作となる「The Remains of the Day」(和題:日の名残り)を発表。この作品でイギリス・アイルランド小説界最高峰の賞であるブッカー賞を受賞。名実ともにイギリスを代表する小説作家となった。のちにジェームズ・アイボリー監督、アンソニー・ホプキンス主演で映画化された。
1995年には「The Unconsoled」(和題:充たされざる者)を、2000年には「When We Were Orphans」(和題:わたしたちが孤児だったころ)を発表。発売と同時にベストセラーとなった。
2005年には「Never Let Me Go」(和題:私を離さないで)を発表。2010年にマーク・ロマネク監督のもと、キャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイトレイ主演で映画化。日本でも2014年に蜷川幸雄演出、多部未華子主演で舞台化、2016年にはTBS系列で綾瀬はるか、三浦春馬、水川あさみ主演でテレビドラマ化された。この作品で再び2005年のブッカー賞の最終ノミネートまで選ばれたが落選した。ちなみにこの年に受賞したのはジョン・バンウィルの「The Sea」(和題:海に還る日)であった。
また同年には英中共同制作の映画「上海の伯爵夫人」の脚本を担当した。
2015年、「The Buried Giant」(和題:忘れられた巨人)を発表。氏としては10年ぶりの長編小説の発表となった。
2017年、「壮大な感情の力を持った小説を通し、世界と結びついているという、我々の幻想的感覚に隠された深淵を暴いた」としてノーベル文学賞を受賞。日系人としては初の快挙である。また、日本にゆかりのある人物としては1994年受賞の大江健三郎以来となる。
このノーベル賞受賞の影響で、書店では軒並みカズオ作品が売れ、急遽カズオ・イシグロの特集棚を作る書店も登場した。また、TBSでは2016年1月に放送したドラマ「私を離さないで」の一挙再放送をTBSチャンネル2で行うことを決定した。
また、小説家のみならず作詞家としても活動。アメリカ・ニュージャージー州出身で現在はイギリスを中心に活動している女性ボーカリスト、ステイシー・ケント(Stacey Kent)の楽曲の作詞を数多く手掛けている。
人物像
- 2017年現在で62歳。白髪交じりの黒髪短髪でメガネが特徴的な風貌をしている。
- よく黒シャツ黒スーツの姿で登場することが多く、独特の雰囲気を醸し出している。写真に映ったりテレビに出演するときももっぱらこの姿である。
- 会話言語はもっぱらイギリス英語。日本語はあまりしゃべることが出来ず、日本語力は渡英当時の5歳レベルで止まっていると話す。氏いわく、「スコシダケ(笑)」。ただし、日本語を聞いて意味をすぐ理解することは出来る模様。声に出してしゃべることが出来ず、「ディナーはフィニッシュしましたか?」とルー大柴ばりのカタカナ日本語になってしまうと説明している。[1]
- 映画・音楽が好きで、特に音楽は大学時代にロックバンドをやっていた影響からロックをよく聴いている。特に聴いていたアーティストは奇しくも前年文学賞を受賞したあのボブ・ディランである。[2]
- 物腰が柔らかく、礼儀正しく紳士的な一面がある。高潔で信義に熱い性格である。[3]
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原作小説
メディア化作品
関連項目
脚注
- [1]・・・カズオ・イシグロ氏が日本語力を明かす「5歳レベルで止まった」(livedoor NEWS)
- [2]・・・カズオ・イシグロ氏が見ていた「特別な日本」記憶と想像を小説で形に(livedoor NEWS)
- [3]・・・ノーベル文学賞:「高潔で信義にあつい方」早川書房社長(毎日新聞)
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