キャプテン・フューチャーとは、1940年から1951年にかけて発表されたスペースオペラである。
概要
人類が太陽系に進出し各惑星に植民を行うまでに発展した未来、華々しい宇宙時代の陰では様々な陰謀や悪が蠢いていた。そんな中、主人公キャプテンフューチャーことカーティス・ニュートンと彼の仲間達であるフューチャーメンが事件解決の為、宇宙船コメット号を駆って太陽系せましと活躍する冒険活劇である。
著者はSF黎明期を支えた大御所エドモンド・ハミルトンと彼を中心とする作家チーム「ブレット・スターリング」(長編20作の内、3作はハミルトン以外の作家が担当)。ハミルトン御大に関してはスターウルフの作者と言えば詳しくない方でもお分かりいただけるだろうか。
邦訳は宇宙軍大元帥こと野田昌宏が担当、初出は銀背ことハヤカワ・SF・シリーズにて1966年から1967年にかけて3冊が。更に1970年よりハヤカワ文庫SFより改めて各1冊で刊行された。
その後も1995年に全20巻中5冊のみだがハヤカワ文庫SFより復刊。更に2004年には、既存の長編に加え未邦訳だった雑誌掲載の短編等を収めた「キャプテン・フューチャー全集」全11巻+別巻1巻が、創元SF文庫より刊行される等、地味ながら非常に息の長いシリーズとなっている。
キャプテン・フューチャー外伝集
風前の灯!冥王星ドーム都市
ハヤカワ文庫SFにて出版されていた「キャプテン・フューチャー」シリーズが完結後、「SFマガジン」の臨時増刊号に掲載された外伝作品。作者は邦訳担当の宇宙軍大元帥もとい野田昌宏氏。
勝手に作られた外伝ではなく、当時亡くなっていたハミルトン氏の夫人だったリイ・ブラケット氏(夫同様のSF作家兼映画脚本家、『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』の脚本も担当)に独自の外伝を出す了承を得たという異色の作品である。上記のSFマガジン掲載後は一切書籍化されなかったという幻の作品であったが2008年、フューチャーシリーズ全集の出版に当たり、訳の手直し等を行った版が出版された。
キャプテン・フューチャーの死/The Death of Captain Future
1995年に出版されたキャプテンフューチャーのパロディ小説、作者はアレン・スティール。邦訳は本編同様、宇宙軍大元帥もとい野田昌宏氏が担当。 フューチャーが古代のパルプフィクションとなっている宇宙時代、自らをキャプテンフューチャーと自称しおんぼろ宇宙船をコメット号と称する狂人船長「Bo McKinnon」という男の”活躍”と最後を描く長編作品。
1996年のヒューゴー賞 中長編小説部門(所謂ノヴェラ賞)を受賞している。
新キャプテン・フューチャー
上記で紹介したアレン・スティール氏によるリブートシリーズ。邦訳版の出版は創元SF文庫。
出版から80年以上経過した事にあわせ、原作では各惑星に元から居住していた現地住民を、居住の為に遺伝子改造を行った人間に変更する等設定のリメイクを敢行。
第一巻に当たる「最初の事件」では、原作ではフューチャーメンが語るだけであった両親の敵であるヴィクター・コルボとの対決、更にカーティスがキャプテンとなった「始まり」を描いている。
海外では既に続編シリーズとして“Captain Future in Love”“The Guns of Pluto”“1,500 Light Years from Home” “The Horror at Jupiter”の4部作が発刊されているが、邦訳されるかは現在の所不明である。
登場人物
カーティス・ニュートン/キャプテン・フューチャー (Curtis Newton/Captain Future)
太陽系最大の科学者にして冒険家、最高の宇宙船操縦士。
更に言語学や民俗学にも強く未知の異星文明との会話も速攻で解決するチート能力の持ち主。
普段は月面のチコクレーター付近に存在する基地を拠点としている。
人工的に生命を生み出す研究を行っていた両親をヴィクター・コルボという悪人に狙われ殺されたという過去を持ち、カーティスがキャプテン・フューチャーとして一生を太陽系と正義のために捧げると誓ったのは之が理由となっている。
身長6フィート4インチ(1メートル93センチ)。目は灰色。赤髪。日焼けした肌をしている。
アニメでは広川太一郎が声を担当。
フューチャーメン
カーティスの頼もしい仲間達。
親が殺されたカーティスを育て上げたのも彼らである。
尚、育て親が科学者にロボット2名という環境だった事はカーティスの振る舞いが常識から少々ずれているという結果を招いていたりもする。
サイモン・ライト(Simon Wright)
元はニュートン夫妻の研究仲間だった高名な科学者。別名「生きている脳」。
死期が近づいた際に脳を摘出、培養液入りの透明金属の専用ケースに収め、延命を図った存在。
要は同じくSF初期の作品であるジェイムスン教授のそっくりさんである。
カーティスに対しては父親のように接し、彼を「坊や(ラッド)」と呼ぶ。
原作では自力移動も出来ない簡易ボディだったのも相まってフューチャーメンの相談役兼顧問的存在だったが作中にてカーティスが改良を重ねた結果自力飛行や物の分解・組み立てまでも可能となり、隠密行動や潜入工作も行う行動派としても活躍する事となる。
アニメでは川久保潔氏が声を担当。
原作通り、自力で動けないのは絵的な意味で不都合と思われたのか、最初から飛行可能なボディ(UFO的な円盤に脳を収めたドームが乗っている)を保有していたりする。
グラッグ(Grag)
ニュートン夫妻とサイモンの研究成果である「人造生命第一号」。
身長7フィート(2メートル10センチ)の剛力無双のロボット。
フューチャーメンのパワー担当、動力源は小型原子炉、更に両手指先を付け替える事で工具としても使用可能と完全にロボットとして作られているが内面は感情豊かで、センチメンタルな一面も持つ。
相棒のオットーとは喧嘩を繰り返し「ゴム人形」と罵る仲だが心の底ではオットーをかけがえのない相棒と思っているが故である。どこのトムとジェリーだ
アニメでは緒方賢一氏が声を担当。
此方では濃灰色の金属ボディを持つ無骨な姿で描かれているが、原作と異なり顔がきちんとデザインされ表情が付く演出がなされている為、親しみやすいキャラクターになっている。
オットー(Otho)
ニュートン夫妻とサイモンの研究成果である「人造生命第二号」。
合成樹脂製アンドロイドで、純白の皮膚と緑の目を持ち、まつげも含めて体毛はない。
更に基本的にパンイチ(媒体によってはズボン)にブーツしか履いていないという服装がデフォだったりする。何という変態紳士仕様。
変装の名手で、各種染料や薬品からなる変装キットはベルトのケースに一式が収められている。
原子炉を動力源とするグラッグと異なり、人間に似た代謝系を持ち、専用の化学薬品のブレンド品のみならず普通の人間と同じ食事を取ることも可能どころか“ラジウム・ハイボール”を飲みすぎた結果酔っぱらった事も。
相棒のグラッグを「ブリキ人形」と呼んで怒らせるが、やはりグラッグのためなら命を懸けることも厭わず、いざという時には抜群のチームワークを発揮する。やっぱりトムとジェリーじゃないか
アニメでは野田圭一氏が声を担当。
更に服装も流石にそのままでは不味いと判断されたのか、ピンクのランニングシャツに船員帽姿のポパイのような服装となっている。
イイク (Eek)
グラッグのペットの「月犬」(ムーン・パップ。ムーン・ドッグあるいはムーン・ハウンドと呼ばれる種)
真空の月面に生息する種の為コミュニケーションはテレパシー能力で行い、主食は鉱物という生態を持つ、
テレパシー能力を生かしフューチャーメンの危機を救う活躍もある一方、時々コメット号やプロトン・ガンをかじり、トラブルの種になる事も。
アニメ版ではイークと表記され、ピンク色の子犬のような姿で描かれている。
オーグ (Oog)
オットーのペットの「隕石モグラ」。別名「物まねモグラ」。
本来は白い短い毛皮を持つ小型の四足獣だが、主要な内臓はすべて小さな核に納められており、肉体の他の部分を変化させることでサイズの制限こそあるが、何にでも”化ける”ことができる。
主な活躍としてはオットーがグラッグをからかうネタとして仕込んだり、爆弾に化けさせて相手にハッタリを噛ませるための小道具にされたりする。
アニメ版ではオークと表記され、亀のような甲羅を持つ緑色の毛のないタヌキのような姿で描かれている。
惑星警察機構
作中に登場する太陽系全域の法と治安を守る組織。トップはハーク・アンダース長官。
市街部等での一般的な警察任務を担当する第1課、未開拓エリアや開拓途中のフロンティアにおける警察業務と司法業務を担当する第2課、潜入捜査、秘密捜査を主な任務とする第3課、宇宙空間、宇宙航路における治安維持(宇宙海賊対応も担当)が任務の第4課、の4つの部門から成る。
ジョーン・ランドール(Joan Randall)
惑星警察機構第3課の女性諜報員。当シリーズのメインヒロインである。
キャプテン・フューチャーを「カーティス」と呼ぶ数少ない人物の一人。
エズラ・ガーニー (Ezra Gurney)
惑星警察機構第4課(通称、惑星パトロール)司令のベテラン捜査官。
課が違うがジョーンの実質的な上司でもある。
ジェイムズ・カシュー (James Carthew)
初代太陽系政府主席。キャプテン・フューチャーへのコンタクトの手段である宇宙灯台を作動させる権限を持つ太陽系唯一の人物。
アニメでは神太郎氏が声を担当している。
本来は原作で陰謀により暗殺されその罪がフューチャー一行になすりつけられる……筈だったのだが、アニメ放映時に該当話がいまだ邦訳されていなかった為、アニメにて該当するストーリーは制作されず、最後まで生存するという改変を受けていたりする。
ノース・ボネル
太陽系政府主席秘書官。後にカシューの後を受け第二代主席につく人物なのだが、上記の事情によりアニメ版では女性秘書アニー・ボネルとなっている。
ジョニー・カーク/ケン・スコット
「透明惑星危機一髪!」に登場した、フューチャーメンに憧れている地球人の少年。
アニメではケン・スコットとして一話「宇宙帝王あらわる」から登場するレギュラーキャラクターとなっている。要は初代ウルトラマンのホシノ・イサム少年枠である。
アニメ版「キャプテンフューチャー」
NHKが「未来少年コナン」の後番組として放送を企画、制作は東映動画(現在の東映アニメーション)、全52話と劇場版1話が1978年11月から1979年12月の期間に放映された。
因みに原作と異なりタイトルに中黒(・)が入らない表記である。
制作に当たっては原作が書かれてから30年以上(!)という期間が経過したことを踏まえ当時の観測結果や科学に合うように脚色が施された……のだが、この改変の結果として従来は太陽系内での冒険譚から太陽系外が主な舞台となってしまった為、原作では大きなイベントであったワープエンジン登場の齟齬が発生したことやキャラデザの変更、更にはストーリー展開の入れ替えを改悪とみなすファンも結構いたとか。
更に玩具販売の犠牲となったコメット号も従来の涙滴型の船体からヒロイックな宇宙船にデザインが大幅に変更され、更に完全なオリジナル要素として艦載機の小型偵察機コスモライナーの搭載も加えられる事となる。
放映後は海外原作という作品が故なのか同じNHKアニメのモンタナ・ジョーンズ同様、DVD化どころか再放送がやっと(2000年代に一度だけBS2で再放映してたとか)という状況で、視聴には海外版のDVDを買うか当時の録画を探すのみ……という状況だったが、初回放映時から40年近く経過した2016年9月、待望のブルーレイ全二巻が発売。正規手段での視聴がようやく可能になった。更にブルーレイ販売に合わせアニマックスに於いて特番としてではあるが、再放送も開始された。
又、発売に合わせてYouTubeにて公式より一話が無料配信されている。(2023年8月現在も公開中)
気になるが、流石にいきなり円盤や本を買うのはちょっと……という方は一度視聴されては如何だろうか。
アニメ版主題歌
オープニングテーマ 「夢の舟乗り」
作詞: 山川啓介 / 作曲・編曲:大野雄二 / 歌:ヒデ夕樹→タケカワユキヒデ [1]
エンディングテーマ「ポプラ通りの家」
作詞:山川啓介 / 作曲・編曲:大野雄二 / 歌:ピーカブー
挿入歌「OK! キャプテン」
作詞:山川啓介 / 作曲・編曲 - 大野雄二 / 歌:神代ユースコーラス
挿入歌「おいらは淋しいスペースマン」
作詞:野田昌宏 / 作曲・編曲:大野雄二 / 歌:ヒデ夕樹 [2]
関連動画
如何せん放送期間が期間の為、ニコ動に置いてはアニメ本編の動画は存在していない……と思いきや探せば以外と残っていたり。投稿日時を見るに大半は前述の再放映時の録画分と思われる。
MMD
根強い人気の証なのか、古い作品ながら関連するMMDモデルも複数制作されている。
キャプテン・フューチャー(ゆっくり会計士)
2016年からゆっくり会計士氏による投稿が始まった紙芝居シリーズ、完結済み。
原作における「恐怖の宇宙帝王」と「火星の魔術師」をベースとし、現代風に脚色した作品となっている。
関連静画
「コンビニ行ってくる」はハヤカワ文庫SFの「魔法の月の血闘」カバーを改変したふたば☆ちゃんねるのコラ。戦闘機のAAを使った「ちょっとコンビニ行ってくる」とは別のネットミームである。
関連商品
関連項目
脚注
- *途中で歌手が変更されているのは、最初はタケカワユキヒデ氏の歌唱でレコーディングも済ませていたのが、契約上の問題から解決までヒデ夕樹氏を 急遽代役として起用し、契約問題が解決した第32話以降は元のバージョンに差し替えたという経緯がある。
- *正確には原作『謎の宇宙船強奪団』に元となった歌が登場する為、 作詞:エドモンド・ハミルトンともいえる曲だったりする。
- 3
- 0pt
- ページ番号: 5599024
- リビジョン番号: 3165122
- 編集内容についての説明/コメント: