クラインの壺とは、メビウスの帯の円筒バージョンである。岡嶋二人による同名の小説についても本項で扱う。
概要
円筒をそのまま輪っかにしてつなげると、トーラスができる。それに対し、円筒を1度ひねってつなげたのがクラインの壺である。円筒の両端を互いに正面からくっつけるとトーラスになるが、クラインの壺では一方が他方の背後から回り込んでくっつけている。この曲面には表裏の区別をつけることができない。
クラインの壺はトーラスと違い、図形の内外の区別がない。3次元空間内で再現しようとすると、本来交わるべきでない箇所が交わってしまう。そのため、交差しないように図形を描くには少なくとも4次元の空間でないといけない。
四角い地図による表現
クラインの壺は3次元空間では表現できないが、位置関係は2次元の四角い地図で表現することができる。
コンピュータRPGの世界はトーラスと言われる。それは北の端と南の端、東の端と西の端がそれぞれつながっているからである。さらに、南北の端を行き来する際、東西の位置関係は保たれる(東西と南北を逆にしても同様である)。
では、もし南北の端を行き来する際に、東西の位置が正反対になったらどうだろう。東西の端は南北の位置を保っているので、そのまま円筒状につなげることができる。この状態からさらに円筒の両端(地図でいう南北の端)をつなげることを考える。このときトーラスの形につなげようとすると、東西の方向が正反対になってしまうためできない。しかし、クラインの壺の形につなげると、位置関係まで合わせてつなげることができる。このように、クラインの壺の世界はコンピュータのプログラムをちょっといじるだけで作れてしまうのである。
クラインの壺(小説)
イプシロン・プロジェクトの開発した最新のヴァーチャル・リアリティ・システム『クライン2』。そのテストプレーヤーとなった青年・上杉は、同じテストプレイヤーの梨紗とともにモニターを続けるが、ある日梨紗の友人・七美から、梨紗の失踪を告げられる。七美とともに『クライン2』の謎を調べ始める上杉だったが……。
ヴァーチャル・リアリティによる現実と虚構の崩壊を描いた、岡嶋二人によるSFミステリー小説。新潮ミステリー倶楽部の一冊として1989年に新潮社から刊行。現在は新潮文庫版と講談社文庫版が出ている。
岡嶋二人は徳山諄一と井上夢人による共作ユニットだが、本作はほとんどの部分が井上の手によるもの。本作を最後に岡嶋二人はユニットを解消した。同じVRゲームによる現実の崩壊を描いた高畑京一郎のデビュー作『クリス・クロス 混沌の魔王』は本作との類似を指摘されることが多い。
関連リンク
関連項目
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- なし
- 8
- 0pt