コルテノール級フリゲートとは、オランダ海軍が運用していたフリゲートである。
概要
1970年代にオランダ、ドイツの共同計画によって建造され10隻が就役した。
2003年にオランダ海軍から全艦が退役しているが8隻がギリシャ、2隻がアラブ首長国連邦に売却され活動している。
また、派生型12隻がドイツ、チリ、ギリシャで運用されていたが次第に退役が進んでいる。
スタンダードフリゲート計画
第二次世界大戦前、諸外国は概ね自国の基準に則って独自に艦船を建造していたが大戦後はアメリカ合衆国を中核とする西側、ソビエト連邦を中核とする東側に分かれ、双方の盟主が供与もしくは売却した兵器規格を基準とするようになった。
艦船においては戦時中に艦船、特に駆逐艦やフリゲート、コルベットを消耗した旧来海軍、一度は解体されたが改めて再建された敗戦国、もしくは独立して間もない旧植民地の新興海軍において米英が戦時中に大量生産した駆逐艦、フリゲート、コルベットが売却・供与され、それを元にした艦船も建造され使用されていた。
やがて第二次世界大戦終結から30年近く経つと航空機と潜水艦、それから発射されるミサイル等の進化は著しく、対抗するためにレーダーやソナーといった探知装置、そしてそれらの情報を集約して分析、適切な攻撃判断をする情報処理能力が必要となった。
しかし、前述の艦船群は改装をもってしてもこれらを備えることは難しくなっており、新型艦を求める声が強まりつつあった。
そんな折、NATO加盟国の内、イギリス、オランダ、ギリシャ、ドイツの4か国において大戦型の艦船群を更新する共同軍備計画『スタンダードフリゲート計画』が持ち上がった。これは同盟国である4か国で3000t級フリゲートを共同開発して相互運用性を高めることで運用コストも下げることを狙ったものだった。
しかしイギリスは運用要求が他3ヶ国との相違が多かったことから計画を離脱、ギリシャは財政上の理由から計画参加を縮小したため実質オランダとドイツの2ヶ国が軸となって計画は実施された。
船体
本級は全長130.5m、全幅14.6mの船体にやや高めの艦橋、中央部に煙突、後部にヘリ格納庫を一纏めにした構造物を載せ、基準排水量3050t、満載排水量3630t、乗員176名の陣容となる。
機関はCOCOG方式=巡航用ガスタービン+高速用ガスタービンを採用し最大速力30kt、巡航速度18ktで4500海里となる。
兵装
本級は汎用性=大抵の任務をこなせる様にバランスのとれた兵装を有している。
- 艦首に76㎜砲1門、艦橋前にシースパロー対空ミサイル用8連装発射機を搭載
- 艦橋と煙突の間のスペースに4連装ハープーン対艦ミサイル発射機2機を搭載
- 324㎜3連装魚雷発射管を両舷に2基搭載
- ヘリは2機(リンクス哨戒ヘリ)、格納庫上にゴールキーパーCIWS1基を搭載
- 電子装備はソナー(カナダ製)を除きレーダー、戦術情報処理システムはオランダ製
の陣容となる。
派生型
ヤコブ・ファン・ヘームスケルク級フリゲート
1980年代に2隻が建造された対空ミサイルフリゲート。
前述の通りコルテノール級はシースパローを備えていたが個艦防空用なので射程が26㎞に過ぎず艦隊防空には使いづらかった。
その一方オランダ海軍では艦隊防空+部隊旗艦としてトロンプ級フリゲート2隻をコルテノール級に先立ち建造していたが建造コストが嵩んだ。そこでトロンプ級を補完し、なおかつコストを安くするとして設計を変更して建造されたのが本級である。
本級ではヘリ格納庫とヘリポートを潰してゴールキーパーを艦尾に下げ、その後にMk13発射機を装備し、射程40㎞のSM-1対空ミサイルの運用を可能とした。ただしトロンプ級の様に3次元レーダーは当初装備しなかった。[1]
これはアメリカのオリバー・ハザード・ペリー級フリゲート(以降O.H.P級)に似た構成となるがシースパロー発射機と運用能力は残されており、防空に限ればO.H.P級に優っていると言えるが重量を抑えるため艦首の76㎜砲は外されてしまった。それでもハープーン発射機と運用能力は残されているので水上打撃力ではやや勝った。[2]
この他満載排水量3750t、乗員197名という相違がある。
本級は1986年から2005年まで運用されたが2002年からオランダ海軍が欧州版イージスシステム『NAAWS』を備えかつ127㎜砲とヘリ運用能力も有するデ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン級フリゲートを就役させたことや汎用性に欠けるためトロンプ級に続いて退役したがチリ海軍に売却され運用が続けられた後2020年に退役した。
ブレーメン級フリゲート
1979年から1990年にかけて建造されたドイツ仕様。相違点は以下の通り。
- 機関はCODOG方式=巡航用ディーゼル+高速用ガスタービン。結果航続距離が17kt/5700海里に増大
- コルテノール級の塔型マストに対し本級ではラティスマスト(鉄骨を組み合わせたマスト)を採用
- 船体と艦上構造物(艦橋、煙突、格納庫)を土台部で繋げるのをやめ艦橋、煙突、格納庫の順に分ける
- 後付で格納庫上に21連装RAM発射機2基を搭載
- ソナー、戦術情報処理装置はドイツ式
- 全長130m、全幅14.5m、満載排水量3680tの船体に乗員199人が搭乗。
の陣容となる。
2012年から退役が進められているがコルテノール級や陸軍のレオパルト2の様に海外には売却されていない。
ちなみに後継艦バーデン・ヴュルテンベルク級フリゲートは本級での汎用性を削り仏・ラファイエット級フリゲートと同様の非対称戦にシフトされた艦となる。
エリ級フリゲート
1980年代に2隻のみ就役したギリシャ仕様。
機関構成や電子装備、乗員数は変わらないが格納庫が延長されその上に76㎜砲を追加で載せている。どこのイタリア艦だ。
また、格納庫と煙突の間にファランクスCIWSを2基備え[3]、艦載ヘリがリンクスからAB-212=UH-1に変更されている特徴を持つ。
冒頭で述べたとおりギリシャではオランダから退役したオリジナルのコルテノール級8隻を使用しているが前述の特徴により判別は容易である。
関連動画
- コルテノール級フリゲート(ギリシャ売却艦)
関連コミュニティ
関連項目
脚注
- *後に第一マストの水上捜索レーダーを旋回式3次元対空レーダーに換装した。本級では別に航海用水上レーダーが装備してある
- *O.H.P級では派生型の成功級を除くとMk13発射機から発射されるが運用上、手持ちのハープーンは少ない
- *これに合わせて購入したコルテノール級もゴールキーパーから換装した
- 0
- 0pt