サイアム・ビストとは、小説及びアニメ「機動戦士ガンダムUC」の登場人物である。
待っていた・・・ たったひとつの概要を伝えるために
ビスト財団の創始者(初代当主)。
主人公バナージの父・カーディアスの祖父にあたり、バナージからは曾祖父にあたる。100歳を越える超高齢なのだが、これは後述する使命から人工冬眠(冷凍睡眠)を繰り返し延命し続けているため。
『機動戦士ガンダムUC』というストーリーのキーパーソンにして、「機動戦士ガンダム」の舞台である宇宙世紀の始まりに関わっている人物でもある。
宇宙世紀が始まるよりも以前の、西暦時代の生まれであり、元々は地球の小国に住まう貧しい家の生まれの少年だった。父はテロに参加して命を落とし、残された母と妹を養うために、学校をやめると家業である羊の放牧をして生計を立てていた。しかしその数年後に地球連邦政府の宇宙移民政策によって故郷を追われ、多額の報酬を目当てでテロリストとして、宇宙世紀元年、宇宙空間に建造されたラプラス官邸を爆破するテロに参加することになる。
ちなみにテロ実行犯仲間からは「羊飼い」の名前で呼ばれていた。
テロは成功し官邸は警護の艦隊ごと爆破されるが、仲間と共に作業艇で逃亡する最中偶然にもデブリがぶつかり、外部の配管から燃料が漏れ出す事故が発生した。そのためサイアムはリーダーに命じられるまま船外へ出て作業をしていたが、その折テロリスト実行犯達を口封じに殺害するべく仕掛けられていた時限爆弾が爆発、テロリストが全員死亡する中サイアム1人だけが幸運にも艇の爆発に巻き込まれずに済み、生存する。
しかし爆発の衝撃を受け宇宙空間を飛び回り、「死にたくない」という思考だけが巡りながら宇宙を漂う中サイアムは『スペースコロニーが地球へ落とされる』未来の地獄絵図の幻を見る。そして気がつくとサイアムは爆破されたラプラス官邸へ1人流れ着いており、ラプラスの残骸や破片の中に浮かんでいた『銀色の六角形の、箱状の何か』と偶然の邂逅を果たすと、その後付近を通りかかった民間の船に救助される。
逃亡艇の爆破といい『箱』を手に出来た事といい、そしてテロ事件の現場から生還できたことといい、後に本人も述べているとおり天文学的なラッキーだったともいえるだろう。
『箱』を手にしたサイアムはその後、家族の元へは返らず(テロ事件で戸籍上死亡したとされているため)、連邦政府の体制を覆す力を持つとされる『箱』の力で裏社会で力を持ち始めると、宇宙世紀のはじまりから十数年後に連邦政府と接触、『箱』の力で政府を大きく揺すぶりながらもさらなる力をつけていく。
そしてこの頃から、サイアムが官邸の残骸から持ち帰った物体は『ラプラスの箱』と呼ばれはじめ連邦政府を恐怖させ、サイアムと一部の政府首脳部以外に誰も正体を知らないまま「『箱』が解放されれば連邦政府は転覆する」という伝説だけが一人歩きをはじめていくに至る。
やがてはアナハイム・エレクトロニクスと関係を持ち、当時の専務の娘と結婚、名前も結婚相手の旧フランスの貴族「ビスト家」にちなんでサイアム・ビストとなると、アナハイムの傘下で社会貢献事業を隠れ蓑とした、汚れた金を洗浄するマネーロンダリング組織としてビスト財団を設立する。
そして『箱』の魔力も手伝い、巨万の富を築いたことでビスト財団は巨大な影響力を持つ組織へと拡大していくが、あくまでもビスト財団を作り上げたサイアムの真の目的は後述の、ラプラスの箱を解放する準備のためだった。
現在は人工冬眠の設備を研究施設ごと買収した後、寝たきりとなったまま冷凍睡眠を繰り返し、自身の子や孫が年老いていくという「不自然」を見ながら、『ラプラスの箱』を守り続けるために恥を捨てて生きながらえている。
その後宇宙世紀0079年に、一年戦争を筆頭とする地球連邦軍とジオン公国軍の長きにわたる戦いが始まり、ジオン勢(ネオ・ジオン)の消滅をきっかけに、ついにサイアムは世界へ変革をもたらすために『ラプラスの箱』を解放する決意を果たすと、箱の「守人」として箱を託すに相応しい人物を待ち続けている。
ビスト財団を守る為に、自らの子(カーディアスの父)を暗殺する非情さも併せ持つ。
(マーサが、男社会を憎む一因にもなっている。)
しかし一方で、人の可能性を信じ続けており、バナージを「ユニコーンに相応しい」とも評している。
OVA版が製作されるにあたり、小説版でも描かれたことがなかった少年時代のサイアムは、バナージとどこか似た顔立ちになっている。しかしOVA版ではプロローグでのサイアムには台詞が一切無い事もあり、老体となったサイアムがプロローグで登場した少年と同一人物であることや「ラプラスの箱」とサイアムとの関係が、原作を未読の視聴者には少々わかりにくくなっているのだが。
以下、すべてを伝えよう
ここから下には、ラプラスの箱の正体をはじめ「機動戦士ガンダムUC」の ここから先、お前は選ばなければならない。 決定権はおまえにある。よいな? |
やがてストーリー終盤、父・カーディアスから託されたユニコーンガンダムと共に幾多の試練を乗り越え、始まりの場所でもあるコロニー「インダストリアル7」へと戻ってきたバナージ。
そして、自身がラプラスの箱と共に眠り続ける隠し部屋「氷室」へバナージとミネバを出迎えるサイアム。
自らの「守人」としての問いかけに答えるバナージを見届け、サイアムは『ラプラスの箱』をバナージ達の前に現出させるが、その正体は宇宙世紀の始まりの日に、ラプラス官邸のセレモニーで発表されるはずだった宇宙世紀憲章の石碑だった。「こんなもののために多くの人が」と一時は混乱したバナージだったが、現代に知られているレプリカの石碑とは違いこちらの「オリジナルの石碑」には章が一つ多く書かれているという事実にミネバが気づく。
サイアムに曰く、これこそが「百年に渡り我らを縛ってきた『呪い』にして、同時に『祈り』でもある」という。
かつて宇宙世紀初代首相リカルド・マーセナスを快く思っていなかった極右派の勢力が、ラプラスを爆破することでリカルド達を葬る計画を立てていた事から全ては始まる。これは分離主義者を利用することでリカルドを殺害すると同時に、テロ撲滅を口実として世論を味方につけたり体制を強化する、用済みの分離主義者達を一掃するなどいい事尽くめな計画に思われた。
そのため、改暦宣言と同時にセレモニーで発表されるはずだった石碑が、首相官邸が爆破されたことで消滅したかに思われたが、実際のところは他のデブリ(残骸)と共に宇宙空間へ飛び出していき、その後奇跡的な幸運によって九死に一生を得たサイアムの元へこれまた奇跡的に流れ着く事になる。
連邦政府が自ら仕掛けたテロ事件から生き残った事実と、その証拠たるラプラスの箱が明らかになったことで、事件から数十年後連邦政府は大いに驚愕させられる。それからは連邦政府によってサイアムを暗殺する計画や『箱』を奪う計画が百通り以上考えられたとされるが、サイアムは『箱』の重大性と比較すれば大した問題でもない要求を繰り返すだけにとどめ、連邦政府を本気で怒らせることまではしなかったため、これらの計画が実行に移されることはなかったあたりはサイアムの立ち回りが上手かったためだろう。
しかし当初は連邦政府のスキャンダルを暴くものでしかない筈だったこのラプラスの箱も、ジオン・ダイクンの出現と「ジオニズム(宇宙に適応した新人類『ニュータイプ』にまつわる言論)」によってさらなる魔力を秘めることとなる。当時はリカルド達が何百年~何万年先の未来へ向けた祈りでしかない一文が、ジオニズムの出現と一致してしまった事でいよいよサイアムにとっても連邦政府にとっても、ラプラスの箱は正真正銘、禁忌を封印した箱へと変わっていくのだった。
そして後年に、あの日ラプラスで見た「地獄絵図」が現実となってしまい、コロニー落としが実行されてしまう・・・
ニュータイプの存在が科学的に証明できる手段が具体的に存在しない(=いくらでも拡大解釈や歪曲が可能である)事もあり、何よりラプラスの箱の事実を連邦政府が隠し続けてきた事実そのものが、ジオニズムを信奉する者にとっては最大の武器となる。そのため、既得権益を守ることやテロ事件の真相を秘匿する目的以上に、連邦政府は「一年戦争のような人類全体の悲劇を繰り返させないように」と、真実を隠し続ける事を選択した。
上記の真実を語った後、この石碑が「ラプラスの箱」として秘匿され続けてきた本当の意味を知ったバナージとミネバに対してサイアムはさらに、地球から誕生し進化を続けてきた生物の可能性、そして自らが100年に渡り降り積もらせてきた心の内を全て語る。
その後、サイアムは託したラプラスの箱をどうするかはバナージ達に一任するつもりだったが、「箱を開放する」バナージ達の意志を汲むとコロニー内の「仕掛け」を作動させラプラスの箱を世界へ開放する下準備を行う。
その後、ラプラスの箱を解放し全ての舞台を整え、「守人」としての使命を達成できた事に満足すると、生命維持装置を自らの手で停止、一個の生命体としては長すぎる生涯に幕を閉じたのだった。
サイアムの死後、そしてエピローグで箱がミネバを通して世界へ開放された後、ビスト財団や連邦政府が具体的にどうなったのかは作中では語られていない。だが、コロニーレーザーの直撃から生き延びたアルベルトの「これで連邦政府とビスト財団との関係は御破算だ」という旨の発言や、エピローグ後のマーサの最期からするとビスト財団に関しては「ラプラス戦争」の時代をもって衰退したと見ていいらしい。
そして、箱が開放された後も世界はサイアムやバナージが危惧していた通り、「(箱が開放されても)何も変わらない」未来を辿ったと推測される。少なくとも、本作の数年後~数十年後にあたる「閃光のハサウェイ(マフティー動乱)」や「機動戦士ガンダムF91(コスモ・バビロニア戦争)」を見る限り、サイアムやリカルド首相、バナージ達の思いとは別に戦乱がこの後も続いていく事は確定している。
OVA版では永井一郎がCVを担当。ちなみに同作では他にもモブキャラの役でも出演している。
ガンダムUCの原典たる「機動戦士ガンダム」のナレーションを務めた永井氏が本作でサイアムを演じるにあたり、機動戦士ガンダムのナレーションはサイアムのナレーションであるとする設定が追加された。
もしも、本当に「ニュータイプ」が存在するのなら・・・
彼らにこそ『ニコニコ』を託したい
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「たったひとつの望み」は、ニコニコユーザーの数だけある。
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