ジギスムント2世とは、「銀河英雄伝説」の登場人物である。
概要
ゴールデンバウム朝銀河帝国第7代皇帝(在位R.C.144-159)。もとブローネ侯爵。
その金の亡者ぶりによって国家を破綻させかけた「痴愚帝」として知られる。
人呼んで「史上最悪の黄金狂」「歴史上最大の禁治産者」とも。
その統治は、のちの暴君アウグスト2世流血帝のそれに対照的な「いちじるしい不公正」が特徴といわれる。王朝創立以来1世紀半、悪評を持つ皇帝が決して存在しないわけではなかったが、国政に直接関わり、国家を傾けるかたちの「暗君」は彼ジギスムント2世がその嚆矢といえるだろう。
即位まで
第4代オトフリート1世の弟である第6代ユリウスの長男フランツ・オットー大公の次男の息子。
実質的な摂政を務めていたフランツ・オットー大公が皇太子のまま75歳で薨去した後、その長男が早逝していたため長男の子のカール大公が皇太曾孫に立てられたが、どうやらフランツ・オットー大公の次男も早逝していたらしく、長男でブローネ侯爵であったジギスムントが帝位継承権第二位を有する皇族となった。
そして帝国暦144年、ユリウスがその長寿を畏れたカール大公に毒殺される事件が発生する。ジギスムントはそれを密告によって知るとカールを幽閉し、自ら第7代皇帝の帝冠を戴いた。
「史上最悪の黄金狂」
国庫の富は、皇帝個人のものでなければならない。国家臣民のために皇帝が富を消費するなどありえない。それが、ジギスムント2世の考えだった。彼はとにかく金を、銀河のありとあらゆる富を、自らのもとに収めようとした。
強欲に取り憑かれた銀河系の最高権力者は、富を得るために国政を切り売りすることを選んだ。徴税権の売買というあり得べからざる手段を選んだことを皮切りに、刑事犯の金銭による贖罪を許し、さらに寵姫を手に入れる時は持参金を、下賜するときは結納金をそれぞれ要求することまでした。彼には国務尚書ヴァルテンベルク侯爵、財務尚書ルーベン男爵、それに軍務尚書元帥ナウガルト子爵という3人の腹心がいたが、いずれも黄金狂に堕ちた皇帝を諌めようとはせず、かえってそれに協力して私腹を肥やす有り様だった。
そうまでして集めた金銭を、彼は自身の豪奢な生活に飽くことなく消費した。具体的には「プールの底にエメラルドをしきつめ、真珠を酢に溶かして飲」んだという。そんなに酸っぱいのが好きだったのだろうか……?
ジギスムントはそれまでの皇帝と違い死後の世界にも興味を持っていたらしく、生きている間に死後の準備を整えさせた。彼のために用意された巨大な棺はプラチナとダイヤモンド製のミラーボールのような代物であり、さらに黄金の美女像を600体鋳造させて死後の後宮としたという。始皇帝もドン引きである。まだ兵士の像のがまともでは。
こうして、フランツ・オットー大公の摂政期に再建を果たして以来、一応の安定を保っていた銀河帝国の国庫は、わずか15年で崩壊の危機に追い込まれた。
退位
しかしジギスムントはまだ飽きたらなかった。帝国暦159年、彼は財産を没収し我が物にしたい、というただそれだけの目的で、無実の罪で豪商300人を一族係累まとめて捕らえ、死刑に処したのである。
事ここに至り、彼に比べはるかにまともな人物であった皇太子オトフリートはプッツンした。マジギレした。ジギスムントは荘園に幽閉され、第8代皇帝オトフリート2世となった皇太子はジギスムントの腹心を処刑し、ほか官僚豪商あわせて六万人に及ぶ既得権者を罰し、全財産を没収して「まともに」国庫に加えた。そして「フランツ・オットー大公の時代への回帰」という一事だけに持てる全力を注ぎ、在位6年にして過労死した。
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関連項目
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