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ステンガンとは、イギリスが第二次世界大戦中に開発・運用した短機関銃である。
概要
ステンガンはイギリスで開発された短機関銃である。重量は約3.2kgで使用弾薬は9mmパラベラム弾。左側面から差し込む水平式の32連箱形弾倉を備え、発射レートは毎分約500発であった。極めて高い生産性が特徴で、大量に生産されたためイギリス軍のみならずドイツ占領下の地域に潜むレジスタンスや世界中の国（戦後の話も含む）で使用された。
開発の契機は1940年、ダンケルクの戦いとバトル・オブ・ブリテンである。ダンケルクの戦いでは欧州本土からの撤退とそれに伴う多数の装備放棄により、銃すら持たない万単位のイギリス兵・フランス兵がイギリス本土に駐留することとなった。バトル・オブ・ブリテンではドイツ空軍の爆撃によりイギリス国内の工場が破壊され、イギリスの生産能力は少なからぬ損害を受けることとなった。
この結果、イギリスでは打撃を受けた生産能力で多数の兵士を短期間で武装させるという無理難題が発生。アメリカからトンプソン・サブマシンガンを（イギリスに可能な範囲でだが）ありったけかき集めるなどするが、それでも軍の需要を満たすことができず、最終的にイギリス軍の歩兵用小火器の開発製造を行ってきた王立エンフィールド造兵廠に「生産性の良い短機関銃を作れ！」と白羽の矢が立つことになった。
この無理難題に立ち向かったのがシェパード少佐とターピン技師である。二人はイギリス軍が鹵獲したドイツ製短機関銃（MP28とMP40）を徹底的に調査・解析・研究し、結果として完成したのがステンガンであった。なお、ステンガン(Sten gun)の名前はこの二人（Shepherd, Turpin）と開発が行われたエンフィールド（ENfield）の頭文字を取ったものである。
ステンガンの最大の特徴はその生産性の高さにある。ボディは筒状のパイプで、中のボルトも筒状、グリップに至っては親指を通す穴をあけただけの鉄板でとても作りやすい形状をしている。最初期の試作品には木製のフォアグリップやフラッシュハイダーなどがついていたが、生産性向上のために改良型では即刻削除された。その代わり、銃前方にストラップがとりつけられ、射撃時にはこれを左手で掴んで銃口の跳ね上がりを抑えることができた。
こんな風に省力化した結果、ステンガンは町工場でも作れる短機関銃としてイギリスのみならずカナダやオーストラリア、果てはレジスタンスの手によって生産され[1]、その生産数は全てのバリエーションを含めるとおよそ400万丁と言われており、ドイツ製MP40の生産数100万丁（推定）を大きく上回っている。[2]
しかし、生産性を優先した結果としてステンガンの性能は良くなかった。初期から弾倉の不具合が多発し、支給されたらまず分解して調整する必要があった。ステンガンは右手でグリップを握ると、左手で弾倉と弾倉を差し込む部分を握りこんで構えたくなる形状をしていたが、これをやると弾倉内の給弾角度が変わって給弾不良を引き起こした[3]。加えて、精度の低い加工しかできない町工場でも作れるということは、同時にそれだけステンガンの命中精度が低くなることを意味していた。このため、性能はMP40、トンプソン・サブマシンガンよりは低いとされている。
ただし、コンパクトさ、伏せ撃ちしやすい弾倉形状、弾丸はドイツ軍から殺してでもうばいとるが可能、の三拍子そろっていたためレジスタンスには比較的好評だったようである。
ステンガンは1941年イギリス軍に採用され、1953年に後継のスターリング・サブマシンガン[4]が採用されたことでイギリス軍からは退役した。しかしそれ以降も世界中で使用され、珍しい例をあげるとアメリカ軍特殊部隊がベトナム戦争でサプレッサーを装着したステンガンを使用したと言われている。
メディアにおいては、第二次世界大戦のイギリス軍が登場する映画、ゲームなどに登場する。ゲームでは特にFPSで登場し、BF1９４２や、メダルオブオナーライジングサン（サプレッサーを装着した派生型が登場）、CoD:BO（1ステージのみ）などがその例である。
関連動画
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関連項目
脚注
- *中には、ステンガンをベースに独自の短機関銃を設計・生産したレジスタンスまでいた
- *余談だが、WW2の有名所の短機関銃の生産数をあげていくと、日本の一〇〇式機関短銃は僅か1万丁で、フィンランドのKP/-31が8万丁。アメリカのトンプソン・サブマシンガンは270万丁（民生用含む）、M3グリースガンは60万丁。ソ連のPPSh-41は500万丁、後継のPPSが「生産数を抑えて」100万丁が生産されたとされている。まさにУра！
- *本当はマガジンより前の部分を握る。
- *フォルムなどは非常に似ていて混同されることもあるが、性能はスターリングの方が段違いに良い
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