『スナッチャー』(SNATCHER)とは、コナミ株式会社(現:コナミデジタルエンタテイメント株式会社)が開発したアドベンチャーゲームである。メイン制作者は『メタルギア』シリーズや『ポリスノーツ』でおなじみの小島秀夫監督。
概要
最初の発売は1988年11月。NECのパソコン『PC-8801』対応(mkⅡSR以降)のゲームとして発売。その後MSX2でも発売。後半のJUNKER本部での戦闘の後の話『act.3』は『SDスナッチャー』で明らかになったが、1992年10月発売されたPCエンジンCD-ROM^2で『SNATCHER CD-ROMantic』で話が一本化された(ただし省略された部分もある)。
その後、他機種(海外版メガCD/セガサターン/プレイステーション)に移植されたものは、PCエンジン版をベースにしているが、グラフィックやキャラクターデザインが一部変更され、プレイステーション版は残酷描写への規制対策として一部にモザイクが掛けられている。PC-8801版、MSX2版、PCエンジンCD-ROM^2版のスタッフは「ポリスノーツ」の開発のため、小島自身も含め移植版には参加していない。
作品世界は、登場人物から「パッケージ絵」に至るまでリドリー・スコット監督の映画『ブレードランナー』(BLADE RUNNER)の影響を強く受けており、監督自身もそのことを後に認めている。他にも、スナッチャーのデザインが某ターミネーターにクリソツだったり、ストーリーの根幹となるアイデアがフィリップ.K.ディックの「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」(ブレードランナーの原作)だったりと、ネタ元については割りと露骨であり、ゲーム中の隠しイベントなどもそうしたパロディーが多い。
そのためか、後年コナミ社が自社作品の著作権対応をきつく締めだした際に、「(スナッチャーは)リドリー・スコットの許可は取ったか?」とゲームファンに笑われることになった。
世界観は本作の前に制作された『メタルギア』(METAL GEAR)シリーズと一部が共通している。
本来は「JUNKER」というタイトルにしたかったそうだが、某メーカーが「雀華(ジャンカ)」というソフトを出していて、商標が取れなさそうだから泣く泣く「SNATCHER」にしたと『チャレンジ!! パソコンAVG&RPG V』(山下章著、1990年発行)に開発こぼれ話として書かれている。
プロローグ
1991年6月6日。
モスクワチェルノートン研究所、謎の大爆発。
当時ひそかに研究開発中であった細菌兵器『ルシファー(魔王)α』が 大気中に漏れるバイオハザードが発生。
上昇気流に乗った『ルシファー(魔王)α』は東欧諸国、ユーラシア大陸の 約80%を壊滅。
この時、世界の半分が死滅した。しかしこの時、半世紀後に、恐るべき真のバイオハザードが来るであろうことを 誰が想像したであろうか。
50年後。
人類は異常な危機に直面していた。 謎の生命体、バイオロイドの出現である。
国籍、目的、正体不明。 某国の新兵器か、外界からの侵略者か。
彼らは冬になると現れ、人を殺害。 密かに本人とすり替わり、社会に浸透していく。
人工の皮膚を纏い、汗をかき血を流すこともできる。 極めて、有機的かつ、無機体そのもの。
オリジナルとの見分けはほとんどつかない。
彼等は人の身体を奪い、すり替わる事から、スナッチャーと呼ばれた。人かスナッチャーか?
―――無限の恐怖は対スナッチャー用特殊警察班を生んだ。 危険を買う訓練された、非情の男達。
それは……『Judgement Uninfected Naked Kind&Execute Ranger』
人々は彼等をJUNKER(ジャンカー:鉄屑処理人)と呼んだ。
登場人物
- ギリアン・シード(屋良有作)
本作の主人公。記憶喪失のため年齢は不明。(推定年齢31歳)旧ソビエト連邦・シベリア中立領土より「シベリア探索隊」に発見・救助された。その後、軍(新日本軍)のトレーニングを経て、スナッチャー特捜班“JUNKER”(ジャンカー)の捜査官“RUNNER”(ランナー)となる。 - メタルギアmk-Ⅱ(小山茉美)
JUNKERの技術チーフ、ハリー・ベンソンによって設計された、ギリアン専用のサポートロボット。20世紀末の核搭載重歩行戦車“METALGEAR”をそのモチーフとしている。通信・現場索敵機能・遺留品鑑識機能・現状記録機能をもつ。 - ジェミー・シード(井上喜久子)
ギリアンの妻。推定29歳。ギリアン同様に「シベリア探索隊」に救助され、記憶喪失。ギリアンとは2年前から別居中。現在はネオコウベ市内の製薬化学メーカー勤務。 - ベンソン・カニンガム(納谷悟朗)
元“FOX HOUND”の戦略教官。経歴を買われ、JUNKERのリーダーとして指揮を執る。「ヘッド」「局長」と呼ばれる。 - ミカ・スレイトン(冨永みーな)
JUNKERの受付嬢、兼オペレーター。イスラエル系日本人。多言語で会話できる他、情報処理・分析のスペシャリスト。 - ハリー・ベンソン(槐柳二)
技術チーフ。JUNKERで捜査官が使用する「レイガン(光線銃)」や「サポートロボット」の開発・整備に携わる。幼少の頃から天才技術者として高い評価を得ていた。「大惨事」で両親を亡くしている。似た境遇のジャンとは友人。
ギリアンの顔になにか見覚えがある、という。独身。 - ジャン・ジャック・ギブスン(井ノ口勲)
スナッチャーによる「JUNKER狩り」を逃れた利き腕の先任捜査官。相棒のサポートロボットは「リトルジョン」。
14歳になる一人娘のカトリーヌがいる。ミステリー小説や映画が好き。 - カトリーヌ・ギブスン
ジャン・ジャック・ギブスンの娘。端麗な容姿の持ち主であることからスカウトされ、モデルとして活躍中。母を幼いころに亡くし、現在は父のジャンと二人暮し。 - イザベラ・ベルベット
映画女優。ネオコウベの繁華街にある高級店“OUTER HEAVEN”で踊り子をしていた時代に、映画監督のリドリー・スコッティーに見出されデビュー。代表作は『みつばちのキッス』など。大スターとなった後も、「恩返しのため」ときおりステージに立つ。 - ランダム・ハジル(塩沢兼人)
一市民でありながらスナッチャーを捜査・駆除する「バウンティー・ハンター(賞金稼ぎ)」のひとり。トップの実力を持ち、その能力は訓練されたJUNKER捜査官にも引けをとらない。本来、民生用レイガンでスナッチャーの弱点の「眉間」を打ち抜くのは至難の業だが(民生銃では出力が足らず、普通以上に収束しなければならない。よって狙いの範囲は狭くなる)、それをいとも簡単にやってのける。 - 「ナポレオン」
NATO-中国軍の間で戦われた「第三次世界大戦」以降、日本に流入してきた中国人の情報屋。本名は不詳。ネオコウベの裏事情に精通しており、ジャンも利用していた。「スノースギ」の花粉症に悩まされている。化学の知識が有り、本来は戦争さえなければエリートのはずであった。本作と同じ小島秀夫作品である「ポリスノーツ」にも、おまけ的にチラリと登場する。
世界情勢
//準備中
用語解説
- 大惨事
1991年6月6日、モスクワ郊外の「チェルノートン研究所」爆発事故(原因はいまだもって不明)による細菌兵器「ルシファーα」漏洩により引き起こされた被害の総称。旧ソビエト連邦だけでなく、旧東欧、西ヨーロッパの一部、中央アジアなどユーラシア大陸の80%を壊滅させた。植物や家畜を含めあらゆる生命が死滅したといわれている。
※海外版(SEGA-CD)では1996年6月6日の設定になっており、本編の時代設定も2042年→2047年に変更されている。 - ルシファーα(アルファ)
旧ソ連、チェルノートン研究所で開発されていた毒性の強い細菌兵器。爆発事故で大気中に漏洩し「大惨事」を引き起こした。
日本への到達も予想されたが、シベリア付近で無害化。 - シベリア中立領土
「大惨事」後に無人となった旧ソ連邦の領土は、国際条約により「どこの国にも帰属しない土地」として取り扱われることとなった(現在の南極の扱いに似ている)。「シベリア」とあるがウラル以西も含む。
この国際条約に反し、シベリア中立領土へ侵攻した中国軍とNATOの間で「第三次世界大戦」が引き起こされた。 - シベリア探索隊
ルシファーα無害化後、壊滅した地域の現状調査のため調査隊として送られている。記憶喪失のギリアンとジェミーを発見、救助したのも探索隊である。 - 第三次世界大戦
別名「一週間戦争」ともいう。「大惨事」による崩壊後の旧ソビエト領内は、上記のとおり「シベリア中立領土」として国際条約の下で、どこの国の主権も及ばない土地として管理されていた。
しかし中国軍が突如「シベリア中立領土」へ侵攻。自国領土への編入を宣言。これに対しNATO軍が応戦。結果中国軍は潰走・敗北した。この戦争ではスノースギなど「遺伝子操作の生物兵器」が実戦使用された。
この戦争の混乱で大量の中国人難民が発生。ネオ・コウベ・シティーへの大量流入を引き起こした。 - スナッチャー(SNATCHER)
国籍不明・正体不明・目的不明のロボット。「バイオロイド」とも呼ばれる。毎年冬になると現れる。
神戸・六甲山中への航空機墜落事故によりその存在が明るみに出た。
スナッチ対象の人物を殺害、その人物に摩り替わって社会に浸透する。社会的地位の有る人物、またはそういった人物に接触しやすい人物、機密情報へのアクセス権限を持つ人物が狙われやすいと考えられている。(現にこれまでスナッチが発覚した人物は、暴力組織の幹部やネオコウベ市長など、社会の裏表に関わり無く「有力な人物」である。)
人工皮膚を纏い、汗や血を流すことも可能(人種・血液型もスナッチ対象に合わせられる)。
基本骨格構造は男女の別が無く、骨格スリットの調整と人工の男性器/女性器(SEXユニットと呼ばれる)の装着によって、スナッチ対象の性別に化けることができる。ただし骨格スリットの性能限界から、極端な身長(高すぎる/低すぎる)をもつ人間や子供、老人はスナッチできないと結論づけられている。
公安側も幾つかのスナッチャーサンプル体を入手したが、いずれも自爆や盗み出されるという結末を迎え、完全解析には至っていない。上記のスナッチ可能な対象範囲と、唯一の弱点が人間の頭部でいう「眉間」にある、骨格スリット部ということだけ判明している。 - JUNKER
『Judgement Uninfected Naked Kind&Execute Ranger』(人間かどうかを判別し処理する捜査隊)の略。
英語の「鉄くず屋」にもひっかけてある。政府直属のスナッチャー専門捜査機関である。
ドイツのネオナチ「ユンケル党」(綴りは同じ)とは一切関係が無い。 - RUNNER
JUNKERに所属する対スナッチャー専任捜査官。ギリアン・シードは軍の特殊訓練の後、志願してJUNKERに配属されている。配属時にはギリアンを入れて二人しかいない。過去にスナッチャーによる「JUNKER狩り」が行われたためである。 - ネオ・コウベ・シティ
六甲アイランドその他の埋立地を連結・拡大し発展した人工島。本来の兵庫県神戸市からは、行政区分が独立されるまでに巨大化している。大惨事や第三次世界大戦以降、亡命者が(合法・非合法問わず)流入。「日本でありながら日本でない」状況になっている。こういった混沌とした状況がスナッチャーの温床になっていると主張する者もいる。 - ガウディ
ネオコウベシティーの交通システムなどの生活基盤をコントロールする巨大なコンピューター。居住市民のデータなど、あらゆる情報の蓄積も行う。逆に言えば「ガウディ」に登録データが無い人間は、非合法居住者など訳ありの「死んだも同然」の人間である。
メタルギアmk-Ⅱの元になった「TX-55型メタルギア」の設計データも、ここに蓄積されていた。
なお、惑星グラディウスで戦闘機「ビックバイパー」「メタリオン」に搭載され使用されるナビゲーションコンピューターも同じ名前だが、関連性は不明。 - スノースギ
遺伝子操作で作られた「生物兵器」の一種。実際は杉ではなく「ブタクサ」の改造種(しかし実際の杉程の大きさがある)。花粉には電波障害を起こしレーダーの精度を下げる作用がある。第三次世界大戦で陣地防御に使用されたものが野生化、ネオコウベ市内では人工河川「イナ川」流域で大繁殖している。花粉には別の作用として「アレルギー作用」があり、花粉症に悩まされるものも少なくない。 - バウンティー・ハンター(賞金稼ぎ)
スナッチャー対策がJUNKERのみでは対応しきれないと判断した政府によって、スナッチャー処理に対し賞金を課すことで市民有志の参加を募った、対スナッチャーの制度。JUNKERとは別に独自の捜査をし、スナッチャーを発見、処理する。登録することで民生用光線銃の所持許可を持つ。
有力なハンターの一人にランダム・ハジルがいる。
しかし過去にはバウンティーハンターの誤認により人間が殺害される事件が発生しており(ハンターは起訴され有罪とされた)、その制度自体の是非を問う声も大きい。
関連動画
各機のオープニング
関連作品
スナッチャーの世界と共通する作品。
左の『スピードキング』は、スナッチャーの設定にもあった、「ネオコウベの地下鉄『チューブライナー』の廃線跡で行われている非合法レース」という設定を活かしたもの。右はメタルギアmk-2のもととなった、TX-55メタルギアの登場する『メタルギア』第一作。ファミコンにも移植されたが、MSXとFCでマップ構成の一部が異なっている。
関連項目
- コナミ株式会社
- コナミ矩形波倶楽部
- ポリスノーツ
- メタルギア
- 小島秀夫
- 須田剛一(本作のインターネットラジオドラマの脚本を担当。同ドラマはドラマCDとしても発売された。)
- 山岡晃(上記のインターネットラジオドラマの音楽を担当。)
- ブレードランナー
- サイバーパンク
- チェルノブイリ原子力発電所
- 花粉症
- 漢字周期表
- scarlet(東方×スナッチャー)
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