スペースランナーRAとは、UDトラックス(日産ディーゼル工業)が製造していた大型バスである。主に路線バスや自家用バスとして導入された。
概要
日産ディーゼルの路線バスシリーズはかつて特に名称がなく、型式名称としてR/RA⇒U/UA⇒UA⇒RA⇒スペースランナーRA/スペースランナーA(三菱ふそう・エアロスターのOEM供給車)という変遷を辿った。この記事ではUA系以降を扱う。
日産ディーゼルは自社内やグループ内にバス車体製造部門を持たず、車体は資本関係のないコーチビルダーの富士重工業や西日本車体工業で製造していた。2003年までは東日本の事業者では富士重、西日本の事業者では西工という棲み分けがあったが、同年以降富士重がバスボディの製造を行わなくなったため2007年までは全ての車体が西工製となった。2007年発売のスペースランナーAは三菱ふそうバス製造製の車体を架装する。なので車体の見た目が変わってもそれはコーチビルダー側のモデルチェンジであり、日デ側のモデルチェンジとはいい難い。
末期にはノンステップバス、ワンステップバス、標準床ツーステップバスの3種類が存在し、唯一のホイールベース5.8mのノンステップバスもラインナップされていた。
UA系
U-UA系
従来のU/UA系ではサスペンションが板バネの場合はU系、エアサスの場合はUA系と表記していたが、このモデルからはエアサス・リーフサス関係なく大型車はUA系を名乗るようになり、サスペンションの識別は末尾のアルファベットで行うようになった。
標準出力のU-UA440系、高出力エンジン車のU-UA510系、UA510系より更に高出力のエンジンを積んだU-UA520系の3種類をラインナップ。
車体は富士重の場合17E・17B型、西工の場合58MCを架装する。
5台しか製造されなかった珍車でフルワンステップバスが存在する。東京都交通局(都営バス)向けに導入された車両で、試作車は3ドア、量産車は2ドア前中ドア配置だった。1995年には都市低床仕様をベースにしたワンステップバスが納車されている。
KC-UA系
平成6年排ガス規制適合車種。エンジンは新型のPG6型(235馬力)を搭載。標準出力車をベースに蓄圧式ハイブリッドバスのERIPも登場している。
車体は富士重と西工で架装。西工は当初は58MCを架装し、96MC登場後はそちらを架装している。
この代よりノンステップバスが登場。まず車内後部までフルフラットのノンステップで富士重車体を架装するFタイプが登場。ドイツのZF社からトルクコンバータATやドロップアクスルなどを輸入して製造された。
しかしFタイプは構造が特殊であり高価なこと、AT車しか対応しないためにMTノンステを求める事業者からの要望もあって、MTのワンステップバスをベースに前ドアから中ドアまでノンステップで中ドア以降に段差を設けた割り切りタイプのノンステップ車が2000年に登場。こちらはGタイプと呼ばれ、後にノンステップバスのデファクトスタンダードとなった。
KL-UA系
2000年6月に平成11年排ガス規制へ適合し登場。エンジンは過給器付きのPF6H系を搭載し、高出力車もエンジン設定で対応した。
ホイールベースはK尺(4.8m)、M尺(5.3m)、P尺(5.8m)、T尺(6.5m)の4種類を用意。ただしT尺はエアサス・高出力のみの設定。
車体はやはり富士重と西工で、富士重は17E・17B車体の一部改良で軽量化などを実現した新17E・17Bを架装するが2003年までの製造となる。以降は西工に一本化された。
この代でのノンステップバスはフルフラット・ATで富士重車体のFタイプ、前中ノンステ・MTで西工車体のGタイプに加え、2003年にフルフラット・ATで西工車体のNタイプが登場。NタイプはFタイプの後継で、エンジンをリアアンダーフロアに縦置きにして横方向にオフセット、デフの位置をずらすことで中ドア以降の低床化を実現した。Nタイプの構造は三菱ふそうのニューエアロスターノンステップの初期型に近いが、エンジンをオフセットする位置がふそうとは逆になる。
RA系→スペースランナーRA
2005年6月、大型路線系として初めて新長期規制に適合。このモデルよりエンジンが「縦置き横倒し」から「縦置き直立」配置に変更されたため、シリーズ名がUAからRAへ変更された。これにより観光系のスペースアロー・スペースウィングと同じシリーズ名を名乗るようになった。
ADG-RA273A系
エンジンは尿素SCR触媒、超高圧燃料噴射、酸化触媒を組み合わせた「FLENDS」システムを装備したMD92TJ型(300馬力)を装備。
ホイールベースは、K尺(4.8m)、M尺(5.3m)、P尺(5.8m)、T尺(6.5m)の4種類を用意。T尺以外はノンステップ化にも対応している。車体は西工B型96MCを架装するが、灯火規制の関係でKL-UA系の96MCとはリアコンビネーションランプの配置やフェンダーアーチの形状、窓割り、サイドリフレクター、尿素水補給口追加などの違いがある。
トランスミッションは路線車が直結5速MT、ZF社製のOD5速AT(K尺・M尺のみ)を設定し、近距離高速と自家用仕様はOD6速MTのみを設定した。MT車はいずれもフィンガーシフトを標準装備としている。
尿素SCRを装備しているので給油1~2回毎に尿素水溶液AdBlueの補給が必要。
PKG-RA274A系・PDG-RA273A系
2006年6月、路線用5速MT車と自家用6速MT車のT尺車が平成27年燃費基準を達成。型式がPKG-RA274A系になった。また新長期規制と比較して10%PMの削減も実現している。
一方自家用T尺以外の6速MT車とノンステップ5速AT車に関しては後述するエアロスター-Sと共に2007年9月頃にマイナーチェンジを実施。新長期規制比PM10%削減飲みを達成したPDG-RA273A系となった。
エンジンは先代と同じMD92TJ型だが、元々の燃費性能が良かったので特に手は加えられておらず外観の識別点は非常に少ない。識別点と言えばリアに貼られるステッカーと汎用ランプ装備車のランプぐらいである。
その後PDG-規制のスペースランナーRM/JPの発売とほぼ同時期にリアランプが縦型テールランプ(通称:シビリアンテール)からゴールドキング製の汎用型テールランプに変更されている。
ラインナップはノンステップ・ワンステップ・自家用ツーステップ・近距離高速用ツーステップを設定。
なお日産ディーゼルと三菱ふそうは2007年5月よりバス製造事業の提携を開始。ノンステップ車は三菱ふそうに供給され「エアロスター-S」として販売を開始した。スペースランナーRAとエアロスター-Sに外観の違いは全くと言っていいほど無く、識別点と言えばステアリングホイールのロゴぐらいである。型式はふそうへの供給分はAAを名乗る。
型式は以下の表の通り。空欄は設定なし、WBはホイールベースを意味する。
WB4.8m | WB5.3m | WB5.8m | WB6.5m | |
---|---|---|---|---|
5速MT路線 | PKG-RA274KAN | PKG-RA274MAN | PKG-RA274PAN | |
5速AT路線 | PDG-RA273KAN | PDG-RA273MAN | ||
6速MT高速 自家用 |
PDG-RA273KAN | PDG-RA273MAN | PDG-RA273PAN | PDG-RA273TAN |
2010年10月施行の平成22年排出ガス規制には適合せず、同月を以て西日本車体工業が解散することから、同年8月を以て製造を終了した。
スペースランナーA
三菱ふそう・エアロスター(ニューエアロスター)MP系のOEM供給車。車体は三菱ふそうバス製造製で、エンジンはリアアンダーフロアの縦置き横倒しである。つまりUA系と同じ配置。
PKG-AP35U系
2007年10月発売。エアロスターPKG-MP系が日産ディーゼルへ供給されたもの。車体こそエアロスターだがエンジンと排ガス処理装置は日産ディーゼル製である。
ワンステップとツーステップのみのラインナップでホイールベースは短尺のK尺、標準尺のM尺、長尺のP尺の3種類が用意されたが、K尺はツーステップには設定がなかった。
エアロスターとの識別点はステアリングホイールのエンブレムぐらいである。
トランスミッションはOD付5速MTが標準。直結5速MTはオプション設定。
LKG-AP系
2010年5月発表。エアロスターLKG-MP系がUDトラックスへ供給されたもの。先代は日産ディーゼルのエンジンを積んでいたが、この代では三菱ふそう製の6M60(T2)型を搭載し、排気量が7.5リットルまで小さくなっている。
ワンステ・ツーステの他、ノンステが追加設定された。これによりLKG-AP35系(ワンステ・ツーステ)の他、LKG-AP37系(ノンステップ)が追加設定された。
ホイールベースは先代と同じ。ただしノンステにはP尺の設定はない。
トランスミッションはアリソン製の6速ATのみで、MTがオプション設定からも排除された。
2011年4月頃販売を終了。これによりUDトラックスはバス事業から完全撤退となった。
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関連項目
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