スリーハンドレッドとは、
本項では2.と3.について述べる。
概要
ペルシア帝国対ギリシア都市国家連合との間に起きた「ペルシア戦争」における「テルモピュライの戦い」を題材とする。
スパルタ王・レオニダス(レオニダス一世)を中心人物として描いた作品。
時は紀元前480年。
古代ギリシアのスパルタは軍事に支えられた都市国家であり、子供は親と引き離されて厳しい訓練の末に兵士となる事を義務付けられていた。また生まれる赤子は長老により厳しく詮議され、虚弱なものは山に捨てられ殺されるという掟が存在した。都市国家で構成されるギリシアへの侵略を開始したペルシア帝国の「神王」クセルクセス。
まずはスパルタに対して服従を要求してきた使者に対し、スパルタ王・レオニダスはこれを拒否して使者を皆殺しにした。
しかし巫女の託宣により、戦争を行ってはならないと決定されてしまう。託宣は絶対であり、たとえ王といえども従わねばならないものだった。このままではスパルタのみならずギリシア全土がペルシア帝国に併吞されてしまう。そう考えたレオニダスは、ペルシア帝国100万の軍に対し、僅かに300人の兵士を供として「散歩」と称して出陣。最愛の妃を残して運命の地・テルモピュライへと赴くのだった。
コミックは1999年に「漫画のアカデミー賞」と呼ばれるアイズナー賞を受賞しており、「シン・シティ」と並ぶフランク・ミラーの代表作である。
映画は日本国内においてR-15指定にて公開。レジェンダリー・ピクチャーズ創成期の作品であり、同スタジオは後に「ダークナイト」を輩出し更に注目されるようになる。
後日地上波で放映されたが、斬首シーンなどの残酷な場面はカットされた。仕方ないね。
その後2014年に映画の続編「スリーハンドレッド~帝国の進撃~」が公開されたんだけど、題材は「サラミスの海戦」である上、アテナイの将軍・テミストクレスと、ハリカルナッソスの女王・アルテミシアに主眼が置かれており、スパルタはほとんど関与していない。評価はお察しください。
ニコニコ動画では嘘字幕による「夏コミのスタッフを300人のスパルタ人に任せてみた。」が有名。
そのあつくるしい性質上、ネタにされやすいのは海外でも変わらないようで、アメリカ同時多発テロ事件における実話を題材とする「ユナイテッド93」と悪魔合体した「ユナイテッド300」や、時事ネタをふんだんに盛り込んだ低予算丸出しの「ほぼ300」というパロディ作品がリリースされている。
登場人物
スパルタ
レオニダス
スパルタ王。国の掟に従い、幼少時から戦に身を置く最強の戦士。
王妃との間に息子を設け、王として、また戦士としての心得を教える良き父でもある。また時に冗談や皮肉を口にしては、慇懃無礼に敵を煙に巻く。
ペルシア帝国からやってきた使者の降伏勧告を拒絶して剣を突き付けた時に「狂っている!」と罵られると「これがスパルタだ!(THIS IS SPARTA!)」と言い放ち、奈落の穴に蹴り落として殺害。帝国との対決姿勢を露わにする。
ペルシア帝国100万の軍を相手に寡兵で持ちこたえるが、内応によって裏を突かれた事で絶体絶命の窮地に陥る。「神王」を前にして跪くかに見えたが、その「神王」に血を流させる事のみを望み、最後の攻撃に打って出る。多くの兵士らと共に矢の雨に打たれて戦死するが、その勇敢な戦い振りはディリオス達によってギリシア全土に知られる事となった。
ゴルゴー
レオニダスの妻で、スパルタ王妃。原作には名前が出ず、少し顔を見せる程度。
美しく才知に富んだ実在の女傑であり、聡明さを伝える逸話が多く伝わっている。映画では夫の戦いの裏で他の都市国家に協力を要請する為、独自の戦いを展開した。
レオニダスに対しては「たとえ盾に乗せられても(死体になっても)戻ってきて」と告げて見送った。
その後、議会での弁護と引き換えに自らを凌辱しながら約束を反故にしたアテナイのセロンを議場で殺害。彼がペルシア帝国に内応した裏切者である事を暴露した。また最愛の夫の旅立ちに際して渡した狼の牙の首飾りはディリオスによって持ち帰られ、我が子へと受け継がれる。
隊長
個人名は原作でも映画でも設定されていない。
レオニダスの腹心であり、歴戦の猛者。大体隣にいる。
原作では、行軍中に足がもつれて転倒したステリオスを鉄拳制裁するなど、未熟な若者に対しては非常に厳しく接する。
一方で自分の息子(アスティノス)を大切に思う一面もあり、必ずしも冷酷な訳ではない。
アスティノスが不覚を取って戦死した時は狂乱して泣き叫び、彼を守護しなかった神々に恨み言を口にする。最後までレオニダスに付き従い、運命を共にした。
ステリオス
300人の兵士の一人。若輩者。
原作では、夜に昼を継ぐ行軍中に転倒した事で鉄拳制裁を食らい、更には連帯責任で休憩なしの行軍となる。おかげで「つまづく」を意味する「Stumble」とひっかけた「スタンブリオス」(邦訳では"ステン"リオス)と呼ばれ、地味に馬鹿にされた。
しかし流石にスパルタ人、ペルシア帝国の大軍を前に「美しい死を迎えるに相応しい敵」だと認めて嬉しそうに笑い、ダクソスをドン引きさせている。帝国軍の巡察使の手首を斬り飛ばして啖呵を切り、擲弾兵相手に突撃して戦況をひっくり返すなどの活躍を見せた。
最後の戦いにおいて、レオニダスが「神王」への一撃を放つ布石となる。王の役に立った喜びに包まれながら「貴方と共に死ねて光栄です」と告げ、「お前と共に生きた事を誇りに思う」という最大の称賛を返される。そして望みどおりに「美しい死」を迎えた。
アスティノス
300人の兵士の一人で、隊長の息子。原作では名前がなく存在のみが記され、明確なキャラ像はない。
あどけなさの残る面立ちで、レオニダス曰く「まだ女の肌も知らぬような若者」。しかし父親譲りの勇敢な気質を備えており、戦いぶりは他の兵士と比べても遜色はない。
映画ではステリオスと肩を並べ、競うように戦った。ペルシア軍兵士を蹴散らしながら突進してくる巨獣(サイ)を槍の一投で仕留めるのは、名シーンの一つ。
激戦の合間に気を抜いた所をペルシア軍の騎兵に強襲され、一撃で首を刎ねられるという最期を遂げる。
ディリオス
300人の兵士の一人。この作品の語り手で、兵士の中では古参。
弁舌さわやかにして語り部の才がある。戦の合間のつれづれに、誇り高きスパルタの物語を聞かせる事で味方の士気を高める。
激戦の中で片目を失い、レオニダスの強い要望によって戦いの顛末を本国に伝える為に戦線を離脱。託された形見を王妃に届けた。その雄弁さを以てレオニダスとスパルタの勇敢さをギリシア全土に広め、1年後のギリシア連合軍対ペルシア帝国軍の決戦「プラタイアの戦い」へと至るところで物語の幕は閉じる。
ペルシア帝国
クセルクセス
ペルシア帝国を統べる「神王」。全身を黄金の装飾で覆う巨躯の男で、深く響く声音を持ち、誰もがひれ伏さずにはおれないカリスマの持ち主。
初戦を乗り切ったレオニダスの前に荘厳な輿に乗ってその姿を見せ、服従するように告げるが、レオニダスは軽口と共にこれを一蹴。自らの慈悲を拒絶した愚者に対する「神罰」を実行すべく次々と兵を送り込むが、そのことごとくを返り討ちにされて激昂。無能な指揮官らの首を容赦なく刎ねた。
エピアルテスの裏切りにより、テルモピュライの抜け道を使って背後に進軍。改めてレオニダスに服従するよう命じ、遂に膝を折ろうとする姿に満足するが、それは「神王」に人として血を流させる為の、最後の罠だった。目論見通りに一矢報いられ、「神」である事を否定されながらも、レオニダスの最期を見届ける。
使者
ギリシアへの侵攻に先駆け、クセルクセスから派遣された降伏勧告の使者。
かつてペルシア帝国が併呑してきた諸国の王の髑髏を持っており、馬上から突き付けて威圧。更に女性でありながら発言を行った王妃ゴルゴーを侮辱したが「スパルタの強き男を産んだのは、我ら女なのですよ」と切り返された。
王の面前でスパルタに対する数々の侮辱をしておきながら生きて帰れる筈もなく、他の仲間とまとめて奈落の穴に蹴り落とされた。あと続編でなんか設定が増えた。
巡察使
豪華な輿に乗ったデブ。輿を担ぐ奴隷に鞭を振るいながら戦場を巡察していた。
前日の嵐で船団が壊滅し、漂着したペルシア帝国軍の死体を集めて積み上げた「壁」を目の当たりにしてドン引きする。更には作業に当たっていたステリオスに挑発されてブチ切れて鞭を振るうが、それよりも早く飛びかかられて手を切り落とされた。
ペルシア帝国に歯向かう愚挙を呪いながら「我々の矢は太陽すらかげらせるのだぞ!」と喚くが、ステリオスは「日陰で戦えるとはありがたい」と切り返す。初戦においてその通りになった為、一同は矢が雨あられと降り注ぐ中、大盾に身を隠しながら大笑いした。やっぱり頭おかしい。
その他
エピアルテス
スパルタ人。不具だった為に赤子の内に殺される所を、両親が彼を連れて国を捨てる事で生き延びた。
テルモピュライの地に育ち、周囲の情報に明るい。父からは槍と盾の扱い方を伝授されており、両親の名誉を取り戻す為にスパルタの兵士としてレオニダスに協力しようとするが......
背むしである為に密集陣形・ファランクスに組み込む事が出来ず、協力を断られてしまう。今までの自分の生が無為だった事に絶望して崖から身を投じたが死にきれず、クセルクセスに拾われて「神の慈悲」をかけられて恭順。レオニダス達の背後を突いて回り込める抜け道を教えてしまう。
帝国軍が自分の懇願を無視してテスピアイ(スパルタ兵らと最後まで行動を共にした友軍)を攻撃した時には嘆きを露わにし、絶体絶命のレオニダスに対しても降伏を願うなど、完全な悪人ではない。だが裏切者に対してレオニダスは静かに一言「長く生きるが良い」と告げ、戦死の名誉すら失われた事実を突き付けられた。
ダクソス
ギリシア連合軍、アルカディアの義勇軍を率いる男。レオニダスとは旧知の間柄で、いわゆる常識人枠。
無茶な戦いと知りながらもスパルタのキチガイ勇猛な戦いぶりに後押しされ、共に戦う。
エピアルテスの裏切りにより、テルモピュライの抜け道を通ってペルシア帝国軍が侵攻してきた事を受け、撤退を決定。戦場に残って最後まで戦うと決めたレオニダスに永の別れを告げた。
巫女(シビュラ)
「神託」をもたらす巫女で、毎年処女の中から選ばれる。彼女の言葉を伝える神官達は全身が膿み爛れており、大金と引き換えに神託を授ける。「戦えば国が滅ぶか、王が死ぬか」として軍を派遣する事を禁じる神託をレオニダスに授けた。
実は神官達によって麻薬づけの上で慰みものになっており、「神託」も譫妄状態のうわごとを彼らの都合の良いように伝える道具でしかない。神官達はペルシア帝国によって買収済で、王と言えども逆らう事を許されない「神託」によってスパルタの出陣を妨害した。まあ結局無駄だったんだけど。
原作と映画の相違
- チョイ役だった隊長の息子や王妃のキャラクターがピックアップされている。
- オリジナルキャラクターとしてアテナイの議員、セロンが登場。戦いの裏で暗躍する。
- ペルシア帝国の暴虐を伝える為、破壊された町の住人の死体を飾り付けた「死者の樹(Tree of the Dead)」のシーンが追加された。
- 映画ではマント+サンダル+革のパンツだが、原作ではマントの下は全裸である。それ以外は概ね忠実な再現がなされており、特にクセルクセスの再現度は高い。
- ステリオス転倒事件、スパルタ式腕立て伏せなど、細かいエピソードが省略されている。
その他
原作・映画ともにペルシア帝国軍の多様かつファンタジックな描写は一見に値する。
巨大船団や人海戦術に始まり、アフリカ原住民と思われる白兵隊、爆薬を投じる擲弾兵、果てにはゾウやサイといった猛獣を使役する。肉体改造を施された処刑人など、荒唐無稽なキャラクターも登場する。
その他にも「不死隊(アタナトイ/イモータルズ)」と呼ばれる戦士達が登場。これはアケメネス朝ペルシアに実在した精鋭部隊で、銀のマスクと黒装束を身に着け、不気味な存在感をアピールしている。
こういった、映画に登場するペルシア人(併呑された属国も含まれる)の描写について「ペルシア人を激しく冒涜している」として、ペルシアを起源とするイラン政府から抗議声明が出された。
これに対する製作者側の回答は「あくまでペルシア対ギリシアの戦争を題材にしたもので、歴史を正確に伝えるものではない」となっている。
映画の撮影はほとんどがスタジオで撮影され、グリーンバックで背景を合成している。一方で「製作費を削るため」として、兵士役の俳優達には徹底したトレーニングと肉体改造を要請。
あの腹筋はCGではなく自前である。DVDには撮影の裏側としてその様子が収録されている。
巫女による神託のシーンも、CGではなく水中で撮影されたものを編集している。
髪や薄絹をゆらめかせて舞う様は幻想的な映像に仕上がっており、評価が高い。
クセルクセスを演じたロドリゴ・サントロは肉体改造の他にも全身の毛を剃り上げ、肌の光沢を出す為のメイクを1日4~5時間かけて施されたという。メイクを落とす時は2時間かかったそうな。
また9フィート(2m74cm)の巨躯を実現する為にVFXを用いており、声も合成によって独特の響きを加え、「神王」の魁偉なキャラクターを演出している。
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