ズムウォルト級ミサイル駆逐艦単語

ズムウォルトキュウミサイルクチクカン
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ズムウォルト級ミサイル駆逐艦とは、アメリカ海軍開発したぼくのかんがえたさいきょうのミサイル駆逐艦である。艦級名のズムウルト米海軍エルモ・ズムウルトジュニア提督にちなむ。

概要

1990年代より、アーレイ・バーク級DDGに続いて整備される艦として計画されていたが、搭載を予定していた新装備や全な新規開発となった戦闘システム開発問題により、建造費用が初期の見通しにべて数倍に高騰すると見積もられたことから議会側はズムウォルト級の費用対効果に疑問を持つようになった。2008年には要装備品と戦闘システムの技術問題の解決にはさらなる時間と費用が必要になることが判明、海軍もズムウォルト級の整備を諦め、24隻を整備する予定を3隻に留めるかわりにアーレイ・バーク級の建造を再開したいと議会に申し出、2009年に承認された。[1]

1番艦ズムウルトDDG-1000)と2番艦マイケル・モンサー(DDG-1001)は既に就役しており、3番艦リンドンB・ジョンソンDDG-1002)が試を開始している。

特徴

米海軍の発表では、次期駆逐艦DD(X)の作戦は、現行のイージス艦較して、以下のようになるとされていた。

このをかなえるべく、そして21世紀の次世代戦闘艦の姿を示すべく、先進技術が多数盛り込まれている。

先進的なステルス
沿に近づいて対地攻撃を行う任務上、その接近を悟られないためにも高いステルス性が要された。そこで体は線部が一番幅が広く、上にいくほど狭くなる、前から見ると三角形のような形になっている。これはレーダー波を上に反射して逸らすためのもので「タンブホーム」という。上部構造物も単純な面で構成され、各種アンテナもそれに埋め込むことでステルス性を高めている。結果、レーダー反射断面積(RCS)はアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦のわずか50分の1である。その外見はまさしくに浮かぶピラミッド

統合電気推進(IPS)の採用
エンジンスクリューを直接回すのではなく、電気を造ってからモータースクリューを回し、は推進にも各種電子機器にも必要に応じて自在に配分できる構造となっている。一旦動電気に変える手間があるが、モータースクリューを回すため、水中騒音も少ない。その発電を統合電気推進ではないこれまでの艦艇と較すると

ズムウォルト級ミサイル駆逐艦 合計約77.6メガワット
アーレイ・バーク級イージス駆逐艦 合計約9メガワット
あきづき汎用護衛艦 合計約7.2メガワット
ニミッツ級原子力空母 合計約64メガワット

ご覧のとおりぶっちぎり。同レベルなのが原子力空母という有様。また、既存の艦艇と桁違いの発電故に、大電を装備する機器の追加搭載が可である。将来的には2門あるのうち片方を電磁加速レールガン)に変更することも検討中。発射時の速度マッハ7、射程は300kmをえるが、使用時には艦内電50%が必要になるという。お前波動砲か何かか。

先進的な艦制御システムTSCE-1」(全艦コンピュータ環境
ムウルトは艦内の各種システム全てをネットワーク上に連接した先進的な構成となっている。各機器は標準化したソフトハードを最大限に活用するため、アップデートも容易。また、艦内ネットに接続した自動消火システムなども装備され、人員削減に大きく貢献した。従来人力体の隔閉鎖消火作業を大幅に省化した画期的なもの。戦闘システムもかのイージスシステムを新たな規格に組み直し、ネットワークに接続する。結果、ズムウルトは対地駆逐艦と言いつつも、艦隊防弾道ミサイル防衛もこなせるはずだった。

155mm先進システムAdvanced Gun System:AGS)の搭載
第二次大戦以降、艦砲戦闘艦にとってサブウェポンでしかかったが、ズムウルトでは違う。底的な地上攻撃のためステルス性を配慮した新155mm先進システム」を2門装備している。従来の127mmべ、大化により威射程共に大きく向上しており、強な対地攻撃が可である。特にロケットアシストによる射程154km&GPS誘導を誇るLRLAP誘導は最大の特徴。
これにより従来の艦載砲では不可能な遠距離から精密で安価継続的な対地攻撃が可になるはずだった。
少し高価なLRLAP
使うほどでもない標向けの通常弾も存在するはずだった。なお従来の弾より倍程度の長さの誘導弾を扱うために、身を一度上に向けてから装填する。また口径は同じだが陸軍155mm弾薬の共通性はない。前述のように2門のうち片方を射程300kmレールガンに変更する計画も存在する。

「副」57mmClose In Gun System:CIGS)の搭載
ヘリ格納庫上にスウェーデン開発のボフォース57mm単装速射を並列に2門装備している予定だった。
既に海軍では沿戦闘艦(LCSフリーダム級、インディペンデンス級)や、沿警備隊のバーソルフ級カッター(大巡視船) でとして採用されている実績ある武器である。
ムウルトでは接近してきた小高速ミサイルなどに対処する近距離兵装として搭載している。
スウェーデンステルスコルベット・ヴィスビュー級同様、身を下に傾けてカバーに収納する方式をとった。これによりステルス性を確保しているがここまで凝った艦はこの2艦種だけ。ちなみに外見は先進的だが自体の原1966年採用と結構古い。とかではよくあること。

ミサイル発射装置(Mk57 PVLS)の採用
化する新ミサイルへの対応と、被弾時の被害極限のため、新のMk57 PVLSを搭載する。
既存のMk41VLSよりも大ミサイルが使える上、ハード的には既存の各種ミサイルに対応している。
最大の特徴はその設置位置。
従来のVLSは艦の外に接しないよう、中央付近に配置されることが多かった。
これはミサイルの至近距離での爆発の破片からミサイルを保護するのには向いている。
一方で仮に搭載するミサイル誘爆した場合には体に大きなダメージを受けることになる欠点がある。
ところがこのMk57 PVLSはあえて体の外に接するように装備される。(今までのように中央にも積める)正確には二重構造の体の装甲の施された内殻と外殻の間に設置されるのだ。
これはミサイルとVLSを体を守る防御層のひとつにするという従来とは逆の発想によるもの。
内殻の装甲により仮に被弾し誘爆しても被害は少ない。

コイツやっぱり駆逐艦じゃなくて戦艦じゃね?

現実

ズムウォルト級は間違いなく画期的な戦闘艦であった。
専門誌においても多数の特集が組まれ、その存在は各海軍の次世代艦構想に大きなを与えた。
しかし、でしかなかったのである。

レーダー開発の遅れとそれに伴う縮小
当初、ズムウルトにはデュアルバンドレーダーと呼ばれる二種のレーダーが搭載されるはずだった。
しかし、遠距離捜索用の広域捜索レーダーVSR)が開発段階で出不足が判明、搭載が取りやめられた。
このため、近距離捜索&火器管制用の多機レーダーに、広域捜索用ソフトウェアを積んで補っている。

コンピュータシステム開発の失敗
TSCE-1は艦の戦闘システムから機関制御システム、さらには自動消火システムまで含む大規模な物である。その開発には困難が予想されたが、案の定開発は難航。
特にソフトウェアお化けとでもいうべきイージスシステムの膨大なプログラムの統合に失敗。

結果、前述のレーダー開発の失敗もあって艦隊防ミサイルSM-2と弾道弾迎撃ミサイルSM-3の搭載が中止。さらにコストダウンのためか対潜用のアスロックの搭載まで中止された。

そのため、ズムウルト対地攻撃用のトマホークと個艦防用のESSMしかミサイルを使えないのである。どうしてこうなった

予算過に伴い続く搭載兵器リストラ
コンピュータシステム開発とは関係ないが、予算過のためか各所にコストダウンのあおりが来る。
当初は艦尾などに魚雷発射管を搭載する計画だったが、これはどうやら取りやめになった模様。
魚雷防御システムを後から装備できる余地を確保しておくだけになった。
潜水艦攻撃を持たない上に魚雷を装備していない…コイツやっぱり戦艦じゃないのか?
ちなみに57mmも予算の都合で対水上のみの30mm機関ダウングレードされることが決まった。さらにその30㎜機関CIWSや対管制射撃削除
こちらは米海軍の一部にあるらしい「ESSMありゃCIWSは不要ッ!」なESSM論のせいかもしれない。

あと一番大事なVLSも、当初は地上攻撃艦にふさわしい120セル以上の搭載を予定していた。
が、計画が進むごとにコストカットであれよあれよと減っていき、最終的には80セルである。
ちなみにアーレイ・バーク級は合計96セル。何故ここで減らしてしまったのか?

AGSからCPS
ロケット補助推進を採用してミサイル並みの射程距離したAGSのLRLAPGPD/INS誘導弾)は、開発予算の高騰で1発あたりの単価が巡航ミサイルトマホーク」よりも高くなってしまう可性が摘されたために2016年開発が中止され、2015年度予算で発注済みの150発分で調達が打ち切りとなってしまった。既存の艦艇と異なる口径なので、弾がない状態になっている。[3]
米海軍は2基のAGSを撤去し、極音速ミサイルCPS(Conventional Prompt Strike)に対応したLMVLS(Large Missile Vertical Launch System)を設置することにしている。CPSミサイルは極音速滑体(C-HGB)とブースターで構成されており、ブースターから分離したC-HGBは極音速で滑しながら標に突入する。こちらは約マッハ17でかっとび、射程は2775㎞以上、一発2100万円程と推測されている。(なお開発者、関係者の話なので話半分の方がいいかもしれない。特にコスト)

それら諸々によるコストアップ
先進的すぎる技術をつめこみすぎたこと、開発段階での七転八倒の結果価格は高騰。

3隻の建造費は、合計で約225億ドル(約2兆4700億円)に上ると予想されている。[4]

問題をまとめると

結果

ズムウォルト級は当初、スプルーアンス級駆逐艦の後継として30隻以上の大量建造が検討されていた。
が、跳ね上がるコスト故に大量生産の計画はキャンセル

削減後、当初は2隻のみの建造とされたが、造所の仕事確保のため、3隻の建造も決定された。
この展開、かつてのシーウルフ級攻撃原潜とまんま同じである。

また、ズムウォルト級の体を活用する予定だった準同艦の新ミサイル巡洋艦CG(X)もキャンセルされた。

このため、スプルーアンス級タイコンデロガ級の後継艦がほぼ未定に近いことになっている。
現状のところでは、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦のさらなる追加建造で補う模様。

というわけでアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の建造数は下のところ120隻を越える見込みである。
この数は二次戦後水上戦闘艦としてはぶっちぎりのトップ
第二次大戦中の最多量産駆逐艦フレッチャー級ですら175隻なんですがこれはいったい……。

しかし、アーレイ・バーク級もいい加減に体の設計が古く、発電や艦内容積の不足が深刻化。
ムウルト遺産である先進技術を使った次世代装備がどこまで搭載できるか怪しいところ。

米海軍の迷走はしばらく続きそうである……。

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コラッ、そこ!「開発者たちは無能だ」と決めつけるのは時期尚だぞ。 
膨大な予算をつぎ込み、技術のを集め、長い時間をかけて開発した兵器
なんだこれは? 意味不明だぞ」
「こんなもん実験室でしか使えねーよバーカバーカ
「やっぱり予算には勝てなかったよ……」となってしまうのは、しい話ではない
ましてや、今までにい新しいコンセプトを生み出そうとしているのだから、なおさらである。
かつて、原子力ミサイル巡洋艦ロングビーチ」に搭載されたフェードアレイレーダーSCANFAR』
それ自体は整備性と信頼性を欠く存在(い話が失敗作)だった。
しかし、その経験が後のイージスシステム開発に生かされているように「失敗は成功の元」なのだ。

とはいえ、ズムウォルト級と艦CG(X)の計画中止以降で米海軍が計画した艦は

アーレイ・バーク級イージス駆逐艦 フライト 3 & 4 このままいくと建造数120
水上戦闘SSC(Small Surface Combatant) 要するにLCS武装強化モデル

と見事に新艦ではなく既存の良発展で、せっかくの新技術を活かしきれる機会がない。
ムウルトで大失敗したので新艦作る予算を許してもらえないからしょうがないね。
しかも対テロ戦で舐めプしてたところに中国海軍の大増強でこの水上戦闘艦整備の問題が表面化。
それを盟友海自護衛艦整備に関わったリアル提督に専門誌「世界の艦」でdisられる始末。

米海軍明日はどっちだ!

関連作品

動画

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MMDモデル

関連商品

関連コミュニティ

関連項目

脚注

  1. *米海軍『ズムウルト』級」大塚好古 軍事研究2014年2月
  2. *アメリカ海軍戦闘艦&有事作戦」 河秀幸 アリアドネ企画 2008 p.16
  3. *異形のステルス駆逐艦 ズムウォルト級2番艦「マイケル・モンスーア」が就役exit 2019.1.29
  4. *次世代ズムウォルト級駆逐艦、一番艦を米海軍に引き渡しexit 2016.5.21

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ズムウォルト級ミサイル駆逐艦

377 ななしのよっしん
2022/09/28(水) 21:12:24 ID: gUlCo5fARg
>>369
ミリオタだから横須賀まで見に行ったけど、カッコいいとは思わないなあ

>>370
そもそも駆逐艦という名前自体が「艦を狙う艇を駆逐する」という意味なんだけど、今の駆逐艦は役割も何もかも当初の駆逐艦からかけ離れてるからねえ
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378 ななしのよっしん
2022/09/30(金) 02:36:19 ID: wkXD5QbSvu
色々グッズ作ってほしい
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379 ななしのよっしん
2022/09/30(金) 17:07:29 ID: CKr3zpFhzW
今の駆逐艦って「汎用戦闘艦」とでも呼ぶべきフネだからなあ
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380 ななしのよっしん
2022/10/02(日) 18:56:56 ID: wx/nzmEKoT
横須賀の「軍港めぐり」で観てきました。
合同演習ロナルド・レーガンが出払っているのでその停泊位置にオークランドと縦に並んで泊してました。
オークランドとセットで観るとホントと思えない形してて面いw
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381 ななしのよっしん
2022/10/07(金) 22:53:57 ID: +3WR5oxk9f
>>379
戦後戦車がみんな
MBT一種類にまとまっていったのと似てるよね
大きくするとしても
せいぜい巡洋艦で充分という
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382 ななしのよっしん
2022/11/12(土) 23:58:21 ID: 9uQHXJfMO2
>>373
ムウルトみたいなタンブホームは甲の大きさ確保すると体を太らせないとならないし、レーダーや煙突を艦に収めるとどうしても巨大な艦になるし
こだわりを捨てたと言うより物理的費用的にこだわれないだけだろ
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383 ななしのよっしん
2022/11/13(日) 09:51:56 ID: Zqok+o6jiN
>>382
それは『こだわらなきゃいけない程度の費用対効果はない』の裏返しでは…?
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384 ななしのよっしん
2022/12/03(土) 11:41:22 ID: ifGBYe8p+G
イノベーションデストロイヤーって言われそうで言われていないんだな…
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385 ななしのよっしん
2023/04/12(水) 17:11:57 ID: Uf8/wVf+kH
LRLAPの代わりに極音速ミサイルを積むつもりらしい
当初の接近して対地攻撃から合からの遠距離攻撃に180度転換
いい加減退役させたらいいのにまだまだるね

快適な軍艦生活ズムウォルト級の居住スペース高額ステルス艦は部屋トイレも広い!! - YouTube <https://www.youtube.com/watch?v=4Pg8wSmlyUcexit
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386 ななしのよっしん
2023/04/13(木) 07:18:10 ID: Zqok+o6jiN
兵器ラットフォームとして割り切れば、
デカくて色々積めるだろうから体の寿命くるまで
あれ乗っけてみてこれ乗っけてみて…
って感じで使い倒されんじゃね?
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