ソレミア(Solemia)は、2008年アイルランド生産・フランス調教の競走馬・繁殖牝馬。
GI制覇は一度だけだが、そのただ一度の勝利は日本のファンの記憶にも鮮明に残るものであった。
概要
血統
父Poliglote、母Brooklyn's Dance、母父Shirley Heightsという血統。超有名ファッションブランドであるシャネルの代表を務め、馬主としても*コタシャーンやゴルディコヴァを所有した、兄アレンと弟ジェラールのヴェルテメール兄弟の生産所有馬。
父ポリグロートはクリテリウム・ド・サンクルー(2歳GI)など重賞3勝、ジョッケクルブ賞2着の実績馬。アルゼンチンで種牡馬入りして活躍馬を多く出したことから注目を浴びてヨーロッパに戻ってきたという経緯がある。
母ブルックリンズダンスはGIII1勝で、繁殖牝馬としては他に重賞馬を2頭出している。甥に英ダービー馬Authorized、伯父に種牡馬として活躍したGreen Dancerがおり、その他の近親にもGI馬が多い良血馬。母父シャーリーハイツは英愛ダービー馬で、種牡馬としてもジョッケクルブ賞勝ち馬Darshaanや英ダービー馬Slip Anchorを出して成功している。
競走生活
フランスのカルロス・ラフォン=パリアス調教師に預託され、デビュー2戦目を道悪の中6馬身差の圧勝で勝ち上がったソレミアだが、初めはほとんど目立った馬ではなかった。3歳時はクラシック路線を歩まず条件戦やリステッド競走で5着→3着→2着と善戦続き(2着は古馬相手のものなので立派ではあるが)で、9月末に行われたジュベール賞(L)でようやく2勝目を挙げた。重賞初出走となった10月のコンセイユ・ド・パリ賞(GII)は経験に乏しい良馬場ながら積極的に先行するも2着に終わり、7戦2勝2着2回という言い方は悪いが地味な成績で2歳・3歳シーズンを終えた。
ところが4歳初戦のロードシーモア賞(L)では、実績のある重馬場、前走での健闘、前走で先約のため騎乗出来なかった主戦のオリビエ・ペリエ騎手への乗り替わりというのもあって生涯初の1番人気に支持され、その人気通り中団から抜け出すと4馬身差で快勝した。
ソレミアはその勢いでエドゥヴィユ賞(GIII)に出走したものの、ここでは内埒沿いを進んだところで先行していた馬が斜行してきて前が完全に壁となるという致命的な不利を受けたこともあり、2着(加害馬の降着のため3位入線から繰り上がり)に敗退した。
次走のコリーダ賞(GII)では、前年の凱旋門賞でブービー人気ながら2着に好走したSharetaというこれまでの対戦相手で最も実績のある馬がいたが、内を突いて鋭く伸びたソレミアを追うSharetaが馬群の中で一瞬進路を失ったことも味方して、ハナ差でSharetaを振り切って勝利。ヴェルテメール兄弟のレーシングマネージャーからも「非常に勇敢な走り」と称賛された。
その後サンクルー大賞(GI)を一旦は視野に入れたもののこれを回避し、休養を挟んでポモーヌ賞(GII)に出走したが、出走馬の中で唯一の最重量となる斤量61kgと良馬場が災いしたのか4着に敗戦。それもあってか、GI初出走となるヴェルメイユ賞(2400m)では、前回の対戦からここまでの間にヨークシャーオークス(英GI)を勝ったShareta、前年のこのレースを勝ったGalikova、4戦4勝のディアナ賞勝ち馬*サロミナなどがおり、ペリエ騎手がGalikovaに騎乗したためにクリストフ・スミヨン騎手が騎乗したソレミアはSharetaを近走で破っているというのに13頭立ての7番人気止まりだった。しかしソレミアはそんな人気に反発するように直線で鋭く伸びて3着に好走した。
この後、同じヴェルテメール兄弟の所有馬だったGalikovaがオペラ賞(牝馬GI・2000m)に向かったこともあってか、陣営はソレミアの次走に牡馬相手となる凱旋門賞を選択した。そしてその決断が、日本のファンの記憶に強く刻まれるレースをもたらすこととなる。
凱旋門賞
2012年の凱旋門賞は、レース直前になって有力馬が相次いで姿を消していた。
まず、前年の勝ち馬でこの年のキングジョージVI世&クイーンエリザベスSも優勝していた*デインドリームが滞在中のトレセンで起きた馬伝染性貧血騒動によって出国不可能となってしまった。そして、前年のキングジョージを勝ち、この年はエクリプスSを勝ったNathanielも熱発で回避し、更には前年の3着馬で英愛オークスやエリザベス女王杯連覇などGI5勝のSnow Fairyも屈腱炎の再発で回避してしまった。
しかしやはり舞台は凱旋門賞だけに、それでも有力馬が皆消えたわけではなかった。まず1番人気は日本からやってきたスミヨン騎手騎乗の三冠馬オルフェーヴル、そして2番人気は42年ぶりの英三冠こそ逃したもののここまで6戦5勝、名手ランフランコ・デットーリが手綱を執るCamelot。他にもNathanielの全妹の愛オークス馬Great Heavens、ジョッケクルブ賞の勝ち馬Saonois、前年のパリ大賞とこの年のサンクルー大賞・ベルリン大賞を勝ったMeandre、そしてSharetaという錚々たるメンバーが揃っており、GI実績の無いソレミアは多少なりとも応援票で他国より人気が上がりそうな地元フランスでさえ単勝42倍の12番人気(18頭立て)止まりだった。
再びペリエ騎手が鞍上に戻ったソレミアはスタートが切られると道悪の中で果敢に先行し、ペースメーカーをマークするように進んだ。そして4コーナーでペースメーカーを交わし、悠々と先頭に立つ。同じような位置で先行していたGreat Heavensも失速し、他の後続勢も手応えが悪く、ソレミアがじわじわ独走になるかと思ったところで、1頭だけ違う手応えで突き抜けていく馬がいた。オルフェーヴルである。
残り300m地点で豪快に先頭に立ち、そのまま差を広げるオルフェーヴルだったが、しかし気性の悪さか内に刺さっていく。それを見て好機と思ったのは粘っていたソレミアである。ペリエ騎手はステッキで必死の激励を飛ばし、ソレミアはそれに応えて3番手以下を突き放しながらオルフェーヴルに食らいついていく。
……そして、2頭が3着以下を7馬身離してゴール板を通過した時。
僅かにクビの差だけ前に出ていたのは、ペリエ騎手とソレミアであった。
レース後、ペリエ騎手は「入着できるかもしれないとは思っても、正直なところ勝てるとは思っていなかった。でも、これは真剣勝負だった」と語った。
オルフェーヴルを管理した池江泰寿師の父・泰郎師がディープインパクトを遠征させた際に滞在していたのがソレミアを管理するラフォン=パリアス厩舎であったのは、何たる皮肉であろうか。
その後
さて、ソレミアは続けてジャパンカップに参戦。対戦相手にはオルフェーヴルと三冠牝馬ジェンティルドンナ、香港でクイーンエリザベスII世カップを勝ったルーラーシップ、ダービー・天皇賞(秋)2着の3歳馬フェノーメノ、更にエイシンフラッシュ、トーセンジョーダン、ローズキングダム、ジャガーメイルといった国内GI馬が中心となり、7番人気のソレミアは5頭の海外勢の中で最上位の人気となった。ちなみに調整中は日本のニンジンやリンゴを気に入って喜んで食べていたというちょっと可愛らしい逸話もある。
しかし生憎レース当日は快晴で、重馬場に実績の集中するソレミアにとっては極めて不利な条件となる良馬場のコンディションでレースが行われ、ソレミアはジェンティルドンナとオルフェーヴルの激闘の遥か後ろで13着に敗退。これを最後に引退した。
その後はイギリスで繁殖入りし、現在のところ5頭の産駒が競走馬としてデビューしている。まだ引退からさほど時間が経っていないこともあり産駒の大レース制覇はないが、母の名を更に高める偉大な産駒を出すことは出来るだろうか。
血統表
Poliglote 1992 鹿毛 |
Sadler's Wells 1981 鹿毛 |
Northern Dancer | Nearctic |
Natalma | |||
Fairy Bridge | Bold Reason | ||
Special | |||
Alexandrie 1980 黒鹿毛 |
Val de l'Orne | Val de Loir | |
Aglae | |||
Apachee | Sir Gaylord | ||
Americaine | |||
Brooklyn's Dance 1988 黒鹿毛 FNo.16-c |
Shirley Heights 1975 鹿毛 |
Mill Reef | Never Bend |
Milan Mill | |||
Hardiemma | *ハーディカヌート | ||
Grand Cross | |||
Vallee Dansante 1981 鹿毛 |
Lyphard | Northern Dancer | |
Goofed | |||
Green Valley | Val de Loir | ||
Sly Pola | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Northern Dancer 3×4(18.75%)、Val de Loir 4×4(12.5%)、Lalun 5×5(6.25%)
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関連項目
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