ソヴレメンヌイ級駆逐艦とは、ソビエト海軍(現ロシア海軍)と中国人民開放海軍が保有する駆逐艦である。ソ連側での区分は艦隊水雷艇(相変わらずややこしい海軍である)。名称の意味はロシア語で「現代の、最新の」。
中国にも輸出されており、そちらは「杭州級」もしくはそのまんま「現代級」と呼ばれる。
計画名は956号計画「サルィーチ」。改良型は956-A号計画。
中国への輸出型は956-E号計画とその改良型が956-EM号計画。
概要
ソヴレメンヌイ級は1950年代に開発された対艦・対潜を担当した各種駆逐艦と1960年代に開発された艦隊防空を担当するカシン級駆逐艦の両方の後継として開発された。
多様となった任務をこなすために従来の駆逐艦よりも大型化し、ウダロイ級ほどではないが防空・対潜を担当していたクレスタ級巡洋艦を凌ぐ排水量を誇る。
あくまでも本級の主任務は艦隊防空であったのだが、艦橋両脇に装備された3M80モスキート(NATO名サンバーン)対艦ミサイルの4連装ランチャーが目を引く。
これは最大飛翔速度マッハ3。300kgの鉄鋼弾頭を備えた恐るべき対艦ミサイルでたとえ不発でも大和型の46cm主砲弾を上回る運動エネルギーが敵艦を襲う。目標に接近すると急激に高度を下げ、S字の回避機動を取りながら目標に突入する。その“かしこさ”と凄まじい飛翔速度からかつては迎撃不可能とまで言われた対艦ミサイルである。
とこんな代物を自衛のために装備したもんだから西側からは「艦隊防空? いけしゃあしゃあとどうせウチらの大事な空母狙ってんだろー」と水雷艇の名の通りにソヴレメンヌイ級を空母攻撃艦だと誤解されていたという。
なお本級が装備する3K90ウラガーン(NATO名ガドフライ)艦隊防空ミサイルは射程30km程と艦隊防空と言うには少々短射程だが、これはほぼ同時期に就役していたキーロフ級やスラヴァ級が装備するS-300Fフォールト(NATO名グランブル)艦隊防空ミサイルを補間するための中射程ミサイルという位置付けのためである。
対潜装備も限定的で、同じく同時期に就役したウダロイ級の援護が必要であった事からもこの艦のあくまでも「他艦との共同を前提とした補助艦」という性格が伺える。
本級の特徴はなんと言っても1980年代に登場した艦でありながら蒸気タービンを使用しているという点である。
空母や軽空母、強襲揚陸艦といった大型艦ならいざ知らず、駆逐艦という比較的小型の艦の動力としてはあまりに時代遅れであった。
ガスタービンと比べて整備性・加速性で大きく劣り、特に雑音の大きさは共同するウダロイ級の対潜任務の邪魔にもなりかねない。対潜任務が現在よりも重要であった冷戦期においては無視できない欠点である。
しかし旧ソ連は世界初の実用全ガスタービン戦闘艦であるカシン級駆逐艦を西側に先駆けて送り出しており、別に技術的問題があった訳でもない。
では何故わざわざ? 様々な憶測を呼んだが答えはきわめて単純明快であった。
本級を製造したジダーノフ造船所が蒸気タービン艦しか造ったことがなかったからである。
ちなみにウダロイ級の前任であるキンダ級巡洋艦、クレスタ級巡洋艦もジダーノフ造船所のせいおかげで蒸気タービン艦であった。
しかしソヴレメンヌイ級の相棒であるウダロイ級はガスタービン艦。本級までガスタービンでは機関の製造が追いつかないかもしれない。
更にそうすればレニングラードにある蒸気タービン製造工場の生産ラインを閉鎖せねばならなくなり、既存の蒸気タービン艦の整備が困難になり、当時開発が始まっていたアドミラル・クズネツォフの建造にも影響が出かねない。
おまけにガスタービン用の軽油に比べ、蒸気タービン用の重油はたくさん余っていた。
こうしてソヴレメンヌイ級はめでたく?蒸気タービン艦として生を受けることになる。
しかしソ連崩壊の極度の財政・人手不足により、「整備の手間がかかる」という蒸気タービン艦の欠点が顕著になり、しかも駆逐艦のような数を揃えたワークホースにはとてつもない重荷となった。
「時代に逆らった設計」がまさしく「逆風」になってしまったのである。
とはいえロシア海軍での最優秀艦コンテストでは幾度も選出され、中国もわざわざ追加発注をしているなど設計自体は優れている模様。
だが同世代のウダロイ級に比べると除籍・解体艦数が多く、活動も活発とは言い難く、どうにも蒸気タービンの煩雑さが付きまとっている感は否めない。
なお、中国向けでは初期輸入の956-E型と追加された956-EMとでは後述の通り武装に相違があり2010年代にに近代化改修が開始され武装の換装と追加が実施されている。
武装
AK-130 130mm連装砲 2基
AK-630 30mmCIWS 4基
9M38ウラガーン(SA-N-7ガドフライ)艦対空ミサイル単装ランチャー 2基
3M80モスキート(SS-N-22サンバーン)対艦ミサイル4連装ランチャー 2基
RBU-1000 6連装対潜ロケット爆雷砲 2基
533mm長魚雷2連装発射管 2基
艦載機
Ka-25(ホーモン)/Ka-27(ヘリックス)対潜・哨戒ヘリコプター 1機
中国仕様
956-E
324㎜3連装短魚雷発射管 2基(533mm魚雷発射管の代替)
※これ以外は原型と同様
近代化改修後
垂直発射装置(HHQ16艦対空ミサイル+YU-8艦対潜ミサイル)16セル 2基(SA-N-7の代替)
HHQ-10艦対空ミサイル18連装発射機 1基(追加装備)
YJ-12対艦ミサイル4連装発射機 2基(SS-N-22の代替)
956-EM
AK-130 130mm連装砲 1基(艦首配置)
CADS-N-1近接防御システム(SA-19艦対空ミサイル4連装発射機+6連式30㎜ガトリング砲) 2基
(AK-630の代替)
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関連項目
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