ゾンビ(ー)とは、死者が何らかの力により蘇り、死体のまま行動するようになった者たちのことである。
ブードゥー教のゾンビ
元々は西アフリカ方面での精霊信仰であった『ヴォドゥン(Vodon)』が、コンゴやベナンなどからの奴隷貿易経由でカリブ海地域(キューバ・ハイチなど)に伝わり、地元のカトリックやドルイド教などとカオスに混合し、発音も訛って『ブードゥー教(ヴードゥー教:Voodoo)』という新たな土着信仰として根付いたのが始まりである。
ヴォドゥンの教えでは「ゾンビ(ンザビ:Nzambi)」というと神の一人の名前であり、転じて「不思議な力を持つもの」全般のことを指した。要はすんごい薬の知識のある村の長老様だろうが、どっかのヌシと呼ばれる巨大な動物だろうが、きれいな鉱石だろうが、人知を超えた存在はみんな 「ゾンビ」 だったのである。
それが海を越えてカリブの信仰と同化すると、意味が「不思議なもの→化物、妖怪」と、マジカルバナナもビックリな連想ゲームのような変わり方を果たす。奴隷として強制連行されて来た身分の人々が日々白人からの仕打ちに耐え忍ぶ為に信奉しているとなると、内容はおのずと「精霊の力を借りて憎いアイツを呪い殺す方法」のように呪術的内容が発展していくことになり、その一環として、人間を生ける屍――「ゾンビ」に成り果てさせる呪法が生まれたのである。
ゾンビのつくりかた
- まずは「ゾンビパウダー」を調合します。不老不死を実現する霊薬ではございません。久保帯人ファンの方あしからず。
【材料】墓から暴いた他人の腐肉/人骨、トカゲ、蠱毒法みたいな環境でストレスを与えたヒキガエルの干物、ネムノキなどのマメ科植物数種、チョウセンアサガオ科の種子(?)、フグetc...
これらの調合・使用はブードゥー教の司祭兼、請負暗殺者とでも言うべき「ボコ(ール)」により行われます。 - 上記のうち人材料は衛生問題とプラシーボ効果が有るか無いか程度で、爬虫類毒も人を殺すには威力の欠けるチョイスですが、生のマメ科植物は結構有毒なものが多く、フグのテトロドトキシンは言わずもがなです。これをゾンビ化させたい相手に何とか摂取させます。経口服用が一番効きそうですが、伝記では地面に撒いたり皮膚に塗りつけたりで皮膚の傷口経由目的でしか使用された試しがなかったとか。
- ゾンビパウダーが上手く調合できていれば、被害者はギリギリの仮死状態で心肺停止します。フグ毒が濃すぎてそのまま死んでしまったら失敗。ともかく復活するかは時間が経たないと分からないので、とりあえず埋葬しておきます。
- 術師が墓の前で待機。被害者が上手く意識を取り戻したら「●●が起き上がった」ことを吹聴しつつ掘り出します。
- あとはゾンビパウダー材料のうち植物毒メインの幻覚剤を適度に服用させ、思考と身体の自由を奪って奴隷にしてしまいます。即金で売り飛ばすなり、自分の所で農作業にこき使うなり、お好みで何なりと。
このように、実在(したと言われる)ゾンビは、死体でもなければ腐ってもおらず、見えない力で操られているわけでもない。 意図的な服毒により死亡したと見せかけられ、同時に脳障害を負わされた、生きた人間である。
このゾンビ化はコミュニティ内で犯罪を犯した者や嫌われ者、よそ者などに対して行われる一種の制裁・刑罰行為と見なされている。ブードゥー教には仏教で言う「輪廻転生」のような概念も存在し、死後の霊魂はちゃんと導かれて生まれ変われると信じられているそうだが、この「死して尚ゾンビにさせられる」という仕打ちはすなわち「その魂の安息すら許されない」という恐ろしい刑であった。 そのため教えの広まっている地域では、身内に死者が出ると呪術師が寄り付かないよう埋葬後1日半は墓を監視し続けたり、起き上がってこないよう頸を切り落とすなど遺体損壊したり、墓を暴きに来た術師を返り討ちに殺したりする習慣が存在したそうな。おお、こわいこわい。
なお、現代では
- フグ毒テトロドトキシンから蘇生する事例は確かにあるものの、経口摂取でなく経皮摂取じゃ無理がある
- 呪術に使われるというフグ科の魚の1種を確認したところ、よく見ると無毒のハリセンボンだった
- ゾンビパウダーでの死亡演出はフグ毒による仮死ではなく、毒草の麻酔効果が主だったんじゃないか
など、主に毒の材料について多方面から結構なツッコミを受けていることも付記しておく。
フィクション作品のゾンビ
ホラー作品やファンタジー作品で活躍する架空の存在としてのゾンビは、後遺症を負った廃人であるブードゥーのゾンビとは異なり、「明らかに生物学的に、一度は生命活動を停止した死体が、何か本人と別の者に操られ自律行動する」「ゾンビに咬まれたり殺されたりするとその者もゾンビの仲間入りする」という特徴が多く共通する。これらのゾンビ像を決定付けた立役者は、映画監督ジョージ・A・ロメロであるとされている。
ロメロは『Night of the Living Dead(1968)』において、ブードゥーのゾンビの特徴に加え「ゾンビに外傷を負わされた人間もまたゾンビと化す」という、本来はヴァンパイア(吸血鬼)の十八番である能力をゾンビに与えた(『HELLSING』等も参照)。そして同系列作品の2作目である『ゾンビ(1978)』により、「Living Dead:生ける屍=Zombie:ゾンビ」という呼称が世に定着することに。この2作で、
- 腐っていたり外傷の酷かったりする、グロい死体が動き回る
- 基本的に動作は緩慢で、思考能力も動物並みかそれ以下が大半
- 死体ゆえ痛みにひるまず急所を突いても倒れないが、頭を潰したり身体ごと吹き飛ばしたりで止めることは可能
- 咬まれたり殺されたりすると感染してゾンビの仲間入り
というゾンビの基本イメージが完全に確立された。 この「ロメロ・ゾンビ」以前のゾンビ像は、大体は呪術か魔法、霊魂の力によるファンタジーな原動力が元になっていたが、ロメロ・ゾンビ以降の作品にはゾンビ化の理由付けに疑似科学(SF)が多く用いられるようになり、ゾンビ化の原因が化学薬品→病原体・寄生虫へと変遷していった。
現在では「ファンタジーな力で動くゾンビ」と、「SF的理由付けで動くゾンビ」は半々といったとことであろうか。
ゾンビの登場する作品一覧についてはまとめだすと結構キリが無いので、Wikipedia記事を参照されたし。
形容詞的なゾンビ
「一度死んだのに動いている」「殺しても殺しても死なない(蘇る)」という意味から転じて、様々な用語として用いられる。
- 哲学用語
- 「哲学的ゾンビ」という用語が存在する。詳細はWikipedia先参照。

- サバゲー用語
- サバイバルゲームにおいて、撃たれてしまい「デッド(死んだ事になっている)」プレイヤーが、ルールを反古にして勝手に動き回ったり敵を攻撃したり、ゲームに参加するマナー違反・反則行為のことを「ゾンビ」と呼ぶらしい。
- ゾンビ動画
- 権利問題等で削除される動画について、複数人による再アップロードが繰り返され「消すと増えます」状態になっている動画に付けられるタグ。支持する人が多いと「不死鳥動画」となり字面が体面良くなるが意味は変わらない。
- ゾンビ議員
- 衆議院議員選挙において、小選挙区で落選したのに比例代表で復活当選した議員のことを揶揄してこう呼ぶことがある。小選挙区制と比例代表制の両立体制が今もなお抱える問題である。
- ゾンビパソコン
- 悪質なコンピューターウイルスに感染し、DoS攻撃の踏み台となっているようなPCのこと。外部からの命令に反応し、感染PCのネットワークが誰かに操られたかの如く一斉にウイルスメールやダイレクトメールをバラ撒く様子から名づけられたと思われる。技術者間では通じたりするらしいが、「スパム」や「ウイルス」等と比較すると全く一般に広まっていない用語ではある。
- ゾンビプロセス
- Windows/UNIXなどのプロセスにおいて、子プロセスが終了しているにも関わらず親プロセスが終了値を受け取ら(れ)ず、プロセステーブルに子プロセスの情報が延々と残っている状態。これが増えすぎるとシステムが停止してしまう。
ゾンビに類するもの
厳密にはゾンビとは違う成り立ちなのだが、「死体」や「死」にまつわるイメージ繋がりで、なんとなくゾンビ系モンスターの色違いとして、どっかのRPGなどで広く用いられている怪物についてまとめておく。
- グール
- 日本語では屍食、食屍鬼などと表記される。アラブでは墓荒らしをしたり旅人を殺したりして人の屍肉を喰らう妖怪、クトゥルフ神話では食人嗜好は一緒だが人間が怪物化した存在、『HELLSING』ではドラキュラに吸血された非童貞や非処女の成れの果てなど、立場はさまざま。女だと「グーラ」と呼び、こちらは美人らしい。
- リッチ
- 元々は単に「死体」の意(英:lich)なのだが、ファンタジー作品中では高名な呪術師の成れの果てであったり、強大な力を持つ神だったりで、いずれにせよ相応の強敵として描写されることが多め。外見は白骨化しているかミイラ状かで、黒い衣を纏っている姿がほとんど。実体はあるが、これがレベルアップして完全に肉体を失い霊体化すると、「デミリッチ」と呼ばれたりもするらしい。
- レブナント
- フランス語で「蘇るもの・戻ること」を意味する語。「Revenir(ルヴニール:戻る)」の名詞形。
ファンタジー系ゾンビと同じく、死者が魔法などの力で仮初めに蘇った姿だが、ゾンビと比べて死後あまり経っていない死体を用いたが為に、ゾンビと違って生前の知性と俊敏さをまだ失っていないのが特徴。この設定上、ただのゾンビより格上の敵として登場する。 語はフランスだが話の発祥はイギリスで、吸血鬼の特徴を持つ事も。(参
) - ワイト
- 死体という実体があるのはゾンビと共通だが、特にその実体に霊が取り憑いて動かしているという設定のもの。その為薄ぼんやりとした不浄な黄色い光に包まれているとされる。また、指輪物語や遊戯王カード、ドラゴンクエストシリーズ(ワイトキング)に見られるように、高貴な身分の王族の遺体に憑いたものが比較的多い。
- 屍人
- ゲーム『SIREN』シリーズに登場する、死体から蘇った人間。『SIREN2』での原因は屍霊が取り憑いたことによるが、他シリーズでは人間が「赤い水」を胎内に摂取した状態で死ぬとこうなる――という具合に設定に揺れがある他、完全に屍人化するための条件など様々な細かい設定・ルールが存在する。詳細は『屍人』の記事にて。
人間の頃より知能こそ若干劣るが、みな生前の記憶や人格・習慣を色濃く残しており、文化的コミュニティを持ち意思疎通の会話が出来る者もいるなど、生物学的に死んでいること以外は極めて元の人間に近い。 - フランケンシュタイン
- まず注意したいのが、フランケンシュタインという名は元来この屍人間を指すものではなく、彼を創造した博士の名前だという点である。既存のステレオタイプとしては「死体の継ぎ接ぎで造られた巨躯の大男、頭部額を横断する縫合痕、こめかみの辺りを貫通する巨大な金属ボルト」といった容姿が挙げられるが、これはおどろおどろしさを誇張された姿である。1994年の映画『フランケンシュタイン』でロバート・デ・ニーロが演じた怪物が、原作のイメージにかなり近いだろう。この「造られた怪物」は流暢なフランス語を学び操り、ゲーテやミルトンを読みこなす知性と心を持っていた。身体の強健さも問題無しだったのに、外見の醜さゆえに人間社会はおろか、創造主から名を与えられることも無く存在意義を否定されてしまった哀しき存在である。
現在、和月伸宏がジャンプスクエアにて、「死体の継ぎ接ぎ人間」という共通点のみを基に『エンバーミング』を月刊連載中。元ネタであるメアリー・シェリー原作の『フランケンシュタイン』とは名前以外何の関係もないので注意。
関連動画
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関連コミュニティ
外部リンク
関連項目
- ゾンビ動画
- ゾンビーズ
- ゾンビ(ぷよぷよ)
- ジョージ・A・ロメロ
- バイオハザード
- デッドライジング
- SIREN
- 学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD
- ゾンP/グロデューサーさん
- これはゾンビですか?
- ○○・オブ・ザ・デッドの一覧
http://dic.nicomoba.jp/k/a/%E3%82%BE%E3%83%B3%E3%83%93


ページ番号: 3641592
リビジョン番号: 1408864
読み:ゾンビ
初版作成日: 09/06/13 01:16 ◆ 最終更新日: 12/01/13 22:16
編集内容についての説明/コメント: 関連商品を変更。(ウォーキング・デッド)
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