概要
半翅目(カメムシ目)コオイムシ科に分類される昆虫。日本においては最大の水生昆虫でありかつ、最大のカメムシである。
捕食と行動
成虫の体長は50~65mmでメスのほうが大きい。肉食性で、鎌状の前肢を使って他の水生昆虫や魚、カエルを捕食する。自分より大きい獲物を捕食することもあり、その獰猛さから「水中のギャング」とも呼ばれる。
捕えた獲物を食べるときにはむしゃむしゃと齧るのではなく、カメムシ共通の針状の口を突き刺して消化液を流し込み、溶けた肉体を吸い込む体外消化を行う(血を吸っているのではない)。このため刺されると肉を溶かされてしまい、とても痛い。
呼吸には腹部の先端にある呼吸管を用いる。この呼吸管はタイコウチやミズカマキリと比べてかなり短い。またデリケートで、水面が汚れると呼吸が困難になる。
背中は一見硬い甲羅のようだが、翅を広げて数キロメートル飛行することもできる。飛行するのは繁殖期の夜間に限られ、普段の住みかに同居する血縁者との交配を避けるためと言われる。
繁殖生態
近縁のコオイムシ同様繁殖行動、特に卵を守るための行動が発達している。まずオスは水面を揺らしてメスにアプローチし、メスも水面を揺らしてそれに応える。
水中から突き出た杭や植物の茎の上で交尾を行う。メスはそこに泡とともに整然と並んだ卵を産み、オスは卵を孵化まで守り給水などの世話をする。
しかし交尾の前後にオスがメスに捕食されてしまう場合もある。
交尾相手のいないメスはオスが守る卵を襲撃し、抵抗するオスを押しのけて卵を破壊してしまう。卵を破壊されたオスは破壊したメスと交尾してそのメスの卵守りをする。
その他
農薬など化学的汚染に弱いことや適した生息域が水田のような止水域に限られることもあって、主に水田環境の変化により日本国内では絶滅の危機に瀕している。多くの都道府県では環境省レッドリストの絶滅危惧Ⅰ類(「野生での存続が困難なもの」)に指定され、見つけるのは難しい。東京都・神奈川県・長野県・石川県では残念ながら絶滅している。
ベトナムやタイなどではタイワンタガメという種類がその香気のために食用にされる。南米にはベロストマ・グランディス(ナンベイオオタガメ)とレトケルス・マキシムスという、100mmに達する巨大なタガメがいる。北米やオーストラリアにもそれぞれの種類が生息。
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関連項目
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