タケホープ単語

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• ハイセイコーのライバルとして
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• 関連項目
• 脚注
• 掲示板

もしも宿敵がいなかったら、
お前は当代随一の「怪物」になっていただろう。
もしも二冠を制することがなかったら、
お前は永遠に脇役の座に甘んじなければならなかっただろう。

ひるむことはないタケホープ、誇るがよいタケホープ。
お前は紛れもなく、昭和48・49年を駈け抜けたもう一頭のヒーローなのだ。

あのカミソリの如き一瞬の斬れ味を、あの稀代のステイヤーとしての血潮を。
いざタケホープ、伝えてくれ、新しき世代の力強さの内に。

JRA「ヒーロー列伝」No.2　タケホープ

タケホープとは、1970年生まれの競走馬。ダービー、菊花賞、天皇賞を勝った名馬である。

日本競馬史上に残る番狂わせを起こした事で有名。

主な勝ち鞍
1973年:東京優駿(八大競走)、菊花賞(八大競走)
1974年:天皇賞(春)(八大競走)、アメリカジョッキークラブカップ

1973年優駿賞最優秀4歳牡馬、年度代表馬

概要

父インディアナ　母ハヤフブキ　母父タリヤートスという血統。母はビューチフルドリーマー牝系に属する活躍馬で1つ上の姉は花の47年組のオークス馬タケフブキ。そもそも非常に期待されていた一頭であった。

のだが、デビュー戦に勝った後、タケホープはなぜか連敗街道をひた走ってしまう。2歳時は7戦もして1勝しか出来ない。待望の2勝目は年明け。正直、これでは当時、誰もが彼に注目しなかったとしても無理は無いだろう。

そして3歳2戦目の弥生賞。このレースは中山競馬場史上はじまって以来という大観衆が押し寄せていた。

もちろん、タケホープを見るためではない。このレースはあの、世紀の超アイドルホースハイセイコーの中央デビュー戦だったのである。大井競馬場で無敵の強さを誇ったハイセイコーの中央転厩に対して、マスコミが「地方の怪物が中央に殴りこみ！」と書きたて、それを耳にした人々が噂の怪物を一目見ようと、我も我もと押し寄せたのであった。

ハイセイコーは期待に応えこのレースを勝利。人々は「やはり怪物！凄い！」と大騒ぎ。タケホープはその影で7着。まぁ、その他大勢の一頭に甘んじていたのであった。

・・・この時までは。

タケホープはその次走、4歳中距離特別をハナ差勝ちする。これでようやくダービーへの出走権を確定する事が出来た。関係者もほっと一息。タケホープは血統的に言ってステイヤーである。つまり、デビュー時から狙うはダービーな馬だったのだ。それだって出られなければどうしようもないのだ。

逆に言えば、出られさえすればチャンスがあると思える馬だったということだ。主戦の嶋田騎手はダービでの手ごたえを記者に聞かれて「ハイセイコーもタケホープも、同じ4本脚だよ。チャンスはある」と言ったのであるが、これは嶋田騎手の本心であったろう。

が・・・。「は？何言ってんの？この人？」と記者は思ったであろう。

なぜならその年、1973年の東京優駿日本ダービーは「ハイセイコーのダービー」と既に呼ばれていたのである。中央入りしてから弥生賞、スプリングS、皐月賞、NHK杯と連勝。正に怪物！無敵！三冠馬間違い無し！と騒がれ、人気沸騰。競馬界のみならず競馬を知らない一般市民を巻き込んで社会現象に祭り上げられつつあったハイセイコーがダービーを勝つことはもはや定められた未来であるとさえ思われていたのだ。

そんな中、皐月賞にも出る事が出来ず、前走は辛勝。どう考えても「出るだけだろ」と思われてしまったタケホープは9番人気に甘んじた。

しかしながら「ハイセイコーが天下を取る」光景を見に来た13万の大観衆の前で競馬史に残る事件が起こるのである。

27頭で行われたダービー。多頭数でのダービーには「1コーナーで10番手以内」というダービーポジションがあると言われていた。殺到する各馬。もちろんハイセイコーもこの争いに加わった。なにしろ単勝支持率が前代未聞の66.6％である。危ない競馬は出来ない。

ところが、対する我らがタケホープと嶋田騎手はほぼ最後方からの競馬を選択した。当時の常識的にはもうお終いという展開である。しかし、この時、ハイセイコーが無理気味に前に行ったせいで、ペースがかなり速くなっていたのである。なにせ前半ラップが1分12秒2である。無茶苦茶に速い。しかもハイセイコーは内に入ったことにあせって3コーナー過ぎで仕掛け、4コーナーでは先頭に並びかけるという強引な競馬になってしまう。

他の馬もハイセイコーを追い掛ける。そのため4コーナーでは先行馬が大きく膨らんでしまった。ばらける馬群。…嶋田騎手が予想したとおりの展開であった。

直線入り口で先頭に立ったハイセイコー。大歓声が上がる。前走のNHK杯でハイセイコーは苦しい競馬をしながら直線で驚異的な粘りで前を捕らえて勝っている。怪物ならここから引き離すさ。そう信じてハイセイコーに拍手を送るファンの目に、信じ難い光景が飛び込んできた。

なんと12番人気のイチフジイサミ(後の天皇賞馬)がハイセイコーに並びかけ、交わす勢いなのである。悲鳴、絶叫。そして更にその外から二頭に襲い掛かってきたのがタケホープだった。

粘るハイセイコーを残り1ハロンで振り捨てた二頭。タケホープはイチフジイサミを内ラチに押し込むように抜け出すと、1馬身差でゴールしたのであった。

当時としては大きなガッツポーズをする嶋田騎手。しかし13万人の大観衆は崩壊したハイセイコー神話に呆然。タケホープと嶋田騎手に拍手を送るものさえ疎らだったという。

ぶっちゃけ、このダービでのハイセイコーは無理なローテーションや道中のハイペースなど不利な要素が多かった。そのため「ハイセイコーの方が実力は上！」「タケホープの勝ちはけたぐりをかましたようなもの！」という意見も大きかった。

秋になって京都新聞杯でタケホープは実力を証明するどころかハイセイコー2着に対して8着に敗れる。ハイセイコーファンは「それみろ！」とばかりにタケホープをこき下ろし、本番の菊花賞ではハイセイコーをまたも一番人気に祭り上げた。タケホープはなんと6番人気である。アンチひでぇ。

しかしレースではまたも早め先頭の作戦をとったハイセイコーを狙い済まして飛んできたタケホープが、粘るライバルを鼻差競り落として優勝。世代NO.1の座を高らかに宣言したのであった。

ちなみに、ダービーと菊花賞を制する形の二冠馬は他にクリフジがいるのみで非常に珍しい。

タケホープは翌年、天皇賞（春）を制して八大競争3勝という素晴らしい戦績を残し、同年の有馬記念3着を最後に引退した。

引退後は種牡馬になったのであるが、パッとしなかった。長距離血統が祟ったのであろう。種牡馬として成功したハイセイコーとは比較の対象にもならなかったと言える。

1994年死亡。ハイセイコーに先立つこと6年であった。

ハイセイコーのライバルとして

終生のライバルとして語られているハイセイコーとは9戦して4勝5敗。しかし先着したレースでは全て優勝している。

初対戦であるハイセイコーに勝利したダービーでは(当時ハイセイコーで初めて競馬を知ったファンにとっては)あまりにも突然過ぎる登場から、人気薄からアイドルホースを出し抜いた「フロックのダービー馬」としてハイセイコーファンからひどく憎まれた^[1]、しかし続けて対戦した菊花賞、天皇賞(春)でハイセイコーに勝利して実力を証明し、人々からハイセイコーのライバルとして広く認められるようになっていった。両陣営は他馬そっちのけでライバルについてばかり言及し^[2]、引退レースのコメントも勝ったタニノチカラについてではなく互いの着順についてであり、またハイセイコーのファンも2着に敗れたことよりもタケホープに先着したことを喜んだ。ダービーを勝って以降、タケホープは引退レースの有馬記念でしか一番人気になっていないものの、当時から「人気のハイセイコー、実力のタケホープ」と言い表され、ハイセイコーのファンからも(敵役としてではあるが)大きな人気を得ていった。引退レースの有馬記念前には「もし有馬記念が、ハイセイコーとタケホープたった2頭のマッチレースで行われるとしても、中山競馬場は満員になるに違いない」と言われ、そこでついにタケホープは一番人気になるのである。

日本ダービー、天皇賞を含む八大競走3勝は当時としては超一流の成績であり^[3]、競争成績では間違いなくハイセイコーを上回っていると言って良いだろう。引退後に製作が始まった「JRAヒーロー列伝」でもNo.1に選ばれたハイセイコーと共にNo.2として同時に選出されているなど、JRAからも競馬を大衆に広めた第一次競馬ブームの立役者としてリスペクトを受けている。

今日の日本競馬の歴史はハイセイコーの存在無くして語ることはできない。そしてそのハイセイコーを語るとき、立ち塞がったライバルであるタケホープのことも、いつまでも語られることだろう。

ちなみに、あのダービーでの、ハイセイコーの単勝支持率最高記録はディープインパクトに抜かれている。例えばである。あのディープのダービーで、9番人気の馬(調べたらアドマイヤフジだった)がディープを負かしたとしたらどうだったろう？想像出来るだろうか？それが現実に起こったのが1973年の日本ダービーだったのである。そう考えるとあのダービーがどれほどの事件であったのか。タケホープがなんというとんでもないことをしでかしたのかという事がお分かり頂けるのではないだろうか。

血統表

クロス：Nearco 3×5×5×5(21.88%)

関連動画

関連コミュニティ

関連項目

• 競馬
• 競走馬の一覧
• 1973年クラシック世代
  • ハイセイコー
• タニノチカラ
• ライスシャワー(悪役仲間。共に菊花賞と天皇賞を勝っている)

脚注

1. *嶋田騎手自身の息子がハイセイコーのファンであり、母親に泣きついてしまった話は有名
2. *またハイセイコー陣営はタケホープの出走するレースに合わせてローテーションを組むことまでしていたと言われる
3. *当時古馬のGI級と言えるレースは春秋天皇賞を除けば有馬記念しか無かったため、適性のあるなしに関係なく殆どの有力馬が集まっていた

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