タラレバ(Codfish Liver)とは、鱈の肝臓である。
概要
魚の肝の油を体に塗布すると水中で呼吸ができ、大洋でさえも泳げるという伝承がある。
特に鱈の肝は、世界各地で漁獲できる繁殖力から、その効果が高いとされてきた。
1000匹の鱈の肝臓を集めて油を絞り出し、七日七晩煮詰めて抽出した一瓶の油は、七つの海を渡り歩き、地下の資源も財宝も、メタンハイドレートでさえも思いのまま採取できる究極の秘薬である。
これを世界各地のトレジャーハンターに売ることができれば、一夜にしてビルゲイツをも超える億万長者…
…だったらいいのになあ…
本当の概要
そうだったらいいのにな
そうだったらいいのにな
大丈夫だって! 当たったら倍にして返すから! だから、な!
―うちの親父
タラレバ(If it could)とは、「~であったら」「~すれば」という仮定の議論である。
否定的な意味で使われるのが通例である。
具体例
- パチンコに勝ったら、借りた金を倍にして返す。
- 《スランのゴーレム/Thran Golem》に《怨恨/Rancor》をつければ、7/5飛行先制攻撃トランプルになる。
- 強烈なデメリットのパーマネントを押しつけられれば、《寄付/Donate》は強い。
- ルーピングプレイもストリングプレイもオフストリングプレイもできて、動かしやすくて値段が安くてスリープ力が落ちなくてパフォーマンスも簡単にできるヨーヨーがあったら、俺でも世界チャンピオンになれるのに。
- 2個のヨーヨーでオフストリングができれば、すごい高得点が取れるのに。
- オリンピックを誘致できれば、景気が回復する。
- 時速200kmを超える超特急が完成すれば、ドル箱路線になる。
- 高速道路が完成すれば、村は栄える。
- ミッドウェー海戦でぼろ負けしなかったら、日本は大東亜戦争に勝っていた。
- バブル崩壊前に土地を手放していれば、我が社は倒産しなかった。
実現するかどうか分からない、実現しそうにない、もしくは実現しなかったことを含意する。
しかし、この例を見ても分かるとおり、タラレバを実現させている場合もある。
タラレバが実現しない例
タラレバを「Aできれば、Bできる」とまとめたときに、以下の2種類に分類される。
- Aが実現できない。
- Aを実現させたのに、Bが実現できない。
1.は典型的な例で、Aの仮定が都合が良すぎて、実際にやってみるとうまくいかない場合である。
具体例1.と4.がこの例である。「パチンコに勝つ」「メリットもりもりのヨーヨーが完成する」自体が都合の良い仮定である。
2.は、「Aできれば『必ず』Bできる」と無反省に思い込む、すなわち「AできたのにBできない」場合を想定し切れていない場合である。「Bできる」ための必要条件がA以外にもある場合が多い。
具体例2.6.8.9.がこの例である。
2.はエンチャントを割られると大幅に弱体化するし、6.は政府の財政出動が必要。
8.はストロー現象で若者が出て行ってしまう可能性が高く、9.は仮にできたとしても、アメリカの物量作戦に押されるのがもう少し遅くなるだけの話だっただろう。
このように、仮定を実現させるためには検証しなければならない問題が山積みの場合が多く、「タラレバ」の話をまともなビジネスの席でしても相手にされないことがほとんどである。
タラレバが実現する例
「Aできれば、Bできる」という形のタラレバが実現するのは、以下の場合である。
- Bするための必要条件Aを全て枚挙する
- Aを全て、確実に実現させる。
前述の通り、これにはとてつもない運か努力、またはその両方が必要である。
具体例3.5.7.は、実現させてしまった例である。
『マジック:ザ・ギャザリング』では「タラレバ」は「タラレバ」で終わるのが通常だが、実現させてしまう例が存在する。
具体例3.は、《Illusions of Grandeur》という最強の相棒が登場したことで、「ドネイト」デッキが隆盛を極めることになった。
ヨーヨーでは、理論上考えられる動きは研究と努力で実現させるのがトッププレイヤーのたしなみである。
また、この20年間でヨーヨーそのものも大きく進歩したため、ちょっと前までは考えられなかった動きもけっこう実現できてしまう。具体例5.は、第1期ハイパーヨーヨー時代に言えば一笑に付されただろうが、のちに「ソロハム」というスタイルとして実現することになった。
タラレバが実現しようがしまいがどうでもいい例
では、タラレバは、絵空事として嘲笑するか、努力と運によって実現できたことを賞賛するかしかないのだろうか。
冒頭の『そうだったらいいのにな』を無邪気に歌う子供らに、「お庭がジャングルになるわけないじゃん」「ライオンとか飼うの大変だよ」などと言うのだろうか。
それとも、「じゃあお庭をジャングルにできるように頑張ろう!」と温室の準備を始めるだろうか。
そうではない。
タラレバは、想像するだけで楽しいものである。
楽しいことは、それだけで価値がある。
楽しいだけの想像の中から、一つでも二つでも実現できるものがあれば、それが人類の発展に貢献するのである。
論理学
任意の命題P,Qについて、「PならばQ」を「P→Q」と表す。
この時、Pを仮定、Qを結論という。
例えば、冒頭のパスカルの引用の場合、「クレオパトラの鼻がもう少し低い」が仮定である。
演算子「→」の定義
P | Q | P→Q |
---|---|---|
真 | 真 | 真 |
真 | 偽 | 偽 |
偽 | 真 | 真 |
偽 | 偽 | 真 |
ちょっと待った、下の2段は何だ!?
上2段は直感的に納得できるが、けしからんのは下2段である。
「仮定が偽なら、結論の真偽にかかわらず命題は真」ということになる。
担当教官は、このように説明するだろう。
命題「次のテストで100点取ったら、おもちゃを買ってあげる」で、
「次のテストで100点取らなかった→おもちゃを買ってあげなかった」がウソではないのはもちろんだが、
「次のテストで100点取らなかった→おもちゃを買ってあげた」もウソではない。
しかし、そんな単純な話ではない。
「女の子ならば誰でもプリキュアになれる」が真なら、「男の子もプリキュアになれる」は真なのか?
考えれば考えるほど頭が混乱してくる。
したがって、教養科目クラスだと「あんまり考えずに、そういうもんだと思ってくれればいい」ぐらいの説明で話が先に進んでしまう。ここで悩んでいるうちに授業は進んでしまうので、仕方なく丸暗記する。
同値関係
P→Q⇔¬P∨Q と定義されている。
すなわち、「PならばQ」は、「Pでない、またはQである」と同じ意味である。
しかしこの「または」がくせ者である。
数学の「または(or)」は、両方である場合を含む。
すなわち、「Pでない、かつQである」は、「Pでない、またはQである」の中に含んでしまうのである。
この変な定義にすると何が便利なのか
大雑把に言えば、「真理値表を書いたとき、全て真になれば命題は真、そうでなければ偽」というルールを作ると、必然的にこの変な定義になる。
論証の基本「モーダス・ポネンス」を考えてみよう。
- PならばQである。
- Pである。
- ゆえに、Qである。
これを論理式で表記すると、((P→Q)∧P)→Q となる。
真理値表を書くと、以下の通りである。
ここで、仮定が偽である場合のP→Qの真理値は不明とし、与命題である最右列は全て真と置く。
P | Q | P→Q | (P→Q)∧P | ((P→Q)∧P)→Q |
---|---|---|---|---|
真 | 真 | 真 | 真 | 真 |
真 | 偽 | 偽 | 偽 | 真 |
偽 | 真 | 偽 | 真 | |
偽 | 偽 | 偽 | 真 |
ここで、空欄のある段は、共にPが偽なので、(P→Q)∧Pの値はP→Qの値によらず偽となる。
ここで、真理値表を並べ替えると、下二段の真理値は以下のようになる。
(P→Q)∧P | Q | ((P→Q)∧P)→Q |
---|---|---|
偽 | 真 | 真 |
偽 | 偽 | 真 |
すなわち、一番右を両方真にしたい場合、仮定が偽の時には結論の真偽によらず命題を真とすれば、真理値表の計算がしやすくなるという理屈である。
じゃあ悪用してやれ
この変な定義をうまく使えば、めちゃくちゃな論理を正しいといえそうな気がする。
例えば、「2+2=5ならば、俺の彼女は巨乳美少女である」は、支離滅裂だが真である。
しかし、そうは問屋が卸さない。
例えば、上の命題は確かに真だが、だからといって俺の彼女が巨乳美少女であることまで真だとは限らない。
「2+2=5ならば、俺の彼女が巨乳美少女である」という命題がまとめて真なのであって、それは俺の彼女が巨乳美少女だろうとなかろうと無関係に真なのである。
また、「試合に勝ったらチューしてあげる」と言われたからといって、「じゃあ、ロンリガク的には試合に勝たなくてもチューしてくれるってことか、やったー!」と喜ぶのは早い。
それは、「『試合に勝ったらチューする』ならば『試合に勝たなかったらチューする』」という命題だからである。
すなわち、命題(P→Q)→(¬P→Q)である。
真理値表を書くと、下記の通り偽である。
P | Q | P→Q | ¬P | ¬P→Q | (P→Q)→(¬P→Q) |
---|---|---|---|---|---|
真 | 真 | 真 | 偽 | 真 | 真 |
真 | 偽 | 偽 | 偽 | 真 | 真 |
偽 | 真 | 真 | 真 | 偽 | 偽 |
偽 | 偽 | 真 | 真 | 偽 | 偽 |
また、「試合に勝たなかったらチューしない」も偽である。
真理値表は下記の通り。
すなわち、「PしたらQしてやるよ(PしなかったらQしないとは言っていない)」は論理的に妥当である。
高校数学で「裏は必ずしも真ならず」と習ったものと同じである。
P | Q | P→Q | ¬P | ¬Q | ¬P→¬Q | (P→Q)→(¬P→¬Q) |
---|---|---|---|---|---|---|
真 | 真 | 真 | 偽 | 偽 | 真 | 偽 |
真 | 偽 | 偽 | 偽 | 真 | 真 | 真 |
偽 | 真 | 真 | 真 | 偽 | 偽 | 偽 |
偽 | 偽 | 真 | 真 | 真 | 真 | 真 |
このように、いかに変であれ、論理学の定義を悪用することは難しい。
論理学は確かに直感的でない定義をすることがあるが、それは、実際に使われる命題が直感に沿うように定義しているからである。
言語学
といっても、初版編集者は日本語と英語しか知らないので、誰か加筆してくれたらいいのになあ…
日本語
動詞・形容詞・形容動詞・助動詞に、仮定の助動詞「ば」をつけて表す。
この際、文語文(古文)では未然形、口語文(現代文)では仮定形に変化する。
古文では「書けば」は「書くならば」の意味ではなく「書くので」の意味である。
仮定の意味であれば「書かば」となる。
古文のテストで嫌というほど問われるので、中学生・高校生のみなさんは絶対に覚えよう。
以下に、仮定の「ば」をつけた形を表す。変化形は、教科書にあるものと異なり、助動詞「ば」を省略せずに書く。
その他の活用については、「日本語の活用」の記事を参照。
というか、下の表を書き始める前に気づいていたら、そっちに書いたのに!
品詞 | 古文 | 現代文 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
活用 | 用例 | 未然形 | 活用 | 用例 | 仮定形 | |
動詞 | 四段活用 | 書く | 書かば | 五段活用 | 書く | 書けば |
上二段活用 | 満つ | 満ちば | 上一段活用 | 満ちる | 満ちれば | |
下二段活用 | 受く | 受けば | 下一段活用 | 受ける | 受ければ | |
上一段活用 | 見る | 見ば | 上一段活用 | 見る | 見れば | |
下一段活用 | 蹴る | 蹴ば | 五段活用 | 蹴る | 蹴れば | |
カ行変格活用 | 来 | 来ば | カ行変格活用 | 来る | 来れば | |
サ行変格活用 | す | せば | サ行変格活用 | する | すれば | |
ナ行変格活用 | 死ぬ | 死なば | 五段活用 | 死ぬ | 死ねば | |
ラ行変格活用 | あり | あらば | 五段活用 | ある | あれば | |
形容詞 | ク活用 | 古し | 古からば | ク活用 | 古い | 古ければ |
シク活用 | 美し | 美しからば | シク活用 | 美しい | 美しければ | |
形容動詞 | ナリ活用 | あはれなり | あはれならば | ダ活用 | あわれだ | あわれなら(ば) |
タリ活用 | 堂々たり | 堂々たらば | タルト活用 | (なし) | (なし) | |
助動詞 | (過去) | き | せば | (過去) (完了) (存続) |
た | たら(ば) |
けり | けらば | |||||
(完了) | つ | てば | ||||
ぬ | なば | |||||
たり | たらば | |||||
り | らば | |||||
(推量) | べし | べからば | (なし) | (なし) | ||
まし | ましかば | |||||
(打消) | ず | ざらば | (打消) | ない | なければ | |
ぬ | ねば | |||||
(打消推量) | まじ | まじからば | (打消推量) | まい | (なし) | |
(断定) | なり | ならば | (断定) | だ | ならば | |
たり | たらば | |||||
(受身) | る | れば | (受身)(可能) (自発)(尊敬) |
れる | れれば | |
らる | られば | られる | られれば | |||
(使役) | す | せば | (使役) | せる | せれば | |
さす | させば | させる | させれば | |||
しむ | しめば | (なし) | (なし) | |||
(希望) | まほし | まほしからば | (希望) | (なし) | (なし) | |
たし | たからば | たい | たければ | |||
たがる | たがれば | |||||
(様態) | そうだ | そうならば | ||||
(比喩) (推定) (例示) |
ようだ | ようならば | ||||
(推定) | らしい | らしければ | ||||
(丁寧) | ます | ますれば |
以上のように、「タラレバ」の「れば」は多くの活用の仮定形、「たら」は、現代文で過去・完了・存続の助動詞「た」の仮定形であることがわかる。
英語
接続詞「if」を用いる。
if節の中では[1]、未来時制であっても助動詞willは使わず、現在形で表す。
「直説法」と「仮定法」があり、「仮定法」の方は文法が若干特殊である。
if節の内容が実現する可能性がある場合は「直説法」を使う。時制はそのままでifを用いればよい。
If it rains tomorrow, the game will be cancelled.
もし明日雨ならば、試合は中止です。
if節の内容が実現しなかった、または実現しそうにない場合は「仮定法」を使う。
現在時制の場合は過去形(仮定法過去)、過去時制の場合は過去完了形(仮定法過去完了)を用いる。
If it rained today, the game would be cancelled.
もし今日雨なら、試合は中止になるのに。
If it had rained yesterday, the game had been cancelled.
もし昨日雨だったら、試合は中止になったのに。
いずれも、今日雨が降りそうにない、もしくは昨日雨が降らなかったことを表す。
仮定法過去でbe動詞を使いたい場合、主語に関係なくwereを使う…
…と高校英語では習うが、それはすでに古い用法であり、現代では単数の場合はwasを使うとのこと。
If I were a bird, I would fly to you.
もしも私が鳥ならば、君のところへ飛んでいくのに。
If it was fine today, I would go for a walk.
もしも今日晴れなら、散歩に行くのになあ。
その他言語
関連動画
誰か探して貼り付けてくれればいいのになあ…
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関連項目
脚注
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