チキチキマシン猛レース(原題「Wacky Races」)とは、アメリカのアニメ会社、ハンナ・バーベラ・プロダクションが制作したオリジナルテレビアニメである。
アメリカでは1968年に放送され、日本でも1970年に放送された。全34話。
概要
11台の個性的な車がレースで競い合うこのアニメは、各マシンのユニークなデザインと機能、一癖も二癖もあるドライバーたちが魅力的に描かれており、40年以上経った現在でも多くのファンに愛されている。ハンナ・バーベラのアニメーションはこの他にも、多くのアニメを日本でも放送しているが、その中でも本作の知名度が圧倒的に高く、地元アメリカより日本の方が人気が高いらしい。
日本語版は英語版にはないオリジナル設定が多いのが特徴で、英語版では台詞が無いケンケンなど一部の動物キャラクターに台詞を付けたり、野沢那智をはじめとする声優陣によるアドリブも多い。また、日本人にはわかりにくい設定なども変更されている(レーサー達が南部の人間に間違えられて銃撃を受ける→ジャガイモを盗む泥棒と間違われて銃撃を受けるなど)。また、ファンの間では有名な主題歌も日本のオリジナル曲である。
実際のところ、ブラック魔王役の大塚周夫曰く、この番組ではなんと台本がなかったらしく、「口動いてんだからなんか喋れよ」と言われてアドリブでセリフを当てていたらしい。
ハンナ・バーベラは後に、ブラック魔王とケンケンが空中戦を繰り広げる「スカイキッドブラック魔王」や、ミルクちゃんが主人公の「ペネロッピー絶体絶命」などのスピンオフ作品や、ゼロゼロマシン以外の10台をハンナ・バーベラアニメの主人公達に変更した続編「新・チキチキマシン猛レース ケンケンのフェンダー・ベンダー」などを制作したが、日本では本作ほどの知名度を得ることはできなかった。
上記の通り、日本で高い人気を博したこのアニメが与えた影響は大きく、マリオカートのモデルの一つにも挙げられている(ちなみに、チキチキマシン自体も3DOなどでゲーム化されており、プレイ動画が投稿されている)。また、笑い方が特徴的なブラック魔王の相棒・ケンケンも有名になり、ドラマ「ひとつ屋根の下」で江口洋介が演じた主人公の笑い方もケンケンのパロディである。
参戦マシン
- ゼロゼロマシン(00)
- ブラック魔王とケンケンが搭乗する、本作の主役機。他のレーサーを妨害するために様々な機能を併せ持ち、先回りする高性能機体を持つが、たいてい妨害が裏目に出る。そのため、クラッシュ回数は断トツで歌詞の通り傷だらけのマシンである。万年ビリで、最終回は遂に優勝かと思われたがインキチがバレて取り消されてしまった。(他のレーサーも同じようなことをやっているが・・・)
- ガンセキオープン(1)
- タメゴローとトンチキが搭乗する、車体や車輪が岩石でできた機体。よく壊れるが、そのたびに手頃な石を拾っては、棍棒で器用に叩いて新しく作り直す、ある意味最も手頃に作れる即席車である。お互いを棍棒で叩いてスピードを上げるが、たまに仲間割れして殴り合うことも。
- ヒュードロクーペ(2)
- モンスターとドラチビが搭乗する、西洋のお化け屋敷のような外見をした機体。後部の屋根にはドラゴンが収納されており、ドラゴンエンジンに切り替えると、頭と翼を出して空を飛んだり炎を吐いたりする。
- マジックスリー(3)
- ドクターHが操縦する、全体が機械仕掛けの機体。博士の操縦ひとつで、様々な仕掛けが飛び出したり、熱気球や空飛ぶ絨毯、更にはホッピングなど、機体がどこに収納したのかわからない程、姿を変幻自在に変える(本編では忍術と呼ばれる)。ブラック魔王の仕掛けた罠を解除したり、反撃して逆にやっつけるなど他のレーサーの攻撃にもかなり強い。
- クロイツェルスポーツ(4)
- コウモリボスが操縦する、複葉機に車輪を付けた外見の機体。空を飛べるが、飛行自体ならヒュードロクーペやマジックスリーも可能であり、こちらはそれ以外に目立つ機能が無い上に、時々墜落事故を起こす。そのためか、他のマシンのかませ犬ならぬ、かませ車になることが多く、あまり見せ場に恵まれていない。
- プシーキャット(5)
- ミルクちゃんが操縦する、ピンク色で統一されたオシャレな機体。レース中でも口紅を自動で塗ったり、シャワーで体を洗うなどオシャレ機能が満載。肝心のレースが有利にする機能は備え付けられてないが、他のレーサーは基本的にミルクちゃんに甘いため、特に必要は無い模様。
- タンクGT(6)
- 軍曹閣下と新兵が搭乗する、縦長の戦車。戦車だけあって砲門を備え付けてあり、大砲で攻撃したり、後方に撃つことでスピードアップを図ることが可能。全11台中最重量で、キャタピラは巨大化もする。ゼロゼロマシンを除き最も入賞成績が悪いが、2位・3位が極端に少ないためであり、優勝回数は他のマシンとほとんど同じである。
- ギャングセブン(7)
- トラヒゲ一家が搭乗する、クラシックカー。外見は普通だが、車体の底が抜けるようになっており、子分達が地面を走ることでスピードが上がる。子分の足の速さは、警察から逃げるために鍛え上げられたもので、レース中も無線機で警察の動きを把握している。7人全員が車両の前方にまとまって乗っており、後方座席は基本的に空席。
- ポッポSL(8)
- ヨタローと熊八が搭乗する、木材の台車にボイラーとイスを乗せただけのオンボロな機体。後方のボイラーがエンジンとなっており、しばしば他のマシンの攻撃の標的とされる。タイヤを膨らませて空を飛んだり、釣り竿をゴール地点まで投げ、引き寄せてスピードを上げるなど、予想外な方法で順位を伸ばすことが多い。
- ハンサムV9(9)
- キザトト君が操縦する、一般的なレースカー。特に秀でた機能が無く、ちょっとしたこと(鳥につつかれる、煙に巻かれるなど)ですぐ壊れるという致命的な欠点を持つが、キザトト君がマシンに活を入れればあら不思議、すぐ元の姿に直ることが可能。中には、3回もクラッシュしながら優勝したエピソードもある。
- トロッコスペシャル(10)
- ドン・カッペと甚平が搭乗する、丸太の機体とノコギリの車輪が特徴の機体。ノコギリ車輪の威力はすさまじく、他のマシンを真っ二つにしたり、ちょっとした障害物を破壊することができる。但し、悪路に弱いのが欠点。車輪がさび付かないように、潤滑油を常備している。
登場キャラクター
- 実況解説(野沢那智)
- 本編のナレーションで、直接姿を見せることはない。マイクが各車体と繫がっているのか、レーサーに突っ込んだり、逆に話しかけられることも。かなりノリが良くテンションの高い性格で、野沢の名演技も相まってレースを大いに盛り上げる。ブラック魔王を嫌っており、ゼロゼロマシンが1位になったり妨害が成功すると悔しがり、妨害の失敗などで魔王が酷い目に遭うと「ざまぁwww」と大喜びする。反面、ミルクちゃんを贔屓しており、実況そっちのけで応援したり、他のマシンがプシーキャットを抜かしたり攻撃すると腹を立てる。
- ブラック魔王(大塚周夫)
- ゼロゼロマシンの運転手。妨害専門の悪名高いレーサーで、優勝するために毎回あの手この手尽くして悪巧みを企むが、その多くが失敗して自分が損害を被る、どこか憎めない悪党である。同時に、ゴール寸前でマシンがトラブルを起こして優勝を逃すことも多く、あまりにも運に見放された不憫なキャラでもある。変装が上手で、西部のお尋ね者や老婆に扮したことも。
- ケンケン(神山卓三)
- ブラック魔王の愛犬。助手として常に一緒に行動するが、人使いならぬ犬使いの荒い主人にいつも不満を持っており、ブラック魔王が不幸な目に遭うと、いつも口に手を当てて「ヒッーヒッヒッヒ」と独特の笑い声を上げる。ブラック魔王に八つ当たりを受けることも多いが、それを見越して反撃することもよくある(殴ろうとした魔王の腕に噛みつくなど)。
- タメゴロー(加藤治)
- 全身毛むくじゃらの原始人。見た目は相棒のトンチキと瓜二つで区別が付かないが、奥にいる方がタメゴローである。主に棍棒を振り回して敵を攻撃したり、車を直す役目を担当。勢い余って、車から振り落とされることも多い。
- トンチキ(緑川稔)
- ガンセキオープンの運転手。手前にいる方で、運転に専念しているためか、タメゴローに比べて見せ場や台詞は少なめ。
- モンスター(神山卓三)
- ヒュードロクーペの運転手。巨大な体と顎が特徴のフランケンシュタインだが、見た目に反して性格は割と温厚。しかし、レーサー達を怖がらせる幽霊を反対に脅かして追っ払ったこともある。
- ドラチビ(たてかべ和也)
- モンスターのナビゲーターを務める、小柄なコウモリ伯爵。エンジンの切り替えを担当する他、彼自身が空を飛んでマシンを牽引したりする。
- ドラゴン
- ヒュードロクーペの車体に収納されている。マシンの説明通り、ドラゴンエンジンに切り替えると頭と翼を出して大活躍する。ただし、他のレーサーに攻撃される事も多く、コウモリボスに胡椒をかけられたり、ミルクちゃんに傘で殴られるなど酷い目に遭うこともしばしば。
- ドクターH(槐柳二)
- マジックスリーを設計した天才発明家。周りからは「先生」と呼ばれている。勝負よりもレースを無事に進めることを大事に思っており、ブラック魔王の攻撃でコースが塞がれたり、他のレーサーがピンチに陥った時に助けたりしてくれる親切な人柄。
- コウモリボス(梶哲也)
- 撃墜王の異名を持つ、クロイツェルスポーツのパイロット。車体と同じく、服も赤いカラーリングで統一している。プライドが高く、ブラック魔王と異なり悪役でもないのに、よく高笑いする。
- ミルクちゃん(小原乃梨子)
- 本作のヒロイン。プシーキャットの運転手にして、みんなのアイドル。実況解説者や周りのレーサーからちやほやされているが、自身が好かれてることも利用するなどなかなかの策士。特にキザトト君からはよくアプローチされているが、本人もまた満更でも無い様子。ブラック魔王「リア充爆発しろ」
- 軍曹閣下(細井重之)
- 階級は軍曹なのに、なぜか閣下とよばれる小太りで尊大な上官。基本的に砲台がある2階席からと命令するだけの楽な役回りだが、やはりこちらも敵の攻撃に晒されやすい。この砲台は取り外し可能で、取り残されたこともたびたびある。
- 新兵(小宮山清)
- 軍曹閣下とは対照的に痩せ細った外見をしており、タンクGTの運転と砲撃を一人で担当する。「撃てー!」「撃つー!」など、軍曹閣下とは息の合ったやり取りを繰り広げるが、たまに命令を無視したり話を聞いていないこともある(この際、トラブルに巻き込まれるのはたいてい軍曹閣下の方)。
- トラヒゲ親分(水島晋)
- 警察から指名手配されているギャング団・トラヒゲ一家のボス。タンクGTの軍曹閣下と同じく、子分への命令に専念している。が、子分のマヌケさに苦労する一面も。小柄でメンバーが7人であることから、7人のこびとに変装したこともある。でも、かわいくない。
- ダムダム(たてかべ和也)
- トラヒゲ一家の子分のひとりで、圧倒的に台詞と出番が多い。茶色の服と横長の帽子が特徴。ボケをかまして、親分に突っ込まれることが多い。なお、他の5人の声は神山卓三、加藤修、緑川稔、小宮山清、広川太一郎、細井重之、雨森雅司がそれぞれの役と掛け持ちで演じている。
- ヨタローどん(高田竜二)
- いつもマイペースでのんびりした百姓。よほど貧乏なのか、靴を履いておらず、足でハンドルを運転している。オリジナル版では字が読めない設定だが、日本では識字率が100%のためか、吹き替えの際はすべて別の台詞に切り替わっている。
- 熊八(細井重之)
- ヨタローが農場で飼っている熊。臆病な性格で、主人の居眠り運転が気になっていつも震えている。とは言え、熊だけあってかなりの怪力で、マシンやボイラーを持ち上げることもできる。
- キザトト君(広川太一郎)
- ハンサムV9のレーサー。オネエ言葉で話し(語尾に「~なのよね」「~だわ」と付けることが多い)、軟派な印象を受けるが、本気を出せばブラック魔王をゼロゼロマシンごと投げ飛ばすなどの力持ち。また、怒らせると乱暴な口調になるが、これらは広川のアドリブによるところが大きい。
- ドン・カッペ(雨森雅司)
- トロッコスペシャルの運転手。ずんぐり体型の木こりで、性格も豪快にしてとにかくパワフルな好漢。ヨタローと同じく、「~だべ」など典型的な東北弁を喋る。
- 甚平(小宮山清)
- ドン・カッペの相棒のビーバー。丈夫な歯を活かして、大木を削って丸太を作るなど、土木作業のプロ。タメゴローたちの棍棒も食いちぎってしまうことも。時々ヘルメットに付けたゴーグルを装着している。
関連動画
関連項目
- 3
- 0pt