チバニアンとは、地質年代の1つである。
概要
地質年代とは、有史時代以前の時代の区分方法である。つまり、地層や化石など、地質学的な研究対象を主とする時代の区分である。
地質年代は以下のようになっている。
累代 | 代 | 紀 | 世 | 期 |
顕生代 | 新生代 | 第四紀 | 完新世 | メーガーラヤン |
ノースグリッピアン | ||||
グリーンランディアン | ||||
更新世 | 後期更新世(名称候補:タランティアン) | |||
チバニアン | ||||
カラブリアン | ||||
ジェラシアン | ||||
新第三紀 | 鮮新世 | ピアセンジアン | ||
ザンクリアン | ||||
中新世 | メッシニアン | |||
トートニアン | ||||
サーラバリアン | ||||
ランギアン | ||||
バーディガリアン | ||||
アキタニアン | ||||
古第三紀 | 漸新世 | チャッティアン | ||
ルペリアン | ||||
始新世 | プリアボニアン | |||
バートニアン | ||||
ルテシアン | ||||
ヤプレシアン | ||||
暁新世 | サネティアン | |||
セランディアン | ||||
ダニアン |
※新生代の範囲のみ示した。中生代以前については日本地質学会の国際時代層序表を参照すること
チバニアンは新生代更新世の中期にあたる年代である。具体的には約77万3000年前から12万6000年前の時代で、北京原人やネアンデルタール人などが現れ、人類が進化していった時代にあたる。
前の年代であるカラブリアンとは地磁気の逆転によって区別される。西暦2020年時点では、方位磁針の北極側がN極、南極側がS極を向く地磁気となっているが、かつてはこれが逆転していた時期があった。最後の地磁気逆転が約77万4000年前であり、これがカラブリアンとチバニアンの境界になっている。
名称について
「チバニアン」の由来は日本の県の「千葉」である。地質年代は、それを区分するために参考となる場所(GSSP、国際標準模式層断面及び地点)の名前から付けられることが多い。例えば「カラブリアン」はイタリアのカラブリア州から付けられている。
千葉県市原市の内陸部にある田淵地区に、「千葉セクション」と呼ばれる地層の露出部がある。この地層に、先述した地磁気逆転が観察しやすい形で表れている。約77万年前に火山灰が積もった層が見え、その上下の層で地磁気が逆転していることが確かめられる。
この千葉セクションと、イタリアのイオニア海沿いの地方にある2地点の地層から、2017年に更新世中期の名称候補として「チバニアン」と「イオニアン」の2つが挙げられ、2020年1月に正式に「チバニアン」が名称として認められた。日本の地名が地質年代に付けられたのはこれが初めてのことである。
なお、よく誤解されるが地層自体の名前はチバニアンではない。しかし現地の看板では「チバニアン」が通称になってしまっている(参考)。
反対派の活動
茨城大学名誉教授の楡井久を中心とするグループが、同茨城大学の岡田誠教授が出した千葉セクションのGSSPの登録申請に不適切な部分があるとして国際地質科学連合(IUGS)に提訴した。
楡井が千葉セクションのある土地の所有者から借地権を取得したため、「現地への自由な立ち入りと試料採取」ができない可能性が出てきた。この場合、GSSPとしての要件を満たせなくなってしまうことになり、日本では「『チバニアン』の認定が困難になった」という報道が一部であがった。
2019年には市原市が千葉セクションへの学術的な調査のための立ち入りを認める条例を出し、2020年には「チバニアン」が国際地質科学連合によって認められることとなったが、楡井らは要望書を日本学術会議IUGS分科会などの関連団体に提出している(参考)。
なお、千葉セクションを単に見学すること自体は、川の増水時以外であれば2020年現在でも可能である。
千葉セクションへのアクセス
公共交通機関ではJR内房線の五井駅から伸びている小湊鉄道に乗り、月崎駅下車後徒歩30分ほど。
自動車の場合は圏央道の市原鶴舞ICが最寄り。県道81号線沿いを進み、県道172号線との交差点の少し北にある道を入る。すると「田淵会館」という建物があるので、案内に従って少し進むと駐車場がある。そこから徒歩10分程度(参考)。
徒歩区間は急な坂であり、千葉セクションは狭い川原から観察することになるので、歩きやすい靴(長靴がベスト)と虫よけ対策の準備が必要である。増水時は見学が危険となる場合もあるので注意。
関連動画
関連静画
関連リンク
- 「『自由な立ち入り』困難、チバニアン申請手続き中断」(読売新聞オンライン, 2019年5月27日)
- 「調査妨害阻止へチバニアン条例 千葉・市原市で成立」(SankeiBiz, 2019年9月19日)
- 兜森衛「『チバニアン』めぐり地質学者同士が泥沼論争…「データのねつ造、改ざん、盗掘」が争点」(Business Journal, 2019年7月27日)
- 水野倫之「チバニアンに条例 そのワケは?」(NHK「くらし☆解説」, 2019年7月30日)
- 菅沼悠介「祝・地質年代『チバニアン』決定! で、結局何がスゴいの?」(講談社ブルーバックス, 2020年1月17日)
関連項目
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