デアリングとは、イギリス海軍(ロイヤルネイビー)の最新鋭防空駆逐艦、およびネームシップとする駆逐艦である。
別名D級防空駆逐艦、あるいは45型駆逐艦とも言われる。
概要
フォークランド紛争で明らかになった艦隊防空能力の向上のために、イギリス海軍が紆余曲折の上に作り出した最新鋭防空駆逐艦。もっともその大元はフランス、イタリアとの参加国共同開発のホライズン計画から。
ヨーロッパ諸国では航空機、陸上兵器だけではなく艦艇の共同開発のケースもあるのだが、こと防空システムではイギリス、フランス、イタリアの足並みはそろわなかった…まぁ、イギリスは外洋海軍として艦艇単独でも防空能力が欲しいし、フランスは無理やり保持している空母護衛として防空能力が欲しいわ、イタリア軍は防空なにそれ?みたいなノリだしなぁ…ので無理もないところというべきか。
イギリス海軍は結果的に独自開発に落ち着いて、自国開発のサンプソン・レーダーを配置したデアリング級駆逐艦を開発することになる。
ホライズン計画から受け継いだ、ステルス形状に留意した艦デザインと、水平線見通し距離を稼ぐための高いマストとその先端につけられたレーダーが特徴的(これはレーダーの設置場所は出来るかぎり高いほうが遠くを見れるいいからこういう配置になっている)。他にも後部格納庫上に長距離対空レーダも元気に回っていたりする。
どうしてこんなデザインになるかといえば、極力艦単独でのレーダー見通し距離をかせぐ必要があること、イージス艦のような船体多面に平面的なレーダーを設置するのはステルス形状として問題であるため、極力反射が起こりづらい形状のレーダーが望ましいことなどが理由として挙げられる。
このようにRCS(電波反射面積)を極力減少させたデザインは、それなりにスマートなものとなっており、駆動系もガスタービン統合電気推進を採用するなど、先進的ではあるが意外とオーソドックスなデザインである。後述するレドームを除外すれば、だが。
そう、デアリング級を見るものに最も強く印象付けるのは、艦橋マストトップのレドームである。何しろこのデアリング駆逐艦、マスト天井に取り付けられたサンプソン・レーダーのヒゲを思わせるようなアンテナ?付きレーダードーム(レドーム)がくるくる回るのである。なんて変態チック特徴的な艦なんだ…。
ただ、AESA(アクティブ・フェイズド・アレイ・レーダー)のはずのサンプソン・レーダーが回転するのは何もおかしいわけでもなく、海上自衛隊の「むらさめ」・「たかなみ」型護衛艦に搭載のOPS-24レーダーも回転するのだが、レドームの形状とあいまって異質感全開である。
但し性能まで英国面というわけではなく、ハトと同じ電波反射面積目標を180kmで。通常の航空機などが相手であれば最大250kmの探知が可能で、同時追尾目標数は500以上、そして同時交戦可能目標数(つまり対空ミサイルを投射できる相手)は12に達している。何気に欧州海軍の中では最も高性能な防空駆逐艦である。
そして船体艤装以外にも色々目新しい点は多く、たとえば戦闘指揮システムはWindows2000ベースで作られていたり、乗組員のためにiPodドックがあったりとか話題には尽きない。他には近年、急速に増大している海賊対処のため、筋肉モリモリマッチョマンの変態海兵隊の体力維持のための、フィットネスルームまで設けられている。
ただ余りの高額な建造費に英国議会は当初12隻の計画を8隻へ減少。最終的には6隻まで減らされた。どれくらいお高いのかといえば、世界最多のイージス艦であるアーレイ・バーク級駆逐艦が、概ね円換算で1400億円程度なのに対し(これでも十分高いが)、なんと2350億円前後に達している。バークより低コストを求めてどうしてこうなった…
デアリング以降の艦名は、ドーントレス、ダイアモンド、ドラゴン、ディフェンダー、ダンカン。すべて頭文字がDから始まるロイヤルネイビーらしい艦名名称のつけ方である。
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関連項目
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