トレ・クロノール級巡洋艦(Tre Cronor-klass kryssare)とは、スウェーデン海軍が保有した巡洋艦の艦級である。同型艦2隻が建造された。
当記事では、2番艦<イェータ・レヨン>が売却されて就役したチリ海軍巡洋艦<アルミランテ・ラトーレ>についても記述する。
概要
二次大戦期にスウェーデン海軍が建造した、スウェーデン最後の巡洋艦。搭載主砲径は152mmで、一般的には軽巡洋艦に類別される。排水量ではスヴァリイェ級海防戦艦を凌駕するスウェーデン史上最大の軍艦であり、優れた砲力と速力を持つ二次大戦型の巡洋艦として1970年まで活躍した。
建造経緯
1939年の第二次世界大戦発生は、武装中立を維持したスウェーデンにも少なからぬ影響を与えた。この時期、スウェーデン海軍は新たな海防戦艦の建造や巡洋艦クラスの海外建造艦の購入、オランダ海軍のトロンプ級巡洋艦を参考にした4800t級巡洋艦の建造などを計画したものの、いずれも実現せず、最終的に駆逐艦と水雷艇からなる2個の高速戦隊を新たな海上戦力として形成することとなった。この戦隊の指揮艦として建造された巡洋艦がトレ・クロノール級である。
折しも、スウェーデン国内の世界的兵器メーカーであるボフォース社はオランダ海軍のデ・ロイテル級巡洋艦(当時はデ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン級巡洋艦[1])向けに15.2cm砲/M42を製造していたが、1940年5月のドイツによるオランダ本国占領を受けてスウェーデンに接収されることとなった。そこで、新たな巡洋艦はこの15.2cm砲を主砲に採用。設計はイタリアで行われ、1943年にスウェーデン国内において建造が開始された。
兵装・性能
前級<ゴトランド>を大きく上回る全長180.2m、全幅16.7mの艦体を持ち、基準排水量は8200t、満載排水量は9200t。最大速力は33.0kt、航続距離は14ktで4350海里と、スヴァリイェ級の1.5倍におよんだ。
艦橋構造物は丸みを帯びた塔型艦橋だったが、のちの改装の結果、日本海軍の重巡洋艦や現代艦艇を思わせるような大型で直線的な形状の艦橋となっている。装甲については、時勢がら新たな装甲板を調達できず、1937年に解体されたオーディン級海防戦艦<オーディン>と<トール>のものを使用している。
主砲は前述の通りボフォース社製の速射砲である53口径15.2cm砲/M42を採用し、艦首側に三連装砲塔1基、艦尾側に背負式で連装砲塔2基のあわせて7門を配置した。3基いずれも両用砲塔であり、対空兵装としても使用できた。竣工時にはその他の副砲類は持たず、ボフォース40mm機銃20基などの機銃、533mm魚雷発射管6門、爆雷120個を搭載していた。二番艦<イェータ・レヨン>については1950年代後半に大改装を受け、新型レーダーの搭載や5.7cm連装高角砲2基の増設など対空性能の強化が図られた。
艦歴
トレ・クロノール Tre Cronor
Tre Cronorはスウェーデン語で「三つの王冠」を意味する。「三つの王冠」はスウェーデンの国章を構成する主要な要素のひとつであり、様々なところで使用されている。
1943年に起工されたのち、二次大戦終結後の1947年に竣工。就役後何年も経たない40年代後半のうちにレーダーの追加などの改装が行われ、1951年から53年にかけても艦橋の改造を含む大改装を行なったが、1950年代後半に<イェータ・レヨン>で行われた改装は財政面の問題で実施されず、1964年に退役。艦体はその後、スウェーデン南西部で舟橋として使用されたという。
イェータ・レヨン Göta Lejon
Göta Lejonはスウェーデン語で「黄金のライオン」を意味する。「黄金のライオン」は「三つの王冠」とともにスウェーデン国章を構成する主要な要素である。
1947年に竣工、40年代後半と50年代前半の改装でレーダーの追加や艦橋の改造などが行われた後、1957-58年にはレーダーの更新と5.7cm連装高角砲2基の増設を含む近代化改装を実施。一番艦が退役した後も1970年まで使用され、さらにチリ海軍に売却されて巡洋艦<アルミランテ・ラトーレ>となった。
アルミランテ・ラトーレ Almirante Latorre
1971年、トレ・クロノール級二番艦<イェータ・レヨン>を購入したチリ海軍は同艦を巡洋艦<アルミランテ・ラトーレ>(CL-04)として就役させた。
「アルミランテ・ラトーレ」の名は「ラトーレ提督」を意味し、1879年、(チリとペルーの)太平洋戦争においてアンガモス海戦でチリ海軍第二戦隊を率いてペルー海軍を破ったフアン・ホセ・ラトーレ(当時は中佐・装甲艦<アルミランテ・コクレーン>艦長として第二戦隊を指揮。のち中将・海軍総司令官)に由来する。
1986年までチリ海軍に在籍。退役後は台湾に売却され、翌1987年に解体された。
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関連項目
脚注
- *当時、一番艦を<デ・ゼーヴェン・プロヴィンシェン>として建造されていたが、その後の太平洋戦争で巡洋艦<デ・ロイテル>が戦没。戦後就役した一番艦に「デ・ロイテル」の艦名を受け継がせたため、最終的にはデ・ロイテル級巡洋艦と呼称される。
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