トーマス・シェリング(Thomas Schelling,、1921〜)とは、アメリカの経済学者、政治学者である。2005年ノーベル経済学賞受賞。
概要
人類最大の課題の一つである戦争をゲーム理論という数学を用いて研究した経済学者である。二つ名は「ドクターストレンジラブ」。直訳で「異常性愛博士」
シェリングの歩み
シェリングは1921年にカルフォルニア州のオークランドで生まれた。二次大戦中にカルフォルニア大学に通い経済学部を卒業した。そして48年にはハーバードで博士号を手にした。卒業後NATOの一員として西欧諸国との協議に参加する。
戦争とゲーム理論
1960年に出版された有名な著書「紛争の戦略ーゲーム理論のエッセンス」(ニコニコ市場でも買えるぞ)によってシェリングは、20世紀後半の東西冷戦時代を通じて世界を覆っていた核兵器による報復戦略の基盤を築いた。現在この本は、第二次世界大戦が終結した1945年以降の西欧世界において「もっとも社会的影響力が大きかった100冊」に選ばれている。
戦争についてのシェリングの見解は同時にノーベル経済学賞を受賞したロバート・オーマンのそれに似ており、戦争は常に”交渉の過程”であるとしている。こうしたシェリングの思想は、彼が経済学賞を受賞した際に一部のジャーナリストをして”ドクター・ストレンジラブ”と呼ばしめている。
ドクターストレンジラブとは当時の核兵器を風刺したブラックコメディ映画「博士の異常な愛情」の主役のマッドサイエンティストである。このキャラクターは戦略家ハーマン・カーン(ハマーン・カーンのモデルの人物)と、20世紀最高の数学者とされたフォン・ノイマン、水爆の父エドワード・テラーのイメージをミックスしたものである。すなわりシェリングはこのエキセントリックな三人と似た存在だと見なされたのだ。
選考委員の一人はシェリングたちの課題を「紛争によって利益がえられるときにどのようにして協調関係を築くかという人間社会が直面する最大の問題」と呼んだ。これは戦争だけでなく、企業、果てには個人間の諍いにも応用できるとされた。
シェリングは「紛争の戦略」の序文において、戦争を”異常事態”として扱ってその原因と対処法を求めることはしなかったとはっきり述べている。彼のアプローチは「紛争を歓迎し、その紛争に関わる行動を研究し」「より合理的で自覚的で巧みな行動に焦点をあわせる」というも、簡単にいえばシェリングは戦争をスポーツに見立てて、その中で参加者を”勝利しようとするものたち”としているのだ。
冷戦まっただ中の世界情勢においてシェリングは自らの理論が最も役に立つのは核戦略であるとした。
シェリングの研究
シェリングが広く知られるようになったのは、軍事戦略と核兵器についての研究であった。しかしシェリングはその範囲を超えて様々な問題について新しい洞察を行った。
彼が関わった領域はエネルギー・環境政策、気候変動、組織犯罪、テロリズム、海外援助、国際取引、人種隔離と差別撤廃、公衆衛生政策、タクシー運転、株式市場調査、税金の徴収、交通渋滞、誘拐、エチケットなど多岐にわたる。
彼は誰の記憶にも残るような生々しい事例を用いて、それらが人々の生活にどう関わっているかを描き出してみせた。そしてゲーム理論を文字通り現実社会に持ち込んだ最大の貢献者であったのである。
シェリングとゲーム理論
彼は博士号を取ったハーバード時代にもゲーム理論に触れたことはなく、イェール大学で政府の仕事を推敲する為に交渉戦略について研究するようになってから学び始めたのであった。その時用いた「ゲームと意思決定」をシェリングは時に100時間、時に200時間も読みふけったという。
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