◆重点◆ニンジャは実在しない、いいね?◆重点◆ |
この頁では、サイバーパンクSF小説『ニンジャスレイヤー』における「ニンジャ」について説明する。
概要
ニンジャスレイヤーにおける「ニンジャ」とは「様々な超人的能力(異能力)を有する戦闘集団」である。
「諜報活動や潜入工作、暗殺等を粛々と行う間諜」としての忍者ではなく、日本における異能バトルものの元祖である山田風太郎の作品に登場する「その神秘性を強調され、時に人間と大きくかけ離れた能力を持つ超人・魔人的存在」としての忍者に近い。
ぶっちゃけた話、「ミュータント(X-MEN)」や「オーヴァード(ダブルクロス)」のような、いわゆる「異能力者」の呼称と考えるのが最も手っ取り早いだろう。設定的にも能力的にも完全に人外の存在であり、モータル(一般の人間。定命の者の意)とは明確に分けられている。
ニンジャの歴史
様々な作品において「忍者」はその神秘性をフィーチャーされ、超人めいた活躍をするものが散見される。しかし、それでも彼等は幕府や大名家などの主に仕える(もしくは金銭で雇われる)従属的な存在であり、彼等自身が支配的な立場となることは殆ど無かったのだ。
対して『ニンジャスレイヤー』に登場する「ニンジャ」は大きく趣を異にしている。
ニンジャは、平安時代(本作では神話時代以降江戸時代以前を表す)の日本(実際はほぼ世界の大半、トップが日本にいたことを表しているようだ)をカラテによって支配していた。人間の作り上げた文明社会に潜り込み、その強力な異能で支配者を影から操り、世界の歴史を動かしていたのだ。彼らの有り方は、世界を電子ネットワークが覆いつくし、サイバネ技術が普遍化したネオサイタマでも変わることはない。
以上のように作中における「ニンジャ」は基本的に弱者を支配する邪悪な半神的存在である。
ニンジャの発生
主人公であるフジキド・ケンジ(ニンジャスレイヤー)を始めとした作中の多くのニンジャは、かつて平安時代あるいはそれ以前の神話時代に存在したニンジャのソウルが憑依(ディセンション)した結果、モータルからニンジャへと変化、変質した存在である。これと言った注釈が無い場合、ニンジャとは彼等のようなニンジャソウル憑依者を指す言葉である。
一方で、ソウルを宿すことなく、修行で己を高めることのみによってニンジャとなった者(リアルニンジャと呼ばれる)も存在するが、色々あってニンジャになる方法は失伝している(らしい)ため、リアルニンジャはほんの一握りしかいない。
更にリアルニンジャはニンジャになった時代で分類することができる。神話時代のリアルニンジャは神話時代の神や怪物そのものであり、半神的存在とは厳密には彼らのみを表し、彼らにとってニンジャソウル憑依者はモータルと変わりない。近現代にリアルニンジャになったものはニンジャとしての期間が短いため、その力はニンジャソウル憑依者と大差ない。『ニンジャスレイヤーAoM』では神話時代のリアルニンジャの生き残りが強大な敵として登場するが、彼らが強大なのは長い時を生きており踏んだ場数、積み上げたカラテが現代人とは段違いだからである。
ちなみにニンジャソウル憑依者がリアルニンジャになることは可能だが、手段が確立している方法では憑依している慣れ親しんだニンジャソウルを手放してしまうので弱体化してしまう。この事実もリアルニンジャだから無条件に強いわけではないことを示している。
人間とニンジャは別種ではないが、肉体の変質による影響かニンジャとモータル、ニンジャ同士であっても子を成す事が出来ず、その為に「生まれながらのニンジャ」も存在しない。
また、一度ニンジャとなった者がモータルに戻ることは出来ず、その方法も現在解明されていない。
ニンジャソウルは、対象へ憑依後、おおむね300秒以内にその記憶をほぼ完全に消失し、自我を失う。この事が、アセンションに関する詳細の情報収集をもっぱら古文書に頼らざるを得ない状況を作り出している。「インタビュー・ウィズ・ニンジャ」はほぼ不可能なのだ。
ニンジャソウルは対象へ憑依直後、対象のニューロン内でほんの一瞬の対話を行う。アイサツである。いわゆる「名付き」のニンジャソウルに憑依された憑依者は、このアイサツの際に己のニンジャソウルの名を記憶する。
ニンジャソウルは自我を失うと記したが、唯一の例外が、主人公フジキドに憑依した「ナラク・ニンジャ」である。
憑依後も確固たる自我を持つどころか被憑依者の肉体をも奪おうとするナラクは、この記述からもわかるように、完全なる例外的存在なのだ。
また、「名付きのニンジャソウル」とあるが、これはニンジャ・クラン内での最上階級者、アーチニンジャのみが名を与えられることに起因する。ヤモト・コキやデスドレイン等の強力なニンジャがこれにあたり、独特のディセンションを遂げている。シルバーキーは多分例外。
ではその下の階級の(アーチの下がグレーター、更にその下がレッサー)ニンジャソウルがディセンションしたニンジャは皆弱いのかといえば、これにも例外はある。
シビアな状況判断で多くの戦場を潜り抜けてきたブラックヘイズ、ソウルと肉体の相性ゆえかジツを強力に使いこなすウォーロック、ソウルの名が明かされないながらも後天的に身につけた圧倒的なカラテでニンジャスレイヤーに立ち塞がったインターラプター、サラマンダーが好例である。
ニンジャソウルはディセンション先を選べるの?
ニンジャソウルが我々に憑依するにあたり、対象はほとんど無作為に選ばれる。当のニンジャソウルに、我々の想像の及ばぬ選択基準が存在している可能性もゼロでは無い。だが、考えにくい。その理由は後述する。
憑依者が身体のニンジャ化の際にショック死する不幸なケースもある。かの有名なモモジ・ニンジャが、実際、筆者の観測可能な状況下でディセンションした。しかし、やんぬるかな、憑依者は拒絶反応により死亡、モモジ・ニンジャは消滅した。
モモジ・ニンジャほどの伝説級ニンジャに対象選択の自由があれば、糖尿病による合併症を複数抱えた88歳の老人に憑依などせぬであろう。これが先述の私見の根拠である。
百地丹波(もしくは百地三太夫)といった歴史上有名な人物をモデルとしたニンジャソウルの辿った結末がこれである。実際、様々な登場人物が生命の危機と共にディセンション現象の体験を経てニンジャと化しているが、恐らくその殆どが無作為なものであろう。
その一方、かなり例外的なディセンションを強いられ、ニンジャとなった者も存在する。
ニンジャネームとそのルール
アイサツの時に名乗る「ニンジャ」としての名前。コードネームのようなものである。
多くの場合、自らの特徴を反映した名前である事が多く、挿絵がない、外見的特徴が説明されていない段階でもその姿をイメージしやすい。自称の他、指導役ニンジャによる命名や、ごく稀にニンジャソウルによって告げられる場合も。
ヤモト・コキやフォレスト・サワタリのように、ニンジャネームを持たない者も、数少ないが存在する。 改名したり偽名を使ったり、仮の名を名乗る場合もあるが、割と許される模様。これまた例が少ない。
ちなみにニンジャヘッズが「○○・ニンジャ」のナカグロ(・)にこだわるのは、これがアーチニンジャのみ与えられた「カイデンネーム」だからであり、カイデン(免許皆伝)を受けたリアルニンジャ以外、「〇〇・ニンジャ」の称号が使われていないという命名ルールによるものだ。
ケムリ・ニンジャは実在しない。いいね?
ただしカイデンというのは自らの師から貰うものだが、独学でリアルニンジャになった者も自称していることがある。
ニンジャの能力・特徴
ニンジャ憑依者は憑依後24時間以内に、身体に激しい変調をきたす。体細胞が一般的な人間のそれからニンジャ構造に置き換わる為である。これにより、憑依者はニンジャ反射神経、ニンジャ筋力、ニンジャ器用さ等、超人的な身体能力を手に入れる。身体能力強化の分野・程度には個体差がある。
ニンジャソウルに憑依された人間は細胞レベルで変化し、文字通りの超人となる。
憑依した人物やソウルの経歴にもよるが、摩天楼を駆け上がり、至近で撃たれた銃弾を目視で回避し、人体程度なら軽々と粉砕する程の力を得る。生命力も格段に向上し、治癒力は勿論、成人以降の老化速度も遅くなる(個人差はあるようだ)。ニンジャソウル憑依時点から若返る事はないが、ほぼ不老長寿に近い存在と言えるだろう。これにも例外はあるのだが。
また、憑依したニンジャソウルから「ジツ(術。特殊能力)」を得る場合もあり、戦いにおいてはそのニンジャ特有の切り札となる。弾幕や固有結界や瞳術、他人の精神に介入する強力なものから、遁術や変身、隠れ身といったオーソドックスなものまで様々である。
とはいえ、同系列のジツでもニンジャによってその威力や発現の仕方・活用方法はピンキリであり、脅威の破壊力を持つ場合もあれば、宴会芸呼ばわりされる程度の能力しか持たない者もいる。
だが、何より重視されるのは「カラテ」。「体術、精神的な要素をも含めた近接格闘技術の鍛錬の度合い、エネルギー概念」といった事柄の総称であり、ジツ以上に実戦での強さを決定づける要素となる。たとえ強力なジツを持っていてもカラテが弱ければ格下であり、逆にジツを持っていなくとも確かなカラテの持ち主であれば、恐るべき強敵なのだ。
その他、ほとんどのニンジャはスリケン(手裏剣)やクナイ・ダート(苦無)、あるいはニンジャ装束の生成能力を備えている。スリケンやクナイ・ダートの生成はほとんどのニンジャが可能で、大気中の金属粒子を媒介にしてエネルギーを結晶化させて生み出している。ニンジャ装束の生成はある程度格の高いソウルの持ち主でないとできない。それ以外の大掛かりな道具の生成はもはやジツの領域となる。
しかしメリットばかりではない、急激な肉体の変質によって元の姿からは考えられないような異形となってしまったり、ニューロンが古代のニンジャ存在と交じり合うことによる自我の変質と記憶の混濁。
平凡に暮らしていた人間がニンジャとなったことにより快楽殺人を引き起こしたり、破壊衝動や殺人嗜好が増幅され、それを薬物で抑えるようになったり、ありもしない幻覚と記憶による狂気に苛まれているニンジャも数多い。
モータルとの関わり
『ニンジャスレイヤートリロジー』での近未来都市ネオサイタマに暮らす一般的な人々にとって、ニンジャはお伽噺のモンスターめいた伝説上の存在として扱われている。だが事実としてニンジャは存在し、彼等の社会を闇から支配し搾取している。ヤクザクランや暗黒メガコーポをはじめとする様々な企業にニンジャが所属したり、マッポ(警察)やデッカー(刑事)がニンジャの関わる事件に立ち会うことも。
とはいえ、ごく普通の暮らしを営むモータルには、その存在や有り様を知らぬ者が圧倒的に多い。だが運悪く知ってしまえば、元の生活へ戻ることは難しくなる。どこかクトゥルフ神話めいた解釈でもある。
10年後の『ニンジャスレイヤーAoM』ではニンジャは半ば公然の存在となったが、それでもごく普通の暮らしを営むモータルにとっては、実在することは知っていても直接会ったことはない、会っていてもニンジャだと気づいていない者が多い。例えるならテレビの中だけの存在のようなものである。ニンジャといえど無差別にニンジャ性を前面に出し威嚇していような危険人物は他のニンジャに消されるであろうから、モータルと付き合うときは意味もなくニンジャであることを表に出さないであろうが。
多くのニンジャはモータルを虐げ搾取する存在であり、破壊や殺戮を常とする存在である。モータルに敬意を払い、その働きを評価するニンジャは極少数でしかない。読者からの質疑応答においても「本当に正義のニンジャなんて居ない」という発言もあるほど。
ニンジャリアリティ・ショック(Ninja Reality Shock)
一般人がニンジャと接触した時に発症する恐慌状態のこと。NRSと略される。
例えば、フィクションの生物である筈のドラゴンが、いきなりあなたの目の前に出現したら? あまつさえその強大な力で破壊や殺戮を始めたら、パニックを起こさない者はいないだろう。
「ニンジャとは空想上の存在でしかなく、歴史にニンジャは関与していない」といった作中現代の一般的な認識・歴史観が、ニンジャとの遭遇、あるいは古代ニンジャ文明の発見等を経て破壊され、遺伝子レベルで刷り込まれたニンジャの恐怖が蘇る事によるショック症状である。
恐怖や衝撃で意識は朦朧とし、思考の混濁や錯乱が起こる。代表的な初期症状としてあげられるのは失禁や嘔吐。人によっては長期の療養が必要となったり、最悪の場合はショック死に至るケースもある。そこまで至らずとも、あまりの衝撃から接触時の記憶を失う場合もある。これらの症状は、一般にニンジャの存在が知られていない一因ともなっている。
その一方で、ニンジャに対する備えや知識を持ち、時にこれに対処しなければならない、或いは様々な人生経験を経て肝の座った人間にNRSは起こらない。N(ニンジャ)案件を捜査するデッカーや老齢の名職人、野良ニンジャの襲来に慣れっこな地方民等といったモータルはNRSを起こさない。第2部時点で12歳という幼さにもかかわらず、ニンジャと対等以上に渡り合うラオモト・チバに至っては異例中の異例。フジキドとは違ったベクトルでモンスターとして認知されている。
とはいえ、やはり彼等のようなモータルは例外的存在。見ただけで狂乱状態に陥るようなおぞましい行為に及ぶニンジャも多く、いかにニンジャが無力な人々を虐げる存在かを物語っている。
モータルがニンジャに対抗することは出来るの?
ニンジャは銃弾をよけられるほど素早いが、銃弾の直撃に耐えられるほど頑丈ではないため(一部除く)、屋内など回避が困難な狭い空間で大量の銃火器で飽和攻撃を仕掛ければ勝機はある(余談だがこの戦法は作中の昔の日本で「サンダンウチ・タクティクス」と呼ばれたらしい)。
これを実行するには訓練を積んだ部隊が数を揃える必要があるが、それでもあっさりと壊滅させられる事が多く、確実な手段ではない。
1体1の戦闘ともなれば、更に難易度は跳ね上がる。前提として死を覚悟しなければならない。
作中20以上のニンジャを浄化したヤクザ天狗や、ぶちかまし一発でニンジャを爆発四散せしめたヨコヅナ・ゴッドハンドという例外は存在するが、彼らを参考にすべきではないだろう。
どちらも程度や方向の差はあれど、通常のモータルの在り方からは大きく外れた狂人に属する者達だからだ。
そんなわけで原則として、ニンジャに対抗出来る存在はニンジャのみなのである。
様々な人造ニンジャ
無作為に発生し、時に企業や暗黒ニンジャ組織に反逆することもあるディセンション・ニンジャではなく、あくまで人造でニンジャを作ろうという試みも作中には存在する。失敗に終わることも多いが、そのうちの幾つかは成功を収めており、目が離せない。
バイオニンジャ
作中に登場する暗黒メガコーポ、「ヨロシサン製薬」のバイオテクノロジーを元に生み出されたニンジャ。大きく分けて、胚の時点でニンジャソウルを人為的に憑依させて培養された者と、通常のニンジャにバイオ手術を行った者の二種類が存在する。どちらの方法で生み出されたかに関係なく、普通の人間型に近いものから完全なる異形まで、様々な姿形を持つ。
特徴として、彼らの生命維持にはヨロシサン製薬が生産している「バイオ・インゴット」と呼ばれる緑色のヨーカンめいた物資(食糧)が必要不可欠となる。企業に所属するニンジャでもあるが、アンブレラ社めいてラボがしょっちゅう事故を起こしたり、非人道的な扱いを受けることが多い為、脱走者も多い。
フォレスト・サワタリ率いるニンジャ組織「サヴァイヴァー・ドージョー」のメンバーはサワタリ以外の全員がバイオニンジャである。
ゾンビーニンジャ
主にINW(イモータル・ニンジャ・ワークショップ、ニンジャサイエンス研究者であるリー・アラキ先生率いるニンジャ研究組織)によって生み出されるゾンビー・(ズンビー等の表記揺れもある)ニンジャ。ニンジャソウルを死体に憑依させる事で誕生する。
最大の強みはゾンビー特有のネクロカラテ。痛みや恐怖を感じない為、常に100%の力を発揮し、肉体を完全破壊しない限り襲ってくる。中には足がない・浮遊している・体も半実体といった、ゾンビというよりオバケめいた者も。知能が低いのが欠点だが、ジェノサイドのように常人と変わらぬ知能を持ったニンジャも。
ロボニンジャ
オムラ・インダストリやオナタカミといった企業が開発生産している戦闘用ロボットを指す。
人造ニンジャとは違うベクトルでのアプローチである。流石にニンジャソウルは宿っていないが、強力な装甲と武装はニンジャにも匹敵する程。ただし、オムラ社製のロボットは登場人物や読者から(主に制御系の問題で)ポンコツ呼ばわりされることもしばしば。
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関連項目
- ニンジャスレイヤー
- ニンジャスレイヤー(キャラクター)
- フジキド・ケンジ
- ヤモト・コキ
- ダークニンジャ
- フォレスト・サワタリ
- シルバーカラス
- イグゾーション
- オフェンダー
- ブラッドレー・ボンド / フィリップ・ニンジャ・モーゼズ / ほんやくチーム
- ノー・カラテ、ノー・ニンジャ
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