曖昧さ回避
概要
1974年、雑誌『ビックコミックオリジナル』に「藤子不二雄」名義で掲載された。藤子・F・不二雄が手がけたSF異色短編の名作の一つ。
物語は、主人公の太吉が、30年ぶりに自分の住んでいた立宮村を叔父と一緒に訪ねるところから始まる。このとき、すでに村はダム湖の底に沈んでいた。
主な登場人物
- 太吉
- 浦島家の跡取り息子であり、学徒動員で出征した旧日本兵の男性。終戦の知らせを聞くことができず、30年もの間、村に帰れないままジャングルの中で過ごしていた。その間に、暮らしていた村はダムの底に沈んでしまい、親族の者も太吉の戦死公報を受け取ったのち、ダムの建設に伴って離れ離れになってしまった。
- 里子
- 故人。太吉の許嫁であり、出征間際に家の方針で結婚式を執り行った。「自分が死んだら家を捨ててくれ」という太吉の言葉を拒み、戦死公報を知った後も再婚せず、太吉の帰りを待たずして亡くなった。
- 気ぶりの爺さま
- 土蔵に閉じ込められた、奇妙な言動の多い老人。害をすることはほとんどない。出征を前にして太吉と里子が抱き合っているとき、二人に向かって土蔵の窓の格子にしがみついて「抱けえっ!!抱けーっ!!」と泣き叫んだ。里子が亡くなった後、彼も後を追うように亡くなった。
版によっては、「気ぶり」の表現が不適切とされ、「土蔵の爺さま」等に修正されていることもある。
結末
この項目は、ネタバレ成分を多く含んでいます。 ここから下は自己責任で突っ走ってください。 |
叔父といったん別れ、沈んだ村を見に行くため太吉がダム湖の近くに下りて行こうとすると、大きな樹があった。太吉は「この辺りはもう沈んでいるはずなのでは?」と疑問に思う。しかし、過去に村にあった同じような樹と、そこでの里子との逢瀬を思い出し、太吉は樹の根元で回想に耽った。
その中で気ぶりの爺を思い出した瞬間、太吉の頭に「予感」がよぎった。太吉が道を走っていくと、沈んだはずの立宮村が、過去の姿のままそこにあった。
太吉はそこで幼い里子に会い、感動のあまり泣きながら抱きついてしまう。これが原因で村の者に袋叩きに遭うが、「浦島家の者である」と言ったことがきっかけで浦島家の当主と会う機会を得る。
当主から浦島一族の縁者であることは認められるが、金をもらう代わりに村を出て行く勧めを受ける。しかし、太吉はそれを拒否してこの村に留まることを当主に願い出る。当主から「土蔵に閉じ込めて一生日の目を見ないことになるがそれでも良いか」と問われ、太吉はそれを受け入れた。
この日から土蔵の中には、太吉と里子の声を聞き、ノスタルジーを感じ涙を流す男の姿があった。
この結末を知った上で読み返すと、「里子が亡くなった後、彼も後を追うように亡くなった」がこの作品の本当の結末であることが分かるだろう。
恐らく「浦島太吉」は「浦島太郎」、「立宮村」は「竜宮」が元になっていると思われる。「立宮」は作中では「たつみや」と読むが、音読みでは「りゅうぐう」とも読める。また、「竜宮」の方も訓読みでは「たつみや」と読める。
関連動画
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関連項目
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