ノースロップ・グラマンB-2 スピリット(Northrop Grumman B-2 Spirit)とは、アメリカ合衆国のノースロップ(現:ノースロップ・グラマン)が開発したステルス戦略爆撃機である。
概要
ノースロップ・グラマンB-2 スピリット Northrop Grumman B-2 Spirit |
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用途 | ステルス戦略爆撃機 |
分類 | ジェット爆撃機 |
製造者 | ノースロップ ノースロップ・グラマン (1994年~) |
運用者 | アメリカ空軍 |
総生産数 | 21機 (B-2A) |
初飛行 | 1989年7月17日 |
導入 | 1997年4月 |
B-2は大量の爆弾を搭載して米本土から直接敵本土へ飛行し防空網を突破して重要目標を攻撃するATB(先進技術爆撃機)として開発された。この要求を実現するためにB-2ではステルスを取り入れた全翼機というデザインを採用、生産数が当初計画の132機から21機に減らされた影響もあり、1機あたりの価格は11.57億ドル(約1700億円:1998年度予算)にもなる。[1]
B-2は全翼機であり、垂直尾翼や水平尾翼を持たない。しかし、この機体形状は非常に安定性が低い為、B-2では4重のフライ・バイ・ワイヤ(FBW, fly-by-wire control system)、すなわちコンピュータによる姿勢制御装置が導入されている(同様の装置はF-117等にも搭載されている)。
この機体形状はレーダー反射面を減らしてステルス性能を向上させるためであり、他にもレーダー吸収剤の多用や排気ノズルの工夫などによって、非常に高いステルス性能を有する機体となっている。
胴体下面にはボム・ラック・アセンブリー(BRA, Bomb Rack Assembly)とロータリー・ランチャー・アセンブリー(RLA, Rotary Launcher Assembly)と呼ばれる2種類のウェポン・ベイがある。
B-2は初期型のブロック10では(ホームベース以外の基地への)展開能力はゼロだったが、ブロック20ではこれが14日になった。つまり二週間以上経てばコーティングが劣化するなどして、ホームベースに戻っての修復が必要になることを意味している。最新のブロック30ではこの数値は30日に倍増している。[2]
仕様
B-2A ブロック30 B-2A Block 30 |
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乗員 | 2名 |
全長 | 21.03 m (69 ft) |
全幅 | 52.43 m (172 ft) |
全高 | 5.18 m (17 ft) |
主翼面積 | 478.0 m2 (5,140 ft2) |
空虚重量 | 71,668 kg (158,000 lb) |
全備重量 | 152,634 kg (336,500 lb) |
最大離陸重量 | 170,551 kg (376,000 lb) |
翼面荷重 | 329.0 kg/m2 (67.3 lb/ft2) |
巡航速度 | Mach 0.85 (840 km/h、541 mi/h、470KTAS) |
最高速度 | Mach 0.95 (972 km/h、604 mi/h、524.8KTAS) |
実用上昇高度 | 15,240 m (50,000 ft) |
航続距離 | 11,110 km (6,905 mi、6,000 nmi) |
エンジン製造者 | ゼネラル・エレクトリック・エアクラフト・エンジンズ GEアヴィエイション (2005年4月~) |
メインエンジン | ゼネラル・エレクトリックF118-GE-100 低バイパス比ターボファンエンジン × 4基 |
最大推力 | 77,000 N (7,852 kgf、17,310 lbf) × 2 |
推力重量比 | 0.205 |
BRA搭載武装 | 500lb級爆弾(Mark 82 無誘導爆弾、等) 各種 × 80発 又は CBU-87/B CEM クラスター爆弾、CBU-89/B 地雷散布爆弾、CBU-97/B SFW スキート対戦車爆弾 各種 × 36発 又は GBU-39 SDB × 300発 |
RLA搭載武装 | 2,000lb級爆弾(Mark 84 無誘導爆弾、GBU-31 JDAM 誘導爆弾、等) 各種 × 16発 (一部8発) 又は 巡航ミサイル(AGM-129 ACM 核弾頭巡航ミサイル、AGM-131 SRAM 2 核弾頭巡航ミサイル) 各種 × 16発 又は 核爆弾(B61 戦術核爆弾、B83 戦術核爆弾) 各種 × 16発 |
B-2A 一覧
- 機体製造番号(Air vehicle number)
- ブロック番号(Block number) - コンフィギュレイション・ブロック(Configuration Block)と呼ばれる性能基準別の番号。B-2の場合、ブロック10(Block 10)、ブロック20(Block 20)、ブロック30(Block 30)の3つが設定された。無表記は試験機。後に全ての機体がブロック30と同様に改修される。
- シリアル番号(s/n, serial number) - 上二桁は発注年、下二桁がUSAF機体番号。
- 正式名(Formal name) - 各機にパーソナルネームとして「スピリット・オブ・○○」が与えられている。
ジャック・ノースロップの悲願
ノースロップ社の創始者でもあるジャック・ノースロップは、全翼機の開発に心血を注いでおり、そのために生涯3回に渡って航空会社を起業している(ノースロップ社は三度目の会社)。ノースロップ社でもYB-35、YB-49などの全翼機の開発を手がけたが、結局操縦性などの問題から量産化はされず、ジャックの夢は実現しないまま会社から退くこととなった。
しかし、全翼機の制式採用は、ジャックの去った後のノースロップ社により、B-2で実現されることとなる。1980年、パーキンソン病に冒され車椅子生活となり、余命いくばくもないジャックはノースロップ社へと招かれ、当時軍の最高機密であったにも関わらず、特別許可を得て製作されたB-2の模型をプレゼントされた。模型を手にしたジャックは、「今こそ、神が私に25年の余生を与えたもうた理由がわかった」と涙を流したという。その翌年、ジャックは85年の生涯に幕を閉じた。
B-2 ステルス・バイク
20周年を記念して、ノースロップ・グラマンB-2 ステルス・バイク(Northrop Grumman B-2 Stealth Bike)と呼ばれるアメリカンタイプ・オートバイが特注で製作された。カウル形状をB-2に模した痛バイクであり、スピリット・オブ・イノヴェイション(Spirit of Innovation)のパーソナルネームが与えられている。
関連動画
関連コミュニティ
関連リンク
- B2スピリット――20億ドルの全翼機に迫る 2020.2.23
関連項目
脚注
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