ノートルダムの鐘(The Hunchback of Notre Dame)とは、1996年に公開されたディズニーの長編アニメーション映画である。
原題を邦訳すると「ノートルダムのせむし男」となるが、せむしが差別用語であるため、本編のオープニング曲「ノートルダムの鐘(The Bells of Notre Dame)」がそのまま邦題となった。
概要
あらすじや主な登場人物については、ウィキペディアの記事を参照。
レ・ミゼラブルの作者として知られるヴィクトル・ユーゴーの小説「ノートルダム・ド・パリ」が原作。当時のディズニーは、第一に子供が楽しめる前提の作品だけでなく、大人向けのアニメーション作品も制作されるようになった。その代表的な作品が、この前年に公開された「ポカホンタス」と本作である。
原作はジプシーをはじめとする被差別階級の弾圧など当時の社会の闇も描いた陰鬱な作風かつ悲劇的な結末で終わり、本作は従来のディズニー作品同様ハッピーエンドで締めくくるも、これまでの作品に比べてシリアスで重厚な雰囲気が強く、主人公のカジモドが虐げられる場面など、初期のディズニー長編アニメに劣らぬダークな作風も色濃く出されている他、カジモドがヒロインのエスメラルダに失恋するなど、必ずしも完全なハッピーエンドではい(とは言え、映画終盤でカジモドはパリの人々からの偏見が無くなり受け入れられ、続編のOVAで助けた女性とめでたく結ばれるなど充分救済されている)。こうしたディズニーしては珍しく暗めの作風から、万人には受け入れ難かったのか興行収入は伸び悩んだものの、作品そのものの評価はかなり高く、熱烈なファンも非常に多いのが特徴であり、もっと評価されるべきディズニーの隠れた名作の一つである。
音楽はリトル・マーメイド、美女と野獣、アラジンなどディズニールネサンスの名作を手掛けたアラン・メンケンが引き続き担当し、キャスティングもカジモド役を「アマデウス」のモーツァルト役で知られるトム・ハルス、エスメラルダ役をデミ・ムーアが演じた。日本語吹き替え版では、当時の劇団四季所属の舞台俳優が起用され、「半沢直樹」の浅野支店長役や題名のない音楽会の司会者などで知られる石丸幹二がカジモドを演じたのを筆頭に、オリジナル版に劣らぬ演技力と歌唱力が高く評価されている(残念ながら、OVAやキングダムハーツでは、別の声優に変更されている)。
1999年には早くもドイツでミュージカル化され、日本では2016年から劇団四季で公演が始まった。内容はアニメ版と原作小説を両方取り入れたものになっており、楽曲や登場人物の性格設定はほぼ同じだが、フロローの人物像や結末は原作に準じた悲劇で終わっている。また、カジモドの出生は映画と大きく異なっている。現在、実写映画の制作も進んでおり、アニメ版と原作・ミュージカル版のどちらの結末になるのかは不明である。
2019年4月にノートルダム大聖堂が火事によって大規模な損傷を受けると、Twitterではそのミニチュアを抱いて嘆くカジモドの絵が投稿された他、石丸幹二やミュージカル版を公演中の劇団四季がお見舞いのメッセージを送っている。
主な楽曲
- ノートルダムの鐘
- 本作のオープニング曲。人形遣いのクロパンが、子供達にカジモドがいかにしてノートルダム大聖堂の鐘つき男になったかを、彼の出自やフロローの犯した罪と共に歌い上げる。エンディングでも再び歌われ、共に「誰が人間で、誰が怪物か?」とカジモドとフロローの対照も歌のテーマとなっている。
- 僕の願い
- フロローによって大聖堂に閉じ込められていたカジモドが、祭りの日に一度だけでも外の世界に出たいと願う。先述の火事で崩れた尖塔に登って歌う場面が特に印象的で、シンプルかつわかりやすいメロディーが特徴のアラン・メンケンの楽曲にしては珍しく、非常に複雑な旋律の難曲。パリの町が映し出される場面で、「美女と野獣」のベルが秘かに映っていることでも有名。
- トプシー・ターヴィー
- クロパンが率いるジプシー達が、一年に一度だけ何もかも逆さまにする道化の祭り。賑やかで華やかながらも、本作らしい重厚さも兼ね備えている。こちらもディズニーランドのショーにたびたび使われていた。この曲の直後に、カジモドが酷い仕打ちを受ける鬱展開が待ち受けているため、曲もトラウマという人も。
- ゴッド・ヘルプ
- カジモドに助けられて大聖堂の中に避難したエスメラルダが歌う。自由奔放な性格ながら、自分以外でのけ者にされた人々の救済を願う彼女の心の美しさが描かれている。
- 罪の炎
- 本作を代表するヴィランズ(悪役)フロローのナンバー。彼が見下し弾圧するジプシーのエスメラルダに恋してしまったフロローが、彼女が自分を惑わす魔女だと激しい情念と愛憎を吐露する。ディズニー屈指のヤンデレソングであり、ある意味フロローのキャラを決定づけたと言ってもいい隠れた名曲。(楽曲の)ノートルダムの鐘の合唱が再び使われ、東京ディズニーランドのショーではヴィランズの登場シーンにも使われている。
- サムデイ
- 本作のエンディング曲。平和と希望が遠くない未来に訪れることを願う祈りの曲で、当初は映画本編に使われる予定だったが、最終的には本編終了後のエンドロールで流れているに留まった。ミュージカル版では、処刑を宣告されたエスメラルダとフィーバスが、絶望の中でも希望を見いだそうとする場面で歌われる。
東京ディズニーリゾートでの活躍
この時期のディズニー映画としてはややマイナーな部類に入る本作だが、ランドやシーのパレードやショーには、ちょくちょく出演している。なお、キャラクターグリーティングでは、エスメラルダがファンタジーランドに現れるが、結構レアキャラなので会えたらかなりラッキーと思ってよい。
以下、登場したイベントについて説明する(括弧内は開催された年)
- ディズニー・オン・パレード/100イヤーズ・オブ・マジック(2001~2003)
- 東京ディズニーランドの昼のパレード。最後のフロートには、当時のディズニーの比較的新作のキャラクターが登場しており、エスメラルダとクロパンが登場した。日によって出演するキャラが異なり、登場しない時もあった(この他にもヘラクレスやターザンが不定期の登場であった)。
- ディズニー・パーティーエクスプレス!(2001)
- ディズニーランドのプラザで行われたスペシャルイベント。ミッキー達の巨大なバルーンを乗せた汽車の形のフロートがプラザを周回し、ゲスト参加型のパレードだった。カジモド、エスメラルダ、クロパンが出演したが、主人公であるにもかかわらずカジモドが登場したのはこのイベントだけ。これ以降、エスメラルダの相方はクロパンが務めている。フィーバスでないだけまだマシだが、カジモドは泣いてもいい。
- ディズニーシー・シンフォニー(2001~2004)
- 東京ディズニーランドのオープン時から開催されていた、一番最初の夜の水上ショー。ミッキーの指揮に会わせてディズニーの曲がメドレー形式で流れ、途中で「トプシー・ターヴィー」が流れる。
- 東京ディズニーシー・マリタイムバンド(2001~)
- 東京ディズニーランドのエントランスで演奏を披露する小規模編成のブラスバンド。上記のディズニーシー・シンフォニーで使われたためか、「トプシー・ターヴィー」が持ち曲の一つになっている。
- ミッキーのギフト・オブ・ドリームス(2003)
- 東京ディズニーランド20周年アニバーサリーの一環として、シンデレラ城で行われたキャッスルショー。中盤でクロパンが「トプシー・ターヴィー」を歌って登場する。この直後にヴィランズが登場する場面では、(OP曲の)「ノートルダムの鐘」のBGMが合唱付きでかかる。
- ワンマンズ・ドリームII -ザ・マジック・リブズ・オン-(2004~2019)
- トゥモローランドのショーベースで開催された人気のショー「ワン・マンズ・ドリーム」のリメイク版で、人気の高さからキャラクターが登場するレギュラーショーでは15年のロングランとなった。中盤のヴィランズのシーンでフロローが登場し、曲はオリジナルだが、映画本編の「罪の炎」を歌うシーンを思わせる内容となっている。他に登場するヴィランズは、「白雪姫」の女王(魔女)、「眠れる森の美女」のマレフィセントというディズニーを代表するキャラばかりで、作品の知名度を比較しても有り余る破格の扱いを受けていることがわかる。
このショーのフロローは(炎が吹き出すなどかなり危険なステージのためか)他のパレードやショーと異なり、ダンサーが素顔を見せて演じているため、本編に比べてかなり若々しい。日本におけるフロローの人気は、このショーにあると言っても過言では無く、ワン・マンズ・ドリームを見て、初めてノートルダムの鐘という作品を知ったゲストも多い模様。
「エスメラルダは、私のもの!」
なお、2019年4月にノートルダム大聖堂が火災事故が起こると、翌日には早くも炎の演出やフロロー達の台詞の一部がカットされた。 - レッツ・ゴー・ヴィランズ!(リ・ヴィランズ!)、バンザイ!ヴィランズ!(2008、2009)
- 東京ディズニーランドのハロウィンで初めてヴィランズが主役となったパレード。昼間のレッツ・ゴー・ヴィランズ!(翌年は、リ・ヴィランズ!に改題)では、ショーモードのみヴィランズ登場するが、夜のバンザイ!ヴィランズ!は反対にパレードモードで常にヴィランズが姿を見せ、ミッキー達はショーモードのみと出番が逆転している。フロローが最後尾のフロートで「ヘラクレス」の悪役ハデスと一緒に登場するが、フロートやダンサーのコスチュームはハデスをイメージしたモノであり、ついでの印象が強い。そもそもコミカルな雰囲気なので、シリアスキャラのフロローにはあまり合わない気もするが・・・
- ディズニー・イースターワンダーランド(2010~2012)
- 現在でもランド・シーで春季に開催されているイースターイベントの初期のランドのパレード。クロパンが7年ぶりにランドに登場した。
- ディズニー・ハロウィーンストリート ウェルカム・トゥ・スプーキーヴィル(2012)
- この年のディズニーランドのハロウィンイベントでは、ショーには登場しないものの、ヴィランズのキャラグリがシンデレラ城周辺で行われており、フロローが初めてキャラグリに登場した。ワン・マンズ・ドリームと同様の姿で出てきて欲しかったという女性ゲストも多かったらしい・・・
- ヴィランズ・ハロウィーン・パーティー(2015~2018)
- 東京ディズニーシーのハロウィンイベント「ヴィランズ・ワールド」に合わせて、アメリカンウォーターフロントで開催されたスペシャルプログラム(小規模なショー)。このイベントのオリジナルキャラとして、擬人化したヴィランズの手下が多数登場して熱烈なファンを生む人気を集めたが、その中で「ヴェール」というフロローの手下が登場した。YouTubeにはこのヴィランズの手下の動画が多数投稿されている他、pixiv百科事典では彼ら一人一人の記事が詳しく書かれているので、そちらを参考にして欲しい。なお、フロロー自身は登場しない。
- コート・ジェスター・カルテット(2017~)
- 東京ディズニーランドで行われているアトモスフィア。詳細は該当記事参照。ノートルダムの鐘の「トプシー・ターヴィー」を合い言葉・決めゼリフにしており、本曲を演奏する時もある。コスチュームもクロパンを彷彿させるものとなっている。
こうしてみると、ワン・マンズ・ドリームの人気の影響か、フロローの優遇ぶりがわかる。「眠れる森の美女」のマレフィセント、「ヘラクレス」のハデスと共に、主役よりヴィランズの方が人気になった希有なパターンと言えるだろう。
関連動画
関連静画
関連商品
関連項目
- ディズニー
- ディズニー映画
- ディズニー関連の記事一覧
- アニメ作品一覧
- アニメ映画の一覧
- 1996年のアニメ作品一覧
- ニコニコディズニーツアー
- ノートルダム大聖堂
- 劇団四季
- レ・ミゼラブル
- みんなのトラウマ
- ヴィランズ
- ダンボ - 実は主人公の境遇など共通点が多い
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