ハインリッヒ・フォン・キュンメルとは、「銀河英雄伝説」に登場する架空の人物。
担当声優は三ツ矢雄二(石黒監督版OVA)、逢坂良太(Die Neue These)。
略歴
帝国暦471年生まれ。キュンメル男爵家の当主(長男かどうかは不明)である。親族に従姉で3歳年上のヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ(ヒルダ)がいる。
先天性代謝異常という難病にかかっており、人生の大半をベットで過ごしていた。帝国では劣悪遺伝子排除法と言う遺伝性の病気を持つ者を安楽死させる法が存在し、マクシミリアン・ヨーゼフ2世が有名無実化してからも弱者への福祉政策をよしとしない風潮が存在した。しかし、キュンメル男爵家と言う名門の出自であり財産もそれなりに存在したことから、治療を施すことで何とか生き延びられたようである(作中には一般家庭では不可能と言う記述もある)。
また、幼い頃に両親を亡くしており、おじに当たるフランツ・フォン・マリーンドルフが後見に当たっていた。このような薄幸の生い立ちからか、従姉に当たるヒルダは弟のように可愛がっていたようだ。本人も恵まれない自分の体へのコンプレックスからか、芸術や歴史(特に人物史)にのめり込むロマンチストに成長した。
帝国暦489年、ラインハルトに仕えたヒルダの伝手で憧れの存在であった芸術提督メックリンガーと面会。その過程で彼さえも心服したラインハルトの存在を印象付けられる。面会そのものはごく平穏に終わったが、この時メックリンガーは彼に不思議な影を見ている(病人は通常、不自由な自分の体の代償行為として小動物を飼うがそれが見られない点など)。
それ以降はヒルダも業務に忙殺されるようになり、以前のように頻繁に彼を訪れることは難しくなったようだ。それに(あるいはラインハルトの栄光に)反比例するかのように、内なる狂気と嫉妬を芽生えさせて行く。
新帝国暦1年7月、ヒルダとフランツは長らくハインリッヒを放置していた負い目もあったのか、皇帝となったラインハルトにキュンメル邸への行幸を仰ぎ了承を得る。病身のハインリッヒに素直に同情したことと、即位後の初の行幸を栄光とし政争の種にまでなっていた前王朝の兵弊風を笑う意味も込めて王朝に何らの貢献もない人物を選んだとされる。
6日、ラインハルトはキュンメル邸を訪問。しかし、ハインリッヒは事前に地球教と組み、地下にゼッフル粒子を積め起爆装置を自身の手で握ることで疑似的に「宇宙」を握ることを企み実行した(キュンメル事件)。これは成功するも事実を告げられたラインハルトは一切動じず、自身が死んで王朝が終われば何と短命な王朝かと人は笑うだろうがそれは仕方がないと冷笑するだけであった。
その後はラインハルトも時間稼ぎを部下に暗に勧められたこともあり、積極的に動くことはなくなった。一人芝居を空しく進めるだけのハインリッヒだったが、ラインハルトが仕切りに胸のペンダント(キルヒアイスの遺髪が納められていた)を触るのを発見。ペンダントを渡すように要求するが、これはラインハルトにとって「宇宙」よりもずっと大事なモノであり激昂して拒絶。手を触れようとしたハインリッヒを殴り飛ばした。その隙を見て親衛隊長キスリングがタックルをしかけて制圧。ハインリッヒはその場でほどなくヒルダに抱かれて死亡し、ローエングラム朝初の弑逆事件は未遂に終わったのだった。享年19歳。
人物
身体こそ病魔に侵されているが、芸術を嗜み歴史を語るなど人並み以上の知能を持っていたようだ。それ故に苦しみも深く、無為に死に行くことに耐えられないと言う覇気のみが生きる糧となる皮肉な精神状態であった。
地球教に利用される形ではあったが信徒になることはなく、そう言った意味では精神的な骨格はあったのかもしれない。また、幾人かいる銀河英雄伝説の暗殺者の中では最大のロマンチストであり、暗殺の成否ではなく自身が生きていることの証を立てたいと言う欲求が先走っていた。本人も死を前にして「僕の愚かさは幾人かが記憶してくれる」と満足気であった。
ヒルダに対してはその美しい容貌と健康的な身体から憧れを抱いていたようだ。暗殺事件に巻き込んだことを詫びてもいる。ヒルダも愚かしいと非難しつつ、死後は憐れんだりはしないと一人前の男としてとらえるようにしていた節がある。
一方、ラインハルトはハインリッヒへの死後の処分について聞かれると「凶器を罰することはしない」と述べ、敵とは全く見なさなかった(マリーンドルフ親子に累が及ぶことを防ぎたかったのが主な動機だが)。
関連人物
- フランツ・フォン・マリーンドルフ - おじ。大変に誠実な後見人であり、キュンメル男爵家の財産を奪うどころかむしろ管理のために私財を拠出したという。
- ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ - 従姉。事件後は自主的に謹慎したが直ぐに復帰。皮肉なことに、この謹慎期間をきっかけに彼女の存在の大きさをラインハルトも自覚し始める。
- エルネスト・メックリンガー - 複数分野で活躍する人間に憧れるハイドリッヒにとって現世で最高評価の人物。もっとも、レオナルド・ダ・ヴィンチや曹操、ラザール・カルノー、トゥグリル・ベグなどの偉人と同列に並べられ、本人はやや苦笑したようだ。
関連動画
関連項目
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