ハンドパン(handpan)とは、音階を持った打楽器の一種である。
概要
金属製で、膨らんだ円盤のような形をした楽器。抱えるようにして、あるいは支えに乗せて固定し、素手で叩いて音を出す。円盤の表面には複数の「面」があり、叩いたときの音階がそれぞれの面で異なっている。そのためメロディーを奏でることもできる。
文章で説明するよりも、以下の動画を見てもらった方が話が早い。これはニコニコ動画に最も早く投稿されたオリジナルのハンドパン演奏動画である(これ以前にも演奏動画は投稿されているが、それら先行動画はYoutubeからの転載だったようだ)。ハンドパンを演奏しているのは打楽器オーケストラ「La Señas(ラセーニャス)」代表の佐藤"仙人"文弘、ギター奏者はギタリストの中野幸一。
音色や原理はトリニダード・トバゴにルーツのある楽器「スティールパン」とよく似ている。スティールパンと異なる点は、その形状から持ち運びや演奏姿勢の自由度が高いこと。
スティールパンや南インドの壺状の打楽器「ガタム」などから影響を受けながら2000年ごろにスイスの「PANArt」社で開発された製品「Hang」がこのカテゴリーの楽器の最初のものである。
その後、フォロワーとして「Spacedrum」「Asachan」などの類似製品が様々なメーカーから発売された。
歴史が比較的浅いこともあってこれらの楽器の総称については未だ議論はあるが、概ね「ハンドパン」(handpan)と総称されることが多いようだ。
繊細な加工によって一枚の金属板上に複数の音階を担当させているため、打楽器であるとはいえ力任せに強く叩いたり手荒に扱ったりすると形が歪んでしまい、チューニングが狂うという。演奏や持ち運びの際には過度の負担がかからないように注意が必要。
軽く体験してみたい人向けには、スマートフォンやタブレットPCの画面でハンドパンの演奏を疑似体験するアプリも複数存在している。
メーカー
2017年現在は購入希望者が多く、しかも高品質なハンドパンは職人の手作業で作られているという事情もあり、やや入手に難がある楽器でもある。例えば「Asachan」の制作元であるスイスの「Echo Sound Sculpture」社や、日本国内メーカー「sonobe handpan」など、複数のメーカーで新規の注文受付を停止している。「Spacedrum」の制作元であるフランスの「Metal Sounds」社は自社のショッピングサイトで注文を受け付けてはいるが、注文された順に生産している状況であり数か月以上は待たされるという。
しかしヨーロッパ・北米・東南アジア・東アジア・中南米・アフリカ・オセアニア・中東・ロシアなど、世界各国に非常に多数のハンドパンのメーカーがある(本記事下部の「関連リンク」も参照)。スティールパンの製造技術が応用できるらしく、スティールパンを制作していたメーカーがハンドパン制作に乗り出しているケースもある。それらのメーカーの中にはインターネット上で注文受付・国外発送をしているメーカーもある。
だが、中には品質(音質・耐性・その他)が伴っていないメーカーもあるとも言われる。購入を考える場合は注文する前にそのメーカーの製品の評判をよく調べるべきだろう。
ちなみにオリジナルであるHangを制作していたメーカーであるPANArt社は、既に後継となる「Gubal」などの別製品へと移行しておりHangは既に生産していない。GubalはHangに類似してはいるが下方の底面に「Hang」よりも膨らんだ部分を有しているなど構造が変更されており、Hangとは音の方向性や演奏難易度が異なるという。
変わり種としてはデジタルハンドパンと言ったものも存在している。中でも有名なものは2015年にクラウドファンディングサイト「Kickstarter」にてプロジェクトが公開された「Oval」で、同サイトで支援を募ったところ目標金額10万ユーロの3倍以上の資金が集まり製品化に成功した。
また2016年には別のクラウドファンディングサイト「Indiegogo」にて「Lumen」というまた別のデジタルハンドパンのプロジェクトも公開され、こちらも目標金額を達成した。この「Lumen」は内部にスピーカーを備えていて、外部スピーカーなどへ接続せずとも本体だけで演奏できることなどをセールスポイントとして挙げている。
スリットを有するもの
なお上記のようなハンドパンと同様に、膨らんだ円盤の形をした金属製の打楽器で、叩く「面」のところにU字型のスリットが入っていることによって面の音階を変えている製品も登場している。「tank drum」(金属製のプロパンガスタンクの蓋を加工して作られることがあるため)、「hank drum」(Hang + tankか)、「steel tongue drum」(U字型にスリットが刻まれた部分が舌(tangue)のように見えるため)などと呼ばれる。
これらは、先述したHangに連なる従来のハンドパンと似てはいるが構造が単純であり、プロパンガスタンクとドリルなどを使って素人が自作することすらできるという。専門メーカーが制作する際も従来のハンドパンよりも工業的なプロセスで賄える工程が多く、生産に時間がかからない。その分、購入しようとする場合も比較的安価である。
ハンドパンにヒントを得たものであるにせよ、構造が異なることから音色にも幾分違いがある。そのため、しばしば「ハンドパンとは全く別カテゴリーのものである」とも主張される。
しかしhandpanの名称のもとでこれらのスリットタイプの製品が売られていることがあるなど、未だ呼称には混乱が見られている。購入を考える際には混同しないように注意が必要。
関連項目
関連リンク
- List of 140+ Handpan Makers | Where to Buy a Handpan
(楽器を扱うウェブサイト「Interesting Instrument」が2017年4月にまとめた、世界各国のハンドパンメーカーの列挙記事。それぞれのメーカーのウェブサイトやSNSへのリンクも付いている。)
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