ハーメルンのバイオリン弾きとは、渡辺道明による漫画作品。話数は“第○楽章”とカウントされる。
ここでは漫画を原作とした、アニメやゲーム作品等についても言及する。
概要
タイトルは『ハーメルンの笛吹き男』が由来。
1991年4月号より『月刊少年ガンガン』に連載され、同誌初期の看板作品として人気を博した。
10年近くに渡って展開されたストーリーは、2001年2月号をもって、大団円にて幕を下ろした。
ストーリー自体は王道のファンタジー漫画。クラシックを主とした、音楽をモチーフにした世界観が特徴。この事は登場人物の名前や地名、或いは主人公や仲間の武器が楽器である点等に散見される。度々作中には、実在するクラシック楽曲の解説が挟まれるのが特徴で、ごく初歩的なクラシック入門としても使え…ない事もない。
「異世界が舞台なのに、どうして実在のチャイコフスキーとかが登場するの?」とか考えてもしようがない。素直に作品を楽しもう。
物語の本筋は、残虐なシーンや、人体破壊の描写、登場人物の壮絶な過去等、シリアスでハードな展開が多い。恐らくガンガン作品の中でも最も死体の数が多い作品の一つだろう。その一方、随所に突拍子もないギャグが挿入され、過度なシモネタなど、こちらもどぎついギャグが多い。時にはコメディチックな道具を使用し、深刻な状況を打開した事もあり、『ハーメルン』と言う作品を語る上で避けては通れない要素となっている。作者曰く、ハードなストーリーの息抜きであるらしく、同氏の他作品でも描かれている。
ストーリーが進行していくにつれギャグが薄くなる……という事も無く、ラスボス戦までギャグが挟まれる徹底振りだった。
一方、このギャグに馴染めない人も多く、「本筋のシリアスなストーリーだけでいい」という人も居る。この点は、本作の評価を二分する大きな原因となっている。
とはいえ、当時はシリアス重視の『ロトの紋章』、ギャグマンガの『突撃!パッパラ隊』など他の看板作品が連載されていた事もあり、それらと被る事無く独自の作風を貫いた事は本作がただの音楽モチーフ漫画に終わず、ガンガンの屋台骨を支えることができた大きな要因である。作者同士も仲が良いようで、ハーメルンとパッパラ隊は作品を超えてネタを共有したこともある。ことある度にパッパラ隊は温泉ネタを出しているのだが、ハーメルンは連載10年が経ってもまともな温泉ネタがなく、遂にフルートとサイザーが温泉に行く展開になったとき、ハーメルとトロンは涙を流して喜んだ。…が、いざ温泉を覗きに行くとそこにいたのはフルートたちに扮した魔族で、ハーメルたちは血涙を流しながら魔族を叩きのめした(本物のフルートたちは近くにあるもう一つの温泉に行っていた)。翌月号のパッパラ隊ではこの温泉ネタを取り上げ、急遽温泉回にしている。
月刊誌での連載のため1話毎のページ数は多くなるのだが、本作は特にページ数が多く、4~5話で単行本1巻収録分が貯まってしまう程。これは作者の特徴でもあり、本作以外でも連載1回目などの区切りの回は100P超えをすることも多かった。
単行本は絶版となってしまっており、終盤のコミックスは流通量が少なく貴重なものだったが、現在はAmazonの電子書籍版で全巻が配信中である。
ストーリー
巨大なバイオリンを抱えた主人公・ハーメルは、カラスのオーボウと供に、魔王の住む北の都『ハーメルン』を目指している。途中、村娘のフルート、ピアノ弾きのライエル、亡国の王子トロン・ボーン、元魔王軍幹部のサイザー等を仲間に入れ旅を続けて行く。
主な登場人物
ハーメルの一団
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ハーメル
- 卑怯で金に汚い、ひねくれ者の外道主人公。ギャグパートで嬉々として外道な真似をするのはお約束。ただ、これは幼少期のトラウマが原因であり、行き過ぎた照れ隠しの意味合いが多分に強い。
- その体には魔族の血、天使の血、人間の血が混ざっている。中でも魔族の血が強く、額には角が生えている。
- 身の丈ほどもある巨大なバイオリンを演奏する事で敵魔族を改心させたり他人(主にフルート)を操って攻撃をしたりする。後に魔族化が進行し、素手による戦いも多くなり、ギャグパートのカオス度も跳ね上がった。
- バイオリンにもいろいろ仕込んでおり、バイオリンからミサイルが飛び出したり、バイオリン自体をジェット噴射させ、海や川を渡ったことがある。
- エピローグでフルートと結婚、9人もの子どもに恵まれる。ケストラーを封印した今となっては外道っぷりに磨きがかかってしまい、フルートと日常的に夫婦漫才を繰り広げている。
-
フルート
- ペット兼アイテム兼ヒロイン。とてもパワフル。初期はよくハーメル手製の着ぐるみを着せられていた。サイザー加入後はまた着ぐるみが登場することが増えている。
- ハーメルの魔曲により超大なパワーを得るが代償に何十年単位という寿命を削られる(結果的に元々超長寿命の血筋の生まれなので数十年削られても常人程の被害は無かった)。その他、着ぐるみを着せられ見世物小屋に入れられる等ろくな目に遭っていない。後述のゲームではそれがより顕著で「ヒロインを攻略するのではなくヒロインで攻略するゲーム」と言われている。
- 後にスフォルツェンドの王女である事が判明。スフォルツェンドの王族が持つ癒しの能力が覚醒。最終的に魔王を倒す鍵となる。ベートーベンの交響曲第九番を歌うラストシーンは必見。
- エピローグではハーメルと結婚し、スタカットの村で暮らしている。母ホルン亡き今は次期女王なのだが、一時それを放棄している。ハーメルの自由奔放ぶりに手を焼きつつも大家族を支えている。
- オーボウ
- ライエル
- サイザー
- トロン・ボーン
- オカリナ
味方
-
パンドラ
- ハーメルの母親。魔族により北の都に封印されている。
- 素性を偽った魔王ケストラーと交わりハーメルとサイザーを産んだ。子供達を人質に取られた際、自身の名を冠した『パンドラの箱』を開け、ケストラーを完全復活させてしまった。
- パンドラの箱を開けてしまって以降、迫害され人間不信に陥りとても歪んだ性格になってしまった。ハーメルの捻くれた性格はこの母親を見て育った影響が大きい。こんなシリアス設定のお母さんも時折ギャグをやるのがこの漫画の怖いところで、結果、聖女の様な性格ながら突発的に人間不信を併発するという困った人に。
- ハーメルとライエルの音楽の師匠でもある。その実力はあらゆる楽器を使いこなし、魔曲でベースを戦慄させたほど。
- 箱の名前も合わさってギリシャ神話の同名の女性が名前の由来と誤解されがちだが、実際はウクライナの民族楽器バンドゥーラが名前の由来である。
- あまり触れられていないが天使と人間の混血であり、更に血筋的には天使寄りだったりする(本人が祖父から先祖に天使がいると聞いた、と発言している)。
- ヴァイ・オリン
- ホルン
- パーカス
- リュート
- クラーリィ・ネッド
- コル・ネッド
魔族
-
大魔王ケストラー
- ハーメルとサイザーの父であり、最大の敵。名前の由来はオーケストラ(王、ケストラ)から。
- オリンによって『パンドラの箱』に封印されていたが、復活。その際に失った体を補う為、魔族や人間を糧にしている。その存在自体が魔族にとっての魔力の供給源であり、魔族は彼に逆らえない。
- これといった技や魔法は持たないが、北の都に居ながらにして世界中を爆撃できるなど、ベースですら足元にも及ばぬほどの圧倒的過ぎる力を持つ。
- 魔族も人間も、すべては自分の玩具か食物でしかないという冷酷非情な性格。それは自身の子であるハーメル・サイザーすら例外ではない。その邪悪さ故に作者も嫌っているらしく、「作品が終わってしまったのは悲しいが、ケストラーを描かなくてよくなった点に関してはホッとしている」といった趣旨のコメントを残した。
- 本編中ではギャグパートに関わらなかったが、オリンが主人公の外伝では、全編ギャグキャラクターと化している。
- ベース
- ドラム
-
ギータ
- 魔界軍王No.4の超獣王。ギターが名前の由来。
- 普段は犬一匹分の体の上に、犬型の人獣の上半身がくっついた外見の剣士。純粋な実力差を剣士の技量で補うことで「どんなに強い相手でももがき苦しむさまを眺めることができる」から剣を使っているが、その一方で魔族一の剣士としての実力と彼なりのプライドも持ち合わせている。真の姿はケルベロス。
- 能力は魔界軍王の中では最底辺で口調もですます調、上に対しても常に平身低頭ながら、本質は狡猾な野心家。普段は他の軍王に対して表面的に従順なふりをしているが、彼らがいざ虫の息になったら躊躇うことなく報復に打って出る苛烈な面もある。
- 最終決戦でトロンに打ち取られたように見せたが、下半身は生存しており、戦場に残ったケストラーの血を飲んで自身を大幅に強化。新たな魔王として君臨せんとするところに、コルネットの「聖母殺人伝説」の直撃を受け死亡。人知れずあっけない最期を迎えた(なおコルネットの攻撃は無意識であり、ギータを狙ったわけでもなかった偶然の一撃)。
- オル・ゴール
- ヴォーカル
ゲーム『ハーメルンのバイオリン弾き』
1995年9月29日、スーパーファミコン用ソフトとしてエニックスから発売された。
その内容は、ハーメルを操作してステージを進行するアクションゲーム。SFC成熟期のゲームにも関わらず、セーブが出来ず、再開用のパスワード等も無い。その為、完全クリアするには、一気にプレイするか、エミュレーターを使用して中断する他ない。
特筆すべき点は、NPCとして付いてくるヒロイン・フルートである。彼女の役割は
の3つ。これらの酷い扱い・状況によって、フルートの表情は変化する。
このようにフルートを苛めるサドゲー的な要素、そして前述のマゾゲー的な要素を併せたネタゲーとして、一部では有名である。因みにと言ってはなんだが、現在のスクウェア・エニックスのHPでは元祖ギャル投ゲーという、ゲームのジャンルらしきものが書かれている。当たり前だがこのジャンルに当てはまるのは本作のみ。
TVアニメ『ハーメルンのバイオリン弾き』
1996年10月2日から1997年3月26日まで、テレビ東京系で放送。
原作のギャグを排除して、シリアスなストーリーを強調している。その為、原作ファンにはあまり受け入れられず、原作のギャグに抵抗のある人には比較的受け入られやすい。ただし、終盤の展開は不条理極まりなく、後味が悪いという評価が多勢である。これは当初4クールの予定が、2クールになってしまったのが原因。人気低迷による『打ち切り』ではなく、放送開始直後に短縮が決定されたものである。
静止画を多用しており「手抜き」「OP詐欺」「TV紙芝居」呼ばわりされる事が多い。監督の西村純二曰く「エヴァンゲリオンに影響された結果、あの様な演出になった」と、故意の演出であった事を強調している。一方、音楽はクラシックを多用した壮大なものであり、かの田中公平が手掛けていることもあって評価が高い。後期OP曲「未完成協奏曲」はタイトルを皮肉られることも多い。
因みに『ハーメルン』はこれ以前にも、劇場版アニメとして映像化されている。こちらはギャグを取り入れた、原作の作風に近いものとなっている。なお劇場版はCDドラマと同じ声優が担当しているが、TVアニメ版はキャストが大きく異なっている。
続編
『ヤングガンガン』にて、本編の十数年後を舞台にした『ハーメルンのバイオリン弾き〜シェルクンチク〜』が連載されていた。残念ながら8巻で打ち切りになってしまったが。
現在では、作者の自費出版でネット上で新たな続編『ハーメルンのバイオリン弾き 愛のボレロ』が連載中である。
→掲載サイト(第一楽章)
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