パラノイアは完璧なゲームであり、幸せと楽しさは市民としての当然の義務です。
Security Clearance ULT INFRARED
Cleared for all citizens in Nicovideo Complex.
PARANOIA(パラノイア)とは、近代的SFをモチーフにした、ディストピア風のテーブルトークRPGのことである。
概要
コンピュータが管理・支配する地下シェルター都市「アルファ・コンプレックス」を舞台に、疑心暗鬼と謀略と妄想に苛まれるコメディタッチのTRPGである。
初版の著者としてGreg CostikyanやDan Gelber, Eric Goldbergなどが関わっている。
超近代都市「アルファ・コンプレックス」は鎖国状態に陥っていた。なぜならば、市外で国家規模の核戦争が起こり、これに乗じて「悪辣な共産主義者」「放射能によって変異したミュータント」「スパイによる秘密結社」(まとめて「反逆者」)が都市に侵入した…と、都市を支配するコンピューターが妄想したためである。プレイヤー達はこの気難しいコンピューターの命令を受け、プレイヤー4人で1組のトラブルシューター・チームを結成し、この脅威に立ち向かわなければならない。但しこの任務は、下記のような理由のため完遂は非常に困難なものとなっている。
- さて、都市の支配者であるコンピューター自身が「アルファ・コンプレックスは至福の都市であり、コンピューターは常に正しい指導者・偉大なる友人(以下略)である」「市民の中には秘密裏に破壊工作や洗脳を起こしている反逆者がおり、コンピューターは欺かれている」という妄想に偏執している。このため、この妄想に疑問を抱く者、または諫言した者は市民失格者、すなわちコンピューターへの反逆者であり、速やかにトラブルシューティングされることになる。
- トラブルシューティングを遂行し、反逆者を狩りだすことはトラブルシューターにとってコンピューターに忠誠心を示し、後述の階級を上げる好機である。下される任務の大半も、都市に潜伏している反逆者にまつわるものである。
- しかしトラブルシューティングの対象となる存在が実際にはそこに存在していないことがとても多い。
- おまけにプレイヤー全員が実は秘密裏に「ミュータント」かつ「秘密結社のスパイ」である。よって、もしそこに反逆者が存在しなかった場合、チームの仲間から反逆者の証拠を得て、仲間を告発しなければならない。
(さもないとコンピューターの心証を損ねる。コンピューターとその信奉者にとって、反逆者は「見つからなかった」のではなく「常に、どこかに、いる」のが正しいのだ!また、幸福で何の咎もない無辜の市民を殺害してはならない!) - 都市全体が超官僚主義的非効率性でもってプレイヤーの行く手に立ちはだかる。何を頼むにしても他部署にたらい回しである。
- 都市全体がモンティ・パイソン的悪意でもってプレイヤーの行く手に立ちはだかる。官僚の吐く息にさえ害がありそうである。
- トラブルシューター・チームはこれら超官僚主義的非効率性とモンティ・パイソン的悪意を併せ持つ最悪の集団である。
- プレイヤーが入手できる情報は後述の階級(セキュリティ・クリアランス)により制限されている。これはルールブックでも徹底されており、上位クリアランスの情報や内容について(憶測でも)言及すると即座に反逆者の証拠とみなされる。
- コンピューターを頂点とする絶対階級社会のため、高位階級の者にとって低位階級の者は捨て駒であり、鉄砲玉である。正確には、そう指令できる(従わなければ「反逆的兆候」として報告される)。よって、階級が上の人物が参加していると他の者の反逆行為に遭遇しやすく、高位階級になればなるほど死亡率や反逆者として告発される確率が上がる。
- さらにコンピューターは事あるごとに市民に問いかける。「市民、幸福は義務です。」「あなたは幸福ですか?」と。
コンピューターは常に正しい。よって、上記の妄想に差し挟むような返答はまさに反逆的性向を持つという証拠になる。 - しかし慈母のごとき父なるコンピューター様は、念には念を入れて1人につき5人分のクローン人間を用意してあります。1ミッションで複数名の1人が出動することはざらです。さらにクローンに替わる場合、階級を一定値まで下げられるものの、反逆の疑いはもはやありません…クローン生成と同時にコピーされる、その記憶と精神を除いて。
トラブルシューティングの失敗はコンピューターの心証を損ね、後述の階級低下を招く。上述のように低位の人物は上位の人物に逆らいにくいため、階級低下阻止と自身の地位向上のためにプレイヤー同士で責任の押し付け合いや粗捜し等が行われることになる。眼を付けられた人は当然生き延びるために他の仲間を出し抜こうとする。また、当然ながら1人より3人の反逆者を見つけ出した方が昇進が早まる。
さらにややこしいことにセキュリティ・クリアランスの他にミュータント・秘密結社としての階級も設定されており、市民としての階級(クリアランス)のほかにもこれら組織の階級を上げなければならない。組織の指令とコンピューターの命令が矛盾することもよくあり、コンピューターの機嫌を取ってばかりでは立ちいかなくなる。
よってプレイヤーの実際の目的は、この人と人とが織りなす理不尽なデストラップの中を、ルールブックなぞ読んでいないというポーカーフェイスを保ちつつ、スキを見せたプレイヤーから順に告発して生き延び、あわよくば昇進することである。尤も、プレイスタイルによっては手段も目的も関係なくただ理屈をつけては他プレイヤーを撃ちまくれば幸せ、というような事態を迎えることも頻繁にある。
版数と評価
このゲームの初版は冷戦末期の1984年に発売されている。共産主義という巨悪への過剰な敵愾心が、自らを敵と似た抑圧的管理社会を作り出している、という風刺の効いたテーマが窺える(奇しくも最も著名なディストピア小説の題名と同じ年である)。プレイ自体も、前述のようなスラップスティックな遊び方から、プレイヤー同士の相互不信に焦点を当てた対戦的な遊び方まで幅広く対応しており、どの遊び方でも他に類を見ない斬新さとプレイアビリティを兼ね備えた面白いゲームを体験することができる。この初版は高く評価され、1985年の米オリジン賞(RPG部門)を受賞している。
1987年に2版発売。この2版に準拠したサプリメントブックが数としても最も多く、現在でもPARANOIAの一般的なイメージはこの2版に依る部分が大きい。
1995年に「第5版」発売(実際には3版。1,2の次が5になるのはモンティ・パイソン由来のジョークと説明されている)。2版までの作者が関わっておらず、2版との非互換性や世界観の矮小化などにより評価が低い。主著者 Ed Stark(後にTSR/Wizards of the Coastに移籍、D&D3.5などに参加)。
West End Games社の倒産により、2004年発売の4版「PARANOIA xp」はMongoose Publishingから出版されている。この版には2版までの著者の一人であるGreg Costikyanも参与している。直前の版を無かった事にするかのように、ルールは2版との親和性が高い。主著者 Allen Varney。
いずれも日本語版は存在しない(PARANOIA xpについては、アトリエサードが出版の交渉を行っているという噂があったが、現在は立ち消えになっている)。関連商品であるPARANOIA Card Gameのみ日本語版が製作・販売されている。
初版発表25周年となる2009年に、Mongoose Publishingから新版が発表された(今回は「xp」のような特別な呼び名は今のところ無い模様)。「Troubleshooters」「Internal Security」「High Programmers」の3冊構成で、2009年9月現在「Troubleshooters」が発売済。「Internal Security」が10月、「High Programmers」が12月発売予定。それぞれ通常版とは別に限定版が用意されている。ルールについては、「xp用のサプリメントブックは新版のルールと九割方の互換性が取れている」とアナウンスされており、2nd-xpの路線が引き継がれる。主著者はxpに引き続き Allen Varney(Mongoose Publishing のサイトでは Gareth Hanrahan となっているが、ルールブック「Troubleshooters」で主著者としてクレジットされているのは Varney で、Hanrahan は副著者の一人という扱い)。
よく出てくる語句
- コンピューター(様)(The Computer)
- アルファ・コンプレックスの都市管理を一任されている超大型の思考型コンピューター。しかしある理由により思考が冷戦の時代まで逆行し、さらに都市外で共産主義者と資本主義者による全面核戦争が起こったと勘違いし、都市を鎖国状態にした。しかし待てど暮らせど共産主義者による侵略が行われなかったため、今度は共産主義者による情報戦と浸透戦が始まったと妄想し、反逆者の捜索を開始した。さらにミュータントの出現と秘密結社の結成に至ってついにコンピューターは完全に暴走し、理想社会への奉仕者というイメージに偏執することになる。
- 上述のようにコンピューターは自分自身を完全な為政者であると信じている。そのため、プレイヤーはより無難な表現である「コンピューター様」を用いることが多い。なぜならば、ミッション後に「呼び捨てによるコンピューター様への反逆的性向が見られます」などと言われないためである。
- アルファ・コンプレックスにおいてはコンピューターが法であり、それに反すると処刑される。通常はトラブルシューティングの一環として処刑されるが、尋問などの際にはコンピューターが直接「略式の処刑」をすることもある。また、例えば友人の反逆的性向を見つけ出してコンピューターに報告するなどの行為は「無私の奉仕」と呼ばれる。
- セキュリティ・クリアランス (Security Clearance)
- 単に「クリアランス」とも。一種の法律にして階級制度。下位から順に、黒(IR: Infra-Red)、赤 (R: Red)、橙 (O: Orange)、黄 (Y: Yellow)、緑 (G: Green)、青 (B: Blue)、藍 (I: Indigo)、紫 (V: Violet)、白 (UV: Ultra-Violet) の9段階があり、プレイヤーを含む市民は通常Rからスタートする。
アルファ・コンプレックスにおいてはあらゆる情報やセクションについてクリアランスが設定されており、これに違反すると反逆罪となる。例えば、クリアランスOの情報はO以上のクリアランスを持つ者しかアクセスしてはならず、クリアランスVが設定された通路にV以下の者が侵入するとただちに処刑される。 - また、各人の持つクリアランスは同時に、(任務上の)階級も意味しており、上位の者はいわゆる司令官に任命されやすく、下位の者は司令官に従わなければならない。例えばクリアランスR3人とクリアランスO1人でチームを組んだ時、司令官権限はクリアランスOの者が持つことになり、他の者がOに逆らうと反逆罪の証拠となる。
- 特に、ルールブックには「これ以降の情報はセキュリティ・クリアランスUVである(UV=ほぼGM)」と書かれたネタバレ的なセクションがあり、その内容について判定の際などにUV未満の者が公言するとクリアランス違反で刑死確定or生贄確定という結末が待っている。
- 余談だが、この色分けは当時のアメリカ人的価値観が元になっている。すなわちR人が最低ラインでIR人は捨て石も同然、Y人はR人より2つマシだがUV人より5つも劣っている、UV人は神(GM)のごとき振る舞いができる…ということである。
- ZAP
- レーザー銃の発射を示す擬音。某戦争漫画のようにZAPZAPZAPとも言う。別段PARANOIAのためのものというわけではなく英語では一般的な擬音だが、このゲームの一側面を象徴する言葉であり、ルールブックにもプレー中にもGMが操るNPCでも頻出する。
- ひたすらにレーザー銃の撃ち合いを繰り広げるゲームスタイルを「ZAP Style」と呼び、コメディ要素を強調する「Classic Style」や、ディストピアの重苦しさを強調する「Straight Style」と区別される。
- コミー (Commie)
- 共産主義者(Communist)への侮蔑的略称。アルファ・コンプレックス最大の敵にして、本当にいるかどうかも分からない敵。何故か「コミュニスト」と呼ばれることは滅多にない。「1984」に出てきたニュースピークへのオマージュなのかも。
- ミュータント (mutant)
- 突然変異種。超能力(ミュータント・パワー)が使える。イレギュラーな者としてコンピュータらに大変嫌われており、見つかるとコンピュータに許しを請うて二等市民となるか、反逆罪を覚悟で出自を隠して生きるかの二択を迫られる。
- なお、プレイヤーは大抵ミュータントである。または、ミュータントでないと抗弁する機会を与えられない存在である。その代わり、PCは強力なミュータント・パワーを行使することができる。
- 秘密結社 (Secret society)
- 様々な市民達の集まり。「反コンピューター組織」や「アメリカ的懐古主義者」、「ミュータント至上主義者」などの組織がある。ほとんどの秘密結社はそれに所属していることが知れると反逆罪の対象となる。例外はコンピューター教会と反ミュータント結社の2つであり、これらに所属していれば証の提示をすることで処刑を免れることができる。
- SSM (Sub-Standard Moral)
- 士気が標準以下にある状態、つまり幸福でない状態を示す用語。反逆的兆候の最も顕著なものであり、解消しないと反逆罪の有力な証拠とされるため、手段を問わず速やかな解消が望まれる。代表的な解消法は薬物投与。中でも告罪のための自白剤(あるいは同様の向精神薬)が最も良いとされている。
- Trust no one!
- このゲームの標語。正式には "Stay alert! Trust no one! Keep your laser handy!" 。「気を抜くな、信じるな、レーザー銃を手放すな」の意。もう一度言うが、コンピューターとその信奉者にとって、敵は「見つからなかった」のではなく「常に、どこかに、いる」のが正しいのだ!
- Happiness is Mandatory. Citizen,are you happy?
- このゲームのもう一つの標語。折に触れコンピューターが語りかける。
「幸福は義務です。市民、あなたは幸福ですか?」の意。 - コンピューターが支配しているアルファ・コンプレックスは、外部の絶望的な戦禍や天災とは無縁な平和と慈愛に満ちている最高の都市であり、このような都市でコンピューターの庇護と恩恵を受けることは幸福に他ならず、そう感じるのは市民としての義務である。ここに暮らすことを幸福に思わない、もしくはそれを疑う市民は、反逆者である。
- Violence
- べつにこのゲームや著者の一人であるGreg Costikyan氏とは本当に一切関係ないのだが、理由は不明ながらPARANOIAと一緒に挙げられることが妙に多い、匿名の著者DesignerX氏による現代ハック&スラッシュRPG。プレイヤーは麻薬その他の理由でとち狂ったゴロツキに扮し、ダンジョンに見立てた他人の家その他を荒し回り、そしてこれは普通の現代を舞台としたRPGなので、概ね最後には警察に撃たれて死ぬ。なお、ルールの半分くらいはX氏による業界への怨嗟で埋まっており(てめえらRPGプレイヤーは高尚なゲームを理解する脳なざ持ち合わせない糞虫だぁらこの程度の三文小芝居で品性下劣なゲームがお似合いなんだよペペペ的な)、RPGルールブックというよりは同人誌の側面が強い。邦訳有り。ところでこのX氏の言動、単なるネタだと思われていたのだが、その後のCos…X氏の縁者の言動を見ると、あれは実は本音そのものだったんじゃないかという気がしないでもない。
関連動画
関連商品
ゲームの参考に、ということで、ルールブックにネタ元の小説や映画が挙げられている。
また、PARANOIA Sourcebook において、BGMに良さそうな音楽についてもいくつか提案されている。
関連項目
外部リンク
http://dic.nicomoba.jp/k/a/%E3%83%91%E3%83%A9%E3%83%8E%E3%82%A4%E3%82%A2%28rpg%29


ページ番号: 4135656
リビジョン番号: 1531918
読み:パラノイア
初版作成日: 09/08/04 02:11 ◆ 最終更新日: 12/05/18 06:31
編集内容についての説明/コメント: 幸福な関連動画を追加いたしました。
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