ヒッタイト語とは、かつて存在した言語である。
概要
小アジア(アナトリア)のヒッタイト帝国で話されていた、楔形文字で記されたまさかのインド・ヨーロッパ語族の言語である。
この言語の解読は、それまでギリシャ語、ラテン語などヨーロッパの言語の起源をサンスクリットに求めていた比較言語学を一変させた、トカラ語と並ぶ20世紀前半の大発見であった(なお両者のような言語が存在するのではないかと仮説を立てていたのは、まだ普通に既存の言語学をやっていたころのソシュールである)。
とはいえヒッタイト語自体もあくまでも上流階級のみが話していた、ルウィ語などの民衆言語におされていた存在であり、7つあるアナトリア語派の一言語に過ぎないというところまで、その後の言語学の研究で地位が一般化されることとなっている。
文字体系
ヒッタイト語独自の楔形文字はあるが、アッカド語からの引用がだいぶ多い。
しかしインド・ヨーロッパ語族の子音結合を楔形文字で表現しようとするなどだいぶ無理をしている感じが…
なお、例によって例のごとく、表音文字、表意文字、限定詞のちゃんぽんである。
音韻体系
母音
i,u,e,aとその長母音であるī,ū,ē,āで、長短の区別があったかどうかはまだ議論中なので実質4母音である。
子音
p | t | k | kʷ |
b | d | g | ɡʷ |
ts | |||
s | |||
m | n | ||
l | r | y | w |
ḫ(h₂, h₃) |
文法
古いわりに文法はずいぶん簡単なものになっている。
また統語論はSOVである。
名詞
共性と中性の二性、八格、単数と複数の二数である。
格語尾 | 単数 | 複数 |
---|---|---|
主格(共性/中性) | -š / -, -n | -eš / -a, - |
対格(共性/中性) | -n / -, -n | -uš / -a, - |
呼格 | -, -e | -eš |
属格 | -aš | -an, -aš |
与・位格 | -i | -aš |
方向格 | -a | |
奪格 | -az | -az |
具格 | -it | -it |
名詞にはそれぞれa-語幹、i-語幹、u-語幹、子音語幹、r/n-語幹の5種類の語幹があり、それぞれに合わせて語尾が変化していくようだ。
動詞
直接法と命令法の2つしか法がなく、時制も現在と過去の2つという極めて単純なものである。
mi-活用語尾 | 直接法現在 | 直接法過去 | 命令法 |
---|---|---|---|
1人称単数 | -mi | -un(-nun) | -(a)llu |
2人称単数 | -ši | -š | -(-i,-t) |
3人称単数 | -zi | -t | -du |
1人称複数 | -u̥eni | -u̥en | |
2人称複数 | -teni | -ten | -ten |
3人称複数 | -anzi | -er | -andu |
ḫi-活用語尾 | 直接法現在 | 直接法過去 | 命令法 |
---|---|---|---|
1人称単数 | -ḫi | -ḫun | -allu |
2人称単数 | -ti | -ta(-šta) | -(-i) |
3人称単数 | -i | -š(-šta) | -u |
1人称複数 | -u̥eni | -u̥en | |
2人称複数 | -teni | -ten | -ten |
3人称複数 | -anzi | -er | -andu |
中・受動態は存在するようだ。
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関連項目
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