ヒンドスタン(Hindostan)とは、1946年生まれのイギリスの競走馬。
1960年代の日本競馬を、そして現代に至るまでの日本競馬史を語る上で欠かせない大種牡馬。
名前はインドのヒンドスタン(ヒンドゥースタン)平原から。
生い立ち・競走馬時代
父Bois Roussel、母Sonibai、母父Solarioという血統。
父ボワルセルは1938年のイギリスダービーを2戦目で制した優駿で、種牡馬としてプリンスローズと並びセントサイモン系の中興の祖とも言える活躍を収めた。母は13戦2勝。母父ソラリオはセントレジャーやアスコット金杯を制した名ステイヤーである。
叔父にはアスコット金杯優勝馬など、他近親には西欧の大レース優勝馬が複数居並ぶ良血で、年を下ったのち、牝系からアローエクスプレスやワイルドアゲインが輩出されている。牝系の出身馬には名種牡馬が多数いる、いわゆる種牡馬族である。
さて、競走馬としてのヒンドスタンは通算8戦2勝。その中にはアイリッシュダービーが含まれているが、1962年に賞金が増額されるまでは大レースとして見做されていなかった。それでも欧州のクラシックホースの一頭になったことは違いないが。因みにアイリッシュダービーが本馬の初勝利である。もう2戦して1勝した後引退。
日本に来たヒンドスタン
1950年よりアイルランドで種牡馬入りしたが、活躍馬はあまり現れなかった。
そんな中、1955年に日高の生産者グループが1200万円で本馬を購入し、日本初の種牡馬シンジケートを組織することを決定。ついでに未勝利だが1000ギニー優勝馬の半弟である*ブッフラーも購入し、2頭合わせて1350万円という金額で購買され、日本にやって来た。
日本に輸入されてきたヒンドスタンは、腐っても欧州のダービー馬である。30万円×40口のシンジケートが組まれ、初年度には46頭の牝馬を集め好スタートを切った。今は大人気種牡馬は200頭以上つけるのが普通になったが、当時は60頭を超えたらやりすぎとも言える程であった。その分いろんな種牡馬がいたのである。
一緒に輸入されてきた*ブッフラーがいきなり二冠馬コダマを輩出する好スタートを切り、それに対する本馬は産駒デビュー3年目の1961年にヤマニンモアー、ハクシヨウ、シンツバメ、スギヒメと八大競走優勝馬を4頭送り出すという怪物的な活躍。当然その年のリーディングサイアーを取った。
代表格と言えば戦後初の三冠馬にして「鉈の切れ味」、シンザンである。当時牡馬が出られる大競走を全て勝利し、日本競馬史に偉大な足跡を残した。他にも八大競走の優勝馬はリユウフオーレルやらヤマトキヨウダイやらダイコーターやら沢山。産駒は短距離から長距離まで何でもござれのスーパーサイアーである。
特筆すべきは産駒の重賞勝利数だろうか。血統登録された馬は500頭もいないのに対し、産駒の中央競馬の重賞勝利数は113勝。参考までに*サンデーサイレンスが1300頭以上いて311勝である。
ヒンドスタンは1961~65・67・68年の7回にわたりリーディングサイアーを獲得。1968年に横隔膜破裂により22歳で死亡するまで第一線にあった。
後継は自身最良の産駒であるシンザンが、ミホシンザンやミナガワマンナなどを輩出。他にもダイコーターがニシノライデンら重賞馬を多数輩出するなど、産駒は内国産種牡馬不遇の時代ながら活躍していたが、次第に第一線から外れていき、21世紀を迎えた頃にはマイシンザンしか残らず、現代では直系は完全に途絶えている。しかし、日本に古くから続く牝系の中にヒンドスタンを内包する系統は多数おり、決してヒンドスタンの影響力が喪失した訳ではない。いうなれば、ヒンドスタンは日本競馬の礎となったのだ。
ヒンドスタンは死後剥製となり、繋養されていた浦河町にある馬事資料館に展示されている。心臓も標本として残されているらしい。ちなみに本馬の孫にあたるアンドレアモンは、一緒に輸入されてきた*ブッフラーを3代母の父に持っている。*ブッフラーは僅か3世代しか残せず早世したが、数十年の時を経て血統表で旧友と顔を合わすという、血統を中心に紡ぎ出される競走馬ならではのロマンを感じさせる。
血統表
Bois Roussel 1935 黒鹿毛 |
Vatout 1926 鹿毛 |
Prince Chimay | Chaucer |
Gallorette | |||
Vasthi | Sans Souci | ||
Vaya | |||
Plucky Liege 1912 鹿毛 |
Spearmint | Carbine | |
Maid of the Mint | |||
Concertina | St. Simon | ||
Comic Song | |||
Sonibai 1939 黒鹿毛 FNo.3-e |
Solario 1922 鹿毛 |
Gainsborough | Bayardo |
Rosedrop | |||
Sun Worship | Sundridge | ||
Doctrine | |||
Udaipur 1929 鹿毛 |
Blandford | Swynford | |
Blanche | |||
Uganda | Bridaine | ||
Hush | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:St. Simon 4×5(9.38%)、Canterbury Pilgrim 5×5(6.25%)
主な産駒
- ヤマニンモアー(1957年産 牡 天皇賞(春))
- シンツバメ(1958年産 牡 皐月賞)
- スギヒメ(1958年産 牝 桜花賞)
- ハクシヨウ(1958年産 牡 東京優駿)
- オーハヤブサ(1959年産 牝 優駿牝馬)
- ケンホウ(1959年産 牝 桜花賞)
- ヒカルポーラ(1959年産 牡 天皇賞(春))
- リユウフオーレル(1959年産 牡 天皇賞(秋)、有馬記念)
- ヤマトキヨウダイ(1960年産 牡 天皇賞(秋)、有馬記念)
- シンザン(1961年産 牡 皐月賞、東京優駿、菊花賞、天皇賞(秋)、有馬記念)
- ダイコーター(1962年産 牡 菊花賞)
- アサカオー(1965年産 牡 菊花賞)
- ワイルドモア(1966年産 牡 皐月賞)
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関連項目
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