ピコカキコ:VCFエンベロープで遊ぶとは、ピコカキコで音色を作る際に使われるVCFエンベロープ(@E2)を使って遊ぶ記事、すなわちこのページのことである。
なお、この記事はピコカキコについてある程度知っている事を前提に書かれている。これからピコカキコを始めてみようとお考えの方はまずは「ニコニコ大百科:ピコカキコヘルプ」辺りの記事を見ることをお薦めする。また、VCAエンベロープ(ピコカキコ:VCAエンベロープで遊ぶ)、フィルタ(ピコカキコ:フィルタで遊ぶ)のだいたいの知識を持っていると理解しやすいはずである。
概要
VCFエンベロープ(Voltage Controled Filter Envelope)とはピコカキコなどの電子音楽で豊かな音色をつくるためのコマンドの一つである。VCAエンベロープ(ピコカキコでは@E1)と同様、ADSRで指定する。VCAエンベロープが具体的には音の強さ(音強)を変化させるのに対し、VCFエンベロープはフィルタのcut off frequencyを変化させて変化に富んだ音やざらつきのないマイルドな音をつくる。
エンベロープのコマンド
エンベロープを指定するパラメータは4つ。[Attack][Decay][Sustain][Release]である。以下のように指定する。
@E2,[Attack],[Decay],[Sustain],[Release]
VCAエンベロープと同様、decayとSustainの組を追加することで(多節エンベロープ)多様な変化をつくることも可能である。
準備作業
フィルタエンベロープの効果を知るために、波形をのこぎり波@1、VCAエンベロープを@E1,0,0,127,0に指定する。
倍音が多く含まれた音が長く鳴るはずである。
模式図を下(図1)に掲載しておく。本来frequencyは整数倍音であり、離散的であるが、連続して描画してある。
図1:のこぎり波イメージ図 | 図2:デフォルトエンベロープイメージ図 | 図3:@E2,0,0,0,0イメージ図 |
フィルタパラメタの影響(@F)
フィルタパラメタの影響を調べておこう。ここではもっとも一般的なローパスフィルタ(LPF:@F1)を用いて解説する。
フィルタのパラメタF[type],[amount],[frequency],[resonance]のうち、amountとfrequencyの影響を受ける。このうちfrequency(0~127)はカットオフする底を指定する。通常使われるローパスフィルタ(LPF:@F1または@F2)では、frequencyで指定された値からスタートし、最高値まで上げられた後Decayの時間をかけてsustainのレベルまで下がってゆく。LPFのばあい、カットされる周波数が60以下になるとほとんど音が聞こえなくなる。
この最高値はamount(-127~127)によって指定される。amountが最大値の127ならVCFエンベロープの上下動が最大となり、amountが0ならVCFエンベロープの影響を受けないことになる。amountは負の数も可能であり、負の数を指定した場合、エンベロープの形状が反転する。
上掲図2はVCFエンベロープのデフォルト値をイメージしたものである。青い色で囲まれた部分がカットされる切断面を表現している。理解を容易にするため、amountを最大(127)にしてある。
VCFエンベロープのデフォルト値は@E2,0,30,0,127なので、鳴り始めと同時にcut off frequencyが最大値まで上がり、30/127秒かけてfrequencyで指定された値(底:C.F)まで下りていく。
下に示す図(図4)はfrequencyを70に固定したままamountを127→60→0→-60→-127と変化させた図である。これまで見てきた3次元の図を上から見ているものと考えればよい。amountの変化は、@E2の最大値(デフォルトでは鳴り始め)の位置を規定する。上述した通り、負の数を指定すると@E2エンベロープの「最大値」を取るとき、実際にカットされる周波数が最小になる。amountの絶対値が大きくなればなるほどVCFエンベロープによる「振れ幅」が大きくなる。
図4:@E2をデフォルトのままamountを変化させた例 |
エンベロープパラメタの影響
VCFエンベロープはVCAエンベロープと同様のパラメタ設定を行う。但しそれは音強を操作するのではなく、カットされる倍音の周波数を時間によって操作するものである。上述したように@E2,[Attack],[Decay],[Sustain],[Release]を指定する。
Attack
Attackは、なり始めから最大値(amountが負の時には最小値)を取るまでの時間を指定する(単位は1/127秒。0以上の正の数を指定する)。この値が大きくなるとカットされる周波数がゆっくり上がっていく。この値が0のとき、吹き始めがざらついた感じになる。
Decay
Decayは、最大値(または最小値)を取った後、次で指定されるSustain のレベルに移行するまでの時間を指定する(単位は1/127秒。0以上の正の数を指定する)。VCFフィルタでは、この値は吹き始めのざらつきから「音の安定」までにかかる時間を意味していることが多い。
Sustain
音の安定期にあたる。倍音部がほどよく削られて、クリアな音が出る期間を表現する。0~127で指定する。Cut off Frequencyと同値な場合はSustainを0にすればよく、cut off frequencyと異なる場合にはそのレベルを指定すればよい。但し@Fで指定するamountの影響を受ける。amountが負である場合にはsustainの値が大きくなるほどカットされる周波数は低くなる。
Release
発音を止めた後の余韻におけるカットされる周波数の変動を表す。最終的に@Fで指定するfrequencyに収束するのであり、それに要する時間を1/127秒で指定する。
簡単なイメージ
フィルタの効果は
[frequency]+[amount]×[envelope(t)]
という式を考えておけばよいだろう。frequencyを底として、カットオフする周波数が変動する。周波数の変動はenvelopeで指定するパラメタによって時間的に変化する。その変化の度合いはamountで指定した値だけ増幅される。
VCAではdecayとsustainがともに0だった場合、音が出ない。他方、フィルタはfrequencyという底が指定されているので、VCFエンベロープを@E2,0,0,0,0としてもfrequency以下の音は出続ける(上掲図3)(厳密にはcut off frequency 以上の音も出ている)。
@F1,127,0,0@E2,0,0,127,0とすればフィルタが全開となり、フィルタをかけない音に近くなる(図1と同じ)。
LPFにVCFエンベロープの一般的なものを指定した場合の挙動を以下に図示する(図5)。
図5:一般的なVCFエンベロープの例 |
ハイパスフィルタ
HPFの場合もエンベロープの形状は同じである。ところが「下から削る」ため、フィルタパラメタのamountが正の場合(例@F-1,80,30,0)、attackで最高点に達する際には音が消え、その後sustainレベルまで下りていく際に音が回復する。フィルタパラメタのamountを負にした場合(@F-1,-80,30,0)は一旦frequencyが下がり、その後フィルタがかかるようになる。
上でLPFを用いて示した例をHPF(@F-1)にあてはめた場合の図と実際の音を以下に示す(図6、図7)。
図6:@E2をデフォルトのままamountを変化させた例(HPF) |
図7:一般的なVCFエンベロープの例(HPF) |
こんなときに使える
バイオリンなどの弦楽器や、クラリネット、トランペットなどの管楽器では、吹き始めがかすれてざらつき、やがて安定した音になる。最初の「ざっ」と いう音を表現するためにフィルタのattack と decay を指定し、sustainで音の丸みをつけると「らしく」なる。
また、ノイズにフィルタをかけることで様々な効果音をつくることができる。
LPFを用いた実際の音色の作り方(例)
- 波形を選ぶ。倍音の多い@1か@3を選ぶ。効果音の場合は@4が用いられることも多い。
- VCAエンベロープを@E1,0,0,127,0にしておく。
- 「倍音の多い『がさがさ』した音(attack-delay時の音)」と「倍音の少ないクリアな音(sustain時の音)」のイメージを持っておく。
- 倍音の少ないクリアな音を先に作る。@Fで@F1,0,[freq],[res]にしておき、VCFエンベロープの影響を排除する。frequencyは80くらいから始めるとよい。明るい音色を目指す場合は100くらい。落ち着いた音色を目指す場合は80ぐらいが目安である。この時にresonanceのあたりをつけておく。トランペットのような楽器ではresonanceを40くらいにしておく。電子楽器ではresonanceをもっと高めてもよいかもしれない。
- 理想の音ができたら吹き始めの「ざらつき」を作る。VCFエンベロープはデフォルトで吹き始めが最高になっているので、amountを操作して、ざらつき加減を調整する。デフォルトで指定されているdecayの値30/127秒が短すぎるかもしれないので、@E2,0,50,0,0あたりを指定しておくとよいかもしれない。
図8:VCAエンベロープとVCFエンベロープの組み合わせ - amountでざらつきの度合いを決めたら、@E2のDecayを指定し直し、適切な時間にしておく。
- ホルンのような場合は倍音によるざらつきがあとから来ることもあるのでattackを50あたりにしてゆっくりざらつく感じを出すのがよいかもしれない。効果音などではattackの値を非常に大きくすることもある。
- 音の始まりとsustainの音を変えようと思う場合は@Fに戻ってfrequencyを下げ、@E2でsustainを上げればより複雑な音ができる。
- 最後にVCAエンベロープを操作して音量を調整する。
VCAとVCFエンベロープ
VCAエンベロープとVCFエンベロープを組み合わせると右図(図8)のようになる。Frequencyの軸を操作するVCFエンベロープと、音強の軸を操作するVCAエンベロープが独立的に変動していることがわかる。VCFエンベロープとVCAエンベロープのattack, decayはそれぞれ異なっていてよい。
VCFも音量に影響があるが、VCAエンベロープで音が出ていない場合は本来音が出ないのでフィルタを操作しても音は出ない。同様にフィルタで音を削りすぎてしまうと、どれほどVCAエンベロープで音を増量しても音が出ない。。
VCFエンベロープを利用したサンプル音源
(これから誰かが作ってくれるはず)
関連コミュニティ
関連項目
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