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ピピンアットマークとは、1996年に発売されたマルチメディア機、家庭用ゲーム機である。
PiPPiN aTMaRK / PiPPiN@ / ピピン@アットマーク とも表記される。
概要
1996年3月28日発売。Mac OS(7.5.x)と互換性を持つPiPPinOSを搭載し、Macintoshのソフトと互換性を持つ。また標準でモデムを同梱し、ダイヤルアップ接続が可能である。当時Macが主力にしていたPCと同程度の性能を持ち、同世代のゲーム機と比べて非常に高い性能を誇る。というかCMで「インターネットはテレビで見よう」と謳っており、ゲーム機というより安価なMac互換機という性質が強かった。
中身のピピン自体はApple社が開発し、他社(日本ではバンダイ)にライセンス提供する3DOのような形式をとっていた。ちなみにピピンとは青りんごの一種。米国ではKatz Media社がライセンス提供を受け、バンダイがハードを製造するという契約(OEM)を結び、「Pippin@World」という名称で販売された(本体は灰色に変更されている)。
本体にはお絵かきソフトやワープロソフト、インターネット閲覧ソフトなどのディスクが付属している。バンダイが運営するプロバイダ「アットマークチャネルクラブ」に入会することでインターネットが利用できる(月額2000円、10時間を超える利用は1分10円。1997年10月より15時間に延長)。
当初は電話による通信販売と全国300店に限って販売が行われていたが、1996年6月15日から単品版の一般店頭販売も行われるようになった。モデムを同梱した特別ネットワークセットが64800円(税別)、モデムと一部の付属ソフトが排された単品版が49800円(税別)。
ハードディスクがない(フラッシュメモリで代用している)ためインストールが必要なゲームは起動できないが、Mac用のソフトを起動することも出来るし、ピピン用のソフトをMacで起動することも出来る。
これによりMacのソフト群が援護射撃になるかと思いきや、当時はWindows95の発売で一般家庭にPCが普及、Windowsが急激にシェアを拡大し、Macのシェアはどん底状態。ゆえにMac向けソフト自体の供給量が少なく、さらにMacのOSが新しくなればピピンで動くソフトはどんどん無くなっていくわけで、ピピンはソフト不足に喘ぐことになった。
1996年6月にはN64発売、1997年1月にはPSでFF7発売と当時大いに湧いたゲーム業界だったが、価格が高く、ゲーム機としてもMacとしても中途半端だったピピンは存在感を示すことが出来ず、1997年5月11日付の日経新聞で製造中止が報じられ(バンダイは否定)、1998年2月27日にバンダイが撤退を正式に発表。2年弱でその役割を終えた(製造ラインは1年2ヶ月ほどで止まってしまったようだ)。
ピピンの不振などで1997年1月にはセガとバンダイの合併話も騒がれた(後に白紙化)。さらに、ピピン撤退でバンダイは事業を担当する子会社を精算し、1998年3月期に270億円の特別損失を計上。1996年末からのたまごっちブームで何とかバンダイは息を吹き返すが、こちらもブームの沈静化で在庫を抱え60億円の特別損失を計上した(1999年3月期)。あれだけ騒がれたたまごっちに比べても、文字通り桁違いの損失をピピンは生み出したわけである。
最終的な出荷台数は4万2000台(在庫は5万台)。ピピンをゲーム機として捉えて「世界一売れなかったゲーム機」という不名誉な称号で呼ばれてしまうこともある。
1999年4月30日、バンダイはプロバイダ「アットマークチャネル・クラブ」の運営を終了。ピピンのサポートはバンダイ開発本部、お客様相談センターが引き継ぎ、2002年末まで継続された。
ソフト
PC向けの環境ソフトや知育ソフト、デジタル絵本などがピピン向けにも発売されているが、ゲームソフトは全体から見るとだいたい半分以下でそれほど多くない。また他機種でも発売されているソフトが多く、悲しいかなピピンならではというソフトはあまり無い。
バンダイの意地か、ガンダムやウルトラマンのソフトが多く発売されている。
PEASE
Macのソフトをピピンで起動するためのソフト。本体にバンドルされている。PEASE自体にMacのフリーソフトが収録されているほか、PEASEを起動した状態で本体に専用のフロッピーユニット(後述)かMacを繋いで、ソフトが入ったフロッピーを入れるとMacのソフトを起動することが出来る。ちなみにパッケージにはグリーンピースが描かれている。
GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTH
「アゴい彗星のシャア」で知られる、実写映像を用いた色んな意味で有名なガンダムゲーム。Windows版やPS版も発売されたが最初に発売されたのはピピンだった。
たまごっちCD-ROM
Windowsでも発売された、たまごっちのPC版。Macおよびピピン版には育成が4日目に入るとたまごっちが必ず死んでしまう文字通り致命的なバグが存在しており、希望者に「内服薬」というアップデート用フロッピー(本当に薬局で貰うような薬袋に入っている)が配られた。しかしピピン版はフロッピーでのアップデートが不可能だったので、ソフトの交換という形がとられた。つくづく不運な機種である。
ウルトラマンクイズ王(キング)
Windowsでも発売された、ウルトラマンのクイズゲーム。ウルトラマンパワードとピグモンを司会にした銀河系横断クイズ番組にウルトラ兄弟として参加するという内容で、実写素材をふんだんに使っているのが特徴。ゴルゴダ星ステージでミスすると十字架に磔にされるなど、ウルトラファンなら笑える悪ノリが満載の作品である。
ピグモン「故郷はもうありませんが、今日は精一杯頑張るというウルトラマンレオさん!」
本体仕様
Mac互換機ということで一通りの出力端子を備えており、TVのほかPCモニタにも出力することが可能。
PiPPiN aTMaRK | |
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CPU | PowerPC 603(クロック周波数66MHz) |
ROM | 4MB |
RAM | 6MB(最大13MBまで拡張可能) ビデオ表示用に1MBのRAMを使用 |
RAMスロット | 1基 |
CD-ROMドライブ | 4倍速CD-ROM |
拡張スロット | Floppy Dock用PCI準拠スロット、メモリー拡張スロット |
インターフェイス | VGA端子、S端子、コンポジット端子、 ステレオサウンド出力L/R、ステレオサウンド入力L/R、 プリンターポート、モデムポート(GeoPort)、 ステレオPHONE端子、P-ADPコネクター |
映像サイズ | 640×480(最大3万2000色) |
サウンド | 16ビットステレオ出力 |
サイズ | 高さ:89cm 幅:228cm 奥行き:257cm |
重量 | 3.5kg |
周辺機器
- ATMARKフロッピーユニット(12000円):1.44MB高密度FDD内蔵。本体下に取り付ける。
- ATMARKキーボード(9800円):折りたたみ型外付けキーボード。A6サイズのタブレット付き。
- ATMARKモデム(12800円):データ転送速度14400bps。Mac用のモデムも使用可。のちに33600bpsのものも発売されている。
- ATMARKコントローラ(5800円):中央にトラックボールがついている。通称AppleJackコントローラ(アップルジャックとはリンゴから作られたブランデーのこと)。
- ATMARKワイヤレスコントローラ(11800円):赤外線でワイヤレス操作が可能なコントローラ。
- ATMARKアダプタ(2000円):ピピンとMacそれぞれの周辺機器を繋げられるようにするための変換アダプタ。ATMARK→ADBがAタイプ、ADB→ATMARKがBタイプ。
- ATMARKメモリーカード(2MB:11800円、4MB:?円、8MB:21800円)
- 230MO DOCKING TURBO(54800円):オリンパス製の3.5インチMOディスクドライブ。本体下に取り付ける。
- その他、Macのプリンタが使用可能。
関連動画
関連商品
関連項目
関連リンク
- Bandai Digital Entertainment Japan(事業を担当していた子会社のInternetArchive)
- ATMARK CHANNEL(当時の公式サイトのInternetArchive)
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