フル・アニメーションとは、とてもヌルヌルと動くアニメーションのこと......ではなく リミテッド・アニメーション以前からあるアニメーション制作手法のことである。
概要
リミテッド・アニメーションが産まれて以降、それ以前のようなアニメーション制作手法をフル・アニメーションと呼びわけている。 そのため本稿ではリミテッドに焦点を当てて記述する。
リミテッド・アニメーションとは
それまでのアニメでは、実写映像のように全てを描いて全てを動かすように作成されたが、これでは労働力と時間がいくらあっても足りない。 そのため省力化を図ったそれがリミテッド・アニメである。
リミテッドな手法の例
- 画面の中心的キャラクターだけ動かす。その間ほかのキャラクターは停止している。
- キャラクターは動かず、背景を動かして動きを表現する。
- もっと省略し、一枚の絵で撮影の工夫などにより動きを表現する。
- キャラクターのパーツをレイヤ分けして、動く部分だけ動かす。例えば会話中のキャラクターは口が動き表情は変わるが体は動かない。
- アニメーションは伝統的に映画と同じ24コマ/秒で構成される。 この1秒24枚のうち24枚か12枚の絵を作成するのが普通だったが、重要度の低い部分を8コマ/秒などで作成(3コマ打ち)する。
- 繰り返しの動作で全ての絵を起こさずリピートする。
- 一度描いた絵を使いまわす(バンクシステム)。
- 口パクのパターンを減らす。リップシンクしない。口パクしない。
- 心象をあらわす抽象的な一枚絵を背景に用いる。
- レイアウトを工夫して人を写さない。顔を写さない。
これらは注目されるべき部分だけに注力することによる省力化を目指して開発された手法ではあるが、逆に注目されるべき部分が強調されたアニメ独特の表現を産むことにもなった。
日本の"アニメ"とリミテッド・アニメーション
これらの手法は手塚治虫が『鉄腕アトム』で大々的に導入して以降、日本のテレビ・アニメーションでは標準的な手法となっている。
手塚以前からのアニメ制作会社である東映動画出身の宮崎駿は、『鉄腕アトム』を低予算の紙芝居であると批判した。手塚自身も『鉄腕アトム』第一回放送を見て動かない同じ絵が続くと感想を残している。
一方、放送当時から能などを引き合いに、動きよりもストーリー・心象表現を重要視した海外のアニメーションとは違う日本らしい表現という評価もあり、『鉄腕アトム』は日本的「アニメ」の源流となっていった。
ぬるぬる動く問題
1秒24コマ中24ないし12コマの新規絵がある動画、あるいはそのように見えるもの(ぬるぬる動く)をフルアニメーションということがあるが、これは無関係ではないものの別の話である。
日本のテレビアニメでは3コマに1枚の新しいコマがあるのが基本だが、実際には24枚中8枚に均等に絵を描くわけではないし、レイヤごとに違うタイミングで新規絵が入ることもあるし、1コマ打ちで描くこともあって、そのカットを表現するのにそういう手法をとったというだけである。
その他
ゲームなどで「全セリフボイス付き」を表す「フルボイス」と同じような意味で全編アニメーションとして「フルアニメーション」を使うことがある。
関連動画
左:1911年のアニメーション「Little Nemo」。フィルムに直接色付けされている。
右:1914年のアニメーション「Gertie the Dinosaur」。2作品ともウィンザー・マッケイによって制作されている。
白雪姫は俳優の実写映像からアニメを起こしている。
左:白雪姫(1937年:ディズニー)右:動絵狐狸達引(1933年:大石郁雄)
関連項目
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