ヘレス・デ・ラ・フロンテーラとは、スペイン南部のアンダルシア州にある都市である。
シェリー酒の産地として有名。
2~3月にヘレスフラメンコフェスティバル、4月に春の馬祭りが行われ、
5月には近郊のヘレスサーキットでMotoGPが開催される。
位置と気候
スペイン南部のアンダルシア州の西部にある。首都マドリッドから南へ465kmで、ちょっと遠い。
海岸線と市街地は15km離れている。最も近い港町はカディス。
地中海性気候で、晴れが多く、夏は暑く冬も温暖であり、ヨーロッパの中でも屈指の暖かい土地である。
都市名の由来
ヘレス・デ・ラ・フロンテーラのフロンテーラとは国境の意味で、
かつてこのあたりがキリスト教国とイスラム教国の国境だったことに由来する。
ヘレス・デ・ラ・フロンテーラの近くには「~・デ・ラ・フロンテーラ」の地名が点在する。
チクラーナ、コニル、アルコスなど。
ヘレス(Jerez)は、紀元前15世紀から紀元前8世紀まで地中海全域で活躍したフェニキア人の
セレス(Xeres)に由来する。
フェニキア人の本拠地はシリア西岸のここで、ヘレス・デ・ラ・フロンテーラまでやってきていた。
シェリー酒
ヘレス・デ・ラ・フロンテーラはシェリー酒の産地として名高く、メーカーが60社ほどある。
街の各地に酒蔵があって、そこには樽が並んでいる。
シェリー酒を簡単に説明すると、いわゆる酒精強化ワインの1つであり、
ブランデーをつぎ足してアルコール度数を高めた白ワインのことをいう。
普通のワインのアルコール度数は高くても14%なのに対し、
シェリー酒のアルコール度数は15~22%程度になる。
白ワインに継ぎ足すブランデーもヘレス・デ・ラ・フロンテーラで作る。シェリーブランデーという。
ブランデーを簡単に説明すると、白ワインを蒸留させてアルコール度数を40~50%に高めた酒。
蒸留を簡単に説明すると、酒を煮込んで気体にして、気体を集めて液体に戻すこと。
ヘレス・デ・ラ・フロンテーラのあたりは白い石灰質の土壌で、白ブドウの栽培に適している。
気候が安定して毎年ブドウの出来映えが良いので、「ヴィンテージ・ワイン(年代物)」の概念がない。
ヘレス・デ・ラ・フロンテーラ周辺で決められた製法によって作った製品だけが、
シェリー酒を名乗ることを許される。
シェリー酒を上手く作るには何度も味見しなければならない。
この味見をする職業の人はヴェネンシアドールという。
ひょろ長いヴェネンシアという道具を使ってシェリー酒を樽から取りだす。
樽には小さな穴が空いていて、栓を抜くとヴェネンシアを入れることができる。
ひょろ長いヴェネンシアで樽の中の水面より深いところからシェリー酒を抜き取る。
水面近くの酒では味見に適さないのである。
ヴェネンシアで1mの高さからグラスに注ぎ、味見する。
ジョボジョボとグラスに注いで空気に混ぜ合わせるエアレーションという行為も重要で、
これをする・しないで風味も変わってしまう。
ヘレス・デ・ラ・フロンテーラのヘレスサーキットで二輪レースの最高峰であるMotoGPが開催される。
その表彰式では、シェリー酒グラスをかたどったトロフィーが贈呈されるのが恒例。
MotoGP関係者がシェリー酒メーカーに招待されることがある。
ゴンサレス・ビアスというティオ・ペペを作る有力企業が定番。記事1、記事2、記事3、検索1
ホセ・エステヴェスという企業に招待されることも多い。記事1、記事2、検索1
MotoGP関係者に限らず、シェリー酒メーカーは著名人を盛んに招いて、樽にサインをしてもらっている。
この記事によると、各国の王族・皇族を招いてサインしてもらっている。
14世紀ごろからヘレス産ワインは英国に輸出されるようになり、英国の社交界で人気を博した。
なぜかというとフランスと百年戦争を始めてしまい、フランス産ワインを買えなくなったからである。
しかたないからカディスの港から出荷されるヘレス産ワインを買ってみたら美味しかった。
16世紀の文豪シェイクスピアはヘレス産ワインに惚れ込んでいて、全作品中で44回も言及している。
モームやディケンズといった19世紀の人気小説家も「ヘレス産ワインは美味しい」と賞賛している。
こうした英国人の宣伝活動により、ヘレス産ワインが世界中に広まることになった。
そして、ヘレス産ワインは「シェリー酒」という英語名で定着することになった。
ヘレスとシェリーは同じ語源で、本来なら「ヘレス酒」というスペイン語名で広まるはずだった。
春の馬祭り 王立アンダルシア馬術学校
ヘレス・デ・ラ・フロンテーラは馬産も盛んである。
とはいっても競走用のサラブレッドではなく、乗馬用のアンダルシア馬を生産している。
アンダルシア馬は芦毛(白い馬)が多く、スペインや英国やデンマークの王室が好んで採用している。
4~5月のヘレス・デ・ラ・フロンテーラでは「春の馬祭り」が開催され、
馬に乗って練り歩いたり、飾りを付けた馬の馬車に乗ったり、とにかく馬がメインのお祭りになる。
Youtubeにも動画がある。動画1、動画2、動画3
ヘレス・デ・ラ・フロンテーラには王立アンダルシア馬術学校があり、乗馬の技術を継承している。
1975年にスペイン王室によってラス・カデナス宮殿の中に設立された。
ここは馬術学校として格が高く、馬術国際大会でトップになるような騎手を輩出している。
週1~2回馬術ショーが、週2~3回練習が公開され、18ユーロで華麗な乗馬を見学することができる。
Youtubeにも動画がある。動画1、動画2、動画3
フラメンコ発祥の地
ヘレス・デ・ラ・フロンテーラはフラメンコの発祥地とされる。
フラメンコの学校もいくつかある。
毎年2月から3月にかけて、ヘレスフラメンコフェスティバルという催しが開かれる。
スペインを代表するフラメンコ・ダンサーが集結し、公演したりレッスンしたりする。
1997年から毎年開催されていて日本から馳せ参ずる人たちも多い。
動画検索するといろいろと動画がヒットする。
闘牛士が住んでいる
ヘレス・デ・ラ・フロンテーラには闘牛士が住んでいて、牛を牧場で育て、闘牛の練習をしている。
二輪レースの最高峰であるMotoGPがヘレスサーキットで開催される際、プレイベントとして、
MotoGPライダーが招待され闘牛を体験させられることがある。記事1、記事2、記事3、記事4
結構な勢いで丸々太った牛が突進してくる。
牛が怖くなったら(そりゃ怖いだろう)闘牛場の壁の中に逃げ込むことを許される。
二輪レースの聖地 ヘレスサーキット
アンダルシア州西部のヘレス・デ・ラ・フロンテーラにはヘレスサーキットがあり、
二輪レースの最高峰であるMotoGPが毎年5月に開催される。
大勢の観客が押し寄せて、大きな盛り上がりを見せる。
このサーキットは冬も暖かいので車両のテスト走行に最適であり、冬のテストにも多用される。
MotoGP関係者にとっては聖地のような存在となっている。
詳しくはヘレスサーキットの記事を参照してください。
関連項目
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